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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第30章 世界の管理者、東へ西へ。
432/637

#432 新王二人、そして神界拉致。





「ブギーッ!」

「「ウオオオオオォォォ!!」」


 大きな三本角の猪に追いかけられて、足を鎖で繋がれた髭面の二人が全力で森を駆け抜ける。事前に走りやすい道を作っておいたため、追いつかれる前に『その場所』に辿り着くことができた。狙い通りだ。


「タイミングを間違えるなよ!」

「わかっとる! 1、2、3!」


 ザードニア国王の言葉と同時に二人とも大きくジャンプして『そこ』を飛び越える。彼らの後ろを追いかけてきた猪が、『そこ』に足を踏み入れた途端、真っ逆さまに地面へと落下した。


『グギョッ!』

「「やった!」」


 振り返り、落とし穴に落ちた猪に歓声を上げる二人。駆け寄ってみると、二メートルほどの穴の底に、設置した鋭い木の杭に貫かれた猪の姿が見えた。

 木の蔓で作り上げたロープを猪の足に縛り、二人で引きずり上げる。なかなかの重さで苦労したが、それに見合うご馳走にありつけるのだからと、文句も言わず二人は黙々と作業を行った。

 この島に連れてこられてから二週間。獲物を狩るのにも随分と慣れた。鋭い石がたくさん落ちている場所を発見したおかげで、丈夫な枝を組み合わせて槍を造ったり、やじりにして弓矢を造ったりした。

 苦労して木々を擦り合わせ、火をおこし、食材を焼くためのかまども造りあげた。

 二人の国王は協力すればなんとかやれるもんだな、と簡単に思っていたが、裏で黒曜石の破片を用意したり、ほどよいタイミングで魔法を使ってこっそり火を付けたりした影の立役者である、とある公王の存在を知らない。気楽なものである。

 巨大な大亀と蛇に追いかけ回されたり、青い竜に襲われたりと、彼らからすれば何度も死んだような気持ちを味わっていたが、それにもだんだんと慣れてきたのかもしれない。

 二人は浜辺の本拠地まで猪を引きずりながら戻ってくると、黒曜石のナイフで適当に捌き、骨付きのままかまどの火で炙る。

 二人は知るよしもないが、この猪はトライボアと言って肉質が柔らかくそのままでも美味な魔獣であり、騎士王国レスティアの南部地域にしか棲息していない貴重な猪であった。

 もちろん転移魔法で連れてきた者がいるわけだが。


「午後からはどうする?」

「魚を獲ろう。石槍があればたぶん大丈夫だ」

「そう言えば得意だと言っていたな、貴様」

「任せろ。でっかいのを食わせてやる」

 

 骨についた肉を咀嚼しながら、二人で笑い合う。ほんの二週間前ならありえない光景がそこにはあった。

 髭面にボロボロの服をまとった二人の姿は、とても一国の国王には見えない。どう見ても船が難破した漂流者だ。しかし以前よりも険が取れ、自然に笑うようになっている。

 この島の過酷な環境下(冬夜がサポートしているので実際はさほどでもないのだが)で、生きていることの素晴らしさを実感したからであろうか。

 二人が槍を持ち、澄んだ遠浅の海へと足を向けたとき、砂浜に見覚えのあるものが見えた。パラソルの下のビーチチェアでくつろぎながら、トロピカルドリンクを飲む少年。

 忘れもしない、自分たち二人をこの島へと拉致してきた張本人である。

 瞬間的に怒りが甦ってきた二人は、息のあった二人三脚でその少年王目掛け、砂浜を全力疾走していく。


「「ぬおおおおおお! キサ、マどわッ!?」」


 バキョッ、という音とともに、二人はまたしても落とし穴に引っかかり、砂の下に落下していった。先ほどの猪と同じように。


『同じ手にまたも引っかかるとは……学習能力がないのか……?』

「まあ、そういうなよ、琥珀。アレでもずいぶん変わったんだから」

『そうでしょうか……?』


 サングラスを外し、ビーチサンダルにアロハシャツの冬夜がゆっくりと穴の下でもがく二人のもとへと歩いていく。


「やあ、久しぶり」

「貴様ッ! よくも我々をこんなところに!」

「降りてこい! ぶん殴ってやる!」


 落ちた変な体勢のまま、顔を出した若き公王に罵声を浴びせる二人。この状況下でこんなセリフがよく出るなと、冬夜は呆れるのを通り越して感心した。


「まあまあ。今日はお二人に面白いものを見せようとやってきたんですよ」

「面白いものだと?」


 突然、落とし穴の上にどこかの映像が映し出された。戦場だ。二つの軍勢が入り乱れて争っている。片方は赤い革鎧を。片方は青い鱗鎧を。バウバーン王国軍とザードニア王国軍である。


「これは……!」

「どうなっている! なぜ戦いが始まっているのだ!」


 自分たちの国が隣相手の国と戦っている。今まで客観的にそれを見たことのなかった二人はその凄惨な光景に言葉を失った。

 槍で貫かれる兵士たち。親を失い、墓の前で涙を流す家族。飢え苦しむ子供たち。病に倒れ、死を待つばかりの女たち。

 戦いの合間にそういった映像が挟まれており、二国の王は言葉を失くす。

 戦場に立ってはいたが、命令するだけで何も見ようとはしなかった二人。その現実が目の前にはあった。

 シーンが切り替わり、二人の青年が剣を斬り結んでいる映像が流れる。鎧を着ていたが一目でその姿が誰であるか二人にはわかった。


「アキーム!」

「フロスト!」


 お互いの息子が剣を持ち、殺し合っている。互いに実力は伯仲しているようで、決め手を探しているようだ。


「なぜ息子が戦場にいるのだ!」

「どうやらお互いに父親を攫ったのは相手国と思っているようで。いやあ、愛されてますねぇ」

「貴様ッ……! 悪魔か!」

「恥を知れッ!」


 二国の王が笑みを浮かべる少年王に怒りの矛先を向ける。


「あの二人はお互いを憎み合って戦っている。あなたたちと同じ理由でしょう?」

「違う! あの二人は勘違いをしているだけだ! 本当に悪いのは貴様ではないか!」

「なにを今さら。今までお互いを滅ぼせと言い続けていたのはどなたでしたっけ? 良かったじゃないですか。これで決着がつくかもしれませんよ。お?」


 二人の王子が相手を見据え剣を構えた。

 お互いに駆け出し、すれ違いざまに剣を一閃する。

 斬り結ぶことなく相手の腹をお互いに裂き、おびただしいほどの血が流れた。

 膝をつき、二人ともその場に倒れる。地面に血が広がっていき、辺りを鮮血で染めた。


「馬鹿な……アキーム……!」

「フロスト……! なぜこんなことに!」

「相討ちか。決着はつかなかったみたいですね」


 そのすっとぼけた冬夜の声を聞いた二人の王は、憎憎しげに燃える目を彼へと向けた。


「貴様が! 全て貴様のせいだろうが! 息子を返せ!」

「殺してやる! なぜ息子が死なねばならんのだ!」

「えー? 僕が連れ去ったおかげでおたくら二人は死なないですんだじゃないか。感謝してもらいたいね」

「なにを……!」


 言い返そうとした二人に、少年王から殺気が叩き付けられる。今までこの島で味わった、どんな死の気配よりも怖ろしい気配。口の中がカラカラに乾き、身体が蛇に睨まれた蛙のように動かなくなった。


「勝手なことばかり言うなよ。あんたらが始めた戦争だろう。いずれ自分もこうなるかもしれないとか考えなかったのか? 王様だから死ぬわけないって? あんたらこの島に来て何回死にかけた? 簡単なんだよ、人が死ぬのは」


 画面の中で飢え苦しむダウバーンとザードニアの人たちが映る。その次に映ったのは反対に贅沢なご馳走を食べ、食い残す二人の国王。

 疲れ果て、ぞろぞろと帰路につく兵士たちと、相手国を罵り、憤懣やるかたない二国の王がスライドのように映し出される。

 対比されることで、どれだけ自分たちが愚かなことを繰り返していたかが二国の王にも理解できた。


「全部ワシらのせいなのか……?」

「なぜ……もっと早く……。フロスト……」


 膝からくずおれて、穴の底で打ちひしがれる二国の王。嗚咽とともに目からは涙が、口からは後悔の言葉が吐き出される。

 下らない意地のせいで大切な子を失ってしまったという悲しみ、そして喪失感。自分勝手な戦いに巻き込み、苦しめて来た国民への罪悪感。

 様々な感情が津波のように押し寄せて、二人の心を抉っていた。

 そして二人の意識はそこで不意に途切れる。



          ◇ ◇ ◇



「反省したかな?」

『おそらくは』


 隣の琥珀に話しかけ、僕はこっそりと【スリープクラウド】を二人へと向けて発動させた。

 コロリと簡単に意識を手放し、あっさりと寝てしまう二人。


「とまあ、二人ともものすごく後悔してたみたいですけど」


 指を鳴らし、【インビジブル】を解除すると、落とし穴の前に二人の青年が現れる。ダウバーンの王子であるアキームと、ザードニアの王子であるフロストだ。


「なんであんな芝居をさせるのか不思議でしたが、そういうことでしたか……」

「父上が泣くなんて……」


 神妙な面持ちで穴の中で寝こける父親を見下ろす二人。

 さっきまで流した映像は全部フェイクである。二人に出演してもらい、相討ちになってもらった。お腹に血袋忍ばせてね。他の映像は町の人たちから記憶をもらって、作り上げました。


「多少強引だったけど、それなりに相手を理解できたんじゃないですかね。これでもまだお互いに戦争を続けるっていうなら、もうお手上げだね。冷たいかもしれないけど、どっちとも勝手に滅べばいいと思う。あとの判断は任せますよ」

「絶対にそんなことにはさせません。ダウバーンは二度と愚かな過ちを繰り返すことはないでしょう」

「その通りです。いざとなったら父上を幽閉させても退位させ、ザードニアに平和をもたらします」


 二人は決意のこもった眼差しを僕へと向ける。ま、この二人なら心配はしてないけどね。仲良くしてないとアレントのお姫様たちとの繋がりもなくなるもんねえ。


「どれ。じゃあ仕上げと参りますか」


 涙と鼻水、よだれを流しながら、悲しい顔でぐーすかと眠る二人の国王を見下ろして、僕は腕を鳴らした。



          ◇ ◇ ◇



「む……?」


 ダウバーン国王が目覚めるとベッドの中だった。いつものように柔らかい羽毛布団に包まれて、小鳥のさえずる声で目を覚ます。

 いつものように……? はて? いつもは砂浜のベッドにマントの布団、潮騒の音を聞きながら目覚めるのではなかったか?

 思考がだんだんとクリアになっていき、ダウバーン国王は羽毛布団を蹴飛ばして跳ね起きた。


「こ、ここは……。ワシの部屋……だよな?」


 疑問形になる。間違いなくダウバーン王城の自分の部屋で間違いない。しかし、なぜ戻っているのかがわからず、ダウバーン国王はキョロキョロと辺りを見回してしまった。


「あれは夢……だったのか?」


 独りごちる彼の目に、ベッドの横にあるサイドテーブルに置かれていたものが飛び込んできた。


「これは……!」


 じゃらりとしたそれを手に取る。開いた足枷と、途中からぶった切れた鎖だ。間違いなく自分の右足に付けられていたものである。

 ナイトガウンをまくると、右足首に日焼けのあとがクッキリと残っていた。やはりあの島での日々は夢ではない。となると……。


「アキーム……!」


 ダウバーン国王が息子の名を呼び、膝からくずおれて涙を流す。

 そこへガチャリと部屋の扉が開き、死んだはずの息子がけろっとして現れたものだから、ダウバーン国王は目を見開いて驚いた。


「ああ、父上。お目覚めでしたか」

「アキーム……? あ、ア、あっ、アキーム! おっ、おっ、お前、生きてたのか!?」

「なんです、藪から棒に……。生きてちゃ悪いみたいな言い方ですね?」

「いっ、いや! そんなことはないぞ! よく生きていてくれた! よかった……よかったなあ……!」


 息子に縋り付き、またしても涙を流すダウバーン国王。それを優しく受け止めたアキーム王子は、国王が行方不明になっていた二週間に、国に何があったかを説明をする。あくまで彼は国王不在時における代理である。その国王が戻った以上、全ての権限は元に戻る。


「父上がいない間にザードニアに攻められてはと、一時休戦を申し込みましたが、どうしますか? 父上が戻ったことで、貴族たちは開戦を叫ぶ者もおりますが……」


 アキーム王子が国王の挙動を窺うように尋ねる。その言葉を耳にしたダウバーン国王は一人黙り込み、なにやら考えていたが、やおら顔を上げると息子に向けて重い口を開いた。


「うむ……。そうだな、まずは調停の場に行くことにしよう」

「…………わかりました。では皆にそう伝えます」


 王子の言葉に頷いたダウバーン国王の顔には、なんとも不敵な笑みが浮かんでいた。





 数日後。


 ダウバーン王国とザードニア王国の境にあるレザリア平原は比較的気候による変化が少ない地であった。それでも数キロ相手側の国に踏み込めば、灼熱と極寒の余波が襲う地でもある。

 そこに設置された一つの陣営に、ダウバーン、ザードニア、両国の主だった者たちがその顔を突き合わせていた。その中にはアキーム王子とフロスト王子の姿もある。

 やがて両陣幕からお互いの国王が現れる。彼らは無言のまま、正面テーブルの椅子に腰を下ろした。

 そのまましばしお互いを睨み合い、まずはダウバーン国王が口火を切った。


「はっ、しぶとく生き残っていたか、この氷河野郎」

「そっちこそ、その減らず口は死ぬまで治らんようだな、この砂漠馬鹿」


 国王同士がお互いに相手を罵り合い、両陣営がピシッと険悪なムードになった。

 ガタ、ガタンと両国王が椅子を立ち、テーブルの横でお互いを睨み合い続ける。

 一触即発とはまさにこのこと……と、周りの人間たちが思い浮かべたタイミングで、二人の国王に変化が起きた。


「くっ……ぷ……」

「クックック……」


 なにかを堪えるような声が漏れ、周りの重臣たちが首を傾げる。


「がっはっは! 生きてやがったか、この野郎!」

「かっかっか! お前こそ! この死に損ないめ!」


 二人は腹の底からおかしいといったように、大声で笑い始めた。突然の成り行きと、信じられない光景に口をポカンと開けて絶句する周りの家臣たち。

 

「あれから何度もあの島の夢を見たわ! いや、地獄だった!」

「ワシもだ! よくもお互い生き残れたものよのう!」


 お互いの身体を小突き合いながら語り合う二人は、どこからどう見ても昔から付き合いのある友人同士にしか見えない。これがかつて犬猿の仲とまで呼ばれた二人なのかと、周りの者たちがお互いに顔を見合わせている。自分の目が信じられないのだ。


「ワシがここにきたのは、ひとつ報告することがあってな」

「ワシもだ。ははん、お前もか」


 二人はニヤリと笑うと陣営に並ぶ家臣たちに、あの悪夢から目覚めて、今までずっと考えていたことを口にした。


「ワシは王位を息子であるアキームに譲る。この交渉は新たな国王たるアキームが行うがよい」

「ワシも同じく王位をフロストに譲る。お前がこのザードニアの行く末を決めよ」


 二人の国王がどちらとも退位を宣言する。そこには晴れやかな顔の、もはや国王ではない、かつて国王であった男たちがいた。



          ◇ ◇ ◇



「それでどうなったんですか?」

「ダウバーンはアキーム王子が、ザードニアはフロスト王子が王位を継いで国王になった。二国は互いに手を取り合い、これからは友好国として付き合いを始めるそうだよ」


 ユミナにそう答えながら、僕は休憩とばかりに背もたれにもたれる。

 あっちはやっとひと段落したな。もうちょっと早いかと思ったんだが。人間年取るとなかなか素直にならないからなあ。

 二国は仲良くなったが、先王二人には僕はなんか恨まれてるっぽい。「ブリュンヒルドとは付き合うな!」とまでは言われてないそうなので、個人的な恨みだと認識はしているようだ。


「アレントのお姫様たちはどうなりました?」

「ああ、そっちもうまくいってる。近々ダウバーン国王アキームと聖王国アレントのレティシア王女、ザードニア国王フロストとアリアティ王女の婚約が発表されるはずだよ」

「まあ! よかったですわ!」


 書類から顔を上げたルーが、我が事のように喜ぶ。

 僕は彼女のように素直に喜ぶことができない。めでたいし、よかったとは思うけど、全部あの王女の祖父である聖王の思い通りなんでね。手のひらで踊らされた感じがするよ。

 婚約祝いじゃないけど、僕は炎と氷の精霊に命じてあの二国の呪いともいうべき気候の変化を元に戻しておいた。これで数十年かけてゆっくりと過ごしやすい土地に変化していくはずだ。

 ヒルダがくすっ、と笑いながら手にしていたペンを置く。


「心配の種が一つ消えてよかったですね。やっと世界が落ち着きを取り戻したのに、戦争なんてやっぱり嫌ですから」

「まあね。それでもまだいろいろとしなきゃならないことがいっぱいあるんだけど……」


 破れたままの世界の結界や、巨獣問題、変異種に潰された村や町の復興、そして今は目の前にドンと置かれた紙の束……。

 そのうちの一枚を取って内容を読む。


「このダーレウィン伯爵ってのはどこの誰?」

「あ、それはわたくしですわ。レグルス帝国の伯爵です。ええと、わたくしのひいおじいさまの妹君が嫁いだ家ですわね」

「家としての付き合いは?」

「今はそれほど。ですが帝室の血が流れてはいますので、皇位継承権は低いながらもありますわ」

「だとすると、こっちかな……」


 ダーレウィン伯爵と書かれた紙をランク分けした箱の中に入れる。これは結婚式での席次などを決める際に目安にするための振り分けだ。

 なにしろ婚約者のうち三人が一国の姫君だ。当然ながら、その親類や重臣など招待するべき者が多い。その確認を今、ユミナ、ルー、ヒルダの姫様三人と行っている。

 明確に言うならスゥや桜もそうなのだが、スゥはユミナと同じ一族だし、桜は魔王の庶子のため、あまり関係がない。

 僕としては順位付けなどしたくはないが、世間的にはユミナが第一王妃、ルーが第二王妃、ヒルダが第三王妃となるらしい。

 第四がスゥ、第五がリーン、第六が桜となり、リンゼ、エルゼ、八重が七、八、九と続く。

 リンゼたちの順位は僕が告白された順らしい。らしいってのは、スゥ以降のこの順位は彼女らで勝手に決めたものだからだ。

 あくまで書類上というか公的なものってだけで、九人平等というのは僕を含めた全員の意見である。

 面倒だよねェ、世間体って……。おかげで招待客の選別にも気を使うことになる。

 しかしこんな王侯貴族ばかりの中に放り込まれて、八重の家族やエルゼとリンゼの叔父さん家族は大変なんじゃなかろうか。そういやエルゼたちの叔父さんって、貴族恐怖症みたいな人じゃなかったか? ぶっ倒れるんじゃないかね?


「えーっと、このパウロン侯爵ってのは……」

「あ、レスティア(うち)の財務大臣に当たる者です。父上の代からの側近で……」

「となるとこっち……」


 僕がヒルダの言葉を聞いて、先ほどとは別の箱に紙を入れようとしたその瞬間、突然真横に花恋姉さんが現れた。


「冬夜君!」

「わあっ!?」


 相変わらず神出鬼没なこの人は、もうユミナたちの前じゃ隠すこともやめたのか、平気で転移してきやがる。驚くから間近に転移するのはやめろ!


「ちょっ、花恋姉さん! いきなり現れるのはやめてって何度も……!」

「それどころじゃないのよ! ちょっと来るのよ!」


 座っていた僕の腕を取って、花恋姉さんが立ち上がらせる。えー? ちょっともう、なにー? まだ面倒ごとー?


「な、ちょっ、ちょっ、ちょっ。どこへ連れてく気だよう?」

「神界なのよ! ユミナちゃん、ちょっと冬夜君を借りるのよ! 今から家族決定会議なのよ!」

「え、あ、はい。お気をつけて……」


 花恋姉さんの迫力に、ユミナがたじろぎながら小さく頷く。

 はあ!? 家族『決定』会議ってなに!? よくわからないまま、僕は花恋姉さんの手によって神界へと拉致された。

 オーマイガッ。









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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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