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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
468/637

#468 鉱山王国、そして皇女の悩み。

■入院しておりました。なんとか無事です。まだ痛みは消えてませんが……。





「鉄鋼国……ガンディリス?」


 確かガルディオ帝国の東、聖王国アレントの南に位置する国だよな。僕はまだ行ったことはないけど。そうか二つの交差したハンマーって、この国の国旗か。


「鉄鋼国ガンディリスは多くの鉱山に恵まれ、様々な鉱物が採れるため、『鉱山王国』、あるいは『鋼の国』とも呼ばれています。我がガルディオとも交易があり、我が国のゴレムの大半はガンディリスの鉱物によって造られているのです」


 鉱業国家か。ゴレムを製造するにはオリハルコンとかアダマンタイトとかの貴重な鉱物が必要になる。西方大陸にオリハルコンゴーレムなどがいるかはわからないが、いないとするならそれらを生み出す鉱山はまさに宝の山だろう。

 アレントやガルディオとの関係はどうなんだろう。あまり話題に上ったことはないが。

 そんな僕の疑問にガルディオ皇帝陛下が答えてくれた。


「隣国ですのでそれなりの付き合いはありますけど……。友好国かと言われればなんとも。度々戦争も起こしてますしね。先先代のガルディオ皇帝……私とレーヴェ辺境伯のお祖父様はかなり苛烈な方で、何度もガンディリスの鉱山を狙っていましたから」


 うわちゃあ。先先代の皇帝ってアレだろ? アイゼンガルドと手を組んでレーヴェ王国にも侵攻したっていう。

 現ガルディオ皇帝陛下にとっては母方の祖父、レーヴェ辺境伯であるルクレシオン少年には、血は繋がってないが父方の祖父となるわけか。すでに鬼籍に入っているが、野心の塊みたいなお方だったんだねえ……。

 感心するやら呆れるやらの僕の耳に、うーん……とガルディオ皇帝陛下の悩むような声が届く。どしたん?


「やっぱり解せませんね……」

「なにがです?」

「いえ、ガンディリスの国王はどちらかというとのんびりとした方で、あまり策謀を巡らせるタイプではなかったように思うので。まあ、どこの国にも密偵はいるとは思いますが……」


 まあ、それはね。うちにも椿さんたち率いる諜報騎士がいるしね。しかも今回その子たち参加しているからね。このパーティーに。

 ベルファストにも国王陛下直属の『エスピオン』って部隊がいるしな。ひょっとしたらベルファストも参加者に数人紛れ込んでいるかもしれないな。

 情報は武器だ。策謀を巡らせるタイプじゃなくても、自国を守るためにはそれは必要なことだと思う。

 国王の命令かはわからないけど。国王が命じなくても優秀な宰相が動くこともあるだろうし。


「破壊工作や暗殺などではなく、ひょっとして単なる情報収集が目的だったのかもしれません。擬人型のゴレムにそんな力はありませんしね。しかしイメルダ嬢という被害者はいるのですから、とても看過できませんが」


 いや、力はなくても例えば毒殺とか、やる気になれば破壊工作なんかもできるけどな。だけどそれを言い出したら、パーティーに参加してる誰でもその可能性はあるって話だし。

 エルゼが横たわるイメルダ嬢のゴレムに目を向ける。


「んー……。でもそこまで手荒な真似をする気はなかったんじゃないかなあ、この子」

「なんでそう思うんだい?」

「だって本当のイメルダ嬢をこっそり殺してたっていいはずでしょ? パーティーが終わってから姿を消せば行方不明ってことになるだろうし。殺さないでおいたら、どっちみち『あのイメルダ嬢は誰だったんだ?』ってことになってたはずよ。パーティーが終わった後だろうけど」


 うーむ、そう言われるとなあ。入れ替えがあったとわかっても構わなかったのか? 確かに殺してどこかにでも埋めてしまった方がなにかと都合がいいよな。殺したくない……いや、殺すなと命令を受けていた? 

あり得なくはない、のかな?

 リーフリース皇王がガルディオ皇帝に向き合う。


「それでガンディリスにはどう対処するつもりかね?」

「難しいですね。『追憶の魔眼』によるレーヴェ辺境伯の証言だけではなんとも……。ガンディリスの仕業だという物的証拠はないわけですし」

「確かにガンディリスの旗だったんですよね?」

 

 再度レーヴェ辺境伯に確認を取る。間違いだったらまったく無関係の国にイチャモンをつけることになるからなあ。


「間違いないです。小さな頃から何回も見ましたから。でも旗が部屋にあっただけで、ガンディリスの人間が見えたわけではないんです。だけど……」

「他にもなにか?」

「声が。かすかに声が聞こえたんですが、女の人の声でした。『ガルディオ皇帝』、『邪魔』、『排除するように』、と……」

「なっ……!?」


 ガルディオ皇帝を排除!? それって暗殺しろってことか!?

 国王が他国の暗殺者に狙われることは珍しいことではない。僕も何度か狙われているしな。だけど暗殺部隊があるように、国王を陰から守る部隊もある。そう簡単に一国の王を殺せるもんじゃない。

 特にこういった場なら尚更のことだ。今だってガルディオ皇帝陛下のそばには屈強な騎士とゴレムがいるしな。

 多分なんだけど、医務室の隅にいるリーフリースのメイドさんも只者じゃないと思う。非力な擬人型ゴレムになんとかできるとは思えないのだが。


「ガンディリスに女の重臣は?」

「覚えている限りではいなかったと思います。……しかしやはり違和感を感じますね。その女はガンディリスの人間ではあるが、ガンディリス国王とは全く関係のない人物なのかもしれません」


 ううむ。よくわからんなあ。結局これって暗殺未遂事件……なのか? 少なくともイメルダ嬢を監禁? した犯人を捕まえたってことにはなるわけだが。


「ふむ。これだけではガンディリスに抗議することさえできんだろ。向こうでなにが起こっているのか調べた方がいいとは思うが」

「そうですね。なにか内乱などの起こる兆しなのかもしれませんし、すぐに手配します」

 

 とりあえずこの擬人型ゴレムはうちで預かることになった。正確にはエルカ技師預かりってことだが。細かく調べれば他に何かわかるかもしれない。

 エルカ技師とバビロン博士、それにイメルダ嬢に化けたゴレムをブリュンヒルドに送り、僕らは再びパーティー会場へと戻った。

 表面上はなにも起きなかったかのようにパーティーは進行し、参加者はそれぞれ収穫のあった者、なかった者、悲喜交々の結果を持って帰国の途についた。

 このパーティーの原因となったリリエル皇女がどうなったか気になったが、ま、そのうち皇王陛下から話が聞けるだろ。

 パーティーでもスマホをポチポチやっていたあの姿ではあまり期待はできないが。

 娘を持つと大変だな……。すでに八人の娘を持つ運命が決定している身としては他人ひと事じゃない。

 僕は生まれてもいない娘への苦労を感じながら、ブリュンヒルドへと戻った。



          ◇ ◇ ◇



「なんでそこで名前を聞いておかないかなあ」

「うぐっ……。そっ、それどころじゃなかったっていうか、完全に抜け落ちていたっていうか……。それにその……教えてもらえるかもわからないし……」


 目の前に腰掛けるリリエル皇女は、俯きながらその助けてくれたという黒仮面から貰ったハンカチを握りしめていた。皇女の他に部屋にいるのは僕とユミナとリンゼだけ。皇王陛下に内緒でと、呼び出されて来てみればまさかこんな相談だとは。

 舞踏会では仮面をしているため、気に入った相手がいてもどこの誰かはわからない。そのため、相手が気に入ったのなら、こっそりと本名を告げ、のちの繋ぎとするように取り決めていた。

 もちろん、向こうがこちらを気に入ってもらえなければ名前を教えてもらえないし、名前を教えるということは『あなたを気に入ってますよ』ということを告げるようなものなので、ほいほいと教えるようなこともできない。軟派男や尻軽女と揶揄されるからな。


「冬夜さん、なんとかなりません、か?」

「と、言われてもねえ……」


 リンゼに懇願されて、僕はどうしたもんかと考え込む。

 手がかりが黒仮面だけだろ? 各国に仮面を配ったとき、均等に配ったからどの国にも黒仮面さんはいるんだよなあ。

 その中から女性を抜いてもけっこうな数がいるよ?


「あ、でもミスミドとかゼノアスとか……。獣人や魔族は消えますよね? 尻尾や角なんかはなかったそうですし」

「あー……実はそれねえ。何人か希望者には尻尾とか角とかを消すことのできるやつ渡しててさ。そのタイプの黒仮面も渡してるんだよ……」


 ユミナの言葉に僕が答えると、浮かべた笑顔がなんとも言えないものに変化した。いや、見た目でミスミドやゼノアス、あとは武王国ラーゼの竜人族ドラゴニュートとかわかってしまうといろいろと厄介な問題もあるし。気にしない人は気にしないんだけどさ。桜やゼノアスの王子みたいに角を引っ込められるならよかったんだけどね。


「一応、誰が黒仮面を被ったかって記録は残ってるから探し出せないこともないとは思うけど……。しらみつぶしになるぞ、これ……」


 スマホに記録してある参加者リストを見てちょっとゲンナリする。聞き出しても正直に答えてくれるかわからないし。向こうにだっていろいろと事情があるかもしれないしな。


「……ホントに捜すの?」

「捜してほしい。もう一度会って、話したいの。でないと……!」


 ぎゅっと、手にしたハンカチを強く握りしめ、リリエル皇女が俯く。そんなに思い詰めているのか……。


「でないと、気になって原稿が進まないのよ! なんとか今回は仕上げたけど、なんだか気持ちがモヤモヤして落ち着かないの! 執筆活動に支障をきたすのはマズいわ! 一刻も早くこの状態から抜け出さないと!」


 オイ。ツッコんでいいものかどうか判断に困る。

 僕はユミナをチョイチョイと手招きしてこちらへと呼び、声を潜めて肝心なところを問い質した。


「これってつまり、『そういうこと』なのかな?」

「たぶんそうかと。こんなリリ姉様、見たことがありません。自分でもよくわかっていないと思います」


 あの妄想暴走皇女がねえ……。わからんもんだな。『恋が芽生えるには、ごく少量の希望があれば十分である』とは誰の言葉だったか。なかなかに面倒な始まりだ。


「自分を助けてくれた相手ですもの。気になって当然ですよ。これが恋かどうかまだ確証が持てないだけなんじゃないでしょうか。リリ姉様の浮いた話など聞いたこともないので」

「なるほど。さすが幼馴染み、よくわかってるね」

「わかりますよ。私もそうでしたから」


 そう言っていたずらっぽく笑う僕の奥さんである。いやユミナの場合、助けたのは父親であるベルファスト国王陛下なんだけどな。

 僕らの時と一緒にしてはいけないんだろうけど、相手が一国の姫ってところは似てるか。

 スマホで出席者リストから黒仮面の使用者を検索し、そこから女性を除く。えーっと、全部で三十八人……。やっぱり多いなあ。


「とりあえずわかるところから潰していくか……?」

「では、ブリュンヒルド(うち)からですね」

「うん。うちからは三人だ。騎士団員のルシェード、カロン、そして副団長のニコラさんか」


 ルシェードはヴァンパイア族の青年で魔王国ゼノアスの出身。ヴァンパイアのくせに血が苦手という変わり者だ。うちの騎士団では古株で初期メンバーだな。

 少し押しに弱いところがあるが、優しい青年である。青年といってもヴァンパイアなんで、六十超えてるんだけどね……。

 カロンはベルファスト出身の青年で、実家が薬師。そのためか植物に詳しく、騎士団内では主に農地開発の方に力を発揮してもらっている。耕助叔父のお気に入りらしく、わずかながら『農耕神の加護』をもらっているっぽい。

 この場合の『加護』はユミナたち『眷属』のような特殊な能力ではなく、普通に才能のようなものだ。

 ニコラさんは言わずもがな、ブリュンヒルド騎士団の副団長。ミスミド出身、狐の獣人だ。

 あれ? ニコラさんも種族隠蔽の仮面だったっけな。

 とりあえずアリバイを聞いてみるか……って、アリバイとか。犯人を捜してるんじゃないんだけどなぁ。





「ルシェードもカロンもシロか……」

「シロってなんです?」


 ユミナが首を傾げて聞いてくる。いかん、刑事気分になっている。

 ルシェードとカロンの二人にはリリエル皇女のことを直接言うわけにもいかず、『ある女性が黒仮面さんに助けられて、お礼をしたいとその人を捜している』と聞いてみた。嘘をついて『自分です』と答えるかもしれないが、そうしたらハンカチのことを聞けばいい。ま、うちの騎士団員にそんな奴はいないと思うけどね。

 結果、ルシェードはその時刻には知り合った女性とダンスを、カロンは珍しいリーフリースの食事に夢中だったとのこと。

 もちろん仮面をしていたので周囲の証言などはなく、本人の言葉を信じるしかないが、事実なら皇女を助けたのは彼らではない。

 助けた本人に『知りません』って言われちゃったら、確認しようもないんだけどなあ、これ……。

 そりゃ博士の嘘発見器キーラーポリグラフやラミッシュ教皇猊下の嘘を見分ける『真偽の魔眼』を使ってもらえばすぐにわかるけどさ。悪いことをしたわけでもないし、そこまで暴き立てることじゃないからなぁ。

 ……めんどい。やっぱり全員に【リコール】使って記憶を探ったろか……。


「ダメです、よ。【リコール】を使っちゃ」

「……ソンナコト考エテナイヨ」


 リンゼに釘を刺された。むう、鋭い。まあ、【リコール】は渡したくない記憶までは読めないから、本人が拒んでいたら無理なのだが。神気で強化すれば読めるけどね。……いや、やりませんよ?

 最後の一人、副団長のニコラさんに話を聞くため、僕らは騎士団の訓練場にやってきた。今日もみんな訓練に勤しんでいる。諸刃姉さんの組んだ地獄のメニューを消化中だ。

 初めは死屍累々と倒れたみんなの姿をよく目にしたけど、最近はあまり見られなくなった。それだけ実力がついてきたんじゃないかと思う。

 たぶんだけど、みんな強さだけなら赤ランク……一流の冒険者レベルの実力があるんじゃないかな。ただ、冒険者と騎士では必要なスキルが違ったりもするので難しいところだが。騎士団じゃ『宝箱の罠解除』みたいな訓練はしていないしね。


「あれ、冬夜じゃない。どうしたの?」


 訓練場に顔を出した僕らにエルゼが声をかけてきた。ベンチに座り、タオルで汗を拭っている。王妃になってもこういったところは変わらないな。


「ああ、ちょっとニコラさんに用があってさ。いるかな?」

「副団長の? 副団長なら、ほらあそこ」


 エルゼの指し示した先では木槍と木剣が交差していた。

 裂帛の気合いで突き出したニコラさんの木槍が軽く避けられ、下から木剣で弾かれる。

 わずかにニコラさんが動きを止めたその時、長い槍の射程を一瞬で詰めた八重が、まるで稲妻のように胴を薙ぎ払った。


「ぐっ……!」


 ガクッ、と前のめりにニコラさんが膝をつく。む、大丈夫かな?


「そこまで。立てますか?」

「は、い。大丈夫、です」


 審判のヒルダにニコラさんが起き上がりながら短く答える。

 ニコラさんは決して弱くない。八重がちょっとおかしいのだ。その八重でさえも諸刃姉さんには手も足も出ないのだから、うちの騎士団で増長する奴はいない。武流叔父に言わせると『強さというものを誰かと比較しているうちは二流』らしい。


「では次! 構えて!」

「よろしくお願いします!」


 ニコラさんが八重たちの前から下がると、後ろに控えていた騎士団員が代わりに前に出る。

 ベンチへと戻ってきたニコラさんは、タオルで汗を拭き、自分の水筒から水を飲む。疲れているところ悪いけど、僕はニコラさんに声をかけた。


「ちょっといいかな?」

「これは陛下。なんでしょうか?」


 立ち上がろうとする彼をとどめて、僕はリリエル皇女ということを伏せて、心当たりはないか話を聞いてみた。


「……いえ、私は知りませんが」

「あ、そう……」


 ううむ。うちの誰かだったら楽だなぁ、とか思っていたけど、そうはいかなかったか。

 となるとしらみつぶしかぁ……。めんどいのう……。

 ちなみにリリエル皇女のところ、つまりリーフリースからの参加者でもないようだ。リーフリースの黒仮面は二人いたが、どちらともちょっとぽっちゃりさんだったので体格的に違うと判断したらしい。仮面の効果は体型まではごまかせないからさ。

 仕方ない。各国の王様たちに黒仮面さんたちを紹介してもらって、一人一人当たってみるか……。


「そういえば……。おかしいな……?」

「何が?」

 

 ベンチに座るエルゼが僕のつぶやきを聞きとめて尋ねてくる。


「こんな話題をしているのに、花恋姉さんが現れない……。いつもなら『お姉ちゃんにお任せなのよ!』とか言って背後に突然現れるのがお約束なのに……」

「花恋お義姉ねえ様にもなにか用事がおありなのでは?」


 苦笑しながらユミナが答えるが、甘いよ。甘すぎるよ。もともと今回の舞踏会はあの人が言い出しっぺだよ? なんでこんな面白そうな話(花恋姉さんにとっては)に触れてこないんだ?

 恋愛神が恋バナに食いつかないのはそれなりの理由があると見た。ひょっとして……この恋は実らない……?

 舞踏会は結婚していない独身者に参加を呼び掛けた。基本的には自主参加だったのだけれど、中には上からの命令で仕方なく参加させられた人もいたかもしれない。

 すでに彼女とかがいるのに参加させられた、とか。だとしたらちょっとキツいんスけど……。皇女にそれ告げるの僕か?

 いや、まだそう決まったわけじゃないけど……。厄介なことにならなきゃいいが。

 僕はなんとも重い気持ちになりながら、とりあえず手始めにベルファスト国王陛下に電話をかけた。





「全滅? それじゃ、誰も身に覚えがなかったの?」

「うん。みんな知らないって。はぁ……」


 僕はソファーにぐったりともたれかかる。リーンに話した通り、舞踏会の参加した黒仮面全員に聞いたのだが、誰も名乗りを上げなかった。ということは、助けた本人は嘘をついてまで名乗り出たくなかったということになる。

 ますますもってこれってアウトなんじゃ……。嫌がっているのを無理矢理引っ張ってくるのはどうかとも思うし。


「擬人型ゴレムのことといい、なんでこう面倒事が次から次へと来るかねえ……」

「私は面倒事を抱え込んでいないダーリンはダーリンじゃない気がするわね。そういうものだと自分の運命を受け入れなさいな」


 なんか理不尽な気が。人をトラブルメーカーみたいに言わんでほしい。

 しかし、どうするかなぁ。『わかりませんでした。ごめんなさい』と告げればこの話はそれで終わりになる気もするが、リリエル皇女の気持ちは宙ぶらりんになる。

 まだ恋かどうかもわからない、ちょっと気になる人……ってレベルなら、まだ引きずることもなく終わらせることもできるかもしれない。

 でもそれを決めるのは僕じゃない。リリエル皇女本人が決めることだ。

 できるだけ力になってあげたいところだが……。

 ソファーにもたれかかっていた僕の懐から着信音が放たれる。んもー、こんな時に誰ー? もうこれ以上の面倒事はご勘弁ですよう?

 スマホを取り出し、着信名を見ると、『アリアティ・ティス・アレント』と出ている。

 えーっと……あ、アレント聖王国の聖王陛下のお孫さん……お姉さんの方か。氷国ザードニアの新国王フロスト陛下の婚約者になると噂の。

 そういや量産型のスマホを渡したっけな。フロスト陛下と聖王陛下に頼まれてさ。電話がかかってきたのは初めてだけど。


「はい、もしもし。アリアティさんですか?」

『あ、はい。公王陛下でいらっしゃいますか? 突然ご連絡差し上げて申し訳ありません。実は少々相談に乗っていただきたいことがございまして……』

「ぷっ」


 向かいに座っていたリーンが紅茶を吹き出す。よほど僕はその言葉を聞いて変な顔をしていたらしい。

 いやだって、また面倒そうな話なんだもの……。ちょっと……そんなに笑いを堪えるほどか? リーンがプルプルと震えているけどこの際無視だ。


「あ、いや、なんでもないです。それで? いったいどういったことですか?」

『その、実は公王陛下に内密に会ってほしいという方がいまして……。ガンディリスの方なのですが……』


 ぬ?









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