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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
602/637

#602 時を超えて、そして譲れない願い。

■現在ABEMAさんでイセスマ二期が一週間無料配信だそうです。この機会にぜひ。





あるじ、若君は御無事です。心置きなく》

《わかった。久遠を頼む》


 琥珀からの念話を受けながら、僕は目の前の巨腕を躱し続ける。

 『緑』の王冠の力で巨大な腕を作り上げたゴルドは、そこに『赤』の王冠のパワーと炎の力を加えて僕に攻撃を仕掛けてきた。

 巨腕を躱しても、凄まじいパワーを叩きつけられた木の根が木っ端微塵に砕け、避けた僕にその破片が飛んでくるのだ。

 大きなダメージにはならないが、地味に痛い。巨腕を避けるための集中力が途切れそうだ。

 隙を見てブリュンヒルドの引き金を引くが、本体に届く前に全部巨腕に防がれてしまう。


『【暴食の羽(グラトニックフェザー)】』


 ゴルドの背中にある黄金の翼から、無数の羽が手裏剣のようにこちらへ飛んでくる。


「【プリズン】!」


 躱し切れないと判断した僕は【プリズン】を展開、結界でその羽根を防御する。自分自身に展開する分には【プリズン】も問題なく使える。

 結界にぶち当たった羽根が、まるで水風船が弾けたように広がり、結界の一部を『喰った』。


「ちっ……!」


 すぐにその場から跳び退いて距離を取る。この羽根はグラトニースライムの特性を持っている。なんでも喰って己のエネルギーに変えてしまうのだ。

 ぐにゃぐにゃと蠕動を繰り返していたそれはやがて再び羽根の形となり、ゴルドの背に戻っていく。

 僕の【プリズン】から奪った魔力を吸収しているのだろう。相手の力を奪って自分の力にする……厄介な能力だな。それに加えて……。


『【空間歪曲】』


 ゴルドの目の前と、僕の目の前の空間に歪みが発生する。

 その歪みを超えて、ゴルドの巨腕による右ストレートが繰り出され、僕は至近距離でそれを受けざるを得ない状況に追い込まれた。


「【アクセル】ッ……!」


 すぐさま加速魔法で横に移動し、思考加速でゆっくりと動く世界の中、僕はなんとかギリギリでその拳を躱した。

 躱したはいいが、拳が生み出す風圧にバランスを崩してしまう。その隙に再び黄金の羽根が狙ったかのように降り注いできた。こんにゃろ……!


「【ゲート】!」


 地面に倒れ込む直前に、そこに【ゲート】を開き、そのままその中へと落ちる。一瞬だけなら開くのも難しくない。

 出現先はもちろんゴルドの真上だ。同じことをされる鬱陶しさをとくと味わえ。

 空中で【ストレージ】に保存してあった巨岩を取り出す。この岩は先日土砂崩れで山道を塞いでいたもので、撤去作業の際、何かに使えるかと入れっぱなしにしておいたものだ。

 ちょっとした小型バスほどもあるこいつに──。


「【グラビティ】!」


 加重魔法により何倍もの重さにされた僕の足下の巨岩がゴルドを圧し潰す。

 バキバキと木の根の折れるような音とともに、巨岩が地面にめり込んだ。さすがにこれなら、と思った僕の足下の巨岩が揺らぐ。

 咄嗟に飛び降りると、巨腕で岩を受け止めたゴルドがそのまま持ち上げている姿が目に入った。

 おそらく何百トンもの重さになっているだろう岩を持ち上げるパワーに驚いてしまう。これが『赤』の王冠能力か。

 ブン! とその巨岩を僕へ向けてぶん投げてくるゴルド。

 自分で出した岩に下敷きになるなんて冗談じゃない。【アクセル】を使ってその場から逃げ、落ちてくる岩を避けた。


『【爆炎指弾】』


 ゴルドが握りしめた両腕の指をぱっと弾くと、それぞれの指から十もの炎弾が放たれ、一斉に僕へと向かって飛んでくる。おいおい【ファイアボール】十連発かよ……! これも『赤』の王冠能力か!

 【プリズン】を展開させ炎弾の雨を凌ぐ。周囲の根に燃え広がるのではないかと危惧したが、どうやらそれはないようだ。

 不意にピキリと【プリズン】にヒビの入る音がした。

 な……!? まさかこの炎弾にも神気が含まれているのか!?

 八発目までは耐えたが、九発目で【プリズン】が砕け散り、最後の十発目が僕へ向けて襲いかかる。


「【神威解放】!」


 神気を纏ったブレードモードのブリュンヒルドで炎弾を叩っ斬る。

 神気の刃に分断された炎弾は、僕の左右後方で爆炎を上げた。あっぶな……! 

 あの野郎、【侵蝕】以外で神気を纏った攻撃ができるのか? いや……【侵蝕】の力が、文字通りゴルドに【侵蝕】していってる?

 だとすると、こいつ自身が邪神になりかけてる可能性も……!

 マズいな。一応僕はこの世界の管理者ってことになってる。神様一年目で邪神を生み出したなんてことになったら、神々からの評価がだだ下がりだ。

 神々の中にはあまり僕のことを快く思っていないひともいるらしいし、ここでの失点は痛い。

 でもこいつの持つ『堕神』の力って、別に僕のせいじゃないと思うんだが……。侵蝕神の分体を見逃した破壊神のせいだろ。責めるならそっちを責めてほしいよ。

 幸い、まだこいつは邪神じゃない。邪神の使徒でもない。つまり地上の者である久遠じゃなく、僕が倒しても問題ない。


「【神器召喚】」


 久遠の守りに入っていた球体状態の神器を手元へと召喚する。

 久遠たちに貸してはいるが、もともとこれは『僕の』作った『僕の』神器だ。『僕が』使えないなんてことはない。


「【神器武装】」


 野球ボールほどの球体が糸のように解け、再び形を作り出す。そこには久遠用のガンブレードが浮かんでいた。

 形としては短筒に刀身がついたような武器だが、飛び出す弾丸は神気の塊である。

 これをこのまま撃ったのでは、ゴルドの神気を持ったグラトニースライムの能力に吸収されてしまう。なので撃ち出す弾丸に神気を弾く【神威解放】をコーティングして、それさえも貫く弾丸を作り出した。神気徹甲弾である。そしてさらに──。


「【複製コピー】」

『ヌッ……!?』


 宙に浮かぶ神器剣銃が円を描くように移動するたび、その複製がその場に留まって、最終的に九つの神器が僕の周囲に浮かぶ。


「【一斉射撃フルバースト】」


 リーンのグリムゲルデの真似をして、ゴルドへ向けて無数の弾丸を撃ち込む。

 弾切れがなく、途切れることのない銃弾の雨に、ゴルドは樹木で作り上げた二つの巨腕で防御の体勢を取った。

 が、それさえも貫いて、弾丸の雨は彼に容赦なく降り注ぐ。

 マシンガンのような銃弾の嵐に樹木の巨腕が少しずつ削られていく。


『グ……! バカな……!? なンダこの攻撃は……!? 【侵蝕】も【吸収】も、できナイ、だと……!』

「そういうふうに作り変えたからな」


 本来なら神族が地上で神器の力を大っぴらには使えない。奏助兄さんのように神器としてではなく、楽器として使うならまだしも、地上への影響が大きすぎるからだ。

 これはゴルドが『侵蝕神』の力を持つからこその反則技である。堕神の排除、これは神の仕事なのである。だから問題なし! ってことでひとつ……。

 なんて、心の中で言い訳をしているが、この時点で時江おばあちゃんや花恋姉さんが止めに入らないってことはOKなんだと思う。それがグレーゾーンなのかどうかはわからないけども。


「っと」


 さすがに神器の複製コピーを維持することができなくなってきたので、複製コピーを一旦全部消して連射を止める。

 目の前にはボロボロになった巨腕を翳し、蹲るゴルドの姿が。肩や足、背中の翼などにいくつも銃弾を受けていたが、翼以外の部分はすでに再生が始まっている。

 『紫』の王冠能力ゴレムスキル、【超再生】か。

 代わりに、といったらなんだが、背中の翼からポロポロと羽根が落ち、砂に変わっていっている。【超再生】の代償を払っているのだろう。何百万というオリハルコンスライムの生命で……。


『まだダ……まダ、終わルわけにはいかヌ……!』


 クロム・ランシェスという人間の記憶が移植されたとはいえ、ゴルドもゴレムには違いあるまい。だが、機械にここまでの執念が宿るのか、と気圧されるほどの気迫が僕には感じられた。こいつをここまで突き動かすものはなんだ?

 ゴルドに微かな恐怖を感じたその時、祭壇の上の円環リングが一際大きな輝きを放つ。

 その眩しさに僕は目を腕で庇うが、ゴルドは逆に目を見開いてそれを見ていた。


『来タ……! ついにコノ時が来た! 我の世界を取り戻ス時が……!』


 狂気に取り憑かれたようなゴルドの声に思わず身が震える。

 ゴルドの世界? いったいどういう……?


「遅かったわね……」

「時江おばあちゃん!?」


 かけられた声に振り向くと、そこには時空神である時江おばあちゃんが立っていた。一瞬、グレーゾーンがやっぱりアウトだったかとドキッとしたが、おばあちゃんの視線は祭壇の上の円環リングに向けられている。どうやらあっちの問題のようだ。


「侵蝕神の神力に紛れて隠蔽されていたとは……。これじゃ私も破壊神の悪タレ小僧を責められないわね。冬夜君、結論から言うとあれはタイムトンネルよ」

「タイムトンネル!?」


 タイムトンネルってあれか!? 過去や未来や現在がごっちゃになり、できてしまったらもう破壊神が出張ってくるしかなくなるっていう……!?


「まだ完全に固定されているわけじゃないから、なりかけのタイムトンネル、ね。だけど、あのまま繋がった状態で固定されてしまったら、もうどうしようもなくなるわ」

「砂漠の時みたいにおばあちゃんが、えいっと潰せないのか?」


 僕がわずかに期待して尋ねると、おばあちゃんは首を左右に振った。


「できないこともないわ。だけど、さすがにここで、この状況で私が手を貸してしまうと、冬夜君に依怙贔屓をしていると他の神々は見るでしょう。ひいては世界神様の贔屓だと。眷属だからこそ、手を貸してはいけない部分もあるのよ」


 ぐっ……その通りだな……。ただでさえかなりの助力をしてもらっているのに、全部おんぶにだっこでは天界うえの神々《ひと》らも納得できまい。


「結局自分自身でどうにかしろってことか」

「ごめんなさいね。もっと早く私が気がついて、あなたに伝えることができていれば……」

「いや、もともとは全部僕がしなけりゃならないことなわけで……」


 そうだよな。次元震による時空の歪みも本来なら僕が対処して回らなきゃならないんだ。それを時江おばあちゃんの好意に甘えて全部任せてしまった。

 これじゃ依怙贔屓と言われても仕方がない。新神しんじんだからサポートを受けるのは仕方がないが、それに頼りきりではかっこがつかないし、成長もできない。


「とにかくあのタイムトンネルを──潰す。【神器武装】」


 神器が糸のように解け、再構築を始める。現れたのは大きな、ともすれば大剣のような形にも見える突撃槍ランス

 フレイ専用に作った神器の形状だ。本来神器は使用者の適した重さになるが、こいつはある程度の重さがないと威力が出ないため、それなりにずっしりとくる。

 だが、フレイの【パワーライズ】があればこの超重武器も扱うのはさほど難しくない。もちろん僕も。

 【パワーライズ】を発動させ、突撃槍ランス円環リングへ向けて構える。

 ゴルドがこちらへ気付き、円環リングへと向けて飛び出した。こうなりゃまとめて潰させてもらう。


「【アクセル】」


 加速魔法を使い、構えた突撃槍ランス円環リング目掛けて走り出す。


『やらせヌ……! 【樹硬堅盾】!』


 僕の前に立ちはだかったゴルドの両腕に樹木でできた大きな盾が現れた。

 神器の槍と樹木の盾が真正面から激突する。『赤』のパワーも加わり、僕の【パワーライズ】を凌ぐほどの怪力が押される盾から感じられる。さらに盾から【侵蝕】の力が伸びてきた。神器の力を取り込もうというのだろう。だが。


「【神威解放】!」


 プラチナ色の神気が【侵蝕】の力を吹き飛ばす。樹木の盾にビキリと亀裂が入った。

 バキャアッ! と、盾を、ゴルドの腕を、翼を吹き飛ばし、神器の槍は円環リングへと到達する。

 大剣のような槍を横薙ぎに、円環リングごと叩き斬る。

 ズパン! と小気味いい音を立てて、円環リングが上下真っ二つに斬り裂かれ、光を放っていたタイムトンネルが消滅する。よし、これで破壊神の出番は無くなった!

 しかし、吹き飛ばされ宙に舞っていたゴルドから小さな声が漏れる。


『グ……! コ、レだけは、使いたク、なかっタが……やむを得ヌ、か……。────【リセッ、ト】』

「な……!?」










 次の瞬間、突然景色が一変した。目の前にはボロボロになったゴルドが蹲っている。

 場所は祭壇の下、さっきまで戦っていた場所だ。これは……『白』の王冠能力、【リセット】か!?

 さっきまでの事象が書き換えられ、『なかったこと』にされた。時を戻したんじゃない、『改変』された。ゴルドに攻撃して、円環リングを叩き斬った事実が無かったことにされている。

 ゴルドの背からは羽根がいくつもボロボロと落ち、砂となって地面に落ちていく。【リセット】の代償はかなり大きいようだ。

 突然、眩しい光が僕の目を襲う。円環リングが再び輝き始めたのだ。


「くっ……!?」


 以前と同じく目を腕で庇う僕に対し、ゴルドは躊躇いなく円環リングへと駆け出す。前回のように喜びに打ち震えてはいない。


「待て……っ!」


 眩しく思いつつも僕も祭壇へと駆け出す。目を庇いながらではうまく走れず、かといってこの状態で【アクセル】なんて使おうものならとんでもない方向へ行きかねない。くそっ、眼鏡神からサングラスでももらっておけばよかった……!

 光彩陸離こうさいりくりの渦の中、ゴルドが円環リングへとたどり着く。


『待っテいロ……エッダ、リューリ……!』


 ゴルドが円環リングの中へと飛び込み、光が一際大きく輝く。逃げられた……!?

 どうする……!? ゴルドを追いかけるか? だけどどの時代に繋がっているのかもわからないのに?

 振り返ると時江おばあちゃんが小さく頷くのが見えた。大丈夫? 大丈夫かな? いざとなったら【異空間転移】で戻って来れるだろうし……時空神のお墨付きだ、なんとかなる!

 僕は意を決して、ゴルドと同じように円環リングの中へと身を投じる。

 グニョンという気持ち悪い感覚の後、僕の視界を暗闇が覆った。

 辺り一面真っ暗な闇。上も下も右も左もわからない。まるで無重力空間にいるみたいだ。ふわふわして落ち着かない。

 光はないのに自分の姿がはっきり見える。そして、何かに流されている感覚がある。

 真っ暗な完全な闇かと思ったが、遥か遠くに光が見えた。

 針の穴のように小さな星のような光だ。この流れはそこへ向かっているように思える。

 タイムトンネルの中ってこんななのか。まるでマンホール下の下水道の中を流されているようで落ち着かないな……っ!?


「【プリズン】!」


 不意に背筋に寒気が走り、嫌な予感がした僕は周囲に【プリズン】を展開させた。

 ガキャッ! という音と共に、なにかが弾かれる。


『おのレ……! ココまで追っテくるトは……!』


 暗い闇の中にゴルドの姿が浮かび上がる。いつの間に……!

 ゴルドのボディは完全に修復が完了していた。しかし、その背にある黄金の翼はもはや翼とも呼べないほどボロボロになっている。

 『紫』の王冠能力ゴレムスキル、【超再生】だって代償を必要とする。さらに先ほどの【リセット】で多くの代償を払ったのだろう。もうあの翼では代償を払えまい。次に使う時はゴルド自身が代償となる。


『ココで終わルわけにはいかヌ……! なンとしてもモウ一度……!』

「……いったいそこまでして何をしようとしているんだ? 邪神を甦らせようとしても無駄だぞ?」


 時江おばあちゃんがそれは許さないって言ってたからな。時の無限回廊とやらに放り込んで永遠に彷徨ってもらうって。

 地上にいる邪神に神々は手を出せないが、タイムトンネルのような異空間にいるのなら話は別だ。ここは時空神の領域テリトリーだしな。


『邪神なぞドウでもいい……! 我は、我が失っタものを取り戻ス! そレだけガ我の望み……!』


 失ったもの……? ゴルド、いや、クロム・ランシェスが失ったものって……。まさか、記憶、か?

 五千年前のフレイズ大侵攻の時、『白』と『黒』の暴走によりクロム・ランシェスは記憶という代償を払った。

 その記憶を取り戻そうとしている? だけどどうやって……まさか五千年前に戻り、クロム・ランシェスが暴走しないように止めるつもりか!?

 冗談じゃない。クロム・ランシェスには悪いが、それは僕らが生きている歴史の中で、重要な1ページだ。

 『白』と『黒』が暴走して、世界の結界が修復されないと、歴史が変わってしまう。

 いや、歴史が変わるなんてもんじゃなく、時の精霊の力を超えて、そこまで修正不可能となってしまったら、その前に破壊神にこの世界は壊されてしまうんだ。

 そうなってしまったら時空神である時江おばあちゃんだって止められない。

 こいつに世界を滅ぼす気がないとしても、結果、そうなってしまうんだ。

 まさかとは思うが……それが狙いなのか?


「時の改変は世界を滅ぼす。それがお前の望みなのか……?」

『世界など知らヌ……! エッダとリューリさえ助かるのなラば、我は……!』


 エッダ、リューリ……? 誰のことだ? いや、どこかで聞き覚えが……。あ……!

 僕は【ストレージ】からゼノアスの地下研究所で発見した魔幻燈板エーテルフィルムを取り出して魔力を流す。

 二人の男女と、それに挟まれて嬉しそうに笑う少女の映像が浮かびあがった。エッダ、リューリという文字とともに。


「あんたの地下研究所で見つけた。エッダとリューリってのは、あんたの奥さんと娘さんだな?」

『っ!?』

 

 ゴルド──クロム・ランシェスに映像を見せ、押し出すように彼に魔幻燈板エーテルフィルムを投げる。

 ふわふわと無重力の中を進むように魔幻燈板エーテルフィルムはゴルドの手の中へと収まった。


『エッ、ダ……! リューリ……!』


 ゴルドは震える声で二人の名前を漏らし、魔幻燈板エーテルフィルムを見つめた。

 その目からは涙は流れてはいなかったが、なにか光るものが見えた気がしたのは僕の幻想だろうか……。

 





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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
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