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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第23章 新たなる脅威。
206/637

#206 戦況有利、そして第二の上級種。



 正面からマンタ型とオルカ型のフレイズが迫る。飛行速度ではマンタ型の方が早いようだ。大きなヒレの刃で僕を真っ二つにしようと真っ直ぐにこちらへ向かって来る。

 しかしおとなしく斬られるわけにはいかない。ひょいと身体を捻り、すれ違いざまに逆に真っ二つにしてやった。

 遅れて飛んできたオルカ型の頭部あたりに光の球が現れる。む。

 そのまま僕に向けて光の球が発射された。射撃型のフレイズか。こいつも同じように核ごと斬り捨てる。

 次から次へとマンタ型とオルカ型が飛来して攻撃してくるが、こいつらの攻撃は読みやすいので楽に対処できる。結局は直線の動きだからな。

 地上と違って上下左右、360度動けるから避けるのも難しくない。

 空中戦を繰り広げながら地上に目をやると、すでにあちらでも戦闘は始まっていた。

 北側にはエルゼを先頭にブリュンヒルドとレスティアが対処にあたり、中央にはベルファスト、ミスミド、リーフリース、南側はレグルス、リーニエ、ラミッシュが陣取っていた。南側にはエンデの姿も見える。

 フレイズの群れをなんとか押しとどめているようだ。みんなの動きも以前より良くなっているし、フレームギアでの戦闘が初めてのレスティア騎士団の人たちも、なかなかうまく乗りこなしている。


『片っ端から砕いて砕いて砕いて砕く! 止められるものなら止めてみなさい!』


 エルゼのゲルヒルデがパイルバンカーを撃ち込みながら、フレイズの中級種をメインに打ち倒していく。それに追従して、ブリュンヒルドの重騎士シュバリエたちが次々と下級種を斬り伏せていた。

 彼らが手にした槍や剣、ハンマーなどは、全て晶材で出来ているので、とても頑丈で鋭い。「グラビティ」の魔法付与まではしてないので軽くはないが、フレイズとの戦いにはかなり有利だ。

 あとは核をあやまたずに攻撃する技術力が必要になってくるな。ま、自信がある者は槍、ない者はハンマーと使い分ければいいだけのことだ。


「っと、飛行型は打ち止めか?」


 いつの間にかマンタ型もオルカ型も視認できるところにはいない。今回は飛行型フレイズが少ないようだな。それなら僕も地上戦のサポートに入るとするか。

 と、思った矢先、重騎士シュバリエの一体が下級種二体に同時に攻撃され、右肩から腕一本と、左膝から下を破壊されていた。

 倒れこむ重騎士のボディカラーが薄い灰色からさらに深い色……洋色で言えばムーングレイからグレイほどに変化する。……この説明だとわかりにくいか。

 この色の変化は搭乗者が緊急脱出魔法で転移した、という目印だ。「蔵」においてあったエーテルリキッドの特性を流用したペンキを「プログラム」して僕が新たに作ったもので、転移魔法が発動すると色が変わるようになっている。

 関係ないが、このペンキに「グラビティ」を付与して、あるアニメでおなじみの塗ったところが下になるというペンキを作ってみたのだが、見事に失敗した。

 「グラビティ」という魔法のくせに、重力ではなく、重さの変化魔法なんだよな……。まあ、確かに「グラビティ」を使って物が浮いたことはないけど。そりゃ「レビテーション」だし。羽毛のように軽くはできるけど。できあがったのは、塗ったところに乗ると体重が重くなるというシロモノだった。これはこれでなにか使い道がありそうだが。

 閑話休題。


『もしもし。本陣、聞こえるか? 今、転移された操縦者は無事か?』

『大丈夫でありまス。少し腕を痛めたくらいで、問題無いとのことでありまスよ』


 どうやら無事のようだな。あの機体は……レスティアの騎士か。まだ慣れていないだろうし、仕方ないか。

 北側では一斉に襲いかかる下級種フレイズ目掛けて、三つの飛操剣フラガラッハが飛び、見事同時に核を貫いた。あれは……ユミナの機体か。

 飛操剣フラガラッハは戦場を縦横無尽に駆け巡り、次から次へとフレイズの核を砕いていく。それから大きく弧を描いて、ユミナの機体の背中へと帰還した。

 飛操剣フラガラッハは扱いが難しい。使い方を誤ると、味方にも被害を及ぼしかねないからな。訓練のかいあって、ユミナは三本までならなんとか操れるようになっていた。

 魔法使いとしてその上をいくリンゼは、器用に四本の飛操剣を操っていた。まだ短時間しかバラバラに操れないので、あまり遠くの敵を仕留めることは難しいようだが。

 その横では八重とヒルダのコンビが中級種を斬り伏せていた。ルーの双剣も下級種相手に派手に振るわれている。

 北側は心配なさそうだ。

 南側の方はというと、モノトーンの竜騎士ドラグーンが、高速移動しながら、滑るように中級種をその二刀の小太刀で屠っていく。まるで、フィギュアスケートの選手のように、回り込み、回転し、屈んで跳んで、踊るように殲滅していく。

 フレイズの攻撃も雨霰と降り注いでいるのだが、そんなものを歯牙にもかけず、全てよけて戦場を滑り続ける。

 元々竜騎士ドラグーンは、軽量高速機動型のフレームギアで装甲が薄い。だから、一発でも当たれば致命傷になりかねないのだが、そんなことはお構いなしに特攻を繰り返していた。

 完全なソロプレイだが、南側もたぶん大丈夫だろう。

 と、なると、中央の部隊を僕がフォローすれば……って、あれ?

 中央部のフレイズたちが次々と砕けていく。振り抜かれる両手の大剣に核を真っ二つにされ、下級中級、関係無しに砕かれていく。凄い勢いだ。エンデやエルゼと全く遜色ない。……生身なのに。

 諸刃姉さんだ。僕と同じ晶材でできた大剣を両手に持ち、襲い来るフレイズたちを片っ端から斬り刻んでいた。まさに鬼神の如く……違った、剣神か。

 って言うか、あの人ブリュンヒルドにいなかったっけか? 「ゲート」で連れてきた記憶がないんだけど。

 ……気にしたら負けか。

 ……アレ? 自分、必要ないような気がします……。

 バキャッ! という音がして、中央部にいた重騎士の首が飛んだ。たちまち機体の色が変わり、地面へと倒れていく。倒すのに夢中になるあまり、後ろから攻撃を受けたようだ。


『全員、周りの仲間たちをよく見ろ。互いにフォローしながら戦え。フレイズの狙いは僕たちだ。できれば二人一組、背中合わせで対処しろ』


 オープンチャンネルで全員へと通達する。こちらから攻めかからなくても、向こうからやってくるのだ。待ち構えて倒せばいい。


「現在のフレイズの数は?」

『検索中……全部で4318体でス』


 スマホから電子音声が返ってくる。倒したのはざっと半分くらいか。時間は戦闘開始からすでに20分を回っている。

 大雑把に計算すると、大体8000体のフレイズを200機のフレームギアで倒すのに一機当たり40体。その半分だから20体を20分。1分1体のペースで仕留めてるのか。

 晶材による武器で下級種などは楽に倒せるとはいえ、前回13000体を三時間以上かかって倒したことを考えれば、かなりのハイペースなんじゃないかな。ゲルヒルデやエンデの竜騎士ドラグーン、諸刃姉さんの参戦が大きいのだろうけど。

 でも、あと10分ほどで上級種が出現する。それまでには片付けておきたかったがこのままでは無理なようだ。


『あーあー、冬夜。聞こえる?』

『エンデか? どうした?』

『そろそろ上級種が出現しそうだ。ここから北東の方、空間に歪みがあるのがわかるかい?』


 エンデからの通信に、思わず地上に視線を向ける。

 エンデのいるところから北東というと……あっちか。

 「ロングセンス」で視界を飛ばすと、なにやらそこらへんの空一帯が歪んで見える。蜃気楼というか、ストーブの熱によって揺らめいた光景のような……。

 おそらくあそこから亀裂が入り、上級種が出現するのだろう。ちょっと北側の部隊を下げた方がいいのかもしれない。


『北側に展開中のブリュンヒルド、及びレスティア部隊に通達。そこから西方面へ移動せよ。そして全部隊へ通達。今より10分ほどで上級種が出現する予兆あり。注意されたし』


 その通信を受けて、戦闘をしていた部隊がじりじりと西側へと後退して行く。今まで弓なりに展開していた形が、北西から南東への直線へと変わってきていた。

 押されているように見えるが、意図して後退しているのだから問題は無い。それよりも上級種の方が問題である。

 ピシッ、と、さほど大きい音でもないのに、辺りになにかが割れ始める音がハッキリと聞こえた。

 エンデの指定した空に、大きな亀裂が入っている。

 そいつはゆっくりとひび割れていき、亀裂がだんだんと大きくなっていく。


『上級種出現真近。各自これより更に注意して動くように。互いに連絡を取り合い、指揮官の指示に従え』


 通信を聞いて、エルゼやエンデが出現場所へと向かう。

 すでにひび割れはかなりの大きさに広がり、部分部分が欠け始めていた。

 やがてその空間を突き破って、大きな太い水晶の腕が伸びてきた。壁をぶち破るようにして、その上級種のフレイズが出現する。

 なによりデカい。フレームギアの四倍以上の高さがある。逆三角形の体格に、太く長い大きな腕は地面につけられている。足は短く、常に前傾姿勢を取っていた。頭部は首周りがなく、胴体と一体化しているようにも見える。分厚い胸部に核はひとつ。これは……。


「ゴリラ型……か?」


 鋭角線で作られたそのフォルムからもマウンテンゴリラを彷彿とさせる。しかし、ゴリラは四本腕じゃないぞ。おまけに背中にあんな突起物はないし、長い尻尾だってない。

 っていうか、あんなの「図書館」で見つけたフレイズの本には載ってなかった。いや、全部が載っている方がおかしいんだろうけど。

 ゴリラフレイズの脇にある二対の腕が、自らの胸を叩き始めた。ドラミングか? ますますゴリラみたいな……。

 ッ!?

 全身に衝撃が走り、吹っ飛ばされる。見えない張り手をされたような、衝撃波のようなものがここまで飛んできた。

 そうか、あれは前のワニ型の背ビレにあった、相手を吹っ飛ばす衝撃波を放つ役目を持っているのか。ということは……。


『全員、上級種の正面から散開! 逃げろ!!』


 脇腹から伸びた複腕が、胸部の部分を中央から観音開きに開いていく。やがてそこにあった核に光が収束し始める。まずい! 間違いなくあれはワニ型フレイズの時と同じ、荷電粒子砲モドキだ!

 正面にいたフレームギアたちは散開し始めているが、あの方向だと丘陵州の方向へ発射されてしまう。

 くっ! ぶっつけ本番だがやるしかない!


「リフレクション!」

 

 僕は覚えたばかりの反射魔法を、ゴリラフレイズの正面に展開する。青白色の分厚い障壁が45度の角度で現れたと同時に、ゴリラフレイズの胸部から光の大砲が放たれた。

 光の奔流が反射障壁にぶち当たると、その方向を変えて、上空へと消えていく。と、同時に反射障壁が粉々に砕け散った。

 くっ、かなり厚く作ったのに持たなかったか!

 角度をつけずに展開すれば、ゴリラフレイズに返せたかもしれないが、それだと今度は中央州に被害が及ぶからな……。倒せる確証もないし。あのボディだと吸収されたり、拡散されそうな気もする。

 に、したってなんて破壊力だ。ワニ型の時よりは小さい気がするけど、なんの慰めにもならない。

 胸部装甲を閉じたゴリラフレイズは再びドラミングをすると、北西に展開していた部隊へ向き直り、突進を開始した。こりゃ、骨が折れそうだぞ……!











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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
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新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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