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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
463/637

#463 作家姫、そして仮面舞踏会。





「────あなたたちを呼んだのは他でもないわ。このままでは私たちは破滅に向かうことになるからよ」


 物騒な前置きで語り始めたのはリーフリース皇国の第一皇女リリエル・リーム・リーフリース。

 内密に話をしたいと、スマホではなく『ゲートミラー』で届いた手紙により、僕らはリーフリース皇宮へと来ていた。

 僕の他に両脇にはユミナとリンゼがいる。この二人はリリエル皇女と仲がいい。彼女たちも僕と一緒に呼び出されたのだ。


「いったいなにがあったんですか、リリ姉様。ずいぶんと顔色が悪いようですけど」


 ベルファストとリーフリースは古くからの友好国である。そのため、子供の頃から付き合いのあるユミナはリリエル皇女を姉のように慕っていた。

 確かにユミナの言う通り、リリエル皇女の顔は真っ青になっていた。大丈夫かいな。【リカバリー】か【リフレッシュ】かけるか?


「とられたのよ……」

「とられた? なにをです?」

「スマホをよ!」


 えっ!? スマホを盗まれたのか!?

 僕のをオリジナルとして博士が作り上げた量産型スマホは、各国の代表、及び重臣、僕の友人知人に渡してある。目の前にいるリリエル皇女にも渡してあった。それが盗まれた?

 スマホは魔道具アーティファクトとしてもかなり価値のあるものだ。狙われてもおかしくはない。


「だ、大丈夫ですよ。あのスマホは冬夜さんの力で、たとえ盗まれても呼び寄せることができるん、です。すぐ取り戻せますよ。ね、冬夜さん」

「ほ、本当!?」


 リンゼの言葉に青ざめていたリリエル皇女の表情がパッと輝く。

 こんな場合を想定して、あのスマホにはいろんなプロテクトがかけられている。そのうちの一つに、登録されたスマホを付与された【アポーツ】と【テレポート】によって、僕のところへいつでも自在に帰還させる、という機能があるのだ。これを使えばどんなに離れていても僕の手元へ取り戻すことができる。


「ああ、本当だ。すぐに取り戻してやるよ」


 僕は自分のスマホのメモから、全員分の配布リストを呼び出した。

 量産型のスマホにはそれぞれシリアルナンバーが登録されている。それを頼りに特定のスマホを引き寄せることができるのだ。さすがにスマホ自体をバラバラにされていたら無理だが、価値を知っていて盗んだのならその心配はあるまい。

 えっと、リリエル皇女に渡したスマホのシリアルナンバーは……と。


「よかったわー。お父様に取り上げられたときはどうなることかと、」

「……ちょっと待て。取り上げられた?」


 操作していたスマホから顔を上げ、変なことを口にした皇女に視線を向ける。


「そうなのよー。式典中にちょっといじってただけなのに、お父様がねー。〆切が近いってのに、つまんない式典なんか出席してる暇なんかないっての。時間がもったいないって……」

「それ自業自得だろ。さすがに却下だ」

「ちょ、なんでぇ!?」


 いやいや。盗まれたならまだしもそういった状況なら取り返すわけにもいかんでしょ。元々は大事な式典中にポチポチやってたあんたが悪い。なにが『私たちは破滅に向かう』だ。自分だけだろ。


「いやいやいや! 取り戻してもらわないと困るのよ! あの中には書きかけの原稿もあるし、もしもお父様に読まれたら身の破滅なんだから!」

「え、と、先生。ロックはかけておかなかったんです、か?」

「そりゃもちろんかけてあるけど、あんな番号だけのロック、時間をかければ外されちゃうわよ!」


 んー……まあ、それは確かに。リーフリース皇王が娘のスマホを覗き見るかどうかは微妙なところだが。父親として大事な式典中になにをしていたのか気にはなるだろうし。


「ちなみに書いていたのは……」

「『真・薔薇の騎士団』最新巻の原稿よ。ハードな巻でね、新人騎士として入ってきた少年を、違うタイプの第一部隊長と第三部隊長が優しく、時には激しくせめたてて……」

「説明せんでいい。つーか、完結したんじゃなかったのか、あの作品……」


 リーフリース皇国、第一皇女リリエル・リーム・リーフリース。その裏の顔は知る人ぞ知る仮面作家リル・リフリスその人である。

 まあ、その、なんだ。恋愛モノ……? を中心にした作品が多い。

 一部の層には爆発的な人気があるらしく、確かリンゼもファンだったはずだ。


「あれをお父様が読まれたら、間違いなく私は修道院送りになるわ……。毎日毎日精霊にお祈りを捧げるようにして、心を浄化させようとするに違いないもの」

「浄化しないといけないって自覚はあるんだな……」


 まあ、あんな過激なモノを書いてたらなあ……。皇王陛下、ぶっ倒れるんじゃなかろうか。

 見られたくないなら一応リモートワイプのように、遠隔操作でデータを全て消すってこともできるっちゃできるんだが。

 その旨を伝えると鬼のような形相で睨まれた。


「はあ!? あれ書くのにどれだけ苦労したかわかってんの!? 何ヶ月もかかって書いたものを一瞬で消そうとか悪魔か! まだ印刷もしてないんだから、あれ消えたらあたし死ぬからね!」

「えっと、すいません……」


 がるるる……! とリリエルが威嚇してくる。こいつ本当に皇女か……?

 当たり前だけど、この世界にはPCがない。なのでこういったものを個人でバックアップすることはできず、僕が渡した『魔導印刷機プリンター』で印刷して保管するしかないのだ。

 余程のことがなければデータの消失とかはないはずだが、自分で間違って消去してしまう可能性は普通にあるからなあ。僕も何回かやったことあるし。

 作家にとって書き上げる直前の原稿データが消えるってのは、それほどのダメージなのだろう。ま、博士に頼めば復元できるとは思うけとさ。


「素直に謝って返してもらうしかないんじゃないですか? 中を見られる前に」

「いや、返すとは言ってくれたんだけど、その条件がね……」


 ユミナに提言されたリリエルは視線を外しながらそう答えた。なんだ、ちゃんと返してくれるんじゃないか。ならわざわざ僕らを呼び出さんでも……。


「ユミナ、結婚したでしょ? で、お前はどうするんだ、相手を探せ、早く孫の顔を見せろ、とかお父様が言い始めて……。私もお見合いしろって……」

「あれ? リリエル皇女って婚約者とかいなかったっけ?」


 確かずいぶん前に皇王陛下からそんな話を聞いたよーな。僕がなにげなく疑問を口にすると、ユミナがあっ、と焦ったような表情を浮かべた。え、なにかまずかった?


「いたけど、向こうに好きな人ができて駆け落ちされた」


 リリエル皇女の言葉に部屋の空気が重くなる。

 や……それは……。

 一国の皇女よりも家を捨ててまで愛を貫いたその男性を、同じ男としては褒めたい気持ちもあるが……逃げられた方としては笑えんよなあ……。

 皇女との婚約を自分から破棄にもできなかったろうし、彼にとってはそれしか方法がなかったのかもしれない。ベルファストにある侯爵家の息子だったらしいけど、その後いろいろと揉めたようだ。まあ、そりゃなあ……。

 

「ま、私もあまり好みじゃなかったし、結婚なんかして余計な時間を割かれたくなかったから特に問題なかったけどね!」


 あはははは! と笑っちゃいるが、目が笑っていない。あ、これけっこうトラウマになってるやつだ。それがきっかけでさらに趣味に走ったんじゃないよな? なんか切なくなってきた……。

 ぶつぶつとなにやら呪いの言葉のようなものを虚空に放っていたリリエル皇女が、ユミナとリンゼにブスっとした表情で視線を向ける。


「だいたい結婚ってどうなの? 面倒くさくない? あんたたち本当に幸せ?」

「「最高に幸せですが、なにか?」」

「爆発しろ!」


 爽やかな笑顔で即答する二人にキレるリリエル。うぬう。いささかテレます。まだ新婚だからね。そこはね、うん。


「でも一国の皇女のお見合い相手となると、どんな方がいいんでしょう……。やっぱり王侯貴族でしょう、か?」

「お父様は家柄とかあまり気にしないから、将来性があれば一介の商人や冒険者でも大丈夫だと思うけど、国のことを考えるとやいのやいのと言う奴がいるからやっぱりそうなるわね。相手はうちの上級貴族や、付き合いのあるベルファスト、リーニエあたりの有力貴族とか……。あ、ユミナのところの弟くんって手も……」

「ヤマトはダメですよ?」

「あ、うん……」


 食い気味に釘を刺してきたユミナにリリエルがたじろぐ。笑顔が逆に怖い。まあ僕もそれは反対する。

 さすがに二十歳も離れているんで、それは冗談だろうけど。


「ま、まあ、おそらくお父様が舞踏会や晩餐会を開いて、貴族の子女を招待するんだと思うけど。それに出席しろって話ね。スマホが人質になっている以上、従うしかないわ……」


 リリエル皇女が、はあああああぁぁぁ……と、長い溜息をついて机に突っ伏してしまった。そんなに嫌か。


「で、でも、ひょっとしたら素敵な方と出会えるかもしれません、よ?」

「どーだか……。どーせまた、代わり映えしない顔ぶれに決まってるわ。どっちみち私の秘密を知られるわけにはいかないから、結婚はお断りだけどね」


 ムスッとした表情で、皇女が顔を上げる。やさぐれているなあ。

 ともかく一応お見合いには出る気らしい。じゃないとスマホを返してもらえないからだろうが。


「ねえ、やっぱりあなたからお父様に頼んでくれない? 反省しているからスマホを返してあげてくれって」

「えぇー……。嘘はつきたくないなあ」

「嘘じゃないわよ。反省してるわよ、一応」


 だからそれが嘘くさいっての。一応ってなんだ、一応って。まあどっちみち皇王陛下には挨拶に行く気だったけどさ。聞くだけ聞いてはみるけど……。





「まったく……あいつは一国の国王をなんだと思ってるんだ? すまんなあ、冬夜殿。どうせ娘が頼んできたんだろ?」

「いや、まあ……。はは……」


 バレてら。

 リリエル皇女の頼みをきいて、皇王陛下のところに来たけど、どうやらお見通しだったらしい。

 この様子だとまだ中身を見ちゃいないな。式典でポチポチやっていたのもメールのやり取りをしていたと思っているみたいだし。

 ちなみにユミナとリンゼはリリエル皇女の部屋に置いてきた。女同士で積もる話もあるだろうし、リリエル皇女が次回作のアイディアを聞いてほしいと言い出したので逃げてきたのだ。


「あいつもいいかげん相手を決めないと、本当に行き遅れてしまうからなあ。なにが気に入らないのやら」


 確かリリエル皇女って、二十歳……だったか? それで行き遅れになるって、現代日本の感覚だととても信じられんが。

 皇王陛下がテーブルの上に置いていたリリエル皇女の量産型スマホを手に取る。


「悪いがやはりこいつは返せんな。こうでもせんとあいつはなんだかんだと見合いを先延ばしにするだろうし。ここらで決めてもらわんとリディスの結婚式に独身で出席する羽目になりかねん」


 渋い顔をして皇王陛下がソファにもたれかかる。リディスというのはリーフリースの皇太子で次期皇王、リディス・リーク・リーフリース君のことだ。リリエル皇女の弟で、確か十三歳。

 このリディス君、姉とは違ってちゃんと婚約者がいる。ミスミド王国のティア・フラウ・ミスミド王女(12)だ。

 獣人族が王家に嫁入りってのは大丈夫なんだろうかとも思ったが、リーフリースの貴族たちなどからは反対意見もなく、あっさりと認められたらしい。

 国境の八割が海で囲まれたこの国は、貿易によって発展してきた海洋国家である。ベルファストほどではないが、それなりに歴史も長い。

 その長い歴史の中でリーフリースは多くの民族と付き合ってきた。雑多な民族が入り交じり暮らす国であるから、当然、王家にもいろんな民族の血が流れているという。獣人族の一人や二人、なにを今さら、ということらしい。

 さすがに単なる村娘なら揉めたろうが、相手は発展目まぐるしい新興国の第一王女だ。充分に国の利益になる婚姻であり、問題はないと判断されたみたいだ。

 相変わらず大雑把というかおおらかな国だよな……。

 そんな背景からかリーフリースには豪快で陽気な人が多い。目の前の皇王陛下を見てるとよくわかる。

 楽しけりゃいいや、的な。皇女もそういった気質を受け継いでいるんだろうなぁ。弟君は大人しくて、利発そうな子なんだけども。


「リディス皇太子とティア王女はいつごろ結婚を?」

「一年……長くても三年ってとこか。んで、あいつが二十歳あたりになったら役目を全部押し付けてワシは楽隠居だ。ベルファスト国王は王子が生まれたばかりだからまだだろうが、レグルス皇帝あたりと一緒に老後を楽しむつもりだよ」


 確かにレグルス皇帝陛下もそろそろ退位するらしいけど、老後って。リーフリース皇王って四十超えたくらいじゃないの? いや、四十過ぎを『初老』っていうから間違いじゃないのかもしれないが。


「だからその前になんとかあいつの縁談もまとめたい。冬夜殿、誰かいい男はおらんかね?」

「と、言われましてもねえ……」 


 パッと思いつく人たちは大抵相手がいたりするしなあ。


「やっぱり貴族とかじゃないとダメなんですよね?」

「ワシ個人としてはどうでもいいと思うんだがな。あの子を大切に思い、幸せにできる男なら。だがあの子の結婚は我が国としても大事なカードだ。うちの貴族たちも国の利益にならない相手との結婚は許さんだろうな」


 うーむ、面倒だなあ。いや、僕もいずれ八人(あるいはそれ以上)の娘を持つことになるらしいから、人ごとじゃないか。

 例えば僕の娘が王侯貴族じゃなく、一介の冒険者なんかと結婚したいと言い出したら……。

 …………いや、関係ないな。貴族だろうが冒険者だろうがうちの娘をそんじょそこらの馬の骨にはやれんぞ。生半可な男ならお父さんは許しません。くっ、魔王陛下の気持ちがちょっとわかった。

 しかし身分がそれなりで独身となると……えーっと、会ったことはないが、魔王国ゼノアスの第一王子はフリーだったはずだ。母親は違うが一応桜の兄な。脳筋らしいけど。

 それから武流叔父にぶっ飛ばされたラーゼ武王国の第二王子、ザンベルトがいたか。脳筋だけど。脳筋ばっかりか。


「冬夜殿に兄とか弟とかはおらんのか?」

「いない……と思います」

「思います? …………ああ、いろいろ大変なんだな……」


 皇王陛下は不思議な顔をしていたが、なにを納得したのかそれ以上は突っ込んでこなかった。おおかた僕の父親があちこちに子供を作っていたとでも思ったに違いない。面倒なんで訂正しないが。これ以上増えないとは思うけど。


「仕方ない。やはり見合いの夜会でも開くか。しかしもう大抵の相手とは引き合わせたしなあ……。今さら感があるな……」

「裏世界……西方大陸の国まで声をかければ違った顔が集まるんじゃないですかね。ちょうどリーフリースはそっちと唯一陸続きになった国ですし」

「お、その手があったか! パナシェスの国王陛下なら力を貸してくれるかもしれんな」


 リーフリース皇国とカボチャパンツの王子様がいるパナシェス王国は、二世界が融合したとき唯一地続きになった国だ。

 僕を介してすぐさま二国間での話し合いがあり、それ以来両国は友好的な交流が続いている。パナシェスの国王陛下は子煩悩で穏やかな人だから、たぶん喜んで協力してくれるだろう。


「パナシェスの王子に婚約者あいてがいなければリリエルを嫁に出すんだがなあ。残念だ」


 あのカボチャパンツの王子にか……? いや、変わり者同士で案外うまくいくのかもしれない。

 だけどロベール王子にはセレスという、ストレイン王国女王陛下の姪にあたる婚約者がいる。なんであんなハイテンション王子にあんな素敵な婚約者がいるのか不思議でしょうがないが、人のことは言えないので口にはすまい。

 あ、セレスと女王陛下に頼めばストレインの王侯貴族も呼べるかもしれないな。


「うむ。東方西方の合同お見合いパーティーか。これはいい。他国にもメリットはあるし、悪い話ではないだろう」

「向こうも他国との繋がりは欲しいでしょうしね。ただそういった外交メインのパーティーにならないといいですけど」


 お見合いは二の次で、人脈作りや挨拶回りがメインになっては何のためにパーティーを開催したのかわからない。やっぱり自分にとって最高のパートナーを見つけてほしいし。国のしがらみとか無しにさ。


「だったら身分を気にしないでいいように、仮面舞踏会の形式でやればいいのよ。その方が面白いのよ」

「なるほど! それなら王子王女だからと気にせずに声をかけたりできるな」

「ですね! 仮面舞踏会か……面白そうだ。なら仮面の方は僕が用意しますよ。会場は皇王陛下に…………ちょっと待て。なんでここにいるの、花恋姉さん?」


 皇王陛下がポカンとしているのを見て、横に視線を向けるとうちの馬鹿姉がソファに腰掛けて僕の紅茶を横取りしていた。


「面白そうな話があれば即参上! それが望月花恋なのよ!」

「アホかあぁぁッ!」


 僕の質問にバチコーン! とウインクをかましてきた花恋姉さんを怒鳴りつける。ブリュンヒルド(うち)の敷地内ならまだしも、他所様の城に転移してくるってなにしてんの!?

 目の前のにいる皇王陛下に深々と頭を下げる。


「すみません、すみません、うちの馬鹿姉が本当にすみません!」

「いや……この城とこの部屋、二重に転移阻害の結界が張ってあるんだがな……。こうもあっさりと侵入されてはうちの宮廷魔術師たちも自信を失くすぞ……」


 いや本当にすみません。普通の転移魔法ならそれで充分に防げます。実際僕らも城下まで転移してから来ましたし。

 ただ、花恋姉さんや諸刃姉さんらの転移術は神技【異空間転移】の延長で、魔法ではないから効果がないんです……。


「二度とこのようなことがないように言って聞かせますので……!」

「冬夜君もこう言っているから許してやってほしいのよ」

「誰のせいだと思ってんの!?」


 関係ない顔してクッキーをボリボリ食いやがって! くそっ、花恋姉さんは一週間おやつ抜き!


「まあ、花恋殿は冬夜殿の姉上だしな……。今さらか。それよりもさっきの仮面舞踏会の話、どれぐらい人を集められるかな?」

「冬夜君のコネを使えば西方大陸あっちの王家や貴族の子女をかなり集められるのよ。まずは仮面のまま舞踏会で知り合ってもらう。その後、気に入った人がいたならその人を教えてもらって、後日、素顔の写真と釣書を送り、本当のお見合いをセッティングすればいいのよ」


 いや、それほどコネはないけども。でも国のトップとは知り合いだから、手回しはしてもらえるかな。


「ふむ。ならばこれは皇国うちが力を入れて開催しよう。さっそく招待状を書かねばなるまい。忙しくなりそうだ」

 

 皇女の問題が解決しそうだからか、リーフリース皇王が明るく笑う。

 結局、リリエル皇女はその仮面舞踏会に出席することを条件に、スマホを返してもらえたようだ。

 だけど相手が見つかるかは難しいんじゃないかなあ……。趣味が合う相手がいるかな……。

 ついでといったらなんだが、ブリュンヒルド(うち)からも何人か出席させてくれと言われた。ブリュンヒルドには貴族なんかいないので、必然的に騎士団員や要職にある人たちになる。

 あまり集まらないと思うけど、一応声はかけてみるか。強制はしないけどさ。

 






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