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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第26章 明日のためにできること。
258/637

#258 カプセル、そして三人目。



「と言うわけで新製品です」

「ほほう。これは一体なんですかな? 中に何か入っているようですが……」


 オルバさんのストランド商会、ブリュンヒルド支店前に置かれた物。

 上部には中身か詰まった大きな箱、その下にはお金を入れる投入口と回すハンドル、そして商品取り出し口。

 いわゆるカプセルトイと言われるものだ。


「抽選式の玩具購入機、とでも言いましょうか。ま、試してみてください」


 オルバさんは僕に言われるがままに、投入口に青銅貨一枚を入れて、ハンドルをガチャガチャンと回す。すると、取り出し口から直径10センチほどの丸い円筒状のものが落ちてきた。


「これは?」

「中身を開けてみてください」


 オルバさんが紐で止めてある革製の蓋を外すと、中からフレームギアのミニチュアが出てくる。重騎士シュバリエだ。細部まで作り込んだ硬質ゴムのミニチュアである。


「ほう! これはなかなか良くできた物ですな! しかし、この出来ならば、別に普通に売ってもよろしいのでは?」

「この中には重騎士シュバリエだけではなく、他の色々なモノが入っています。これがそのリストですね」


 オルバさんは僕から渡されたリストを見て、その数の多さに少し驚いていたが、今だによく把握してないようだった。


「ううむ。やはりこの箱に入れる意味が今ひとつ……。店内でこれをそれぞれ売れば良いのでは?」

「そうですね。たとえばそのリストの中の黒騎士ナイトバロンをオルバさんが欲しいとしましょう。並べて売れば普通に青銅貨一枚で買えますよね? でもこの箱の中に入っていると……」

「……! そうか! 一回で出るとは限らない! 何回も回す必要が……なるほど! その分儲けられるというわけですな!」


 射幸心を煽った商品だが、その分金額は安い。さらに入っている筒を十個店に持ってくると、青銅貨一枚と交換できる。商品を詰め替えして再利用できるわけだ。

 「ストレージ」を開き、同じようなカプセルトイをもう一つ取り出す。


「そしてさらにこちらのが少し高級なものです。一回銅貨一枚。十倍の金額ですね。でも出てくる商品は金属製のかなりいいやつです」


 いわゆる子供用と大人用だ。ま、別にどっちを買おうが構わないんだが。

 オルバさんがこちらのも回してみる。出て来たのは金属製の青騎士ブルームーンだった。副団長のノルンさんの機体だな。

 硬質ゴムのやつより少し大きくできていて、重量感があり、置物としても見栄えがいい。

 ちなみにラインナップは


ゲルヒルデ(エルゼ機)

シュヴェルトライテ(八重機)

ジークルーネ(ヒルダ機)

オルトリンデ(スゥ機)

ヘルムヴィーゲ(リンゼ機)

グリムゲルデ(リーン機)

白騎士シャインカウント(団長機)

黒騎士ナイトバロン(副団長機)

青騎士ブルームーン(副団長機)

重騎士シュバリエ(一般騎士機)

竜騎士ドラグーン(エンデ機)

武器セット各種


 というフレームギア種と、


ブラックドラゴン

ワイバーン

スノラウルフ

ミスリルゴーレム

スコルピナス

デモンズロード

ブラッディクラブ

ウッドゴーレム

キングエイプ

小型魔獣(詰め合わせ)


 という魔獣種に分かれる。

 モンスター種を入れたのは敵キャラも必要かな、と思ったのと、フレームギアだけだと、被った時に「なんだよー、また重騎士シュバリエかよー」とか言われるのもなあ、と思ったからだ。

 まあ、それぞれ当たる比率は若干違うので、そういったことは必ず起こるのだが。

 そして「ストレージ」からもう一台、実はこっちがメインだ。こっちのやつには魔獣種は入っていないし、サイズも大きい。


「こちらはお金を入れて回すのではなく、オルバさんの店で一定額の買い物をした時におまけで回す用です。そのため、中身の素材は魔獣の骨で作られており、かなり精巧なもので彩色済み、さらに手足が可動するようにできています」


 いわゆるアクションフィギュアのようなものだが、リンゼの機体の変形まで再現している超スグレモノだ。骨はプラスチックと変わらない材質の魔獣の物を加工している。


「一定額というと、銀貨一枚とかですか?」

「んー、まあそんなところですかね。正直そこらへんの金額は門外漢なんでそちらでいろいろ変更してもいいです」

 

 銀貨一枚っていうと一万円くらいか? まあ、あくまで買い物をしたオマケだからな。

 生産自体は難しくはないはずだ。可動フィギュアの方は技術がいるが、オルバさんの伝手にはドワーフの職人もいるそうだし、大丈夫だろう。

 早速、青銅貨の販売機を店の中に設置すると、(さすがに外に置くと盗まれる可能性があるため)子供たちがやって来て回していった。お、竜騎士ドラグーンが当たった。それ一応レアだぞ。


「確かにこれは……人材費も浮かせることが……中身を変えれば……」


 子供たちがガチャガチャとハンドルを回すのを見ながら、オルバさんの頭の中ではいろんな計算が始まっているようだった。

 オルバさんにフィギュアの金型などを渡し、店を後にした。

 そのまま城下町のメインストリートを歩いていると、なにやら先の方が騒がしい。

 野次馬の間から覗いてみると、捕物の最中だった。


「押さえつけろ! 逮捕だ!」


 四人の騎士が暴れる二人の男を取り押さえている。ロープで素早く後ろ手に縛り上げると、三人の騎士が男を引っ立てて行った。


「騒がせてすまない。もう大丈夫だ」


 残った騎士が周りの住民に安心するように声をかける。おろ? 彼は確か……。


「や。お疲れさん」

「ん? こっ、これは陛下!」


 短い金髪の騎士はその場に跪こうとする。ランツ・テンペスト。騎士王国レスティア出身、新人騎士の青年だ。


「ああ、いいから立って立って。公式の場じゃなけりゃそういうのいいから。めんどくさいし」

「は、はあ……」


 戸惑った様子でランツ青年が立ち上がる。騎士王国出身の彼にとっては、騎士とはそういうものと刷り込まれているだろうから仕方ないか。


「で、なにがあったの?」

「は。飲食店内での女性店員に対する嫌がらせであります。給仕手伝いの子供が詰所に飛び込んできたため、出動いたしました」


 なるほど。ウェイトレスさんにセクハラしたってところか。重い罪ではないがしっかりと反省してもらおう。

 にしても、ロープで捕縛とか捕物がまさに時代劇だな。手錠とかあれば便利だろうに。手枷とか手鎖とかはあるんだがな。


「……作るか」

「は?」


 その場で「ストレージ」から鋼のインゴットをと取り出し、ネットで調べた通りにモデリングで変形させていく。おっと、鍵も作っておかないとな。数分後には鈍く輝く手錠が出来上がっていた。


「陛下、それは?」

「これは手錠。手枷を小さくして持ち運びやすくしたものだよ。ちょっと手を出してもらえる?」


 差し出されたランツの両手首に手錠を当て、一瞬で拘束する。


「こ、これはすごいですね。……しかも頑丈です」


 ランツが両腕に力を入れて引きちぎろうとするが、当然ビクともしない。しかし僕が鍵を取り出し、鍵穴に入れて捻るとたやすく外れた。


「それは君にあげるよ。逮捕に活用してくれ。そのうち警邏騎士の標準装備にしよう。鍵を無くすと開けられなくなるから気をつけて。あ、スペア……予備の鍵も渡しておくよ」

「ははっ!」


 固い固い。警邏騎士の隊長は確かローガンさんだったか。後で話して細かいところを決めないとな。


「こっちの生活には慣れた?」

「はい。この国は見るもの聞くもの全て珍しく刺激的で、素晴らしいです。人々も親切で賑わいがありますし」


 そう言ってもらえると嬉しいな。他所から来た人に褒められるとやはり嬉しいもんだ。


「あら? 冬夜さんじゃないの。あ、ランツさんも」


 そこに通りかかったのは宿屋「銀月」ブリュンヒルド支店のオーナー、ミカさんだった。手にはいっぱいの買い物を抱えている。買い出しかな?


「久しぶりだねえ。元気だった? ちゃんと食べてる?」

「食べてますよ。元気です」


 いつもと変わらない彼女に、思わず笑いが浮かんでしまう。そういや、最近「銀月」で食べてないなあ。


「みっ、ミカ殿! 陛下に対してそのような……!」

「ああ、いいっていいって。ミカさんとはエルゼたちより付き合いが長いんだ。構わないよ」


 慌てふためくランツを落ち着かせる。ミカさんよりも付き合いの長い人っていうと、「ファッションキングザナック」のザナックさんしかいないしな。数時間の差だが。


「ミカさんはウチのランツとお知り合いでしたか」

「うん。ここ最近毎日のように来てくれるしね。お得意様なのよ」

「や、あっ、その! ミカさんの料理は大変素晴らしく、ついつい足が向いてしまうのでありまして! 食べ飽きない味といいますか、家庭の暖かい味といいますか!」


 急に焦ったように饒舌になり、直立不動の体勢になるランツ。どことなく顔が赤い。おんや? これはひょっとしたら、そういうことですか?


「つまりランツは虜になってしまったわけだ」

「なっ! へ、陛下は、な、な、なにを!」

「……ミカさんの料理の」

「っ! その通りであります!」


 オモロイ。ミカさんがよくわからず首を捻っているが。


「ミカさん、荷物が重くて大変でしょう。ランツ、ミカさんの荷物を「銀月」まで持って行ってくれる?」

「あら。助かるわ」

「は……はっ! お任せ下さい!」


 ランツは赤い顔のままミカさんから荷物を受け取り、連れ立って歩いていく。僕はそれを軽く手を振って見送った。

 確かミカさんは二十歳で、ランツは二十二歳だったかな。ちょうどいい感じだけど、ランツ君、ミカさんの親父さんは筋肉ムキムキの赤髭の大男だぞ。果たして立ち向かえるかな?


「なかなか面白いことになってるのよ」

「うわっと!? ビックリしたー!!」


 いつの間にか僕の隣にニヤニヤと興味丸出し笑みを浮かべ、花恋姉さんが立っていた。なんでここに!?


「ふっふっふ。恋あるところに私あり。愛あるところにも私あり。それが恋愛神、望月花恋なのよ!」


 ビシィッ! とポーズを決めてこちらを指差すが、僕は姉さんをジト目で見返す。

 

「……野次馬だろ?」

「そうとも言う!」


 そのうち馬に蹴られるぞ。まあ、恋愛神の名の通り、花恋姉さんがアドバイスした人たちは次々とカップルになっていってるみたいだが。

 もちろん、それから別れる人たちもいるし、見込みのない恋なら諦めるように諭すこともしている。花恋姉さん曰く、それも含めて恋愛なんだそうだ。


「余計な手出しはしないで下さいよ?」

「失礼な。向こうから相談してこない限り助言する気はないのよ。基本的に恋は自らで切り開くものなのよ」


 もっともらしいことを言ってはいるが、どこまで本気が怪しいもんだ。

 基本、自重しないからなこの人は。


「ところでこんなところまで、なにしに来たの? まさかあの二人をつけてたわけじゃないでしょ?」

「そうそう。ちょっと気になることがあるのよ。ここから東南の方にわずかな神気を感じたのよ」

「えっ!?」


 まさか従属神か!? 僕にも神気は感じられるんだけど、花恋姉さんや諸刃姉さんのように、まだ小さい気配までは感じられない。


「それって従属神……」

「いいえ、違うのよ。この気配は確かに私たちと同じ下級神のものなのよ。まさかと思ったのだけれど……」


 え? なにそれ。嫌な予感がビンビンするんですけど。


「三人目が降りて来たみたいなのよ」


 勘弁して下さい。何の神様が来たのさ……。











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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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