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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
519/637

#519 地底都市、そしてギガンテス。





「機人都市アガルタ?」

「はい。かつてここより北方に栄えた古代王国、ダーナシアから逃れた民が作り上げた地下都市です」


 真白いトーガを羽織った銀髪のその女性は微笑みながら僕の質問に丁寧に答えてくれた。

 

「古代王国ダーナシアって?」

「かつてこの大陸で覇権を争った二つの古代王国の一つですわ」


 今度はクーンが説明してくれる。すみませんね、なんにも知らなくて。

 確か古代、二つの王国が主導して争い、ゴレムを大量投入してとてつもない被害を世界に出したんだよな。『古代ゴレム大戦』だっけか?

 その戦争が元で一度世界は滅び、そこから復興したのが今の文明だっていう。

 西方大陸における歴史ではそうなっていたはず。


「大戦時、誰も彼も戦いたかったわけではありません。戦うことを否定し、王国から逃れてきた者たちは偶然見つけたこの地下施設に身を潜め、戦争の終わる時を待ちました。しかし何十年経っても戦争は終わらず、やがて彼らはこの地を第二の故郷として暮らすことになったのです」

「確か古代ゴレム大戦は三百年以上続いたそうですから、そうなるのもわかりますが……」

 

 クーンがトーガの女性の言葉を裏付ける説明をする。三百年以上もか。

 地球にも『三百三十五年戦争』ってのが確かあったな。

 だけどこっちの方は一年で相手が降伏して決着がついたのに、終了宣言とか平和条約とかをしなかったらしい。

 後世の歴史家が『あれ、この戦争終わってないんじゃね?』と発表して、開戦から三百三十五年経ってやっと平和条約が結ばれたんだとか。なんとも妙な話だ。

 一発の発砲もなく終えた、世界一平和な戦争とか言われていたな。


「すると貴女はここに住み着いた古代人の末裔……ということ?」


 リーンの言葉にトーガの女性は首を横に振る。あれ、違うのか?


「この地に住み着いた人間たちはその後次第に数を減らし、二百年ほどで全員亡くなられてしまいました。日の光が差し込まない地下では人間たちは生きることが難しかったのです」


 日の光……日光不足か。確かに引きこもりは健康には良くなさそうだけど。


「『ビタミンD欠乏症』ってやつかしら。感染症にかかりやすくなったり、骨粗鬆症こつそしょうしょうになるっていう」

「ずいぶんと詳しいね……」

「地球から持ち帰った本に載ってたわ」


 いつの間にかうちの嫁さんが地球の知識を僕より吸収してた。リーンは医学関係の本まで買ってたのか。

 ……ちょっと待て。大戦から二百年でこの都市の人間たちが滅亡したのなら目の前にいるこの女性はいったい? 確か古代ゴレム大戦って五千年前くらい前だろ? ってことは……。

 僕が疑問に思っていると、隣にいたクーンがポンと手をひとつ打った。


「なるほど。貴女、擬人型のゴレムなんですね?」

「はい。型式番号PEL-42、『ペルラジオーネ』シリーズ、医療看護用ゴレム、ペルルーシカと申します」


 優雅にペルルーシカと名乗った擬人型ゴレムは僕らに対して一礼した。

 擬人型ゴレムか。相変わらず『古代機体レガシィ』となるとなかなか見分けがつかないな。よく見ると両眼の虹彩が少し人とは違う気がする。

 シェスカたちバビロンシスターズと比べてもそれほど遜色がないように思えるな。

 ペルルーシカにリーンが話しかける。


「医療看護用なのにここに人たちの健康の変化には気付かなかったの?」

「気付いてはいました。しかし人々の世代が変わるに連れて、彼らの地上への恐怖は膨れ上がり、大半の人たちはこの地から出ようとはしなかったのです。地上は死の世界だと。この地を離れては生きていけないのだと」


 うーむ、親の世代が言い聞かせたことをそのまま受け入れてしまったのだろうか。殺人ロボットがわらわらいるところへ子供を行かせようとはしないよなあ。


「それで貴女は住む人が居なくなったこの地下都市をずっと守り続けていたの?」

「はい。人が居なくなりゴレムだけの『機人都市』となっても、休眠状態を繰り返しながら私達は長い時をここで過ごしてきました。『ギガンテス』の監視者として」

「『ギガンテス』?」


 ペルルーシカはたおやかな手を上げ、暗闇の向こうへと指差した。都市が放つぼんやりとした光でよく見えないが、ピラミッドのような建物のさらに上、そこに何か巨大なものが微かに見える。……なんだ?


「【光よ来たれ、大いなる輝き、メガブライト】」


 リーンが上級照明魔法をそこへ向けて放つ。

 ピラミッドの上空にまるで電球がついたように大きな光球が生み出された。

 浮かび上がるピラミッドのような建物のその背後。

 壁に半分埋まるようにして、なにか大きな機体がそこに存在していた。とてつもなくデカい人型の機械の塊がそこに埋れている。

 ちょっと待て……なんかアレと似たようなものを僕は見たことがあるぞ……!


「『ヘカトンケイル』……!」


 そうだ、あのアイゼンガルドの魔工王が蘇らせた太古の決戦兵器。アレに似ているのだ。


「『ヘカトンケイル』? 『ヘカトンケイル』ってお父様たちが倒したアイゼンガルドを滅ぼした決戦兵器ですか!?」

「決戦兵器を知っているのですね。そう、あれはその決戦兵器のひとつ。ここに残された負の遺産……」


 ダーナシア王国から逃げ出してきた人たちが見つけたこの地下施設は、とある国の決戦兵器を作るための工場だったらしい。

 発見した時、地下施設にいた人たちは全て死んでいた。全員苦悶の表情で事切れていたという。

 なにか事故があったのか……それとも毒ガスのようなものが撒かれたのかはわからない。

 ダーナシアから逃げてきた人たちはこの地下施設を利用し、隠れることに決めた。地上ではどこにいても安全が脅かされるからだ。

 やがて、わずかに残された資料から決戦兵器『ギガンテス』を調べているうちに人々は恐ろしい事実に気付く。

 この決戦兵器がすでに完成していることを。今はただ休眠状態にあるだけだということを。


「『ギガンテス』は強制的な冬眠スリープ状態にされています。もしも再起動したら入力された命令を果たすために行動を開始することでしょう。『敵を破壊する』というただひとつの命令を」

「敵?」

「自国に属していない全てのゴレムです」


 じゃあ何か? あいつは動き出したら世界中のゴレムを破壊し始めるってことか? とんでもない命令をインプットされているんだな。


「この『ギガンテス』に入力されている命令はこのゴレムの本能、あるいは存在理由ともいうべきものです。契約者マスターがいなくても、このゴレムはそれを愚直なまでに実行しようとするでしょう。故に負の遺産。彼が目覚める時、世界は滅ぶ」


 確か魔工王のジジイが、古代ゴレム大戦末期にはいろんな国が競うように決戦兵器を作っていたと言っていたな。これもそのひとつなのか。ひょっとしたらヘカトンケイルを作った国に対抗して作られたものなのかもしれない。


「世界が滅ぶ……ね。ダーリン、これどうする?」

「うーん、個人的には面倒なんで破壊してしまいたいところだけども……」

「破壊!? そんなもったいない! ……あ、いや、世界の平和とは引き換えにできないってのはわかりますけれど……」


 両親からジロリと睨まれたクーンの声が萎んでいく。

 ただなぁ。一応ここ他国だし、ガンディリスの鉄鋼王に断りもなく破壊するのもどうなのか、と。

 この決戦兵器は見つけた僕らに所有権があるのか、もともとこの地にあったのだからこの国に所有権があるのか。

 まあ、向こうが所有権を主張してきても、こいつが起動しないようにはさせてもらうけどね。


「とりあえずあれ、見せてもらってもいいかな?」

「……ギガンテスを目覚めさせるような攻撃などをしなければ構いません。ですが、細心の注意をお願いします」


 契約者マスターのいない彼女たちのようなゴレムは、自己の危険に関わらない命令ならなるべく人間に従うようにできている。僕のお願いは彼女たちにとってかなりリスクがあるだろうに、なんとか受け入れてくれたようだ。

 アレが起動したら真っ先に狙われるのはここのゴレムたちだからな。刺激されたくない気持ちもわかる。

 僕たちはペルルーシカに先導されて、壁に埋まるギガンテスへと近づいていった。

 壁に埋まっているというよりは、洞窟周辺が崩れて埋れてしまっているという感じだな。

 ちょうど足下の辺りに来たところでペルルーシカに止まるように指示される。


「ここより先は近づいてはいけません。見てて下さい」


 ペルルーシカがそこらへんにあった石ころを前の方へと投げ入れると、機体の各部に取り付けてあった小さな砲台からレーザーのような光が走り、チュンッと石ころを貫いた。

 クーンがレーザーの発射されたギガンテスの膝側面辺りを見上げて口を開く。


「自動迎撃システムは生きているんですね」

「はい。あれはギガンテスとは独立したシステムですので。攻撃範囲内にある動くものを狙ってきます」


 なるほど。そんな物騒なものなら壊してしまえばよかったのにと思ったが、このシステムのせいでアガルタの人たちはギガンテスに手を出せなかったのか。


「君たちとしてはどうしたいのかな?」

「私たちはゴレムです。人の意に従うようにできています。貴方たち人間の決定には逆らいません。しかし、ここで暮らしたアガルタの民の願いを叶えてほしいと思っています。ギガンテスを取り除き、この都に真の安寧を」


 ギガンテスと地上の戦争に怯えながら、この都の人たちはここで二百年を過ごしたのだろう。その気持ちを考えると、ペルルーシカの願いも無理はないのかもしれないと思う。


「お父様。【プリズン】を」

「へいへい」


 娘にいいように使われている感があるが、今さらか。

 【プリズン】を張り、念のため僕が一歩前に踏み出すと、再びレーザーが雨のように僕の頭上に降り注いだ。

 【プリズン】の絶対防御壁にペルルーシカが目を丸くしている。擬人型とはいえ、よくできたゴレムだな。医療看護用とか言ってたし、患者と接するためには表情豊かじゃないといけないのかもしれない。

 しつこいくらい降り注ぐ攻撃に、もうあの砲台部分を壊してしまった方がいいんじゃないかとも思ったが、それが原因でギガンテスが起動しても困る。まったく面倒な。

 ペルルーシカも含めた僕たちはギガンテスの足下に辿り着き、クーンがその機体を近くで凝視する。


「やはり魔導刻印が施されてますね。エーテルラインが装甲表面にまで走っています。おそらくこれが衝撃から機体を守る防御壁の役目を果たし、魔力弾さえも拡散させるように……」


 あ、ダメだ。クーンがぶつぶつ言い始めた。こうなると長いぞ、この子は。


「わかりやすく説明しなさいな。『これ』は壊せるの? 壊せないの?」

「えーっと、この装甲に施された魔導刻印は人間の皮膚と同じ役割を果たすんです。つまり刺激を与えると神経が脳にそれを伝える。一瞬でこの機体をバラバラにするとかでないと、間違いなくギガンテスは起動すると思います」

 

 つまりは『触るな危険』ってことか。トンネルを掘っていただけなのに、とんでもない爆弾を掘り当ててしまったな。


「うーん……。難しいけど処理できなくもないんじゃないかな。【ゲート】をギガンテスの足下に開いて、火山の火口にでも落とせば……」

「溶岩で溶ければいいけどね。防御壁を張れるみたいだし、火口から這い上がって来るかもしれないわ」


 思いついた提案をリーンに却下される。むう。確かにその可能性は捨てられないな。事が事だけに一か八かの賭けには出られないか? それで火山が爆発しても困るしな。


「だけど別の場所に転移させるってのは悪くないかもしれないわ。被害の及ばないところへ移動させて、私たち全員のフレームギアで叩くってのならありだと思う」


 なるほど。それならいけるか? 決戦兵器とはいえ、邪神より強いってことはないだろう。みんなの力を借りればいけるんじゃないかな。

 となると、なおさら鉄鋼王と話さないといけないな。向こうはもうお城から出発しているだろうから、今さら【ゲート】で迎えに行けないし。

 一時間くらいだろうから、地下都市アガルタを見学して待つか。

 僕らは一旦ギガンテスから離れ、ペルルーシカの案内のもと、地下都市を観て回った。

 もともとギガンテスの製造工場であっただけあって、古代の技術があらゆるところに使われていたらしく、クーンはずっとハイテンションであった。

 あっという間に時間は過ぎ、僕らが掘ったトンネルを通って鉄鋼王の一行が顔を見せたのは、それから一時間後のことだった。


「まさか我が国にこのような遺跡があったとは……」


 ガンディリスの一行が地下都市アガルタとギガンテスを驚きの目で見ている。

 ペルルーシカを紹介し、この都が抱えている問題を話す。まあこのギガンテスをどうするか、ということだが……。


「決戦兵器……。まさかアイゼンガルドと同じく我が国にも存在していたとは……。これは難しい問題だな……」


 鉄鋼王が頭を抱えて悩んでいる。決戦兵器は古代技術の塊。技術者を多く抱えるガンディリスとしては宝の山だ。しかし扱いを間違えれば国が滅ぶ。


「陛下、これはまたとない機会かもしれません。あの決戦兵器を調べれば、失った古代の技術を蘇らせることも可能やも……」

「そしてアイゼンガルドと同じてつを踏むのか? この地を更地にせよと? 秤にかけるものが大きすぎる」


 配下の騎士からの言葉に鉄鋼王が頭を抱えながら答える。

 やがて鉄鋼王は大きく息を吐くとその顔を上げた。


「古代の技術は惜しいが、我が民の安寧には変えられん。ブリュンヒルド公王の提案に従おう。しかし、機能停止したギガンテスは我々にも調べさせてもらえると嬉しい」

「それはもちろん。こちらからもエルカ技師とその助手を何人かを派遣するので」


 この場合、助手とはバビロン博士たちのことだが、教授プロフェッサーも来るのかね? なんとなくだが来そうな気がする。


「じゃあこのギガンテスを被害の及ばない場所へ転移させて叩くということで……」


 みんなに連絡しないとな。……これ、子供たちも来るって言いそうだなあ……。


「ああ、その倒すところを我々も見ることは可能かね?」

「私たちもその結末を目にしたいと思っています」


 鉄鋼王の言葉に、ペルルーシカが同じような願いを口にした。何千年もこいつを監視していたペルルーシカ。その決着を見たいと思うのは仕方のないことかもしれない。それで気持ちの整理がつくのならこちらとしては問題ないが……。

 

「うーん、まあ、大丈夫だと思います」


 上級種フレイズの荷電粒子砲のようなものがあったら危険だから、中継モニターとかで許してもらおう。子供たちもそれで見せればいいか。

 見せ物じゃないんだけどなあ。



          ◇ ◇ ◇



「デカいでござるなぁ……。アイゼンガルドで戦った奴より大きな気がするでござる」


 八重がギガンテスを見上げながらそんなことを呟く。

 あの時は僕のレギンレイヴ、八重のシュヴェルトライテ、ヒルダのジークルーネの三機で倒した。

 こいつがヘカトンケイルと同じ強さなら全員で戦う必要はないと思うけど、まだ強さは未知数だしな。製造した国が違うらしいし……過剰戦力かもしれないが、安全に安全を重ねておくのは悪いことではあるまい。


「それで、これをどこに転移させるつもりですか?」

「アイゼンガルドかユーロンかな、と思ってたんだけど、万が一の可能性を考えると、アイゼンガルドかなあ」


 リンゼの問いかけに僕はそう答えた。

 ユーロンは少しずつだが、村や町ができ始めている。どんな攻撃が来るかわからないとなれば、邪神に更地にされたアイゼンガルドの方がまだ安全だろう。


「で、全員でこれの相手をするんですか?」

「一応そのつもりだけど……」


 ユミナの言葉にそう返すと、反応したのは彼女ではなく、うちの小さな娘とその友人であった。


「はいはいはーい! おとーさん、あたしも戦いたい!」

「へーかへーか! ボクも! ボクも戦いたい!」


 リンネとアリスが背伸びまでして手を挙げる。ていうか、なんでアリスまでいるの? 

 初めにブリュンヒルドに跳んで、八雲をここに連れてきてから、二人で手分けしてあちこちにいたみんなを連れてきたんだけど、なぜかアリスも付いてきた。

 その後ろにはさも当然そうにエンデの姿もある。


「いや、危険な可能性もあるし、みんなはモニターで観ててくれれば……」

「大丈夫だよ! あたしたちフレームギアもちゃんと使えるし!」


 うーん、確かにリンネやアリスがフレームギアに乗れるのは知っているけれども……。いざとなれば転移脱出装置もあるし、そこまでの危険はないとは思うんだけれども……。

 ……あれ? この気配は……。


「大丈夫よ。いざとなったら私が助けるから」


 僕が渋っていると、リンネたちの後ろから時江おばあちゃんが現れた。

 久しぶりだな。忙しいのかここ最近姿を見せなかったけれど。神界に行ってたらしいけど、なんかあったのだろうか。

 時江おばあちゃんは時空神だ。時間を止めたり、瞬間移動はお手の物である。子供の一人や二人脱出させることなんかわけないだろう。


 時江おばあちゃんの言葉にリンネとアリスが期待に満ちた目で僕を見てくる。うう……。


「リンゼとエンデはそれでいいのか?」

「私はリンネと時江おばあちゃんを信じてますから」

「僕は止められるものなら止めたいところだけど……。言っても無駄だと思う……」


 リンゼはにっこりと、エンデはがっくりと答える。


「なら、リンネ。私のゲルヒルデを貸してあげるわ。リンネの戦い方ならリンゼのヘルムヴィーゲより使いやすいと思うから」

「やった! エルゼおかーさんありがとう!」


 リンネが伯母であり、母の一人でもあるエルゼに抱きつく。確かに殴ったり蹴ったりするならゲルヒルデの方がいいと思うけど……。これ殴るの?

 僕はちらりと何十メートルもあるギガンテスを見上げながらそんなことを思った。


「アリスはどうする? エンデの竜騎士ドラグーンでいいのか?」

「うーん、お父さんの竜騎士ドラグーンは打たれ弱いからなぁ……」

「ううっ!?」


 あ、エンデが沈んだ。エンデの竜騎士ドラグーンは機動性重視の軽量型だからな。リンネと同じく殴る蹴るタイプのアリスには使いにくいかもしれない。エンデも本来そっちなんだけど、こいつは器用だから使いこなしている。そろそろ竜騎士ドラグーンもバージョンアップが必要か?

 だけどもアリスは【結晶武装】というフレイズ特有の装甲をフレームギアに纏わせることができる。なので、なんとか戦えるとは思うんだが。

 そんなことを考えていると、アリスがおずおずと口を開いた。


「えと、ボクね、オルトリンデに乗ってみたいんだけど……ダメかな?」

「んぬ? わらわのにか?」


 スゥがキョトンとしている。

 ふむ。確かに殴る蹴るといった攻撃ならエルゼのゲルヒルデに次ぐのはスゥのオルトリンデオーバーロードだろう。防御力なら一番だしな。


「わらわのオルトリンデは竜騎士ドラグーンと違って動きは遅いぞ? それでもいいなら構わんが……」

「はい! ありがとうございます!」


 スゥから許可をもらったアリスが手を挙げて喜んでいる。エンデはまだ沈んでいるけど。

 八雲、フレイ、クーン、ヨシノ、アーシア、エルナの六人は素直にモニターで見学となった。クーンはまだギガンテスを破壊するのにもったいないという未練があるようだったが。

 一応、ユミナ、ルー、桜、リーンは後方支援、リンネ、アリス、八重、ヒルダが前衛、リンゼ、エンデ、そして僕は状況に応じての遊撃と決めた。

 観戦用のモニターは地下都市アガルタの広場に置いて、中継は紅玉の眷属たちに頼むことにする。

 さて、それじゃあこのはた迷惑なガラクタの解体作業を始めますか。









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