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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第23章 新たなる脅威。
203/637

#203 改修完了、そして男のロマン。



 ロードメアから戻って来た僕らは、すぐさま東西同盟の国主たちを集めて会議を開いた。

 大まかな方針は決まっていても、ロードメアの状況とか、細かい打ち合わせをしないとな。


「レスティアの聖騎士団はフレームユニットに慣れましたか?」

「はい。みんなある程度乗りこなせるようになりました。実際に乗ってみないとなんとも言えませんけど」


 軽く笑いながらレスティア新国王が返事をよこす。前回のときもそうだったが、フレームユニットを乗りこなせるなら、ぶっつけ本番でもなんとか大丈夫だと思う。

 ともかく、ブリュンヒルド、ベルファスト、レグルス、リーフリース、ミスミド、ラミッシュ、リーニエ、レスティア、八カ国もの同盟軍だ。

 あいにくと新型機はエルゼのしか出せないが、以前のようにフレイズたちを分散しなくてもなんとかなると思う。


「とりあえずユーロンの時のように、各国に指揮官用の黒騎士ナイトバロンを2機、重騎士シュバリエを18機、計20機を貸し出しますので、搭乗者を選出しておいてください。ブリュンヒルドからは60機、各国合わせて140機の計200機で」


 ユーロンの時より10機少ないだけだ。これだけいればなんとかなるだろう。問題は出現する上級種がどういったタイプのやつかだ。最悪なのは飛行型とかだが……。そんな奴が出現しないことを祈るしかない。


「しかし……ユーロンに続いてロードメアもかよ。こりゃあますます他人ひとごとじゃあなくなってきたな」


 腕を組んでミスミドの獣王が椅子にもたれる。漠然とした不安が胸中にあるのだろう。次は自分の国に現れるのではないか、と。それはここにいるみんなが思っていることだ。


「なあ、冬夜殿。今回のように事前にフレイズどもの出現がわかるような道具はないもんかな?」


 リーフリース皇王が言うことももっともだ。たとえフレームギアを各国に貸し出したとしても、出現場所がわからなければ、手遅れになることは間違いない。かと言って、国中に配備できるほど貸せるわけもないし。

 

「その今回の出現を教えてくれたという者はこれからも協力してもらえんのか?」

「うーん、難しいと思いますよ? なんせ風来坊なんで……。それに完全にこちら側というわけでもないですし」

「そうか……」


 エンデに頼り切りになるのもな。あ、ひょっとしたら「蔵」にその手の察知系のアーティファクトがあるかもしれない。探してみるか。


「で、ロードメアから連絡はあったのですか?」

「まだ正式な許可はありませんね。丘陵州の州総督からは暫定的に許可はもらいましたけど。最悪、中央州に踏み込めば領土侵犯となる可能性もあります」

「案外それを狙っているのかもしれませんねえ。全てが終わってから、自分たちで何とかできたのに、と言われるんじゃないですか?」

「そこまで厚顔無恥ではないと思いますが。実際放っておけばかなりの被害になるわけですし。ただ、出現するまで回答を伸ばすってのはありえますね」


 結局は信じられるかどうかという点に戻るんだよな。全部エンデのでまかせでした、となれば安心はするが、ここまで話が広がった以上、厄介なことになる。ブリュンヒルドの信頼は落ち、付け入るいい口実になってしまう。

 僕が嘘つき呼ばわりされるだけなら構わないんだが、それだけじゃ終わらないだろうなあ。

 会議を終えて、宿屋「銀月」に泊まっていたエンデを呼び出す。改修し終わった竜騎士ドラグーンを渡すためだ。


「おお!? 色まで変えちゃったのかい? へえ、赤もよかったけど確かにこっちの方が僕好みだな」


 城の西平原に立つ、新しい竜騎士ドラグーンは真っ赤なカラーリングからモノトーンの落ち着いた色へと変えられていた。

 まあぶっちゃけ、いま作っているエルゼ機と色が被るので、ついでだから変えてしまおうということなのだが。

 こっちの方がエンデのイメージにあっていると思うが、ツートンカラーってのはどうもパトカーを連想させるな……。そういやこんな警察のロボットが出るアニメがあったな。実写化されるとかネットで見たけど。


「改良しておいたから、もう燃料補給はいらないはずだ。動かなくなっても何日か放置しておけば、勝手に魔力を取り込んで変換すると思う。あと、エンデ以外が動かしても、まともには動かせないから他人には譲渡できないぞ」

「そんなことしないって。これでもかなりこいつを気に入っているんだよ?」


 まあ、それはなんとなくわかる。ちなみに通信装置もちゃんとつけておいたから、よほど離れてなければ連絡もできるはずだ。もっともこいつの場合、例のプレパラートに入れて持ち歩かれたら連絡の取りようがないんだけど。


「そういや、前回もらったあの「王」の声ってもうないのか?」

「ないわけじゃないんだけど。ただ、残り少ないから、ちょっと分けられないかな」

「そうか……」


 以前にもらったので今回ももらえないかと期待したのだが、前回のあれは大盤振る舞いだったんだな。残念だが仕方ない、か。


「そういやエンデはなんでフレイズの出現を予知できるんだ? なにか出現する前触れみたいなものがあるのか?」

「今回のはたまたまだけど。まず空間に微妙な歪みができるね。まず、これで何日くらいでここに空間の綻びができるかわかる。それと「音」。フレイズは特殊な「共鳴音」を放って仲間を判別している。それは空間を超えてこちら側にも聞こえているんだよ。これである程度の数と種類がわかる。と言っても人間の耳じゃ聞き取れないだろうけどさ」


 「歪み」と「共鳴音」か。それを感知する道具があれば、今回みたいに予測を立てられるかもしれないな。っていうか、人間に聞こえない音を聞き取るって、本当に何者なんだろう、こいつ……。

 そんなことを考えていたら、エンデがさっさと竜騎士に乗り込んでいた。


「じゃあ、僕は用事があるんで行くよ。何日後かにフレイズが現れたら駆けつけるから」

「わかった。よろしく頼む」


 胸部ハッチが閉じると、竜騎士が高機動モードに変わって、あっという間に砂埃を上げながら平原の彼方へと消えて行った。


「さてと……。あとは上級種の対策だな。あの荷電粒子砲みたいなもんをなんとかできるかどうか……」


 正直言うと、例えあれを防ぐ魔法があったとしても、あの荷電粒子砲モドキの正面に立つのは勘弁してもらいたいところだ。

 「シールド」や「アブソーブ」では範囲が狭すぎるし、そもそもあの荷電粒子砲モドキが魔力によっての攻撃なのかどうかもわからないしな。

 とりあえず「図書館」へ行って、使えそうな無属性魔法の本を探してみる。何冊か見つかったが、相変わらず分厚い本だ。あまり時間をかけてもいられないので、パラパラと流し読みをしながら、ページを読み進めていく。

 無属性魔法ってのは5000年前からあったんだよなあ。今までの魔法を全て網羅したらとんでもない数になるだろう。ちょっとしたところを痒くさせる魔法とか、飲み物をものすごく苦くする魔法とか、イタズラにしか使えないような魔法がいっぱいだ。

 だけど何事も使い方次第だと思うんだよな。「スリップ」だってイタズラ魔法と言えなくもないけど、かなり重宝してるし。

 半日ほど籠っていくつかの魔法を見つけた。これでなんとか対抗できればいいけど。その間ずっと「図書館」の管理人であるファムはマイペースに本を読んでいた。少しは手伝ってくれよ。

 今度は「工房」へと向かい、ロゼッタとモニカの作業を視察する。工房の中はチビロボたちが所狭しとちょこまか走り回っていた。

 作業中のガレージの中を覗くと、そこには骨組みだけの機体がクレーンで吊り上げられている。右腕が外されていて、ロゼッタとモニカがなにか悩んでいるようだった。


「どうした? 二人とも」

「エルゼ殿の機体でありまスが、近接格闘戦用となると、主な武器は拳になるのでありまスが……」

「ただ硬いだけの拳で殴るってのも芸がないと思ってナ。やっぱりこういうのは一撃必殺の威力が必要だろ?」


 ふむ。一理ある。エルゼの機体は接近戦でこそ、その威力を充分に発揮できる。一撃で相手を潰し、そしてすぐさま次の相手へ、そんなスタイルが合っているは思うけど。


「一撃目でフレイズの身体を砕き、二撃目で核を砕く……拳だとどうしても二つの工程が必要になるでありまス」

「これが剣や槍なら、身体ごと核を破壊ってのもありなんだけどナ」


 言ってることはわかる。これがハンマーとか広範囲の打撃ならまた別の意味で一撃で済む。核を身体ごと潰せばいいんだからな。


「こう……拳を撃ち込んだあとに、核へ向けて何かを発射すれば一撃で仕留めることが可能だと思うのでありまスが」


 ロゼッタが拳を突き出すようなポーズで動きを示唆してみせる。


「短い槍のようなものを腕に取り付けたらいいんじゃないか?」

「打撃のときはそれでいいけどよ、手刀や他の動きをするとき邪魔になるゼ? 腕に収納可能なものなら大丈夫だと思うけどナ」


 うーん、となると、普段は腕に収納していて攻撃時に飛び出すような槍か? あれ、そういえば……。

 スマホを操作してネット検索してみる。確かそんな武器が……あ、これか。画像を空中に投影する。


「これだ。パイルバンカー」

「随分と大きなものでありまスな。どういったものなのでありまスか?」


 当然ながらロゼッタもモニカも日本語を読めない。解説に書いてあることを大雑把に、かいつまんで説明する。あっちのアニメやゲームの話をしたってわからないだろうし。


「槍や杭を高速射出することにより敵の装甲を打ち砕く武器……でありまスか」

「エルゼの場合は装甲を打ち砕いてから本体を貫くための武器になるけどな。これをコンパクト化して腕に装備させることは可能か?」

「できるんじゃねえかナ。火薬とかじゃなくて、魔力による射出にして、杭……というか手甲もだけど、晶材で作れば破壊力は申し分ねえだろ。ちっとばかしゴツくなるかもしれねえけどナ」


 まあ、それくらいですむなら問題ないだろ。撃ちっ放しで、戻ってこない弾丸射出系と違って、晶材が無駄にならないのもいいな。


「しかしなんとも奇抜な武器でありまスな……。マスターはどこでこんな情報を?」

「んー……。ま、気にすんな」

「はあ……」


 そういや、まだ誰にも僕が異世界から来たって言ってないな。教皇猊下とフィリスさんは神様のことを知ってるけど、それ以上は教えてない。

 言っても信じてもらえるかってのもあるけど。やっぱりユミナやエルゼたち、あとバビロンのみんなには言っておいた方がいいのかな……。

 んー……。どっちみち婚約者もバビロンも、あとひと枠ずつあるし、そん時でいいか。まとめて説明すればいいや。


「よし、じゃあパイルバンカーとやらを作ってみるか! おい、みんな集まれ!」


 モニカが号令をかけるとテケテケとミニロボたちが集まってきた。彼女が説明しているのを小さく頷きながらおとなしく聞いている。


「かなり凶悪な武器になりそうでありまスな」

「いいんじゃないの。なんせパイルバンカーは男のロマンらしいからな」

「エルゼ殿は女性でありまスよ……?」


 待った! 今のチクるなよ! 殺される!

 こうして作られたエルゼの新機体は真紅のカラーリングを施されて、戦乙女の名前から、「ゲルヒルデ」と名付けられた。








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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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