#459 妹、そしてボディガード。
■2017年、今年最後の更新です。間に合ってよかった……。
「んう?」
「どうしたんだい、桜?」
母さんと話していた桜があさっての方向に視線を向ける。訝しんだ母さんも、桜が視線を向けた方向へと首を回した。
自然と僕もそちらの方向へと目を向けてしまったが、その先はどこまでも花畑が続いているだけで何も見えない。というか、この世界に僕ら以外の何かがいるわけがないのだが。
であるにもかかわらず、桜は耳に手を当てて、何かを聞き取ろうとしていた。桜は眷属特性『超聴覚』を持っている。人の聞き取れない音域の音や、遠くの音でも選び取り、聞き取ることができるのだ。なんか聞こえるのか?
「変な声がする……うめき声?」
「え?」
うめき声!? なにそれ、怖っ! ホラー的な!? そんなのを設定した記憶はありませんが!?
「……や、違う……。なんか赤ちゃんがぐずってるような……」
「「あっ」」
父さんと母さんが『ひょっとして……』と足早に歩き出す。え? なに?
僕らも慌てて二人の後を追う。
数分歩いた先の花畑の中に、埋もれるようにして、ベビー服を着た赤ちゃんを見つけた。今にも泣き出しそうな顔をしてぐずっている。
「やっぱり。よしよし。えらいねー、泣かなかったねー」
「だうぁ……」
母さんが花畑の中からその赤ちゃんを抱き上げる。ひょっとしてその子って……まさか。
母さんが笑顔であやしながら、僕の方へと赤ちゃんを向ける。
「ほら、冬花ー。お兄ちゃんだぞー」
「う?」
やっぱりそうか。まんまるで小さな黒い瞳が僕に向けられる。この子が僕の……。妹が生まれたんだな。
そうか、あの家全体を【コネクト】の効果範囲に指定したから、眠っていたこの子までこっち側に引っ張り込んでしまったのか。
「やっぱり冬花さんでしたか。冬夜君に会いたくて僕の夢に入り込んできたのかな?」
「私の夢にだよ。兄に挨拶に来るとはさすが私の娘、気配りができる子だよ」
「いやいや、綴さん。僕の娘でもあるんですよ」
二人とも変な言い争いをしながら赤ちゃんをあやしている。あれ、二人ともこんなに親バカだったろうか? どっちかというと僕の時は放任主義だったはずだが。じいちゃんに任せっぱなしだったし。
ちょっと嫉妬心を感じてしまったが、「ほら」と、その子を母さんに渡されて、そんな気持ちは吹っ飛んでしまう。
「だぁう」
「わ……」
冬花が紅葉のような小さな手を僕に伸ばしてくる。かわいい。赤ちゃんを抱いたのは初めてではないけれど、一番かわいく見えるのは妹だからだろうか。
「うわあ、うわあ! かわいい、です!」
「本当じゃのう!」
「これはかわいい。断言する」
僕の周りをリンゼとスゥ、桜が囲んだが、冬花は泣き出すようなそぶりもなく、彼女たちを興味深そうに眺めている。
「『ふゆか』ちゃん、というのですね」
「『ふゆか』か『とうか』か、読ませ方を悩んだけどね。女の子なのにあだ名が『とうちゃん』になったらかわいそうかと思ってこっちにした」
ケラケラと笑いながら、母さんがユミナに説明している。そのあだ名、小学生の時に付けられそうになったぞ、僕。母さんの後ろで苦笑している父さんもおそらく経験があるに違いない。『冬一郎』だしな。
「だぁう、だぁ」
「おっとと」
「わ」
冬花が身をよじって、そばにいたリンゼの方に手を伸ばす。物怖じしない子だな。なかなかアグレッシブな性格のようだ。……母さん似かな。
「かまわないから抱いてごらん」
「え、いいんです、か?」
「お義姉ちゃんなんだから当たり前だろ。遠慮しないでいいんだよ」
母さんの言葉を受けて、リンゼに冬花をゆっくりと手渡す。こっちは落とさないようにと気をつけているのに、冬花はリンゼの方へと早く早くと、まるで急かすように手をじたばたさせていた。
「だぁう、どぅ」
「初めまして、冬花ちゃん。リンゼお義姉ちゃん、ですよ」
「だぁう♪」
リンゼが話しかけると、冬花はご機嫌な笑顔を返してくれた。花がほころぶような笑顔とはこのことをいうのだろうか。ちょっと奥さん、天使がいますよ?
「あ、あたしも抱いていいですか?」
「落とさないように気をつけてくれれば、かまやしないよ」
自分も抱きたくなったのだろう、エルゼが母さんに許可を求めていた。他のみんなも代わる代わる冬花を抱いて、幸せそうな笑顔を浮かべていく。モテモテだな、僕の妹は。
「よく笑う子でござるなあ」
「こっちまで微笑ましくなりますわ」
八重の腕の中できゃっきゃっ、とはしゃぐように笑う冬花をルーが覗き込む。
「あまり人見知りをしない子のようですね」
「さすがダーリンの妹ね。肝が座っているというかなんというか……。将来、かなりの女傑になるんじゃない?」
「おいおい……」
ヒルダとリーンの会話に思わず突っ込んだ。女傑ってなんだ。男をばったばったとなぎ倒していく巴御前のような姿に成長した冬花が僕の脳裏に浮かぶ。まあ、優しい子に育ってくれればそれでもいいけどさ……。
難しい顔をしていた僕の肩を、母さんがぽん、と叩く。
「ま、冬花もいるし、私たちは楽しくやっているから、あんたは心配しないでちゃんと成仏するんだよ?」
「いやまあ……うん」
なんと言ったらいいものか。親に成仏を願われるってのはけっこうクるものがあるなあ……。
母さんたちは日村くんのネームを読んだ記憶から、都合よく作られた夢だと思っているから仕方ないけどさ。
いっそ全部本当のことをぶちまけてもいいような気がしたが、あくまで僕がここにいるのは新神研修の一環で、こちらに自由に来ることはできない。
世界神様の許可をもらえば来られるのかもしれないが、世界神様だって僕ばかりに何度も便宜を図ることはできないだろう。眷属だからといって依怙贔屓しているように見られるのもなんだしな。
それにもう僕は向こうの世界で生きていくと決めたのだ。彼女たちとともに、これからもずっと。
◇ ◇ ◇
「小学校の先生から電話が来たときはびっくりしたよ。朝に家を出たはずの冬夜が学校に来てないってんだからね。事故か誘拐かってこっちが騒いでたら、警察署から連絡が来てさ。なにしてたと思う? 筏で川下りだよ。途中で筏が壊れて溺れかけてたところを助けられたんだ。まったく馬鹿な子だよ」
「なんでまた筏なんか……」
「川を筏で下れば歩いて学校へ行くより早く行けると思ったんだとさ。行けたところで次の日はどうする気だったんだか」
もういいだろ、その話は……。
背後では花畑の中で母さんによる僕の暴露大会が開かれていた。
僕はいたたまれなくなって、父さんと二人でみんなから離れ、【ストレージ】に保管してあったルーお手製の料理を食べている。
「懐かしいねぇ。小学校二年生くらいだったっけ?」
「……一年生だよ」
だいたい筏で川下りは父さんからもらった『トム・ソーヤーの冒険』がヒントになったんだぞ。子供でも筏を作れるんだってね。
だけどやっぱりその辺の廃材や古いロープ、それに子供の力なんかじゃ、まともなものは作れなかった。船出してわずか数分であっさりと分解、川の真ん中で沈没したんだ。ほんと、真冬じゃなくてよかった。
あのあと、いろんな人に怒られたなぁ……。じいちゃんにだけは『造りが甘い!』と筏の製作技術の未熟さを責められたが。
しかし夢だと思っているからか、さっきから母さんは人の黒歴史を遠慮なく……。いや、夢だと思ってなくても遠慮なく語るな、あの人は。
みんなもすっかり打ち解けてしまって、いろいろと母さんに聞いている。あまり黒歴史をほじくり返してほしくないんだけど……。
「しかし、冬夜君が結婚とはね。夢とはいえ、めでたいなぁ。嬉しいよ……」
「これからいろいろと大変だけどね……」
「冬夜君。結婚はね、男の方が一歩引いた方が何かとうまくいくもんだよ。夫婦生活を潤滑にしたいなら、ね」
うーん、うちの奥さんたちは僕が一歩引かないでも自分から前に出るタイプが多いからな……。逆にぐいぐいと引っ張られるというか。異世界の女性はけっこう行動力があったり、ものをはっきりと言うタイプが多いし。
一番おとなしい(と思われる)リンゼでさえ、自分の意見ははっきりと僕に言うしな。
逆に頼り甲斐があるから、頼りっぱなしじゃ男として情けない、とか考えちゃうんだよね。くだらない男の見栄なんだとわかってはいるんだけど。
「そんなものはさっさと捨てたまえ。家族に見栄を張っても無駄さ。カッコ悪いところも含めて全部受け入れてくれるのが家族なんだから、男の見栄やプライドなんて無意味なだけだよ?」
……まあ、確かにそうだとは思うけど。
昔の失敗話を聞かれたところで『かっこ悪っ』と、みんなに嫌われるとは思ってないけどね。僕だってみんなの過去話を聞いて、それで嫌うことなんかありえないし。
「冬夜の初恋の相手は祥子ちゃんって言ってお隣のお姉さんでね」
「ただ、それと恥ずかしいのは別物だろ!」
止まらない母さんの話を背中で聴きながら僕はルーの作った弁当をやけ食いする。ああ、もう! 美味いなあ!
「う、ぶ、うあう……」
「ありゃ、冬花? おねむかい?」
振り返ると、母さんに抱かれていた冬花が小さなあくびを漏らし、まぶたをとろんとさせていた。
無理もない。寝ていたところを【コネクト】で意識を繋がれ、引っ張ってこられたのだ。赤ん坊じゃなくても精神的に疲れてくるはずだ。
それとも兄の名誉を守らんがため、気を利かせてくれたのだろうか。よくできた妹だ。お兄ちゃん嬉しいよ……。
「……そろそろお暇するよ」
「もうかい?」
ルーのお弁当を【ストレージ】に片付けながら僕は立ち上がった。目的は達したし、あまり長くいても別れが辛くなる。父さんが残念そうな眼差しでこちらを見上げてくる。
「あまり長い間ここにはいられないんだ。冬花も眠そうだし、そろそろ戻るとするよ」
「そうか、残念だなあ」
【コネクト】での亜空間維持には神力が消費される。長くは持たない。その前に帰らないとな。……それとやっぱりこれ以上、黒歴史を晒されたくはないし。
父さんも立ち上がり、二人でみんなのところへ向かう。父さんがルーの料理を褒めちぎると彼女は赤くなりながら喜んでいた。反対に母さんは難しい顔をしていたが。
じいちゃんも父さんも料理がうまいのに、母さんはあまり得意じゃないからなぁ。僕にとってのおふくろの味は、おにぎりとサンドイッチだ。それだけに特化したからか、母さんのおにぎりとサンドイッチはものすごく美味い。僕だけがそう感じるのかもしれないが。いや、父さんも同じかな。
もう一度あのおにぎりとサンドイッチを食べたかったけど……。
「いくのかい?」
「ん。あんまり冬花を夜更かしさせるわけにもいかないしね」
「だぁう……」
母さんの腕の中で冬花が身をよじる。これは相当おねむだな。早く解放させてあげないと。
「お盆には帰ってくるんだよ。キュウリかナスで馬を作っとくからさ。ああ、ついでに父さんも引きずってきな。あんたと同じで夢にも現れやしない。孫娘の顔ぐらい見に来いって言っときな」
「いや、まあ、会えたらね……」
母さんの言葉に曖昧に答えておく。いや、じいちゃんがどこにいるか知らんし。天界にいるのかね? 夢に現れないってのは、じいちゃんのせいじゃない気がするけどなあ。
お盆に来られるかは怪しいけど、いつか必ずまた来よう。大きくなった冬花も見たいしな。
「じゃあ、僕らはこれで。二人とも元気でね。冬花もまたね」
「あんたも元気で……ってのは変か。ま、みんなと楽しくやりな。その子たちを泣かすんじゃないよ?」
「また会えるのを楽しみにしているよ。次はもっとゆっくりできるといいね」
神族としての実力が付けば、もっと長時間精神世界に滞在することも可能になると思う。そうなれるようもっと頑張らないとな。
「【ディスコネクト】」
精神世界との接続を解除する。やがて視界がぼんやりと曖昧になっていき、僕らは現実世界へと帰還した。
「ん……」
絨毯の上から立ち上がる。うん、意識ははっきりとしているな。視線が元の低い位置に戻ってしまったのがやるせないが。
「うむ……?」
「ふぁ……?」
初めにスゥやユミナが起き出して、続けてみんなも意識を取り戻し始めた。
みんなは夢から覚めたが、【スリープクラウド】で眠らせた母さんたちはまだ眠っているはずだ。
「……ん?」
「どうしたでござるか?」
さて撤退するか、と思った時に、妙な感覚を感じた。まさか……。
リビングのカーテンを開けて庭を見ると、そこには世界神様が立っていた。え、なんで!?
窓から覗いている僕へ向けて、月明かりの中手を振っている。そしてその後ろには首を垂れる人物が一人。……誰だ?
カラカラと窓を開けて、置いてあったサンダルを履いて僕も外に出る。サイズが合わなくて歩きにくいな……。
「首尾よく終わったようじゃの」
「どうしたんですか、いったい……。あ、すみません。母がなんか失礼なことをしたようで……」
「や、まあ、あれは仕方ないの。間違いなくワシのせいじゃし。……ちょっと、いやけっこう怖かったがの……」
世界神様が乾いた笑いを漏らす。おい待てよ、神様をビビらせるってどんな存在なんだよ、マイマザー。
「それでその……そちらの方は?」
「うむ。こやつはの、従属神じゃ」
「え!?」
「ああ、違う違う。お前さんたちの世界で暴れていた従属神とは別神じゃよ」
ああ、びっくりした。あのニート神が蘇ったのかと……。そういやあのニート神と違って若いや。っていうか、女性じゃんか……。
ニート神は瘦せぎすの爺さんだったが、こちらの従属神は花恋姉さんより少し年上……二十代後半の姿をしていた。
黒い髪は短く、身体つきはスレンダーだ。雰囲気は諸刃姉さんに似ているな。
「こやつはの。お前さんが倒した従属神の指導員じゃった従属神じゃ」
え、あのニート神の!? 僕が驚いていると、その指導員だったという従属神は頭を下げたまま謝罪を始めた。
「このたびは自分の不手際により、そちらの世界に多大なるご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。本当ならばすぐにでも謝罪するべきところであったのですが、未だ位をいただかぬ身、地上へと降りることは許されず……」
「あ、いや、顔を上げて下さい。もう終わったことですから」
従属神はいわば正式な神になる手前の神。しかし、従属神の中にもピンからキリまであり、僕らの世界で暴れたあいつがニートだとすれば、この人はほぼ仮入社できる優秀なレベルらしい。
つまり従属神の中でも先輩後輩というような上下関係はあって、この人があのニート神を指導していたらしいのだ。苦労したでしょうなあ……。
「あやつはどうも堪え性がなく、少しの困難で匙を投げたり、なにかと手抜きをするところがありまして……。そのたびに叱りつけてきたのですが、まったく反省する様子もなく……。ある時ふっといなくなり、またいつものサボりかと思っていたらとんでもないことに……」
そりゃ驚いたでしょうなあ。昨日まで指導していたバイト君が、朝のニュースで犯罪者として報道されているのを見たようなもんだろ。
「まあ、全てこの子のせいではないと言ったのじゃがな。どうしても罪を償わねば下級神になれないと言い出して……。それで冬夜君のところに連れてきたわけじゃ」
それは律儀というかなんというか……。全部悪いのはあのニート神だと思うんだけど。
「で、じゃ。この子が言うには君の妹さんの守護神になりたいということなんじゃが……」
「はあ!?」
守護神ってなによ!? 神様憑いちゃうの、うちの妹!?
「正確には神としてではなく、この地上に生きる者として降臨し、それとなく妹さんを守る……ボディガードのようなものかの。当然、神としての力は使えんが……」
「いや、わざわざそんなことをしてくれなくても! 本当に気にしてませんし!」
「それでは私の気がすみません! どうかお聞き届けを!」
ええー……。あかん。この人、いわゆる真面目タイプだ。冗談の通じない、優等生によくいるタイプ。キチッと問題を片付けてからじゃないと次に進めないって人。神だけどな。
「許可してやってくれんか。なに、人間の一生に付き合ったとて、神としては数分の感覚じゃ。それでこの子の気がすむのなら、やりたいようにさせてほしいんじゃが……」
「うーん……」
確かに以前、召喚獣を冬花のボディガードにしようなんて考えたこともあるけど……。こちらの世界では魔力が薄く、召喚獣を維持できないとわかって断念したのだが。
その代わりに最下級の従属神とはいえ、神様がボディガードについてくれるなら、これ以上の安心はないけど……。
「でもどうやって? 人化してですか?」
「それだといろいろと難しくなるので、動物になろうと思います。こちらで飼っていただけるペットにでも姿を変えて、妹君を守るつもりです」
神がペットとかなんの冗談だよ……。でも目の前の人はマジで言ってんだろうなあ……。こちらとしてもありがたいし、ここはひとつお願いするか。
「なら、犬がいいです。両親とも犬好きなので」
「犬……ですか。わかりました」
そう言うとたちまち従属神の女性は真っ白い狼のような犬に変身した。おおう、ワイルド。シベリアンハスキーとか、それ系の犬かな?
『これでよろしいでしょうか』
「いや、うーん……。このままだと飼ってくれるか怪しいな……」
『ええっ!?』
ガーン! っとショックを受けたように耳を伏せる犬。あ、いや、ワイルドすぎるんだよね。一匹狼のイメージというか、『俺は一匹で生きていく』オーラがあるというか。
飼われるには第一印象が大事だと思うし。あ、そうか。
「仔犬にってなれます? かわいくて小さい方が飼われる可能性が高いと思うんですけど」
『なるほど。それならば……』
白い犬がピカッと光り、あっという間に小さな仔犬になってしまった。うおっ、かわいいな。さっきまでのワイルドさはどこへやら。
『これでどうでしょう?』
「バッチリです。あとは二人に人懐っこいアピールをすれば大丈夫かと。あ、言葉は話さないで下さいよ?」
『心得ています』
ぴっ、と白い仔犬が前足を額の横につけ、敬礼のようなポーズをとった。いや、それ変だから。大丈夫かいな。
「面倒かけてしまってすまんの」
「いえ、こちらもありがたいです。やはり心配ですし」
「あの子が魔力を掻き集めれば状態回復魔法もなんとか使える。病気とかいざという時にも対処できると思うから安心じゃよ」
そうなのか。それは頼りになるボディガードだな。
これで安心と振り返ると、白い仔犬が僕のお嫁さんたちにもみくちゃにされていた。
「かわいいですー! ふわふわですー!」
『ちょっ、やめ、あっ!』
「真っ白じゃ! かわいいのう!」
あれ、なんかデジャヴ。琥珀の時とおんなじだな。懐かしいけど。
……本当に大丈夫かいな。
■それではみなさん良いお年を。




