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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
526/637

#526 忍び寄る悪夢、そして古の魔獣。





 西方大陸の東、聖王国アレントの隣にキュリエラ王国がある。

 かつては大陸の最東に位置し、聖王国アレント、ランジェ王国に跨る長く高い山脈によって、貿易といえば飛行船によるわずかばかりのものか、船による北のパナシェスとの交易しかなかった。

 しかし新大陸が発見されたことにより、キュリエラ王国は一気にリーフリース、ベルファスト、ミスミドという交易相手を見つけることになる。

 海を挟み、そう遠くないところに突然取引相手ができたのだ。キュリエラ王国にとってこのことはプラスに働いた。

 こちらからは魔工学とゴレムの技術を。あちらからは魔法の技術と魔道具を。

 また、西方大陸にはない文化や芸術、食物など、取り引きしたい物は山ほどあった。

 キュリエラ王国は大交易時代へと突入したのである。

 東方大陸の交易品はキュリエラ王国に集まり、それを求めて西方の国々の商人が険しい山麓を越えてわざわざやってくる。西から東へ、東から西へ。物を移動させるだけでキュリエラ王国は富を築いていく。

 キュリエラの商人たちは皆、次々と大型船を作り、成功を夢見て東方大陸へと渡った。二大陸に渡るその海には巨大な魔獣が潜む海域もあったが、商人たちの野望の前には関係ないらしい。

 何隻かの船が海の藻屑と消えたが、それでもなお、船は出港していく。

 キュリエラ王国の東にある湾岸都市アルプリスも、そういった商人たちが集まり、賑わいを見せている町のひとつだった。

 そんな港町が今、大混乱の坩堝るつぼと化している。

 突然海から現れた半魚人の群れに襲われているのだ。

 いや、半魚人だけではない。四つ腕の細身のゴレムと、四メートルはある岩巨人も海から現れて攻撃を仕掛けているのだ。

 半魚人たちは人間たちを襲い、四つ腕のゴレムたちは町並みに火を放つ。岩巨人たちは目につく物全てを破壊していった。

 繁栄の真っ只中にあった港町に悪夢のような光景が広がっていた。

 アルプリスを守る警備ゴレムや騎士団が襲撃者たちを撃退しながら町の人たちを避難させる。

 しかしあちらこちらに火の手が回り、すでにアルプリスはどうしようもないところまで追い詰められていた。

 理不尽な力による蹂躙に、人々の絶望の声が高まっていく。

 その逃げ惑う人々を、二対になった高い鐘楼の屋根の上から見下ろす人物がいた。


「いいね、いいね。燃え上がる炎、破壊される町並みに、こだまする断末魔。最高だねぇ」


 鐘楼に立っていたのは灰色の髪をなびかせた少年である。

 顔の下半分が鉄のマスクで覆われていて見えないが、少年の目は明らかに嗤っていた。愉悦の光を湛えたその双眸には燃え盛るアルプリスの町が映っている。

 少年は冒険者風の衣装と紫紺のマントを身に纏い、その手には異様な形をした槍を持っていた。石突と口金にギョロリとした目玉の意匠がついた、不気味なメタリックパープルの槍である。


「さあ、『ウィスタリア』。御馳走だぞ」


 少年が槍を頭上に突き上げると、町の至る所から黒いモヤが立ち上り、吸い込まれるように槍に捕食されていく。

 黒いモヤは混乱して逃げ惑う人々から立ち上っていた。通常の目には映らないそれを抜き取られた人間は、その場でパタパタと倒れていく。

 生きてはいる。しかしその目からは生気が失われていた。

 黒いモヤを吸い取ったメタリックパープルの槍、邪神器『ウィスタリア』は輝きを増していく。


「そーら、よっと!」


 鐘楼の上にいた少年が槍を一閃する。するとその先端から放たれた幾万ものいかづちが、港に停泊していた船を全て粉々に破壊した。


「くはははは! けっこう吹っ飛んだなぁ! んじゃ次はっと」

「いつまで遊んでいるんです、オーキッド。そろそろ引き上げなさい」


 いつの間にか少年の背後に潜水ヘルメットをした別の男が立っていた。腰には深青の手斧ハチェットをぶら下げている。


「なんだよ、インディゴ。今いいところなんだけど?」

「町の破壊ではなく、あくまでも人間の負の感情を集めることが目的なのですよ?」

「わかってるよ。だからこうしてちゃんと集めているじゃないか」


 オーキッドと呼ばれた少年は手にした紫槍ウィスタリアを潜水ヘルメットに振って見せた。

 先ほど邪神器が吸い取っていたものは人間の持つ負の感情である。正確に言えば、恐怖心だ。

 怒りや憎しみ、悲しみや苦痛といった負の感情の中で、一番他人から簡単に与えられるのが恐怖である。これは生存本能からくる自衛の感情であるため、逃れることが困難であり、誰でも心を支配されやすいものであった。

 邪神器に心を喰われた人間は生きる屍となる。心を、魂を失えばそこにあるのはただの抜け殻だ。


「あまりこういった集め方は感心できないのですがね」

「わざわざ薬漬けにしなくたってこっちの方が手っ取り早いじゃないか。インディゴのやり方は面倒くさいよ」

「あれはあれで高純度のものを手に入れられるんですよ。恐怖は魂を刹那的にしか侵食しない。魔薬によってじわじわと負の感情を積み重ね、絶望に向けて染めていった方がより高純度な……」

「あー、はいはい」


 オーキッドはインディゴの話を無視した。この男は元神父だからか、説教臭いところがある。


「目的を達したならさっさと引き上げますよ。国の騎士団が出てくると厄介ですからね」

「出てきたら出てきたで面白いんだけどなぁ」

「いくら貴方が強くても、国家を相手取るには戦力が足りないんですよ。()()()()、ね」

「ちぇっ、つまんねーの」


 二人の足元に青い泡が波打ち、とぷん、と水に落下するようにして姿が消える。

 それをきっかけにしたかのように、半魚人や四つ腕ゴレム、岩巨人が町への攻撃をやめ、再び海へと引き返していった。

 後に判明したことだが、その後何人かの怪我をした町民たちが変異を起こし、半魚人と同じような姿となって海へと消えたそうである。

 アルプリスの町は壊滅。皮肉なことに西方大陸には冒険者ギルドがまだ一部にしかなく、さらにキュリエラ王国は世界同盟にも不参加だったため、この情報が世界中に伝わるまでしばしの時間がかかった。

 


          ◇ ◇ ◇



「コンサートホールか……」

「旅の吟遊詩人や音楽家を招いて演奏してもらう。ブリュンヒルドを通る人たちにとって一時の娯楽にもなる」

「ふむ。悪くはないと思います」


 桜が提案してきた話に宰相の高坂さんは乗り気みたいだ。確かに今だと酒場と中央公園ぐらいしか演奏するような場所がないもんな。

 酒場は酒場でライブ会場のような賑わいが楽しかったりもするんだが。

 さっそく高坂さんは場所決めのために、建設主任の内藤のおっさんのところへと行ってしまった。相変わらず仕事が速い。おかげさまで助かっているのだけれど、休みとか取ってるのかな? 今度無理にでも休暇を取らせないと。


「しかしまた、突然どうしたんだ? コンサートホールなんて」

「ヨシノに聞いた。未来じゃ私とそこで一緒に何度も演奏したんだって」


 なんだ、そういうことか。察するにヨシノがポロリと漏らしたんだな。ということは遅かれ早かれコンサートホールができるのは決定してたわけか。

 僕が納得していると、その本人ヨシノが僕らのいた執務室に突然現れた。だから【テレポート】で横着するなというに。


「とうさま! かあさま! これ見て! 博士にもらったの!」


 そう言ってヨシノが僕らの前に差し出したもの。それは一本のギターであった。普通サイズのギターではなく、少し小さめに作られた子供用のギターといった感じのものだ。

 というか、ちょっと驚いたのはそれは見るからにエレキギターだった。ストラトキャスターかよ。

 確か新婚旅行で桜が楽器関連の書物も買ってたな。何点か楽器も買ってたけど……。博士のやつ、それを参考にしたのか?

 ヨシノがピックでギターを鳴らす。アンプもないのに周りになかなかの音量でギターの音色が響き渡った。ただのエレキギターじゃない。魔道具だろ、これ。【スピーカー】の魔法が発動してるし。

 ヨシノは楽しそうにギターを掻き鳴らしている。いや、ちょっとうちの子、凄くない? 僕はギターは門外漢だが、この演奏が凄いのはわかる。

 ん? このイントロは……。

 この曲って……あの曲か? なんでヨシノがこの曲を知ってるんだろう。未来で僕か桜から聴いたのかな?

 ロック史上最高のギタリストと名高いミュージシャンが率いたバンドの代表曲。彼は二十七歳でこの世を去ったが、その存在は後世のミュージシャンに多大な影響を与えた。……ヨシノは歯で演奏したりしないよね?

 まるでその曲のタイトルのように、紫の煙がヨシノに纏わりついているように見えるが、これって魔力か?

 歌い出しに入ったと思ったらヨシノじゃなく桜が歌い始めた。お母さんが歌うんかい!

 千変万化の桜の声が、歌に合わせたハスキーでブルージーなものに変わる。いつもながら迫力が凄い。

 ヨシノが弾くギターに僕もリズムを刻んでしまう。この曲は爺ちゃんが好きだったからよく聴いていたしな。


「『演奏魔法』で弾くギターも楽しいけど、やっぱり本物の方が楽しい!」


 一曲弾き終わるとヨシノがそんなふうに満足げに笑った。

 『演奏魔法』は楽器の擬似体を呼び出して音楽による魔法を放つものだ。桜の『歌唱魔法』と同じ効果がある。ヨシノは歌うより演奏する方が好きなんだな。

 コンサートホールができたらそこでこの二人の演奏と歌を聴きたいが、ヨシノがいる間に完成は流石に無理かな。

 バビロンの力を使えば作れなくもないんだけど、工事の人たちの仕事を奪うことになるからな。そこらへんは自重してる。

 ま、未来で聴くのを楽しみにしておくか。


あるじ。今、大丈夫でしょうか?』

「ん? 琥珀か?」


 僕が未来へ思いを馳せていると、琥珀から念話が届いた。


『冒険者ギルドの方でちょっと問題が。久遠様とアリス殿が少し面倒なことになっております』

「え?」


 冒険者ギルドで? なんで久遠とアリスが?

 よくわからないが、何やら面倒なことが起きたらしい。

 とにかく行ってみよう。僕は冒険者ギルドへ向けて【ゲート】を開いた。



          ◇ ◇ ◇



 【ゲート】を抜けて冒険者ギルドへとやってくると、なにやら騒がしい。いつもなら隣の酒場でくだを巻いている冒険者たちまで、なぜかカウンター奥にある方へと集まっているのだ。たしかあの先は解体場だったはずだが。

 僕がその冒険者たちの人混みを掻き分けてカウンターまで行くと、そこにいた受付嬢で猫の獣人であるミーシャさんが僕をこっちこっちと手招いた。


「いったいなにがあったんです?」

「その、それが……。えっと、見てもらった方が早いと思います。こっちに」


 僕はミーシャさんに連れられて、カウンターの中から解体場へと通された。

 冒険者ギルドの奥は討伐されたモンスターの解体場になっている。通常、冒険者ギルドの解体場はそこまで大きくない。なぜなら大型の魔獣なんかを倒したとしても運び込むことが困難だからだ。

 大抵は現場まで行き、そこで解体するか、向こうで部分的にバラしたのを荷車に載せて持ってきたりする。

 しかしブリュンヒルドの解体場はそれなりに大きくできている。それは僕やエンデのような収納魔法を使える者が多いからであった。八重たちも収納魔法が付与されたスマホを使っていたりするからな。

 さらにいうなら、同じスマホを持つ、『紅猫あかねこ』のニアたちや、黒の『王冠』ノワールのマスター、ノルンなどもいるので、かなりのスペースを作ってあった。

 そして今、その広い解体場のほとんどの場所を埋めるように、一体の魔獣が横たわっている。

 見た目は巨大な狼だ。しかし翼が生えている。尾は蛇で黒曜石のような黒い毛並みをしている。

 当然ながら白い目を見せて、でろんと舌を出したその姿からは生命の息吹は感じられない。

 解体場の作業員と共に、ギルドマスターのレリシャさんと、困った顔をして壁際の椅子に腰掛ける久遠とアリスの姿が見えた。足下には琥珀とシルヴァーもいる。


「ああ、陛下。来てたのですね」

「すみません、うちの……親戚の子たちがなにかしましたか?」

「なにかしたというわけではないのですが……、いや、充分になにかしてはいるのですが……」


 レリシャさんが苦笑する。向こうもなんと答えたらいいのか迷っているようだった。


「すみません、ちちう……陛下。僕とアリスで魔獣を狩ってちょっとお小遣いを稼ごうと思ったのですが、北の森の中でこの魔獣に突然襲われまして。まあ、さほど強くはなかったので、なんとか倒せたのですが、冒険者ギルドに運び込んだら、なんか騒ぎになってしまって」


 有能な息子さんがわかりやすく説明してくれた。あ、やっぱりこれ倒したの君らか。


「こんな魔獣見たことないな。っていうかブリュンヒルド近辺にこんなのいたか? レグルス辺りから流れてきたのかな……」

「いえ、この魔獣は普通の魔獣ではありません」


 僕が改めて翼のある狼を確認していると、レリシャさんが古めかしい羊皮紙の本を開き、説明してくれた。

 その本にはここに横たわる狼の魔獣そっくりの絵が描かれていた。しかし文字は読めない。古代語か?


「この魔獣の名はマルコシアス。鋼の体毛を持ち、口から火を吹く凶悪な魔獣で、その強さは現代で言えば銀ランクレベルになります」

「へえ……。ん? 現代で言えば?」


 レリシャさんの奇妙な言い回しに僕は違和感を感じて本から顔を上げた。


「このマルコシアスという魔獣は、今から3000年ほど前に絶滅したと言われている……いえ、言われていた伝説の魔獣なのです。それが持ち込まれたことに我々は驚いていたわけでして」


 え!? こいつ絶滅種なの!? 

 ひょっとして久遠たちが生き残っていた最後の一匹を殺しちゃったとか?

 ま、まあ地球だったら種の保存だとかなんやらで非難されてもおかしくないかもしれないが、ここは別世界。絶滅させた方がいい魔獣なんぞ山ほどいる。ゴブリンとかオークとかな。凶悪な魔獣らしいし、そこらへんは問題ないと思うけど……。


「それでその……なにか問題が?」

「その、素材の価格がですね、つけられないんですよ。絶滅した魔獣の素材なんて、どれほどの値をつけたらいいか想像もつきません。なので、買い取りが難しく……」


 あー、そういうことか。前例がないから価格がつけられないわけだ。かといって、冒険者ギルドとしては見逃すには惜しすぎる素材。それで悩んでいたのか。


「冒険者ギルド主催のオークションに出品するってのは……?」

「とんでもない額がつきそうですが、それしかないと思います。ただ、オークションの場合、未成年では出品できませんので……」


 ちらりとレリシャさんが椅子に座る二人を見遣る。ああ、そっちの問題もあったか。

 それに対しては久遠から提案が出される。


「では陛下名義で出品していただければ。僕らは多少のお金が手に入ればいいので」

「え? いいのか?」

「ええ。アリスもいいよね?」

「いいよー。そんなにもらってもどうせ使い道ないし」

 

 いや、君らが稼いだお金を懐に入れる気はないけどな。預かってはおくけど。ユミナとエンデがな。

 とりあえず先払いとして久遠とアリスに金貨一枚ずつ手渡しておく。小遣いに十万円って今更ながら金銭感覚おかしいよな。


「で、こいつは確かに北の森にいたんだな?」

「はい。初めは森の入口で魔獣を狩ろうと探していたのですけどなかなか見つからなくて。少し奥に行ったら突然襲われました。たぶんこの魔獣を恐れて他の魔獣がいなくなったんだと思います」


 銀ランククラスといったら下手すりゃ上位竜レベルだ。そんな魔獣が町の近くにいたことに危機感を覚える。

 しかしブリュンヒルド周囲の安全は常に紅玉配下の鳥たちが監視しているはずなんだが……。報告漏れか?

 なんにしろ偶然久遠たちが見つけて助かったな。ひとつ間違えば住民に被害が及んでいたかもしれないわけだし。

 世界が統合されてからいろんなところに魔素溜まりが出来て、巨獣、もしくはそれに準ずる魔獣が生まれつつある。

 その巨獣から逃げるようにして集団暴走スタンピードなどが起こっているんじゃないかとレリシャさんも言ってたしな。

 もしかしたらブリュンヒルドで集団暴走スタンピードが起きていたかもしれない。と考えると、これはやはりラッキーだったのだろう。


「琥珀。町周辺にいる動物たちにおかしな魔獣や異変がないか確認を頼めるかい?」

『御意。すぐに探索に向かわせましょう』


 うん。まさかとは思うけど、同じ個体が他にいないとも限らない。つがいとか親子とかな。

 この個体がこの時代まで生息していたということは、ひょっとしたら同種族がいるのかもしれない。

 だけど動物じゃなくて魔獣だからなあ。魔物とかでもそうだけど、別に同じ種じゃなくても生まれる可能性もあるしな。ゴブリンなんかそうだし。

 このマルコシアスとやらも、例えば狼の雌との間になら次代もマルコシアスが生まれるという生態なのかもしれない。


「ねえねえ、陛下。ボクたちもう行ってもいいかなあ。久遠とお茶してきたいんだけど」


 僕が魔獣の生態について考え込んでいると、アリスがここにはもう飽きたように話しかけてきた。


「わかった。ここは僕が引き継ぐからもう行ってもいいよ」

「やった! じゃあ陛下、これ預かってて! 久遠、行こっ!」

「え? ちょっ、アリス……!」


 アリスはそう言うと鞘に収まったままのシルヴァーを僕の方へ放り投げて、たじろぐ久遠の手を引き、あっという間に冒険者ギルドから消えていった。


『おいコラ、このちんちくりんがー! あっしを邪魔者扱いしやがって、こんちくしょー! 旦那、放して下せえ! 坊っちゃんが毒婦の手に落ちてもいいんですかい!?』

「いや、毒婦て。お前、それあの子の親父の前で言うなよ? 折られるからな?」


 手の中で暴れるシルヴァーに呆れつつ、これはどうしたものかと思案する。せっかくの(?)デートにお邪魔虫は不要だよなあ。まあ、デートかどうかも怪しいけれども。ユミナに相談した方がいいんだろうか?

 

『ちぇい!』

「あ」


 悩んでいたらシルヴァーが鞘からスラリと抜けて、本体だけ出口の方へ飛んでいってしまった。突然飛んできた剣に冒険者の皆さんがパニックになる。

 逃げられてしまった。後でアリスに文句言われそうだな……。


「陛下、あの剣はいったい……?」

「ああ、お気になさらず。じゃあ、オークションの手続きをしましょうかね」


 面倒だったのでレリシャさんの質問はスルーさせてもらった。シルヴァーについては僕もよくわからんしな。

 あれ? そういやあいつ、クーンが調べてたんじゃなかったか? ……ま、いいか。

 







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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
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