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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
532/637

#532 蘇生薬、そして先代龍帝。





「これ、は……! まさか……まさか! ああ、なんという……!」


 え、なにこの雰囲気……。

 オルファン龍鳳国に来た僕たちは形式通りの挨拶をし、世界同盟に加入する際の注意事項や決まり事などを説明して、依頼でもあった黄金魔薬の回復薬百本を鳳帝陛下に差し上げた。

 その際、素材となる月光樹の雫がこの国でも採れること、それらをもとに他国と交易をすればこの国でも回復薬を作れることなどを話した。

 そして量産型のスマホをいくつか提供して、鳳帝陛下と国のお偉いさんたちに使い方のレクチャーをし終えたところで、すっかり忘れていたあのお土産を渡すことにしたのである。

 価値があるように見せるため、わざわざ桐の箱に入れたそれを鳳帝陛下が開くや否や、蓋を取り落とし、急に取り乱し始めたのだ。

 茫然自失としている鳳帝陛下に代わり、青い礼服を着た中年の宰相さんがこちらも興奮した様子で口を挟んできた。


「こ、公王陛下! これはもしや、鳳凰の尾ではありますまいか!?」

「えーっと、僕らの方ではフェニックスって言ってますけど、多分同じ種ではないかと……」


 紅玉が言うには厳密には違うのだけれど、素材の効果は同じである。ただ、『我らが崇める鳳凰になんということを!』なんてことになるなら、『これはフェニックスです! 別物です!』と言い切る所存です、ハイ。


「これが……これがあれば蘇生薬ができる……! 龍麻たつま様をお救いすることが……!」

「陛下! 蘇生薬は大変貴重な物! おいそれと使っては……!」

「何を言うか! これがあれば龍麻たつま様を救えるのだぞ! おおとりの勝手にはさせん!」

「ふざけるな! 龍の一族には龍弥たつや様を始め、次代の候補がまだおられるではないか! 貴重な薬を無駄にできるか!」

「無駄だと!? 貴様、どの口が言うか!」


 どうやら僕らの方に矛先は来なかったようだが、赤い礼服と青い礼服、おそらくおおとりの一族と龍の一族で、喧々囂々となり収拾がつかない感じになっている。

 鳳帝陛下に至っては涙まで流している始末だ。ちょっとこれは落ち着いてもらわないといかんな。


「あーっと……【サイレンス】」


 僕が消音魔法を発動させると、喧しかった音が全て消えた。

 龍鳳国の人たちも、急に消えた声にパクパクと慌てた様子で僕の方になにか話しかけてくる。


「一旦落ち着きましょう。事情を話していただければ力になれるかもしれませんよ?」


 僕らの方は音は消してないので龍鳳国の人たちには聞こえたはずだ。

 やがて鳳帝陛下がこくこくと頷いてくれたので、【サイレンス】を解く。


「……失礼致しました。お客様の前でみっともないところをお見せ致しまして……。お詫び申し上げます」


 鳳帝陛下が軽く頭を下げる。

 いや、まあそれはいいんですけどね。僕が渡したもので内乱になるとかは勘弁していただきたいので、できれば事情を話していただけないかな、と。


「ごもっともでございます。話は今より十五年も前に遡ります……」


 鳳帝陛下の言うことには、先代の龍鳳帝、つまり龍帝は龍麻たつまという方で、幼い鳳帝陛下も兄と懐いていた賢帝であったそうだ。

 龍の一族と鳳の一族は互いに不可侵な部分もあるが、敵対しているわけではない。当時の龍帝である龍麻と次期鳳帝とされていた現鳳帝、鳳華ほうかは兄妹のように仲が良かった。

 そんな二人の運命が分かれたのは十五年前。龍帝の城である龍宝殿で事件は起こった。

 龍帝龍麻が事故死してしまったのである。突然倒れてきた重い祭壇の下敷きとなって。


「その時祭壇の前にいたのは私だったのです。いち早く気がついた龍麻様が突き飛ばしてくれたおかげで私は助かりました。ですがその代わりに龍麻様はお亡くなりに……」


 かつて蘇生薬はここ龍鳳国にも存在したが、千年以上前を最後に作られてはいないという。作る素材がとてつもなく希少だからだ。

 だが、一縷の復活の望みを託して、鳳帝陛下は龍麻の遺体を保存することにしたという。


「私はそちらで言うところの無属性魔法を使えます。私は【封界】と呼んでおりますが、物の時間を止め、収納しておける力です。といっても小さな物ですが……」


 おお。鳳帝陛下は【ストレージ】が使えるのか。

 西方大陸には『ストレージカード』というゴレムなどを入れておいたりする収納用の魔道具はあるが、これは時間までは止められない。

 鳳帝陛下の【封界】だが、生きているものを入れられないのは【ストレージ】と同じだ。しかし、死体ならば生きてはいないので問題なく入れておける。


「私はどうしても諦めきれなかった。龍麻様の微笑む姿をもう一度この目にしたい。子供ながらに憧れていたのでしょうね。龍麻様に恥じることのないよう、鳳帝としてこの十五年、龍鳳国のために尽くしてきました。と同時に十五年をかけて方々へ遣いの者を出し、少しずつ素材を集めさせました。しかしどうしても最後の一つ、『鳳凰の尾』だけが手に入らなかったのです。ですがそれが今……!」


 なるほど。それであの涙か。兄と慕っていた命の恩人が生き返る。そりゃあ嬉しいよな。

 ぐすっ、と鼻をすする音が聞こえ、横を見たらエルナが、だばぁ、と涙を流していた。ええっ!?


「鳳帝陛下、よがっだね……!」


 いや、エルナさん? まだ生き返ってはいないんだけども。


「ほら、エルナ。涙を拭きなさい……」


 母であるエルゼがハンカチでエルナの顔を拭く。僕にはエルゼも泣きそうになって、なんとか堪えているのがわかった。似たもの親子め。

 で、僕を挟んで彼女らと反対側の、もうひと組の親子の方はというと。


「なるほど。では鳳帝陛下、並びに龍の一族の方々は、作った蘇生薬を先代龍帝陛下に使うおつもりなのですね?」

「ふむ。鳳の一族の方々は、なにかあったときのために、希少なその薬を取っておきたい、と考えていらっしゃるようです」


 ユミナと久遠が冷静に状況を分析していた。こっちも似たもの親子だわ……。むう、もっとお父さん要素を出してもいいんだぞ、子供たち。


「あのとき龍麻様が救けてくれなければ死んでいたのは私でした。今度は私が龍麻様を救う番です」

「しかし陛下……! もしものことを考えるとやはりこの薬を使うのは……!」


 赤い礼服を着た側近さんが鳳帝陛下に口を挟む。この人も鳳帝陛下と同じ鳳の一族だから、鳳帝陛下にもしものことがあったらと考えているのだろう。

 ん? 『もしものこと』がある可能性があるのか?

 僕がそんな疑問を考えていると、ユミナがチラリとこちらを見る。


「冬夜さん」

「ん? ああ、わかってるよ」


 僕は【ストレージ】の中からひとつの小さな薬瓶を取り出す。中には青く透き通った液体が満たされている。


「これは……?」

「蘇生の魔法薬ポーションです」

「えっ!?」


 龍鳳国の皆さんの目がテーブルの上に置かれた小瓶に集中する。まあ、そうだよね。渡した素材の完成品が目の前にあるんだからさ。


「どうぞ、差し上げます」

「えっ!? い、いいんですか!?」

「ええ。世界同盟の加入特典です。一本だけですけどね。他の国にも配ってますので、ご遠慮なく」

「あっ、ありがとうございます……!」


 鳳帝陛下は小瓶を胸に抱き、涙を流しながら深く頭を下げる。

 本来ならもう少し付き合ってから渡したいところだったけど。ユミナも魔眼で確認したから僕に促したんだろうし。見た目通り悪い人じゃないんだろう。


「ブリュンヒルド公王陛下。ここまでお気遣いいただいた上に不躾で申し訳ありませんが、なにとぞ龍麻様の蘇生をお手伝い願えませんでしょうか? 陛下は回復魔法が使えるとお聞きしております。龍麻様のお身体の傷を癒していただき、その上で蘇生の儀に入りたいと思うのです」

「え? まあ、それは構いませんが……」


 鳳帝陛下の頼みを僕が引き受けると、一気に周りが騒がしくなる。特に青い礼服を着た龍の一族の人たちが慌ただしく動き始めた。


「なにが起こるかわからん、医術師と薬師を呼べ! 結界師もだ!」

「龍宝殿に遣いを走らせろ! 龍弥たつや様を呼んでこい!」

「赤翼の間を空けろ! 儀式が終わるまで誰も近寄らせるな!」


 上を下への大騒ぎの中、僕らは別室へと連れて行かれた。準備が整うまで待機ってことだな。

 別室で出されたお茶を飲んで寛いでいると、龍の一族の宰相さんがやってきて、改めて僕たちに深々と頭を下げてきた。


「この度は本当にありがとうございます……! 龍麻様、並びに龍の一族を代表して感謝の意を……!」

「ああ、えっと、まだ成功したわけじゃないんで、そこまでされると……!」


 蘇生薬が効かなかった場合のことを考えると、正直言ってプレッシャーが半端ないんでやめてほしいのだが。

 僕が困っていると、くいっ、と不安そうなエルナに袖を引かれた。


「蘇生薬でも生き返らない場合ってあるの?」

「ああ、可能性としてはゼロじゃない。まず、遺体の状態が完璧じゃなかった場合。外見的には無傷でも、内部に酷い損傷があった場合は蘇生はしない。正確にいうと蘇生して即死、ということだけど。次にすでに蘇生した経歴がある場合。蘇生薬と言っても、何回も生き返れるもんじゃないんだ。それと、これが一番ありえるんだけど、なんらかの理由で魂がすでに肉体に留まっていない状態だったときだ。魂がなければ蘇生薬はなんの効果もなさない。そんないくつかの可能性が、ね」


 エルナに説明すると同時に宰相さんにもその可能性があることを理解してもらう。

 これで蘇生しなかったら、なんかものすごく申し訳なくなるじゃん……。

 身体や臓器の外傷は回復魔法で完全に治せるはずだ。事故に遭い、亡くなってすぐに収納魔法を使ったそうだから、魂が抜けているということもないと思う。

 先代龍帝が一度蘇生した経験がある、ってなことがなければ、問題なく蘇生できると思うんだけれども。

 実はその他にも蘇生しない可能性がある。それは死んだ時に恨みなどを残してやしないかということ。

 誰かを恨んだり憎んだりして亡くなると、魂が亡霊レイスとなって身体から離れてしまう。そうなっていると当然ながら蘇生は無理だ。肝心な魂がどっかへ行ってしまってるんだから。まあ行き先はうらみつらみのある人物のもとだろうけれど。

 鳳帝を助けようとして亡くなったのだから、恨みなんかはなかったと思うけどな。ただ、なにかの無念とか心残りで魂が抜けてしまうこともあるからさあ……。

 それだけ肉体が死ぬと魂は離れやすいのである。綺麗に離れれば成仏だが、魂がかけらを肉体に残して誰かを恨みながら抜けると、肉体の方はゾンビとなり、魂の方は亡霊レイス死霊スペクターとなるわけだ。


「そういえば気になっていたのですけれど、龍弥たつや様というのはどなたですか?」


 久遠がお茶を飲みながら宰相さんに尋ねた。ああ、僕もちょっと気になっていた。会話に中に何度かその人の名が出てきたけど。


「龍弥様は先代の龍帝である龍麻様の弟君に当たる方で、次代の龍帝候補のお一人です」


 先代龍帝の弟か。まあそれなら、いの一番に連絡するわな。

 宰相さんの説明にエルゼが首を傾げる。


「候補の一人ってことは、次の龍帝は決まっていないってこと?」

「はい。龍鳳帝は龍の一族、鳳の一族の名家、合わせて十家から選ばれるのですが、恥ずかしながら我ら龍の一族五家の足並みが揃っておらず……。しかし、先代龍帝である龍麻様が戻られるならば、もう一度帝位に就いていただきたいと我らは思っております。それならば五家も文句はないかと」


 先代龍帝の龍麻様ってのは、よほどの賢帝だったんだろうなあ。鳳帝陛下だけじゃなく、家臣にここまで慕われているとは。


「しかし、帝位に就くといっても今の鳳帝陛下は?」

「鳳帝陛下は龍麻様の死に責任を感じて帝位に就いたのです。その重き責より解き放たれれば、龍麻様に帝位を譲ると前々から申しておりました」


 あ、そうなんだ。鳳帝陛下は辞める気満々なんだね……。

 そうなるとさっきの鳳の側近さんたちの態度はちょっと気になるな。

 龍麻帝が復活してしまうと、鳳帝陛下が帝位を明け渡してしまうから、復活されては困る、と考えて蘇生薬の使用を渋ったのではないか……なんて邪推をしてしまう。

 ……まあ、あまり人を疑うのもよくないか。純粋に鳳帝陛下の身を案じてのことだったのかもしれないし。

 僕がお茶を飲みながら反省していると、部屋の扉が開き、赤い礼服の男性が入室してきた。


「準備が整いましてございます。どうぞこちらへ。ご案内致します」


 復活の準備ができたらしい。よし、じゃあ行くか……っと、子供たちはどうするかな?


「ユミナ、エルゼ。子供たちとここで待っていてくれるかな?」


 さすがに子供らに死体を見せるのもどうかと思うし、生き返らない可能性もあるからな。龍鳳国のみんなが絶望する、そんなショッキングな場面を見せたくないってのもある。


「わかりました。ではここでお待ちしてます」

「気を付けてね」


 僕の考えを察してくれた二人は残ってくれるようだ。よし、じゃあ行くか。

 紅玉だけを連れて、案内人の後についていく。赤い柱の立ち並ぶ廊下を抜けて奥の奥にいくと、やがて瀟洒な作りの部屋の中へと案内された。


「お待ちしておりました、公王陛下。全て準備は整っております」


 部屋にいた鳳帝陛下が頭を下げる。その前に設置された寝台の上には、一人の青年が横たわっていた。この青年が先代の龍帝か。

 年の頃は二十代半ば。青い豪奢な長衣を着て、黒く長い髪を後ろで結んでいる。身長は高い。整った顔立ちをしているが、その額の横からは未だ生々しい傷があり、血が滲んでいた。これが死因か? 祭壇の下敷きになり、頭を強打したのかな?

 鳳帝陛下の【封界】から出され、もうすでに彼の時間は再び動き出している。ぐずぐずしている暇はない。さっそく処置に入ろう。

 まずは『神眼』で遺体にあるべき魂を見抜く。

 胸のあたりに綺麗に光り輝く丸い物が見えた。身体から抜け出そうと揺れ動いてはいるが、どこも欠けてはいない。魂に損傷はないようだ。

 ふう。これが一番の気がかりだったから一安心だ。


「それじゃ、と。【光よ来たれ、女神の癒し、メガヒール】」

「おお……!」


 周囲の者たちから驚きの声が上がる。龍麻帝の身体が光に包まれて、燐光を放つ。側頭部にあった傷がみるみるうちに修復され、肉体の損傷は完璧に治った。


「傷が消えた……!」

「これで肉体的損傷は治りました。あとは蘇生薬で魂を身体に定着させるだけです」

「はい……!」


 鳳帝陛下が龍麻帝の首を僅かに抱え上げ、蘇生薬の小瓶の蓋を外す。


「戻ってきて下さい、龍麻様……!」

 

 龍麻帝の口に蘇生薬をゆっくりと注ぎ込む。この薬は体内に入りさえすればいいので、嚥下する必要はない。なんなら鼻から流し込んだって効果はある。

 蘇生薬はすぐさま体内に取り込まれ、魂の定着と肉体の覚醒を促す……はずだ。僕も蘇生薬で人が生き返るのを見るのは初めてなので、どれくらいで目覚めるとかまでは知らない。

 『錬金棟』のフローラの話だとそれほどかからないという話だが……。


「龍麻様……! どうか……!」


 鳳帝陛下も周りの人達も固唾を飲んで寝台の青年を見守っている。こっちも失敗しやしないかと気が気じゃない。蘇るなら早いとこ頼みます! プレッシャーが半端ないんで!


「見ろ! 龍麻様の顔色が……!」


 やがてだんだんと青白かった龍麻帝の肌に赤みがさしてきた。ぴくりと目蓋が僅かに痙攣する。


「龍麻様……!」


 鳳帝陛下が支えていた頭を静かに下ろし、見守っていると、


「こふっ……!」

「おおっ!」


 小さく咳をするようにして、龍麻帝の全身が動いた。その後何度か小さな咳を繰り返した龍麻帝の目がゆっくりと開かれる。


「……ここはどこだ? 私はいつの間にこんなところに……?」


 龍麻帝が声を出した瞬間、部屋の中でこれでもかとばかりの歓声が沸き上がる。龍の一族、鳳の一族みんなが涙を流して喜んでいた。よほど慕われていたんだな……。


「龍麻様!」


 鳳帝陛下が感極まったのか、寝ている龍麻帝に覆い被さるように抱きつく。


「なっ!? ちょっ、ちょっと待ってくれ! 君は誰だ!?」

 

 顔を真っ赤にさせた龍麻帝の言葉に、あれだけ沸いていた部屋の中がシン……、と静まり返る。まさか記憶を失ったとか!?


「私です! おおとり鳳華ほうかです!」

鳳華ほうか? 馬鹿を言いなさい、鳳華は十にも満たない少女だぞ?」


 その言葉に周囲の人たちがホッとすると同時に、笑い出した。彼が亡くなって十五年も経っている。子供が成長するには充分すぎる時間だ。そりゃすぐにはわからないか。


「そうだ、鳳華は!? 確か祭壇が落ちてきて……!」

「ですから! 私が鳳華です! 龍麻様は私を庇ってお亡くなりになり、十五年後、蘇生薬で復活されたのです!」

「なにを馬鹿な……。待て、そこのお前……まさか龍山りゅうざんか? なんでそんなに老けているんだ?」


 龍麻帝は鳳帝陛下の横にいた、宰相さんに視線を向けて、目を丸くしている。

 宰相さんは四十ちょいくらいか。龍麻帝が死ぬ前なら二十代後半だったろう。ある程度大人になっていれば、年を重ねてもそこまで変化はないか。


「あれから十五年も経てば自分も老けますぞ。同い年であった陛下がまさか歳下になるとは……。ははは、また老け込みそうですわい」


 宰相さんが笑いながら涙を流している。同い年だったのか。友人だったのかな。


「まさか……十五年後というのは……本当なのか?」

「これからそれをきちんと説明いたしますわ。だから落ち着いて下さいまし」

「……わかった」


 蘇った龍帝は神妙な顔をしつつも、こくりと小さく頷いた。

 ふう。なんとか問題なく復活の儀式は終わったか。ここからは龍鳳国の問題だからあとは任せることにしようかね。

 


 






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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
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新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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