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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第26章 明日のためにできること。
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#249 神器、そして重火器装備。





「世界の結界のう……」

「修復する方法ってないですかね?」


 僕の持参したイーシェン特製の煎餅をバリボリと齧りながら神様が考え込む。相変わらずの四畳半と、そこから広がる雲海。僕は今、神界に来ている。

 電話で聞いても良かったのだが、こういうのは菓子折り持って直接伺うべきかと思ったもんで。


「ないことはない。と、いうか上級神ならちょちょいのちょいじゃな。だが一応、神々が下界に干渉することは禁止とされているからの。結界を壊したのが邪神とかなら、直さんこともないんだが」


 ずずず、とお茶を飲み、ふう、と神様が息を吐く。


「でも5000年前に一度結界が修復されているんですけど」

「そりゃ地上の誰かが修復したとしか考えられんのう。そういう能力を持っている者とか種族もいないとは断言できんし」


 誰かって誰だ? イマイチ的を射ないなあ。


「僕が「神力」を使って直してみるってのは……」

「やめたほうがいいと思うがの。君は蜘蛛の巣を素手で直せるかい? 大き過ぎる力は精密なコントロールができんうちはあまり使わない方がいい」


 まだ(?)神として承認されてない僕なら地上に干渉してもOKかと思ったんだがなあ。確かに逆に結界を壊してしまってはどうしようもない。


「っていうか、何気にスルーしちゃいましたけど、邪神っているんですか?」

「おるよ。まあ、アレらはなんというかワシらとは違って地上で生まれる。怨念だとか執念だとか、あまり良くない気などが集まって、自我を持ってしまったモノが、我ら神々の神器などと融合したものじゃな。君の世界で言うところの付喪神に近い」

「それなら神様が手を出せるんで?」

「直接はダメじゃがの。選ばれし勇者に神の聖剣を授ける、くらいのことはしておるよ。階位的には従属神より下じゃからの」


 従属神より下なのか。まあ、言ってみれば神の紛い物なワケだし。


「ちなみに聖剣を持った勇者がやられた場合は?」

「どうもせんよ。それで終わりじゃ。何回も神の手助けがあるとでも? 最悪、その世界は放置される。神の管理を離れた世界は衰退の一途を辿るから、緩やかに世界は終焉を迎える。ま、そうならないよういろいろ手は尽くすがね」


 そう言って神様が自嘲気味に笑う。おそらくだけど、そうやって捨てざるをえなかった世界がいくつもあるんじゃなかろうか。

 僕がそんなことを考えていると、神様がなにか思い出したように、あ、と声を漏らした。


「そうそう言い忘れとったが、冬夜君の持っている、あのスマートフォン、だったか? アレ、一応神器じゃからな?」

「え!? これですか!?」


 僕は懐からスマホを取り出してみせる。これ神器だったの!?


「君が死んだ時、それもこっちの世界へ持って来て、ワシが手を加えたからのう。間違いなく神の力が宿った神器じゃよ。でなければ世界をまたいで情報を得たり、神界に連絡できたりせんよ」


 そう言われると確かに。そっか、これって神器だったのか。


「神器って僕にも作れるんですかね?」

「神力を注げばできないことはないじゃろうな。だが、あまりオススメはせんよ? さっき言った通り邪神を生み出すきっかけになりかねんからな」

「なるほど」


 ふと、邪神を倒すために勇者に与えられる聖剣。それも神器だよな。じゃあ、その聖剣に邪悪な気が取り憑いたらまた邪神が生まれるのか? という疑問が浮かんだ。

 神様の話だと、邪神を討つと同時に破壊されるか、こっそりと回収、もしくは偽物と入れ替えるんだそうだ。たまーにそれを忘れて、何百年後にまた邪神が現れ、邪神復活、とか騒がれてから気付くこともあるとか。ダメじゃん……。

 改めて思うけど、神々っていっても完璧じゃないよな。まあ、元いた世界でも、浮気したり、とんでもない失敗したり、人間じみた神々の話はいくらでもある。迷惑な神々も結構いるしな。


「なあ、冬夜君。これはずっと後の話なんじゃが……。君、あの世界を管理する気はないかね?」

「はい?」

「いずれは……まあ、上級神ともなれば、世界のひとつも管理することになる。どうせなら馴染みの世界の方がよかろう?」


 いやいやいや。上級神て。姉さんたちより上になるの? いや、世界神である神様の眷属なんだから、おかしくはないのか?


「……やっぱり僕って神様の仲間入りしちゃうんですか?」

「申し訳ないがのう。望んだわけでもないのにな。でも他の神々は喜んでおるよ。新しい神など、ここ数万年ぶりじゃからな。先輩風を吹かせたいんじゃろ」


 喜んでもらえるのはありがたいが……。正直微妙な感じだ。


「神族になったとしたら、子供とかいいんですかね? 来年、結婚するんですけど……」

「神々との間に子供なんぞ山ほどおるよ。問題ない。まあ、人より並外れた能力を持つかもしれんが、親神ほどじゃなかろう」


 それもそうか。ヘラクレスやペルセウス、アキレウスやクーフーリンなど、神話とかには山ほど出てくるしな。

 だけど、博士の話だと、最低でも息子が一人、娘にいたっては八人も生まれてくるわけで……。全部半神の力を持って生まれてくるとなると、子育てがものすごく大変そうなんだが。


「あの……子育ての神っていませんかね?」

「おることはおるが……。自分の子供は自分で育てた方がいいと思うがね」

「ですよねえ……」


 正論である。育児放棄をする気はないが、なんでまだ生まれてもいない子供で、こんな気疲れをしないといかんのか。

 まあ、結婚したからってすぐに子供が生まれるってわけでもないだろうし。……ないよな?


「ま、今のうちは神の力なんぞあまり使わずに、やれる範囲でいろいろやってみることじゃな。結果論じゃが、君があの世界に行ったことも、運命だったように思える。とにかく頑張ってみることじゃ」

「はい」


 やるしかないのはわかっているしな。なるようになるか。

 神様に励ましをもらって、僕は神界を辞した。

 





「騎士団員の補充、ですか」

「はい。建国当初に比べ、いくらかは余裕ができてきたので、この辺でもう一度募集をしてみたらどうかと」


 宰相である高坂さんの説明を聞き、少し考える。確かにうちの騎士団員は全部足しても100人に満たない。しかもそのうち40人ほどは非戦闘員だ。この場合の非戦闘員とは、フレームギアに乗らない者たちを指す。

 椿さん配下の諜報部員や、内藤のおっさん配下の内勤、外派遣の人員などだ。当然、それなりの戦闘力はある者たちだが、彼らは基本、戦闘訓練は免除してある。

 そんなに大きい国でもないので、他国のような千人単位で必要なわけではないが、確かにもう少しぐらい増やしてもいいのかもしれない。


「何人くらい必要ですかね?」

「そうですな……。単純に今の人員を倍にするとしたら100人ですが、それとは別に、街の巡回、城の警備、事務用員、そういった人員も含めると150は欲しいかと」

「そのうちフレームギアに乗ることになる騎士は何人くらい?」

「以前の60名と合わせて100名ほどではどうかと」


 150人中40人だけか。後の110人は城の警備や、街の巡回、諜報活動に回されるわけだ。もちろんそれだって騎士団の大切な仕事だ。ま、それをやりたくないとかいう輩は、たぶんうちの騎士団には入れないだろうけどな。


「となると、能力別に採用した方がいいってことか……」


 戦闘能力がさほど高くなくても、事務能力に長けているならば、それは使える人材だと思うし。

 とは言うが、だからと言って水準を下げるわけにはいかないけどな。去年の入団者と同程度の強さは欲しいところだ。

 ま、多少戦闘能力に不安があっても、諸刃姉さんの剣神ブートキャンプに放り込めば最低限の強さは身に付くだろ。


「じゃ、一応150人を目処にそれぞれの責任者で擦り合わせて下さい。推薦したい人がいるなら、それも一緒に」

「わかりました」


 あいにくと僕の方には推薦の心当たりがない。

 まあ、強いて言うと冒険者のソニアさんや蓮月さん、あとは新人冒険者のロップたち四人だが、彼らは冒険者の方が稼げるだろうからなあ。

 また冒険者ギルドの方でも募集をかけてもらうか。前にも増して希望者が多くなりそうだけど。

 前は面接をユミナと教皇猊下の魔眼コンビに頼んだけど、今回は博士に嘘発見器キーラーポリグラフでも作ってもらうか。

 そう思い立ってバビロンに転移すると、格納庫にはゲルヒルデを整備するモニカとミニロボたちしかいなかった。


「あれ? 博士は?」

「「研究所」の第二ラボでロゼッタと会議中だゼ。なんか次の機体をどうするかで話してたけどよ」

「会議?」


 よくわからないが、モニカの言う通り「研究所」の第二ラボの方へ行ってみると、机の上には様々な設計図と、ミニチュアのフレームギア、壁の映像盤にはいろんなパーツのワイヤーフレームみたいなものが浮かんでいた。

 そしてその前に腕を組んでうーんうーん、と唸り続ける少女が二人。


「どうしたんだ? また、えらく悩んでいるみたいだけど」

「あ、マスター。開発を進めている機体なんでありまスが……。リンゼ殿の機体は変型して飛行形態になり、更にエルゼ殿の機体と合体、というコンセプトで決まったんでありまスが……」


 そう言ってロゼッタは机の上にあったミニチュアのフレームギアを手にし、腕や足を折り畳み、翼を広げて飛行形態へと変型させた。へえ。スムーズに変型するもんだな。

 スペースシャトルみたいに、大気圏突入にも耐えられそうなフォルムだ。上に一体ならフレームギアを載せて飛べそうでもある。っていうか、このミニチュアというかフィギュア、売れそうだな……。


「問題はリーンの機体でね。どういう方向で進めるかな、と。本音を言うと、全身に重火器を内蔵した殲滅戦砲撃型を考えているんだけどね。フレイズには魔法は効かない。となれば、魔法で起こした爆発によって、弾頭を飛ばし、実弾で破壊するしかない。アニメとやらに出てきたバルカンやガトリング砲とかいう兵器みたいなものを作ろうかと。ただ……」


 なんでもコスト面で考えるとどうにも非効率らしい。なぜならフレイズの体を傷つける弾頭となると、少なくともミスリル以上のものが理想である。でなければ晶材に魔力を込めるか。そんなものを何千、何万発と作るのも大変なのだ。まさかそれだけのために「工房」をフル稼働させるのもなんだしなあ。晶材はともかく、ミスリルなんかで作った日にゃ、お金をバラ撒いているようなもんだ。

 また、弾を持ち歩くのも限界がある。そりゃあ場所を動かないで固定砲台として使えは弾切れの問題はないかもしれないが、それってフレームギアである必要あるか? ってなるし。


「実際に作って、全力斉射したらどれぐらい撃てる?」

「おそらく1分くらいかな」

「短っ」


 そういやアニメでも弾切れするとガクンと戦闘力が落ちたっけ。

 1分間フルで撃ちまくるわけじゃないから、稼動時間はもっと長いと思うけど、それにしたって短いよな。全弾撃ち尽くした後は、剣とかの普通の攻撃に切り替えるしかないか?

 ますますガトリング砲なんかをフレームギアに付ける意味がなくなるような……。


「ガトリング砲なんかより、こう……一発一発、フレイズの核を撃ち抜くようなスナイパー……狙撃型の方が効率がいいんじゃないのか?」

「それはそれでアリなんでありまスが〜……。敵を寄せ付けない大火力による徹底破壊、動く要塞にして弾薬庫、そこにこのタイプの魅力があるわけでありまして〜」


 うにゅ〜と、ロゼッタが机に突っ伏す。そんなにか。


「フレイズが相手じゃなければ「ファイアアロー」なり「サンダーアロー」なりを放つ、魔法攻撃のガトリング砲にしてもよかったんだけどね」


 苦笑気味に博士が笑う。確かにそれなら弾切れの心配はないが、今度はリーンの魔力切れが問題になりそうではある。


「……そういえば、マスターの銃の弾はどこにあるんでありまスか?」

「僕の? 一応ほら、腰のポーチに入ってるよ。実弾、麻痺弾、炸裂弾とか、用途に分けてそれぞれね」


 僕は区分けしてあるポーチの中を見せた。中には弾丸がそれぞれ20発ぐらい入っている。


「……それって戦闘中にも装填し直しているのかい?」

「まさか。自動装填だよ。弾丸が無くなったら薬莢を排出して、「アポーツ」で装填されるように「プログラム」してあるか」

「「それだ!!」」


 ら、と言おうとした僕に、二人が立ち上がり、指をビシィッ! と差してくる。

 

「何も弾丸を持って歩く必要は無いんでありまスよ! バビロンに巨大な弾薬庫を設置して、そこから武器に直接「ゲート」なり「テレポート」なりで転送させればいいんでありまス!」

「ふむ。多少のタイムラグは出るものの、なにも数分間連続斉射するわけじゃない。充分に賄えるね。問題は弾丸の生産ラインだが……」


 なんか知らんが、二人ともテンションが上がってる。なんか置いてけぼりにされた気分だ。


「冬夜君、ちなみに晶材はどれぐらいある?」

「山ほどあるよ。基本的に新型機を作る時ぐらいしか大量消費しないし」


 ユーロンやロードメアの時に、ごっそり貰っているからな。市場に流せば価格破壊が起きるぐらいあるぞ。


「材料は充分、と。かと言って、弾丸を作るために「工房」を占拠されるのもね。……作る、か」

「作る? 作るって何を?」

「別の「工房」を、だよ。もともと第二の「工房」を作る予定はあったし。それほど大きくない、小さな小屋くらいのやつなら作るのも難しくない。「小工房」ってやつかな」

 

 弾薬専門の工房を作ろうってのか!? そこまでするかね!? いや、他の機体の装備にも使えるって考えれば無駄じゃないのか?


「でも、そんな簡単にできるもんなのか? 小さいとはいえ「工房」なんだろ?」

「? 「工房」で作ればいいんでありまスよ」


 はい? 「工房」で「工房」を作る?

 ロゼッタがさらりと言った言葉に僕は固まる。


「「工房」は万能工場でありまスよ。小屋程度の大きさなら作れないことはないでありまス」


 自慢気に胸を張るロゼッタ。


「制作に二週間ほどかな。魔法の組み込みや処理もしなきゃいけないしね。ま、最後だけは冬夜君に「ゲート」で移動してもらわないといけないが。フレームギアと違って歩けないからね」

「いや、それはべつにいいんだけど……」


 「工房」で「工房」を作るとか……。反則だろ。小屋程度の大きさだからフレームギアとかは作れないけど、ちょっとしたものなら充分だし。


「よし! これでなんとか目処は立った! 早速取り掛かるぞ!」

「ラジャ! で、ありまス!」


 ドタバタとラボから二人のチビっ子たちが飛び出していく。なんというか……これがここの平常運転なんだろうなあ。

 机の上の飛行形態に変型したリンゼの機体ミニチュアと、右手にガトリング砲、全身にバルカン砲などの武装をしたリーンの機体ミニチュアを手にとって眺める。

 よく出来てるなあ。空中戦飛行型と残滅戦砲撃型か。

 なんとなしにリンゼの機体にリーンの機体を乗せてみる。うん、なかなかいいな。

 ちょっと本気でこれ売り出せないか、商人のオルバさんに相談してみよう。もっと小さくしてカプセルトイとして売れないかな。ガチャガチャ回して買うやつ。子供のお小遣いで買える値段で売ることができれば、言うことはないんだが。

 そんなことを考えながら、僕もミニチュアを手にラボを後にした。











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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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