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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第20章 災い来たりて。
162/637

#162 戦闘準備、そして戦闘開始。




「あらあ、知らない間になんかすごいことになってるのよ」


 僕の事情説明を聞きながら、恋愛神……もとい、花恋姉さんはボリボリとクッキーを貪っていた。絨毯にこぼすなよう。


「そういうわけで姉さんに手を貸してもらえないかと思ったんだけど」

「あー、それはムリなのよ。私は恋愛に関することなら力を使えるけど、それ以外は従属神絡みじゃなきゃ使えないのよ」

「恋愛に関することならって……この場合は?」

「んー、戦場で共に戦う男の騎士と女の騎士の間にロマンスを生み出すことができるのよ。もちろん逆に引き裂くこともできるのよ」


 なんだそれ。結局恋愛事のみか。使えん。


「……なんか失礼なこと考えたのよ?」

「すいまひぇん。痛いれふ、はなしてくらひゃい」


 ホッペをギリギリとつねられたので必死に謝る。くそう、さすが腐っても神。日々グータラと暮らしているくせにこういう時だけは鋭い。


「……また考えたのよ?」

「すいまひぇん! 痛ひ! 痛ひ!」


 これ、僕だから耐えられてるのであって、常人なら千切れてんじゃないだろか。ヒリヒリする頬をさすりながら今度はバビロンへと転移する。

 ロゼッタとモニカ、そしてミニロボたちがフレームギアの最終調整に入っていた。


「どうだ?」

「なんとかなりそうでありまスよ。210機、予備機体40機の合わせて合計250機、30分後には出れるでありまス」

「マスター、戦場にはオレも連れて行ってくれよナ! フレイズ共に目にもの見せてやるゼ!」


 スパナを振り回しながらモニカが叫ぶ。確かにバビロンナンバーズの中では彼女が一番操縦技術に長けている。


「あ、あとそれぞれの所属国をわかりやすくするために、肩のパーツだけカラーリングを変えといたでありまスよ。それぞれの王家の紋章も入れといたでありまス」

「なるほど、助かるよ」


 ベルファストは赤、リーフリースは青、レグルスは紫、ミスミドは緑、ラミッシュは黄、リーニエはオレンジ、と重騎士と黒騎士の右肩のパーツだけ塗り分けられていた。左肩には同じ色でナンバーを振ってある。戦場で個別の判断をするためには必要だとはいえ、見映えが悪いな。

 「蔵」の設計図が手に入ったら、それぞれの国の旗騎を作っても面白いかもな。「国王騎ベルファスト」とか「皇帝騎レグルス」とか。

 まあ、何はともあれここを乗り越えてからだな。


「武器はどうなっている?」

「「工房」の方で量産してるでありまスが……。フレイズ製の武器は限りがあるでありまスよ?」

「材料がないんじゃ仕方ないさ。「工房」じゃ小さい破片からフレームギア用の武器は作れないんだろう?」

「マスターの「モデリング」みたいに変形させているわけではないでありまスから。結合ができないのでありまスよ。人間用のサイズならどうにかなるでありまスが、砕いた破片の大きさをそのまま流用することになるでありまス」

「基本は短剣か槍の穂先に使う感じだナ。弓矢の鏃にしてもよかったんだが、核を狙わないといけないし、今回の戦いでは逆に他のみんなの邪魔になりそうだからナ。あ、あとで魔力を込めといてくれよ、マスター」


 わかってるって。魔力を込めないとただのガラス武器だからな。

 フレームギアと武器は大丈夫だ。あとは騎士団のみんなの方か。

 宿舎の方へ行ってみると、みんなが思い思いにそわそわとしていたらしいが、僕が来たのを見ると駆け寄ってきた。


「陛下、準備は整っています。いつでも出撃できます」


 勇ましくそう答えたのはレベッカさんだ。その隣ではローガンさんも不敵に笑っている。

 騎士団全員がフレームギアに乗って戦うわけではない。オウガやラミアなどの魔族は搭乗できないし、中には体質的に(乗り物酔いが酷い、閉所恐怖症、など)乗れない者もいる。

 しかしその者たちもサポートに回り、みんなの手助けをすることになっている。


「いいか、みんな。無理だけはするな。自分の命を最優先に考えろ。危険だと思ったら退くんだ。名誉の戦死なんて僕は許さない。全員無事に帰ってこそ、誇りある勝利だ」


 みんなの顔を見ながら僕は口を開く。この中の誰一人として欠けさせるわけにはいかない。


「自分の力を過信するな。敵の力を侮るな。少し臆病なくらいがちょうどいい。一人で倒せなきゃ二人で、それでもダメなら三人でかかれ。正々堂々なんてあいつらには必要ないからな」


 なるべくサポートをするつもりだが、それでもカバーしきれない部分が出てくるだろう。大破するか、機能に異常があれば自動で脱出のための転移が行われるが、絶対安全というわけではない。コクピットを直接潰されたらそれまでだしな。

 とにかくみんなの安全が第一だ。それを念押しして城に戻る。

 暖炉のあるリビングルームに行くと、エルゼたちが待っていた。今回の戦いにはエルゼと八重の二人だけ加わってもらう。後の三人は本陣で待機してもらい、怪我人などが出た時の対応に回ってもらう。


「わたくしも戦えますのに……」

「ルーは立場上、レグルスの姫だからさ。レグルス騎士団の人たちが自分の命よりルーの方を優先されると困るんだ」


 ユミナの場合も同じようなものだ。リンゼの場合は魔法がフレイズに効かないので、今回の戦いには向いてないということと、光属性が使えるので回復に専念してもらおうというわけだ。


「エルゼと八重、そして騎士団長のレインさん、この三人を別々の戦場へ配置する。そして、エルゼは珊瑚と黒曜、八重は琥珀、レインさんは紅玉と一緒に乗ってもらって、戦局に何か動きがあれば僕に報告してもらいたい」


 念話ならどんなに離れていても意思疎通ができる。それによって僕がどう動くか判断するのがいいだろう。


「冬夜さん、無理はしないで下さいね」

「大丈夫、みんな無事に戻ってくるよ。そろそろ時間だ、行こうか」


 みんなと連れ立って開いた「ゲート」から本陣を作る場所へ向かう。決戦の本陣は長城前ということになった。




 ハノック領土の隣、ブリュンヒルドの長城前に250機ものフレームギアが立ち並ぶ。壮観だな。

 すでに各国の騎士たちはフレームギアに乗り込み、出撃の時を待っている。本陣の方では各国の王たちが大きな映像板でフレイズの動きを監視していた。

 この映像板は4×4の16画面に分割されており、それぞれの画面で別々の映像が映し出されている。

 フレームギアのカメラ技術の応用だが、カメラを持って飛び回っているのは僕が召喚で呼び出したヴァルキリーたちだ。


「こちらの方でも戦局がわかるのはありがたいな」

「ええ、どうなっているのかわからないまま、待っているだけではたまりませんからね」


 リーフリース皇王とラミッシュ教皇が話してる横で、僕は目の前に座る各国のフレームギアを率いる隊長と副隊長を見回した。

 ベルファストから隊長はニール副団長、副隊長にリオンさん。レグルスからは隻眼のガスパルさんが隊長に、ミスミドの副隊長には狼の獣人ガルンさん、ここらは僕も知り合いだ。

 あとの人たちは西方会議で王様たちの護衛や警護で見たことはあるが、話したことはなかった人たちだったりする。


「では作戦を伝えます。まず、ブリュンヒルドの90機を30機ずつ三つに分け、ユーロンの首都から離れた三方へ配置します。仮にこの戦場をA、B、Cとして、Aにベルファストとレグルス、Bにミスミドとラミッシュ、Cにリーフリースとリーニエの40機ずつを配置、各70機で待ち構えてもらいます」


 僕は空中に映し出したユーロンのマップ上、その三方にマークを表示した。


「作戦開始と同時にAに向けてフレイズたちの大移動が始まると思います。これを引きつけて、A部隊とフレイズたちの戦闘が始まったら、続けて今度はBでフレイズを引き寄せます。さらに同じようにCからも呼び寄せ、なるべく均等に三方向へ分散させようと思います」


 そこでリオンさんから手が上がった。


「均等に分かれなかった場合、どうするのですか?」

「その場合、僕が何体か部隊を別の部隊へ転移します。基本は十機を一小隊として動かしますが、各国二小隊のうち小隊ごとバラバラになることもありえます」

「それぞれの連絡方法は?」

「通信チャンネルをそれぞれ合わせてもらいます。これは範囲がそれほど広くはないので他の戦場までは届きません。基本的に現場通信になると思います。なにかあったらこの……八重、エルゼ、レインさんの三人に連絡を入れてもらえれば、僕に伝わるようになっています」


 画面を切り替えて三人の機体を表示する。レインさんの白騎士シャインカウントはそのまま白、八重の黒騎士ナイトバロンは紫に、エルゼの黒騎士ナイトバロンは赤に塗られていた。黒じゃないのに黒騎士というツッコミはいらない。

 八重の機体には反りが入った水晶の大太刀が装備され、エルゼの両拳にはこちらも水晶のゴツいガントレットが装備されていた。どちらもフレイズのかけらから僕が作った武器だ。レインさんにも同じ剣を持たせている。


「基本的に現場現場で状況判断をし、動いてください。不審な点やおかしな現象が起こったら僕の方へ連絡を。あ、あとすでに一体の赤いフレームギアが戦闘に入っていますが、一応味方です。質問は?」

「空を飛ぶフレイズもいると聞いたのですが、それはどのように対処したらよいのですか?」

「それに関しては僕が迎撃に当たります。やられないように気をつけて下さい。中には水晶の矢のようなものを撃ち出してくるものもいますので、油断しないように。機体がやられても搭乗者が無事ならここに転移されるようになってますが、コクピットを直撃されたらなんにもなりませんから」


 作戦説明を終え、隊長たちもそれぞれの黒騎士へと乗り込む。そしてA部隊、B部隊、C部隊と分かれ、A部隊にはレインさん、B部隊には八重、C部隊にはエルゼを配置する。

 それぞれ、紅玉、琥珀、珊瑚と黒曜が一緒に乗り込み、僕への連絡役とした。B部隊、C部隊にはノルンさんとニコラさんを配置し、八重たちのサポートをお願いした。基本、八重たちは個人で動く。騎士団たちの統率は副団長である二人に任せた方がいい。レインさんにも山県のおっさんがサポートにつく。

 本陣には警護役として数機のフレームギアと、椿さん、馬場の爺さん、あと召喚したケルベロスが守りを固める。なにかあってもこいつを通せば僕に連絡がつくからな。

 A部隊、B部隊、C部隊をそれぞれの現場へと「ゲート」で転移させる。

 僕もA部隊と共に戦場に向かった。さて、始めるか。


《これより作戦を開始する。通達よろしく》

《御意》

《承知しました》

《了解よ〜》

《主、ご武運を》


 琥珀、紅玉、黒曜、珊瑚からそれぞれ返事が返される。

 マップを表示し、フレイズたちの現在位置を確認する。懐からエンデにもらったプレパラートを取り出した。


「これで効果が無かったらシャレにならないな……」


 そんときゃエンデをぶん殴るか。手の中で力を入れてプレパラートをパキッ、と砕く。


「あれ?」


 音なんか鳴らないぞ? まさか本当に一杯食わされたか?

 不安に駆られてマップを見ると、フレイズたちの動きが止まっていた。数秒してから再び動きだし、ユーロン中のフレイズが、こちらへ向かって移動を始めた。どうやら効果はあったようだ。超音波みたいに人間には聞き取れない音だったのだろうか。

 こちらへ向かってくるフレイズのうち、何体かが頭一つ抜けたスピードで向かってくる。うん?


「検索。飛行型のフレイズを黄色で表示」

『了解。表示しまス』


 こちらへ猛スピードで向かっていたフレイズが黄色に染まる。やっぱりか。数的にはさほどでもないな。10体前後といったところか。

 フレームギアが飛べない以上、こいつらは僕が片付けるしかない。「ストレージ」からフレイズのかけらで作った大剣(面倒なんでこれらを「晶剣」と命名する)を二本取り出し、両手に構える。


《紅玉、こちらへ向かっている飛行型のフレイズを叩いてくる。地上からは第一陣が十五分後くらいにこっちにやってくるから》

《承知しました。お気をつけて》


 白騎士にレインさんとともに乗り込んでいる紅玉へ連絡しておく。


「それじゃあ露払いといきますか」


 僕は「フライ」を使って勢いよく空へ飛び上がり、一気に速度を上げて、飛行型のフレイズの元へと一直線に向かっていった。

 戦闘開始だ。








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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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