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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
588/637

#588 乱戦、そして巨大魔砲。





『粉・砕ッ!』


 エルゼの駆るゲルヒルデが突き出した腕から、晶材製の杭が飛び出し、目の前のキュクロプスの胸を穿つ。

 その破壊力に胸部を貫かれた単眼のゴレムは一撃でその場に沈んだ。

 背後からもう一機のキュクロプスが戦棍メイスを横薙ぎに振るうが、ゲルヒルデはその場にしゃがみ込むように沈んで躱し、伸ばした右足を草刈り鎌のように後方へ回転させ、相手の足を薙ぎ払う。

 後掃腿と呼ばれる技をフレームギアで容易くこなしてしまうエルゼを、そのすぐ後方にいたルーは呆れたような目で見ていた。


「なんというか、いきいきしてますわね……」

「エルゼお母様ですもの。当然ですわ」


 仮にも戦場だというのに、楽しげに敵を粉砕していくゲルヒルデを見ながらルーがそんなことをつぶやくと、後部座席に座るアーシアから、なにを今さら、といった返しが飛んできた。

 そんな会話をしながらも、ルーの操るヴァルトラウテはキュクロプスたちの攻撃をひらりひらりと躱していく。

 背中に装備された『(ブースター)』ユニットにより、ヴァルトラウテの機動力は専用機ヴァルキュリア一の速さを誇る。正確に言えば速さだけでいうと、空を飛ぶリンゼのヘルムヴィーゲの方が速いのだが……まあ、地上ではヴァルトラウテの方が速い。

 その素早さで接近したヴァルトラウテが、正面に立つキュクロプスへ向けて、両手に持った晶材製の双剣を左右同時に振り下ろす。

 

「三枚に下ろして差し上げますわ!」


 両肩口から腰部まで切り裂かれたキュクロプスが三つに分かれて地面へと落ちる。

 そのままもう一機のキュクロプスに瞬時に接近して、左右の晶剣をクロスさせるように相手の胴体を上下真っ二つに斬り裂く。

 二つに斬り裂かれたキュクロプスが転がるのを置き去りにして、ヴァルトラウテは次の標的を見つけに加速する。

 すると突然、前方にいたキュクロプスが蜂の巣になって倒れるのが見えた。

 キュオン! と低空飛行でリンゼの乗る飛行形態のヘルムヴィーゲがヴァルトラウテの横を飛んでいく。

 低空飛行状態のまま、瞬時にして機体が変形し、フレームギアの姿になる。

 右手に持った二連装ライフルが火を噴き、転移魔法による無限装填と魔力による晶弾砲撃で、周囲のキュクロプスが次々と粉々になっていった。

 ひとしきり周囲のキュクロプスを倒したヘルムヴィーゲは再び飛行形態へと変形し、行き掛けの駄賃とばかりに、その両翼に仕込まれた翼部ブレードで二機のキュクロプスを斬り裂いてから上昇していった。


「なんというか、容赦ないですわね……」

「リンゼお母様ですもの。当然ですわ」


 またもアーシアから、なにを今さら、といった返しが飛んできた。

 アーシアら子供たちの中で、怒ったときに一番怖いのはぶっちぎりでリンゼであった。

 怒鳴るとか叱るとかそういう怖さではなく、笑顔で懇々と言い聞かせてくるのだ。そこに容赦はない。

 なにがダメで、なにが悪かったのか。どうしてそうしたのか、こうなると予想できなかったのか。以前の反省をなぜ活かせなかったのか、どれだけ周囲に迷惑をかけたのか……と、細かなところまで責めてくる。

 ひたすら謝っても、本当に理解したのか、反省したのか、同じことを繰り返さないために、どんな対策をするのか……と、話が終わらない。

 リンゼが怒ることは滅多にないが、一度本気で怒られた子供たちは、二度と怒らせないようにと固く心に誓う。

 実を言うとアーシアも一度怒られたことがあり、そのときに二度とこんな目にあうのはゴメンだと深く反省したのである。


「お母様、右から一機来ますわ」

「了解」


 アーシアの指示に従い、ルーがヴァルトラウテを右に旋回させる。と、同時に左手に持った剣を遠心力を込めて振り回し、キュクロプスの脇腹にドカリと食らわせた。


「えっ?」


 ルーの表情が驚きに染められる。

 腹部中程まで食らい込んだ剣を、キュクロプスががっしりと両腕で掴んだのだ。

 いや、両腕で掴まれたため、中程までしか斬り裂けなかったというのが正しいか。

 初めてのことに一瞬反応が遅れる。そのタイミングを狙ったかのように、横からもう一機のキュクロプスが槍でヴァルトラウテを串刺しにしようと突いてくる。


「くっ!」


 ルーは食い込んでいた晶剣を手放し、繰り出された槍を横に躱した。しかし移動した先に、待ち受けていたように戦棍メイスを振りかぶる三機めのキュクロプスの姿が。

 これは躱せない、と、ルーがヴァルトラウテの左手を盾にしようとした時、戦棍メイスを持ったキュクロプスの頭が突如粉々に砕け散った。


『大丈夫ですか、ルーさん』

「ユミナさん! ナイスタイミングですわ!」


 ユミナの乗るブリュンヒルデからの援護射撃に、ルーが気力を取り戻す。背中のブースターを全開にし、その勢いのままに槍を持つキュクロプスの胸をその晶剣で貫いた。

 すぐに反転し、腹を半分切り裂かれて晶剣を刺したままになっていたキュクロプスに狙いを定める。ヴァルトラウテは手にした晶剣を裂かれた腹の反対側に叩き込み、相手を上下真っ二つに斬り裂いた。


「ふう……。危なかったですわ」


 危機を回避したルーが安堵の息を漏らす。今のは危なかった。ユミナからの援護射撃がなければ、腕を一本犠牲にしていたかもしれない。


『気をつけて下さい。今までのキュクロプスとは違って数機で連携をとってきます。それも自分の身を犠牲にするのを躊躇わない連携を。決して捕まらないように。しがみつかれたらしがみついた味方ごと潰しにきますよ』

「わかりましたわ」


 ユミナの言う通り、向こうも自分たちと同じように連携プレーで攻めてくる。しかもなりふり構わないやつをだ。気をつけなければ。

 ルーは落ちた片方の双剣を拾い、改めて気合を入れ直した。




          ◇ ◇ ◇



「クールダウン完了。再起動するわ」


 【一斉射撃フルバースト】後のオーバヒート状態から復帰したリーンのグリムゲルデが立ち上がる。

 すぐにホバー移動しながら、右腕のガトリング砲をキュクロプスたちへと向けて乱射し始めた。

 基本的にグリムゲルデの砲撃は味方がいると撃つことができない。巻き添えにしてしまうからだ。

 だが、相手が馬鹿でかいならばそれはあまり問題はなくなる。グリムゲルデは戦場に立つ、胸に一つ目の巨大キュクロプスへ向けて爆走を開始した。

 走りながら巨大キュクロプスの上半身へ向けてガトリング砲を連射する。

 巨大キュクロプスは避けることもなくその晶弾の雨を受けていた。


「なんて硬さ……! 全く効いてないってわけじゃ無さそうだけど……」


 望遠モニターで見る限り、外装の表面が少しは欠けているようだが、決定打にはならない。


「かなり強力な硬化魔法を施されているようです。一点集中すれば砕けないこともないと思いますけど……」

「どれだけ時間がかかるかって話ね……!」

 

 クーンの提案をやんわりと却下するリーン。できないことはないだろうが、さすがにそれは時間がかかりすぎる。ならば……!

 リーンが思いついた手を行動に移そうとした時、巨大キュクロプスの胸部が変形を始めた。

 ガチャガチャと胸部のパーツが動き、目玉を模した中心部分が、カメラのレンズのように回転しながら伸びていく。

 やがて、バチリッ! と稲妻のようなスパークを見せて、眼の中心部分……瞳の前に光の球が現れた。

 バチリ、バチリと音を立てながら光の球が大きくなっていく。


「……っ!? ユミナお母様! 総員退避ですわ! 巨大キュクロプスの前からみんな避難を!」

『総員退避! 巨大キュクロプスの正面から避難を! 急いで下さい!』


 何かに気づいたクーンの叫びに、通信先のユミナがすぐに従う。

 反応したフレームギアたちが戦闘をやめ、巨大キュクロプスの前方から一斉に蜘蛛の子を散らすように退避した。

 次の瞬間、キュバッ! という轟音とともに、巨大なレーザーのようなものが巨大キュクロプスから真っ正面に放たれた。

 地面を抉りながら突き進んだ光の矢は、その先にあった山脈へと突き刺さる。


「今のは……上級種の荷電粒子砲……?」


 リーンがかつて対戦したフレイズの上級種による攻撃を思い出す。

 正確には上級種のアレは荷電粒子砲ではないのだが、夫である冬夜がなんとなくそう呼んでいたため、いつしか固有名詞になってしまった。


『シェスカさん、被害報告を!』

『避難が間に合わなかっタ十四機がキュクロプスもろとも巻き込まレまシタ。でスが、搭乗者は転移システムにより本陣に脱出しテおり、全員無事でス』


 焦るユミナの声に、空のバビロンから戦場を監視しているシェスカがそう答えると、リーンはホッと胸を撫で下ろした。

 機体の異常を感じたことにより、刹那のタイミングで脱出機能が働いたようだ。

 おそらくかなりギリギリであったと思われる。搭乗者自身が回避不能と判断し、フレームギアに搭載された思考補助システムが独自に判断、搭乗者を強制転移したのだろう。

 巨大キュクロプスの胸部から伸びたパーツがもとに戻っていく。どうやら連発はできないらしい。そこらへんも上級種に似ている、とリーンは思った。

 味方ごと巻き込んでの攻撃。仲間意識などない、いやそれ以前に、生者でないからこその容赦の無さか。


「どっちにしろあのデカブツは倒さないといけないわね……。リンゼ! こっちに降りてきてもらえる?」

『え? あ、はい!』


 リーンの要望にすぐさまリンゼが文字通り飛んできて、フレームギア状態へと変形する。


「シェスカ、『ブリューナク』の転送をお願い」

『了解。『ブリューナク』、転送しまス』


 シェスカの声とともに、リーンたちの前に巨大な大砲がバビロンから転送される。

 砲身から地面へのアンカーが打ち出され、その場に大砲が固定された。

 フレームギアの三倍はある砲身が、巨大キュクロプスへと向けられる。

 ブリューナクを挟むようにして、その砲身をリーンのグリムゲルデ、リンゼのヘルムヴィーゲが支える。


「こっ、これは巨大魔砲『ブリューナク』! 対・上級種戦用の最終兵器にして、莫大な魔力と緻密なコントロールを必要とする、特殊ドリル弾を撃ち出す究極の魔力大砲! まさかこの時代でお目にかかれるとはっ! くーっ、感激! ここに来てよかったですわーっ!」

「解説ありがとう」

『はは……』


 テンションが爆上がりのクーンに対して、リーンはクールに返し、リンゼは苦笑するに留めた。

 どうやらクーンはブリューナクを知ってはいるが、見たことはなかったようだ。未来の世界では無用の長物となっているのだろう。

 王妃たちの中で、一、二の魔力量を誇るリーンとリンゼの二人で一発しか撃てない武器など使いどころがないと見える。

 だが、この時代ではまだ活用すべき場があるようだ。


『充填率50%……60%……以前のより、速いですね』

『こんなこともあろうかと! 改良に改良を重ねていたのでありまス! 魔学の進歩は日進月歩! 常に進化しているのでありまスよ!』


 リンゼのなにげない感想に、ここぞとばかりにスピーカーから開発者である『工房』の管理人、ロゼッタの声が飛んできた。

 ブリューナクは本来、魔力の充填に時間がかかる。

 それを改良し、かなりの急速充填が可能になったブリューナクは、あっという間にフルチャージされてしまった。


『充填率一〇〇%、です!』

「いくわよ! 発射ッ!」

「あーっ!? お母様、私に撃たせて──っ!?」


 轟音とともに唸りを上げて、巨大なドリル弾がブリューナクから撃ち出される。

 巨大キュクロプスの胸にそれがぶち当たるかと思った瞬間、相手が咄嗟に右へとそれを回避した。

 胸部への直撃は逸らすことができたが、動きの遅い機体ゆえ、左肩にドリル弾が突き刺さる。

 ギャリリリリリリッ! という回転音と装甲を削る音を響かせながら、ドリル弾が左肩を抉り取り、繋がっていた左腕が地響きを立てて地面へと落ちた。


「くっ、外したわ……!」

『一発しか撃てないってのが、ブリューナクの弱点です、ね……』


 魔力がすっからかんになったリーンとリンゼが、結婚指輪に付与された【トランスファー】により魔力を回復させた。

 魔力だけ回復しても、肝心のブリューナクはボロボロである。砲身には亀裂が入り、とてももう一発を撃てるような状況ではない。

 巨大キュクロプスの胸部パーツが変形を始める。お返しとばかりに先程の荷電粒子砲を放つつもりらしい。


「まずいわ。退避しないと……!」

『問題ナッシンでありまス! こんなこともあろうかとぉ!』


 退避しようとしたリーンの耳に再びロゼッタの声が響き渡る。

 と、同時に、自分たちの構えていたブリューナクの隣に、もう一つのブリューナクが転移されてきた。


『もう一台作っておいたでありまスよ! 改良したグリムゲルデとヘルムヴィーゲならもう一発撃てるでありまス!』

「最高ですわ、ロゼッタさん! 予備を使っておくのは技術者の嗜み! そこにシビれる! あこがれるぅー!」


 テンションMAXなクーンは放っておいて、すぐさまグリムゲルデとヘルムヴィーゲは、新しく転送されたブリューナクから伸びるコードを腰のコネクタに接続、魔力を充填し始める。


「間に合うかしら……!」

「大丈夫です、お母様。あれを見て下さい」


 クーンが指し示すモニターに映る巨大キュクロプス。

 その左胸部。左肩が吹っ飛んだことにより、胸の装甲が歪んでいたのだ。

 せり出そうとしている砲身部分が、歪んだ胸のパーツにより引っかかって前に出てこない。

 巨大キュクロプスは引っかかる胸のパーツを残った右腕で引き剥がしにかかる。メキメキと音を立てて歪んだパーツをさらに変形させ、引きちぎるように胸部から外した。

 再び胸部中心の砲身が伸びていく。しかしもうすでに時遅し。


『充填率一〇〇%、です!』

「発射ッ!」


 再び轟音とともにドリル弾が発射される。

 撃ち出したタイミングでブリューナクの砲身に亀裂が入り、グリムゲルデとヘルムヴィーゲの機能が最低限のシステムのみを残して停止、膝からくずおれる。

 ロゼッタは二発目を撃てるとは言ったが、機体が持つとは言っていない。さすがにブリューナク二連発は撃てはしても機体が耐えられなかったのである。

 そんな身を犠牲にして放った乾坤一擲の一発は、巨大キュクロプスの伸びていた胸部の砲身に見事命中した。

 メキメキと食い込んだドリル弾が高速回転で内部を食い荒らす。さらにドリル弾に付与された【スパイラル】の魔法が暴れ回り、胸部にあっただろうゴレムの心臓ともいうべきGキューブをも粉々に破壊した。

 ポッカリと胸に風穴を開けられた巨大キュクロプスが盛大な地響きを上げてその場に倒れる。

 硬化と軽量化の付与魔法が切れたのか、衝撃と自重により、巨大キュクロプスはバラバラとなった。


「なんとかなったわね」

「撃ちたかったです……」

 

 後部座席で不満を漏らすクーンに、やれやれ、とリーンはため息をついた。



          ◇ ◇ ◇



 ぶっ倒れる巨大キュクロプスを横目で確認して、エルゼはニヤリと口の端を上げた。


「エルゼおかーさん、前!」

「っと」


 後部座席のリンネの声に、エルゼは視線を正面へと戻す。

 目の前のメタリックレッドの機体が、手にした細剣レイピアを凄まじいスピードで突いてくる。

 並の操縦者であれば蜂の巣になっていたかもしれない。

 しかしエルゼの常人離れした動体視力はその剣筋一つ一つを見極め、晶材で作られたゲルヒルデのナックルガードで次から次へと捌いていく、


「ふっ!」


 隙をついて飛び出したゲルヒルデの回し蹴りを、メタリックレッドのキュクロプスが後ろへ跳びすさりギリギリで躱した。


『……バロールを倒すとは……! くそっ、最低でも九妃きゅうひの何人かを道連れにする作戦が……』

「よかったわね。そんなことになったら、間違いなくアンタは地獄を見たわ。死なせてくれと涙と鼻水を流して懇願するほどのね」


 エルゼがそんな軽口を叩くが、もしも自分たちの誰かが死んでいたら、間違いなくそうなったと断言できる。自分たちの夫である彼はそういったことに容赦はしない。

 彼の力なら蘇生魔法で生き返ることもおそらくは可能だろう。だが生き返ったとしても、自分たちを殺した相手を赦すわけがない。完膚なきまでに心を折り、地獄を見せるだろうと確信できる。

 たとえ相手がすでに死人である邪神の使徒だとしても、魂を磨り潰すように苦痛と恐怖を与えると思う。

 エルゼはそれを否定しない。なぜなら自分も家族の誰かを殺されたらそれをすると思うから。

 そして、そんなことをしようとした目の前の馬鹿を赦す気はさらさらなかった。


「【ブースト】!」


 ゲルヒルデの多層装甲から赤い魔力の残滓が溢れ出る。燐光を纏ったゲルヒルデがその爆発的な瞬発力で大地を蹴った。

 一瞬にして敵との距離を縮めたゲルヒルデの拳が、輝きを放ちながら大きく振りかぶられた。


『ッ、速っ……!?』

「とりあえず吹っ飛びなさいな」


 晶材製のナックルガードがキュクロプスのボディに炸裂する。

 メタリックレッドの機体にバキリと亀裂が入った。もちろんこれで終わりではない。


「かーらーのー!」

「粉・砕っ!」


 ゲルヒルデの腕部に装備されたパイルバンカーが、轟音と共に打ち出される。バキャリッ! と鈍い音を立てて、キュクロプスの腹から背中へと打ち出された杭が飛び出した。

 そのまま振り抜かれた拳によって、メタリックレッドの機体がバウンドしながら地面に叩きつけられていく。


「神器も無いし、あたしたちじゃ邪神の使徒をじかに相手はできないから、これで逃げ帰ってもらえるとありがたいんだけど……」

「まだ来るなら私がやっつけるよ!」


 無邪気にそう口にする後部座席のリンネにエルゼは苦笑いを浮かべる。

 確かに神の眷属であるエルゼは邪神の使徒を倒すわけにはいかないが、守ることは問題ない。いや、問題ないことはないのだが、微妙なグレーゾーンではある。己が身を守るためのやむを得ない攻撃、いわゆる『正当防衛』が成り立つかどうか。

 エルゼの中では『向こうから先に手を出してきた』という言い訳が浮かんでいたが、果たして……。

 とりあえず神様たちが飛んで来ないところを見ると、お目溢しをされたと思われる。

 リンネなら邪神の使徒を倒しても問題ないのだが、あいにくと神器は作戦遂行中の冬夜たちのもとにある。

 邪神の使徒を痛めつけることはできても、本当の意味で消滅させるのは難しいだろう。


「あっ」


 リンネの声にエルゼは正面のモニターに視線を戻した。

 そこには腹に風穴を開けられたメタリックレッドの機体が、幽鬼のように立ち上がっているところが映し出されていた。

 エルゼは腹ではなくおそらくはGキューブがあるだろう胸を狙うべきだったと小さく舌打ちをする。

 ふと、相手が持つメタリックレッドの細剣レイピアが、ぼんやりと赤い光を明滅させていることに気付いた。

 その不気味な脈動はだんだんと速くなっていく。やがて真っ赤な光を纏った細剣レイピアから、避けようもない凄まじいほどの爆炎がゲルヒルデへ向けて放たれた。










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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
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