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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
578/637

#578 過去からの来訪者、そして群体金属。





 光り輝く水晶のボディ。そして透けて見える赤く丸い核。

 見間違うことのないフレイズが、僕らの頭上をゆっくりと旋回していた。

 形はサメ型。数は四匹。バスのような大きさからして中級種か?


「なんでフレイズが……!? フレイズは邪神に全て変異種に変えられてしまったのでは?」

「いえ、それはこの世界にやってきていた一部に過ぎないわ。奴らの世界……『結晶界フレイジア』とやらにはまだフレイズは普通にいるはずよ」


 リンゼの驚く声とは対照に、リーンが冷静な声を返す。

 確かにこの世界にやってきていたフレイズは、リーンの言う通り、『結晶界フレイジア』のごく一部なのだろう。フレイズという種族全てが変異種になったわけではない。別に絶滅したわけではないのだ。


「だけどあのフレイズは次元の狭間から世界の結界を破ってこの世界に来たのではなく、時空の歪みから出てきた。おそらく今までの絶滅種と同じく、過去の世界からこの時代に来たんじゃないかしら」


 なるほど。つまり五千年前のフレイズ大侵攻の時代からこの時代に引っ張られてきた、と……なんだよ、なんでそのピンポイントな時代と繋がるかなあ!

 あ、いや、僕らが戦っていた数年前って可能性もあるのか?


「冬夜さん……あのフレイズ、なんかおかしくありませんか?」

「え?」


 ユミナに言われて改めて空を遊回するサメフレイズに視線を向ける。特に変わったところは見られないが……。変異種化しているわけでもないっぽいし……。


「目の前に私たちがいるのに攻撃を仕掛けてこないわね」

「あ」


 そう言えばそうだ。フレイズは問答無用で人類を襲うはずなのに。

 もともとあいつらの目的は……あ。


「大丈夫です。あれらがこちらに攻撃することはありません」


 頭に思い浮かんだ人物の声がして僕が振り向くと、そこにはネイ、リセ、リイルを連れたアリス、そしてフレイズの『王』メルの姿があった。

 よく見ると遠くの木の陰にエンデもいるな。リイルがいるから近寄れないと見た。リイルの中に眠るメルの弟、『ハル』の意識が浮かび上がると目の敵にされるからな、あいつ……。


「メルが止めたのか?」


 彼女はフレイズの元『王』にして支配種だ。当然その支配下にある中級種が逆らえるわけがない。


「いえ、私やネイたちの『響命音きょうめいおん』は冬夜さんの【プリズン】によって封印されていますから。あの者らはたぶんアリスの響命音に反応したのでしょう」


 アリスの? メルの言う通りアリスの響命音は封印してはいないけど……。

 そういや僕には聞こえないけど、アリスの響命音はメルの響命音とよく似ているってエンデたちがいってたな。


「するとなにか? こいつらはアリスがフレイズの『王』なのかそうじゃないのかわからず、戸惑っているってことか?」

「まあ、簡単に言ってしまえばそうですね」


 空を見上げると、確かにサメ型フレイズはどこに行くでもなく、うろうろとしている。まるで飼い主を見失った迷い犬のようだ。


「アリス、呼んでみたらどうですか?」

「うーん……よくわからないけど……。おーい、こっちにおいで!」

 

 久遠に言われてアリスが叫ぶと、四体ともすーっ、と空中を泳ぐようにアリスの下へと集まってくる。

 本当に大丈夫か……? 今までが今までなので、どうしても警戒してしまう。

 しかしサメ型フレイズは攻撃するそぶりも見せず、ゆっくりとアリスの上空を旋回している。心なしか先ほどうろうろしていた時よりも泳ぐスピードが速く、喜んでいるように見えなくもない。

 アリスが隣にいたネイになにやら吹き込まれている。


「整列!」


 アリスがそう叫ぶと、キュッ、キュッ、キュッ、キュッ、と、サメ型フレイズがピタリと空中で横一列に整列した。


「上に!」


 ギュン! と、ものすごい勢いでフレイズたちが上昇していく。


「下に!」


 今度はギャン! と、下降。


「ぐるっと回って、直立!」


 サメ型フレイズは地上スレスレでくるんと一回転すると、ビシッ! とアリスの命令通り尻尾を下にして直立した。

 思わず、おおー……と周りのギャラリーから拍手が起こる。なんだこれ、水族館のイルカショーか。


「うむ、間違いなくアリスを『王』と認識しているな。もう大丈夫だ。こいつらはアリスの命令なしで人を襲うようなことはしない」


 ネイの言葉に僕らは気が抜けたように肩の力を抜いた。フレイズを支配する支配種が言うのだから本当に大丈夫なのだろう。

 アリスは寄ってきたサメ型フレイズを笑顔でなでなでとしている。本当にペットみたいだな……。


「リイルも触ってみなよ! かわいいよ!」

「え……? う、うん……」


 かわいい……? キラキラして綺麗ならまだわかるが、どこをどう見ればかわいいという言葉が出てくるのか……。

 アリスに誘われ、リイルもサメ型フレイズに触れる。特に暴れるようなこともなく、ただ撫でられるだけのフレイズにものすごく違和感を感じてしまう。

 ……そういえばリイルはメルの弟であり、現『王』であるハルと同じ響命音を持つんだったな。だったら従ってもおかしくはないのか……?

 フレイズの『王』ゆかりの二人は大丈夫だが、一般人はどうなんだ? と疑問を抱いていると、普通に久遠とステフがアリスたちに混ざってフレイズを撫でていた。

 ……うちの子らは警戒心が無くて困る。まあ、中級種ごときがなにをしようとあの二人には敵わないだろうけども。


「冬夜さん、穴が……!」

「むっ」


 リンゼの声に上空を仰ぎ見ると、時空の歪みによって空けられた穴がシュルシュルと小さくなっていくところだった。

 回転しながら小さくなっていった穴は、やがてパチッ、という小さな火花を残して完全に消えてしまった。

 ふう。なんとか大きな騒動にならずにすんだか。

 もしこれが別の町に開いていたら、その町の人間がフレイズに襲われていたかも……いや、世界のどこに現れたとしても、アリスやリイルの響命音を追って、真っ直ぐにこの国にやってきただろうな。

 そう考えると次元の歪みがここに開いたのは偶然なんだろうか? 時の流れに流された者の意思に出現場所が左右されるとかってあるのかね? 


「それで……どうするの、アレ?」

「うーん……。どうするか……」


 リーンが子供たちと戯れる(?)フレイズに視線を向けながら僕に尋ねてくる。

 この世界でフレイズが暴れた記憶はまだ新しい。そんなのを引き連れて歩いて、町の人がパニックにならなきゃいいが……。

 そんな懸念をメルたちに話してみると、


「ああ、それなら大丈夫よ。私たち支配種は配下のフレイズを別空間に飼っておけるから」


 というお言葉が帰ってきた。いや、飼うって。


「こう言ったら誤解を招くかもしれんが、支配種われわれにとって下のフレイズどもは支配する種、もっと酷い言い方をすれば道具にすぎない。こちらの世界で言うペットや家畜とそう変わらんのだ」


 ネイがそう説明してくれたが、ペットや家畜は道具じゃないぞ。

 そういえばギラのやつが別空間から下級種を呼び出していたな。支配種が他のフレイズを収納したり、道具扱いしているのは確かなようだ。

 アリスを見ているとそんな感じは一切受けないが。

 まあ、アリスはいろんな意味で本当の支配種とはちょっと違っているからな……。


「お母さん、この子たちに乗っていい!?」

「構わないけど、町の上は飛んじゃダメよ」


 メルが許可を出すや否や、アリスがサメ型フレイズの上に飛び乗った。リイルも久遠も引き摺り上げられている。ステフは自分から乗ったな。だからちょっとは警戒しろと……。


「ステフ、一応【プリズン】を周りに展開しときな」

「わかった!」


 僕のアドバイスに従って、子供たちの乗ったフレイズに【プリズン】が展開する。あれならもしフレイズの背中から落ちたとしても、【プリズン】で地上への落下は防げるからな。透明な箱付きで空を飛ぶって感じだ。

 

「いってきまーす!」


 元気な声を残し、アリスたちが空へと飛び上がる。フレイズを乗り物扱いか……。ジェットコースターのようなアトラクション扱いかもしれないけど。


「ある意味出てきたのが中級種で良かったのかもね。もしも五千年前の世界から支配種がこの時代に来ていたら、面倒なことになっていたわ」


 空を見上げながら呟くリーンの言葉に僕は確かにそれは面倒だな、と思った。


「五千年前にいなくなった支配種とかいないよな……?」


 僕はネイに確認するように尋ねてみる。


「いや、何人かいなくなってはいるぞ。突然響命音がしなくなったので、死んだと思っていたのだが……そうか、こっちの世界に来たという可能性もあるのか」


 ちょっと待て、本当にそんな可能性があるのかよ……。


「いや、何人かの支配種は古代魔法王国時代の英雄と相討ちになっていたはずだ。だから死んだというのもあながち間違いじゃないと思うよ」


 ネイの言葉に眉根を寄せていると、博士からそれを否定するような話が飛んできた。

 なんでも当時の国の英雄とやらが、ほとんど自爆紛いの特攻で支配種と相討ちになったんだそうだ。それにより今のユーロン地方の一部が海岸線からごっそりと抉られたとか。どんな自爆魔法使ったんだよ……。

 というか、そこまでしないと支配種は倒せなかったということか。

 フレイズ、ひいては支配種には魔法は効かない。だからこそ古代魔法王国は手の打ちようがなかったのだけども。

 だからなにかしら魔法じゃない方法を使ったんだろうが……。

 

「その死んだという支配種は何人だ?」

「三人だな。どいつも若く、勝手な奴らだった」


 僕の質問にネイが吐き捨てるように答えた。あんまりいい感情は持っていなかったっぽい。

 こいつらは仲間意識で繋がっていたわけじゃないからな……。ネイとは馬が合わない奴らだったんだろう。まあネイに関してはリセ以外全員と合わなかったみたいだが。

 えーっと……てことは、五千年前にこの世界を襲った支配種は、ユラにギラ、ネイにリセ、レトにルト、+三人ってことか?


「倒されたってボクが聞いたのは二人までだなぁ。数が合わない」

「おいおい、それって……!」

「いや、あのころは本当に大変でね。他の国とまったく連絡がつかない状態でさ。まあ、ほとんどの国が壊滅していたわけだけど……。だからボクの知らないところで倒されていても不思議はないんだよ」


 世界滅亡の手前までいったんだ。そりゃあ情報も入らなくなるか。果たして三人目は本当に倒されたのか、それとも……。

 

「ふん、あやつらの誰が来ようと私たちに敵うわけがない。従うならよし。従わねば砕くまでだ」

「メルたちに従う可能性が?」

「たぶん従わないと思う。ギラといつもつるんでいた奴らだし」


 ネイの言葉から少しの光明を感じたのも束の間、今度はリセの言葉に僕はがっくりと肩を落とす。

 ギラ(アレ)とつるんでいたなんて、もうそれでアウトだろ……。碌な奴じゃなさそうだ。

 僕がそんな懸念を浮かべていると、空の彼方でサメ型フレイズがくるんと宙返りしていた。

 アリスのやつ……無茶な動きさせてからに……。ステフは楽しんでいそうだけど、久遠とリイルは付き合わされて大変だな……。

 まあ今回のことでどうやって過去から魔獣たちがやってくるかよくわかった。これが世界中で多発しているとしたら、かなり面倒なことになっているな。

 時空の歪みができても、なにも飛び出して来ないこともあるんだろうけど、時江おばあちゃんの話だと、動く物の近くに開くことが多いらしいからな……。

 それが小動物や虫とかなら問題ないんだが……。

 大きな歪みやタイムトンネルになりそうなものは時江おばあちゃんが閉じてくれているから、小さなやつをどうにかしたいところだ。


「時江おばあちゃんがこの時空の歪みは次元震の影響じゃなく、邪神の使徒が意図的に起こしているって言っていたけど……」


 ということは、時空に干渉できる能力、あるいはそう言った能力を持つ道具が向こう側にはあるってことだよな?

 それってあれか? ひょっとして向こう側の『金』の王冠の知識から、『黒』の王冠の王冠能力クラウンスキルのようなものを使える道具を作り出したとか?

 時空を操る『黒』の王冠能力クラウンスキルを使えば、理論上、世界を超えたり、時間を移動することも可能なんだそうだ。

 ただそれには代償が凄まじく、クロム・ランシェスが世界を渡ったときには、老人から少年まで若返ったらしい。

 ……これって長命種、エルフとか妖精族が使ったらどうなるんだろう? 使い放題とまではいかないが、何回かは時間移動ができたりするのかね?

 それとも一生の何割、という感じでエルフとかでもごそっと若返ってしまうのだろうか。当然、それをオーバーしていればエルフとて胎児以前まで若返って死ぬかもしれないけど。

 時間に干渉する魔法は高度だから、そうそう自由自在に使えるものじゃないけど、限定的なものなら使えないこともないしな……。僕だって【アクセル】とか使っているし。

 【アクセル】を使い慣れてくると、感覚として周りの時間の動きが遅く感じる。それと同時に思考のスピードも上がるのだ。これは『時間』を多少なりとも操っているとも言える。ま、自分の時間だけだけどさ。

 あ、あと【異空間転移】があったか。アレって世界を飛び越えるだけじゃなくて、熟練すると時間もある程度は自由に超えられるらしい。

 まあ、今の僕では無理だけど……。

 ちょっと考えていることがあって、子供たちが未来へ帰れるようになったら、その前に【異空間転移】で、地球の父さんや母さんに会わせてあげたいんだよね。孫の顔をさ。

 あまりにも早い孫に驚かれるとは思うけど……。これも親孝行の一つかな、と。

 妹の冬花ふゆかは大きくなったろうか。まだ一年も経ってないからそんなに変わらないかな? でも赤ん坊の成長は早いって言うしな……。ハイハイくらいはできるようになったかね?

 妹の成長を確認するためにも、さっさと邪神の使徒を片付けないとな。子供たちと別れるのは辛いけど……。



          ◇ ◇ ◇



「行ってきまーす!」


 サメ型フレイズの背に乗って、久遠とアリス、リイルにステフ、リンネとフレイが城の中庭から空高く舞い上がった。

 すっかりあのサメ型フレイズはアリスのマイカー扱いとなっている。いや、機械じゃないから馬扱い、か?

 町の上を飛んだらダメ、とメルから言われたアリスは、町の人たちに『危険ではないよ』ということを周知してもらうため、サメ型フレイズを横に連れたまま町を練り歩いた。

 初めはおののいていた住人たちも、少しすると慣れてしまい、今ではあまり気にしなくなっているどころか、子供たちが『乗せてー!』とちょっとした人気者だ。

 危険がないわけではないので、子供たちを乗せる時は超低空飛行(五十センチくらい)と言っておいた。

 いつの間にかクーンが【モデリング】で、サメ型フレイズの背中に座席みたいなものを作って取り付けているし……いいのか、あれ。

 名前も決めたらしく、ジン、テキーラ、ラム、ウォッカ……らしい。

 これ絶対あの呑んだくれた酒神の入れ知恵だろ……。

 世界四大スピリッツだっけ? どっかの殺し屋みたいな名前だが……まあフレイズも似たようなもんか。

 そんな中、博士から呼び出しを受けた。なんでもクロム・ランシェスの研究所で発見されたものから新事実がわかったとかで。

 『研究所』に入ると、バビロン博士にエルカ技師、教授プロフェッサーがいた。

 大きなテーブルの上には円筒形のガラスの容器が置かれている。ポリバケツほどの大きさで、中はメロンソーダのような緑の液体で満たされていた。

 そしてその液体の中にはひとつの黄金のパーツが浮かんでいる。


「これってアレだよな? 拾ったゴールドの予備パーツ……」

「予備かどうかはわからないが、おそらく同一の素材でできたパーツだね。前々からもしかして、とは思っていたんだが、やはりこれは魔法生物らしい」


 魔法生物? この金色の金属が? いや、ガーゴイルとかメタルゴーレムとか、石や金属でできた魔法生物もいるからあり得なくはないけど……。


「ゴールドの装甲はスライムにオリハルコンと同じ特性を持たせたものだ。どんな形にもなり、頑丈で、それでいて弾性がある」

「スライム? 前に言ってたオリハルコンスライムってやつか?」


 スライムは古代の魔法生物にして、様々な特性を持つ。世界には多種多様なスライムがいて、それはごく短期で進化するためだ。

 溶岩地帯にマグマスライム、海岸部にマリンスライムのように、環境により進化するものもいれば、ヘドロスライムやメタルスライムのように、食べる物で進化するものもいる。

 また、その扱いやすさから魔法使いや錬金術師が新たなスライムを生み出すことも多い。まあ、こういったスライムは大抵なにかしらのトラブルの原因になりやすいが。

 僕らもそういったスライムに迷惑をかけられた経験がある。女の人の胸に取り付くバストスライムとか、人の頭に落ちてくるのが好きなカナダライスライムとかな……。


「スライムといっても、こいつには自由意志がない。『この形に留まれ』という上位者からの命令にずっと従っているってわけさ」

「なんだよ、それ。それじゃまるで奴隷か道具のような……」

「魔法生物とはそういったものさ。主人に仕える作られた存在。ゴーレムやガーゴイルを見ればわかるだろう?」


 う。確かに博士の言う通り、そういうものが魔法生物だ。どうもスライムなんかは比較的自由に動いていたりするので、魔獣なんかと同じようなものと勘違いしてしまうな。


「シルヴァーの話によると、クロム・ランシェスは『王冠』の代償を魔法生物に肩代わりさせる実験をしていたそうだ。だが魔法生物には代償を受け切れる器がないことに気がついた。ではどうすればいいか? 冬夜君、バケツいっぱいに入った水を小さなコップで受け取ろうとしたら、どうすればいいと思う?」

「え? え……っと、何回か回数を分けて受け取る? あ、たくさんのコップで受け取る?」

「そう、つまりそういうことなんだ」


 いや、つまりどういうことだよ!?

 この場合、バケツの水が『王冠』の代償で、コップが魔法生物か? コップに注ぐ水を何回か分ける……は毎回コップに入った水をなんとかしないといけないから違うか。

 コップをたくさん用意してそれに一つずつ注いで受け取る……。コップをたくさん?


「複数の魔法生物で代償を払う……ってことか?」

「そう。本来ゴレムには契約者マスターは一人。複数の人間で代償を分割なんてのはできない。だけど、主従契約された魔法生物に代償を払わせるという試みはシルヴァーで成功している。なら、複数の魔法生物、それも数多くの魔法生物を利用できたら? その答えがこのスライムなんだ」


 おい、それって複数のスライムに『王冠能力ゴレムスキル』の代償を払わせるってことか?

 ゴールドの機体を作る装甲の一つ一つがオリハルコンスライムだと?


「ビッグスライムという種を知っているね? 一見、大きなひとつのスライムに見えるが、実は何十匹というスライムが融合している群体のスライムだ。そしてこのオリハルコンスライムもその群体なんだよ」

「え!? このパーツ、何匹ものスライムが集まったものなのか!?」


 僕は緑色の液体に浮かぶ黄金の肩パーツに視線を向けた。こんな小さなパーツなのに、何匹も集まってできているのか……? てっきりこれで一匹かと思っていたが……。小さなスライムなら不可能じゃないのかね?


「一体これに何匹のスライムが?」

「スライムの核は一匹に一つ。このパーツにもそれがある。分析の結果、このパーツだけでも約三億ほどの核を内包していた」

「さん……っ……!」


 そのあまりの数に絶句する。この肩パーツだけで三億ものスライムが集まってできているのか!?

 もうそれは細胞と言ってもいいんじゃないだろうか。

 魔法生物の群体金属。クロム・ランシェスがたどり着いたその答えが、緑色の液体の中で怪しい光を放っていた。

 







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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
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新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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