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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
523/637

#523 王子帰還、そして銀の王冠。





 鉄鋼国ガンディリスから頼まれたトンネルも無事堀り終わり、僕らはブリュンヒルドへと帰還した。

 と言っても、クーンや博士、エルカ技師に教授プロフェッサーなどは、ギガンテスを分析するために地下都市アガルタに残っている。

 ガンディリスのゴレム技師たちも何人か地下都市に集まっていたが、ゴレム技師の最高峰である五大マイスターの二人がいることに驚いていたな。


「やれやれ、酷い目にあった……」

「お疲れ様でした」


 リビングのソファーにもたれて脱力していると、ユミナがお茶を淹れてくれた。

 子どもたちはギガンテスの戦いに触発されたのか、フレームユニットで対戦して遊んでくると遊戯室へ行ってしまった。

 エルゼ、ヒルダ、八重がついていったから大丈夫だろう。アリスと一緒にエンデもついて行ったしな。


「しばらく離れていたけれど、子どもたちもずいぶんと集まったのね」


 同じくユミナにお茶を出された時江おばあちゃんがゆっくりとそれを飲みながらソファーで微笑んでいた。

 時江おばあちゃんはしばらく神界の方に行っていたらしい。本来ならこの世界の結界を修復すべき身の上なのに、なにかあったのだろうかと思ってはいたのだけれど。


「来ていないのはあと二人ですね。ユミナとの息子とスゥとの娘。……全員揃ったら子どもたちは未来へと帰ってしまうんですよね?」

「そのことなんですけどね。ちょっと面倒なことになっているの」


 時江おばあちゃんは苦笑するように微笑み、湯呑みをテーブルへと置いた。

 面倒なこと? まさか……未来へ帰せないとか?


「ああ、そういうことじゃないの。未来へと返すだけなら問題ないの。あの子たちが元いた時間軸の世界へ無事に帰すことはできるわ。ただ、私たちの方でちょっと事情があってもう少しここにいてもらえないかと……」

「事情?」

「ごめんなさい。今はまだ言えないわ。もう少し調べて、はっきりとしたらあらためて話すから」


 困ったような顔をして時江おばあちゃんはまた湯呑みに口をつけた。むむむ、またなにか厄介事の予感……。『邪神の使徒』だけでも面倒なのに、これ以上なにか起こってほしくはないなあ。

 僕が嫌な予感をビンビンと感じていると、懐のスマホが着信を告げた。


「あれ、ザナックさんからだ。珍しいな?」


 服飾店『ファッションキング・ザナック』のオーナーであるザナックさんは、僕らの結婚式でウェディングドレスを作り、一躍その名を世界中に轟かせた。彼はすぐさまウェディング部門を作り、各国の王侯貴族に売り込みを開始、そのウェディングドレスは飛ぶように売れているという。

 忙しすぎて、結婚式後はほとんど連絡なんてなかったんだが。なにかあったのだろうか?


「はい、もしもし?」

『もしもし。公王陛下でいらっしゃいますか。えーっとですね、え? 代わってくれ? でも……ああ、うん、失礼のないように頼むよ? すみません、ちょっと代わります』


 なにやら向こうで別の人と話しているようだ。代わるって誰に?


『もしもし。お電話代わりました、えーっと、望月久遠です。わかりますか?』

「んなっ!?」


 ザナックさんの代わりに聞こえてきたのは声変わりもしていない男の子の声。久遠? 望月久遠って言ったか!?


『あのー、聞こえてますか?』

「あっ、はい!? 聞こえてます! あの、本当に久遠なのか……!?」

『はい。間違いなく。運良くザナックさんとレグルスで出会いまして、電話をしていただきました。僕のはちょっと……無くしてしまったので」


 この子が久遠……。僕の息子? なんかずいぶんと大人びた話し方だけど……。

 僕が聡明な子だと喜ぶべきか、子供らしくないなと嘆くべきか判断に迷っていると、隣にいたユミナに強引にスマホを引ったくられた。


「もっ、もしもしっ! 久遠、久遠ですか!? お母さんです! わかりますか!?」


 ええー……。ちょっと、ユミナさん、それはなくない? 僕が話してたのに……。

 ユミナからスマホを取り返そうとするが、彼女から巧みなディフェンスを受ける。バスケやってんじゃないんだから。


「ええ、ええ。わかりました。そこにいて下さいね!? 動いちゃダメですよ!」


 そう言うとユミナは無情にもスマホの通話をぶった切った。ちょっ、なんで切るのさ!


「冬夜さん! レグルスの帝都です! 中央区の乗合馬車の駅前! すぐに迎えに行きましょう!」

「え? ああ、そうか、その方が速いか……」


 電話じゃなくても直接話せばいいんだ。場所さえわかれば転移魔法で跳んでいける。

 時江おばあちゃんを見ると小さく頷いている。よし、じゃあ一人息子を迎えに行くか。


「【ゲート】」


 【ゲート】の扉が開くや否や、僕よりも速くユミナがそこへ飛び込んでいった。え、ちょっとユミナさん、慌て過ぎじゃないっスかね?

 部屋に残るみんなに後を頼んで僕も【ゲート】をくぐると、何度か訪れたことのある乗合馬車の駅前、そこに近い裏路地に出た。

 【ゲート】をこっそりと使うために、こういった人気ひとけのない場所は普段からチェックしているのだ。

 すでにユミナの姿はなく、駅前へと向かったようだった。

 僕も小走りで裏路地を出て、すぐに見えてきた多くの馬車が並ぶ駅前へと急ぐ。するとそこには六歳くらいの男の子を抱きしめているユミナの姿があった。

 その横にはわけがわからず立ち尽くすザナックさんと、ザナックさんによく似た顔立ちの商人らしき男性が一人立っていた。


「ああ、公王陛下。いらっしゃったのですね。すると本当にこの子は陛下の親戚の子でしたか」

「あーっと、はい。まあ、そうです」


 曖昧にザナックさんに返事をして、あらためてユミナの方へ視線を向けると、抱きつかれた男の子が苦しそうに目を白黒させて、ユミナの肩をタップしていた。


「ちょっ、ユミナ! 久遠が苦しがっているから! 一旦放して!」

「えっ!? あっ、ああ、すみません! つい……!」


 ユミナから解放された久遠は大きく息を吐き、呼吸を整えていた。どんだけ強くハグしてたんだか。

 六歳の男の子にしては少し身長は低めかな。華奢な印象を受ける。ユミナと同じ金色の髪を後ろに束ねていて、ちょっと見ると女の子に見えなくもない。

 その久遠が僕の方へと視線を向けてくる。瞳は僕と同じ黒色だった。


「とりあえずお話はブリュンヒルドでよろしいですか? ここでは落ち着いて話せませんし」

「あ、ああ……。うん、そうだな。わかった」


 ザナックさんにお礼を言うと、その流れで弟さんを紹介された。バラックさんと言うらしい。どうりで似ていると思った。

 レグルスにある『ファッションキング・ザナック』の支店長をしているらしい。弟さんがいたんだね。弟さんにもお礼を言うと、逆にお礼を言われた。なんでも詐欺師に騙されそうなところを久遠に助けてもらったとか。マジですか……。しっかりしてんなあ……。


「ブリュンヒルドに帰るなら送りますけど……」

「ああ、いえ、お気遣いなく。途中に寄る町がいくつかありますので……」


 ザナックさんもブリュンヒルドへ送ろうと思ったら断られた。仕事なら仕方ないか。

 東方大陸ではまだ移動の主役は馬車だ。ブリュンヒルド、レグルス間に魔導列車が開通すればもっと楽になるんだろうけど。


「冬夜さん! 早く!」


 ユミナが久遠の手を引いてせっつくように僕を呼ぶ。ふと見ると、久遠はユミナと繋いでいる手とは逆の手に小さな剣を持っていた。久遠は剣を使うのか。

 ザナックさんと弟さんにもう一度お礼を言って、僕らは再び裏路地からブリュンヒルドへと帰還した。



          ◇ ◇ ◇



「あらためまして、望月久遠と申します。こちらの時代では初めてお会いしますが、父上、母上、よろしくお願い致します」

「あ、ああ、はい……」

「あの、もうちょっと砕けてもいいんですよ? 親子なんですし……」


 堅い挨拶にさすがのユミナも困惑していた。真面目君なんだろうか。


「いえ、お気になさらず。普段から僕はこんな感じですし。充分砕けている方ですよ?」


 久遠はそう言うがとても砕けているようには見えない。下手すりゃビジネスマンだ。男の子ってもっと騒がしくて落ち着かないイメージだったのだが。

 リビングのソファーに腰掛けた久遠は、背負っていたリュックから紙で包まれた箱を取り出した。

 それをテーブルに載せて、すすっと僕らの方へと差し出す。え? なにこれ?


「こちらはお土産です。バラックさんおすすめのクッキーで有名なお店のものです。お口に合うとよろしいのですけれど」

「ちょっと待って、君、本当に六歳児!?」


 両親にお土産まで用意する、その気配りの良さはなによ!? なんてできた息子だ! 


「はぁー……。ずいぶんと礼儀正しい子ですわね……」

「本当に私のリンネよりも年下なのでしょうか……」


 僕らの様子を窺っていたルーとリンゼからそんな声が飛んでくる。

 その声を聞いてか、隣のユミナがものすごく嬉しそうにしている。うん、気持ちはわかるけれども、あまりニマニマしない方がいいと思うぞ?

 それから僕らは久遠がどこに現れ、どうやってここまで来たのか話を聞いた。やっぱり彼もスマホを無くしていたらしい。

 エルフラウの雪の中か。そりゃ、探しようがないよな。


「じゃあ付与された【アポーツ】と【テレポート】の魔法を使って、久遠のスマホを召喚……」


 僕は自分のスマホから持ち主が登録されているリストを開いたが、はたと気がついた。

 …………あれ? 久遠のスマホのシリアルナンバーってどれだ? というか、登録されてないだろう! まだ作られていないんだから!

 ということは、直接探しに行かないといけないのか……。いや、【サーチ】を使えば一発で見つかるだろうけどさ。


「冬夜さん?」

「いや、なんでもない。ちょっと久遠のスマホを拾ってくるから……」

「すみません、父上」


 息子君に謝られた。ううむ、本当に僕の子かと疑いたくなるような礼儀正しさだな。逆に言うとちょっとよそよそしい気もする。ユミナの言うとおり、もっと砕けてくれてもいいんだが。

 子供らしくないかもしれないが、これもこの子の個性なのだろう。それは否定してはいけないと思う。

 とりあえずスマホを落とした大体の位置を久遠に聞いて、僕はエルフラウへと転移した。


「うわ、さっぶ!」


 広がった一面の雪景色とその寒さに僕は身を竦ませた。さっさと探して帰ろう。

 【サーチ】を発動する。えーっと……けっこう遠くにあるな。

 雪の上を【フライ】で飛んで、【サーチ】が反応した場所の雪を溶かすとすぐに久遠のスマホが見つかった。

 溶かした雪でビショビショになってしまったが、【プロテクション】をかけてあるこのスマホはそう簡単に水なんかで壊れたりはしない。


「よし、回収完了。さっさと戻るか」


 転移して城のリビングに戻ってくると、久遠の周りには遊戯室から戻ってきた子供たちがわいわいと集まっていた。


「久遠、おそーい! なにやってたのー!」

「まあいろいろと……。あ、リンネ姉様、これお土産のレグルスのお菓子です」

「わー! ありがとう! 美味しそう!」

「久遠ちゃん、またなにかトラブルに巻き込まれた? 気をつけないとダメなんだよ」

「いえ、巻き込まれたというほどでは……。あ、フレイ姉様にはこのナイフを。ちょっと珍しいデザインのナイフなんですが」

「……へえー、レグルス製にしてはずいぶんと反身なナイフなんだよ。ふーん、こんなの初めて見るよ。ふふ、ありがとうなんだよ」


 久遠が次々とお土産を姉たちに渡していく。手慣れているというか、手玉に取っているというか。


「久遠、久遠! ボクのは!? ボクのお土産はー!?」


 ソファーに座る久遠の横にべったりとアリスがしがみ付いている。そういや、アリスは久遠のことが好きなんだっけか。

 そんなことを思い出していると、ポン、と肩を叩かれた。振り向くと、そこには笑顔ではあるが目が笑っていないエンデの姿が。


「冬夜……君の息子さん、ちょおおぉぉぉぉっと、うちのアリスと距離が近すぎると思わないかい……?」


 いやいや、どう見ても引っ付いているのはアリスの方だろ……。そんなん言われても知らんわ。


「ステフとクーン姉様の姿が見えませんが……。まだ来てないんですか?」

「ステフはまだですけど、クーン姉様はちょっと野暮用でガンディリスに行ってますわ。夕食までには戻って来ると思いますけれど」


 久遠の疑問にアーシアが答える。後で八雲が迎えに行くと言っていたからな。それまでは粘って分析を続けるだろう。

 アーシアに説明されると久遠は傍らに置いてあった小剣を手に取った。


「残念です。クーン姉様にちょうどいいお土産があったのですが」

『ちょっ、坊っちゃん!? お土産ってあっしですかい!?』


 んっ!? なんだ今の声? あの剣か? 剣が喋ったのか?

 みんなもギョッとして喋った剣を凝視していると、ふわりと鞘に入ったままの剣が浮かび上がった。


『おっと、ご挨拶が遅れやした。あっしはシルヴァーってぇケチな剣でござんす。こんなナリでやんスが、ひとつよろしくお願い致しやす、姐さん方』


 ペコリと器用に空中で柄頭を下げる剣。しかしなんだってそんな三下みたいな喋り方なんだ……。まるで久遠の舎弟みたいだな……。


「喋る剣とはまた珍しい物を……。これは魔道具アーティファクトなの?」

「いえ、こんな姿ですけど一応ゴレムだそうですよ。正しい名前は【インフィニット・シルヴァー】。本人曰く、あのクロム・ランシェスの作品らしいです」


 八雲へ答えた久遠の言葉に僕らは驚く。クロム・ランシェス!? アルブスたち『王冠』シリーズを作った古代のゴレム技師か!

 その作品ということは……まさか……。


「銀の『王冠』……?」

『おっ? 懐かしい呼び名でやんスね。そう呼ばれてた頃もありやした。もっともあっしにゃ【王冠能力クラウンスキル】が無いんで、『王冠』と言っていいものかわかりやせんけどね』


 僕の呟きにシルヴァーという名の剣が右に左に首を振るように柄頭を動かす。


「【王冠能力クラウンスキル】がない?」

『クロムの野郎は「代償」無しで【王冠能力クラウンスキル】を発動できないか研究してたんス。その過程で作られたのがあっしってわけでして』


 そう言えばアルブスがそんなことを言っていたような。

 五千年前の表世界に『黒』と『白』の王冠の力で世界の結界を超えて跳んだクロム・ランシェスは、フレイズから逃れるために裏世界へと戻ろうとしていた。

 だけど『黒』の王冠の『代償』を払えば裏世界へ帰れても、クロムは若返り過ぎて死んでしまう。

 それで『代償』のいらない王冠を作ろうとしてたとか。

 ま、結局それが完成する前にフレイズの侵攻が始まり、クロムは『白』の王冠を暴走させて、全ての記憶を失ってしまったらしいが。


「ん? ちょっと待て。『王冠』かどうかは置いといて、シルヴァーはゴレムなんだよな? ひょっとして久遠とマスター契約してる?」

『バッチリっス』

「えっ!? した覚えないですけど!?」


 シルヴァーの声に久遠が目を見開いて驚く。あれ? 違うの?

 

『あっしはゴレムでもあり、魔法生物でもあるんスよ。適性を持つ持ち主なら、そいつと自動契約しちまうんす』


 シルヴァーの話によると、シルヴァーを手にした者が操る適性を持っていた場合、自動的に契約が行われてしまうんだそうだ。

 シルヴァーだけじゃなく、インテリジェンスウェポンと呼ばれる魔法生物は大抵そのタイプらしい。いわゆる選ばれし者しか操れない、的なことか?

 しかもその適性者により、シルヴァーの人格も変わるんだそうで。


『前の適性者は人を斬るのが三度の飯よりも好きっつう、ちょいと頭のイカれた奴でして。契約されたこっちもその影響を受けて、ちょっと暴走気味だったんスけども』

「ああ、だから最初に会った時、あんな『コロスコロス』な性格だったんですね。……え、なら今の性格は僕の影響ってことですか……?」


 久遠がなんとも苦虫を噛み潰したような顔をする。


『そりゃあ、あんなにビビらせられたら、こんな性格にもなりまさあ。坊っちゃんの相棒に一番相応しい性格でがしょ?』


 またしても久遠が苦々しい表情になる。おい息子、この剣にいったい何をした?

 ……しかし、こいつが『銀』の王冠なら、邪神の使徒が手に入れ、『方舟アーク』の鍵にした機体は『金』の王冠ってことか?


「シルヴァー、『金』の王冠のことをなにか知っているか?」

『「金」でやすかい? あっしは研究室に固定されてんでよくは知らねえです。ただ、あっしと同じく向こうも魔法生物をベースに作ったゴレムだとかクロムのやつが漏らしてやしたね』


 魔法生物。おそらく魔法が発展していない裏世界から来たクロム・ランシェスにとって、それは魅力的な素材だったのだろう。それとのハイブリッドを考えてもおかしくはない。

 魔法生物というと、ゴーレムとかガーゴイル、ミミックなんかか。まあ、もともとゴレム自体がゴーレムと類似点が多かったしな。融和性はあるのかもしれない。


「武器の性能としてはどうなのかなっ!? 私はそっちの方が気になるんだよ!」


 武器マニアのフレイがふよふよと浮かぶシルヴァーにぐぐっと迫る。ブレないなあ……。


『あっしは持ち主に合わせて大きくも小さくもなれるんでやんス。誰にとっても理想の剣になれるってわけでやして』

「え、それぐらいお父様の剣(ブリュンヒルド)もできるけど」


 勢い込んで聞いたフレイがシルヴァーの説明を聞いて、がっかりといった表情を見せた。まあ、【モデリング】の機能が付与されているからな。


『き、距離のある相手に斬撃を飛ばせやす……』

「遠距離攻撃? お父様のもできるよ?」

『あ、相手を麻痺させて動けなくすることもできやす!』

「それもできるよ? 付与弾を変えれば眠らせたり、燃やしたりもできるんだよ?」


 他は? というフレイの目に、ふよふよと浮いていたシルヴァーが少しずつ沈んでいく。な、なんか僕が悪いことしてる気になってくるな……。


『しゃ、喋れやす……』


 うん、それは僕のブリュンヒルドもできない。まあ、古代機体レガシィのゴレムにならよくある機能だけども。


「よくわかんないんだけど、喋る劣化版ブリュンヒルドってこと?」

『うぐうっ!?』


 首を捻っていたヨシノがズバンと痛烈な意見を述べ、シルヴァーがへなへなと落下する。そこらへんにしとけよ。ちょっとかわいそうだろ……。


「まあまあ、シルヴァーはシルヴァーでそれなりに役に立つ剣ですし。少しウザい時もありますけど、意外と使えるんですよ?」

『坊っちゃん! 褒めてんだか貶してんだかわからねぇ言葉はやめて下せぇ!』


 笑顔でけっこう酷いことを言い放つ久遠にシルヴァーが噛みつく。

 なかなか辛辣だなぁ……。僕の息子は意外と黒い部分を持っているのかもしれない。


「冬夜様にそっくりですわ」


 背後から飛んできたルーの言葉は聞こえなかったことにしよう。









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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
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