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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第20章 災い来たりて。
155/637

#155 刺客、そして自爆。

 バビロンも「庭園」、「工房」、「錬金棟」、「格納庫」、「塔」、「城壁」と6つ揃った。

 「城壁」で働いていた15体のミニロボたちのうち、10体を「格納庫」の方へと移し、ロゼッタとモニカの手伝いをしてもらうことにした。これで彼女らの負担が軽くなればいいのだが。

 リオラとノエルの二人にザナックさんからもらった試作品などを収めている衣装部屋から、好きなのを選んで着ていいと言ったところ、リオラはジャンパースカートのブレザー、ノエルはジャージを着てきた。なんでそのチョイス? 二人が気に入っているならいいけど……。

 今日はそろそろ城下のギルド支店が完成する頃なので、視察に出かけることにする。

 ギルド外観は、ほぼ出来上がっていて、細かい装飾や内装の作業に入っていた。なかなか大きくて立派な建物だ。なんでも冒険者出身の王が治める国、そこのギルドなのだから、とかなり気合いを入れたらしい。

 それはいいんだが、そんなに冒険者が来ないと思うんだけどなあ。ここらには魔獣もいないし、盗賊団なんかも出ない。依頼のほとんどが雑務系になると思うんだが。

 まあ、レグルスやベルファストの方にも日帰りで行けないこともないから、討伐系が全くないってことにはならないと思うけど。

 ギルドの方が内装のような細かい作業に入ってしまったので、オウガ族のザムザは今度は隣の酒場の方の手伝いをしていた。こっちはまだ柱を建てたばかりだから、まだ力仕事が残っている。あの巨体では内装工事は無理だろうからなあ。


「あれ?」


 ふと、酒場の建築作業を見ている桜の姿を見つけた。傍らには珊瑚と黒曜がふよふよと浮いている。


『あら〜、主だわぁ』

「……王様」


 桜は今だに記憶が戻らない。放り出すわけにもいかないので、一応お客様として城に滞在してもらっている。

 大人しい感じの外観とは裏腹に、かなり行動派のようで、毎日のようにどこかに出かけている。勝手にいろいろうろつかれても困るので、外出する際は僕の召喚獣の誰かと行動を共にすることにしてもらっていた。


「こんなとこでなにしてるの?」

『さっきまで「銀月」で食事をして、帰ろうとしたらこの子急に立ち止まっちゃったのよう』


 僕の質問に、桜じゃなくて黒曜が答えた。


「「銀月」で食事って、お金は?」

『主のツケでいいって店長が』


 おい。ミカさんもいいかげんだな……。でも一応ここの「銀月」は国営ってことになってるからアリなのか? まさか他のみんなも僕のツケで食べてないだろうな。


「それで桜は何をしてたの?」

「あれ……」


 桜が指差す先には楽しそうに材木を運ぶオウガ族のザムザがいた。? 彼がどうかしたのか?


「彼は魔族……。なのに誰も気にしてない。珍しい」


 なるほど、そういうことか。魔族と人間たちが分け隔てなく働いているのが珍しいんだな。普通、魔族と言ったら恐れられているか、警戒されて、孤高の存在になりがちだからな。

 実際、僕もこの国以外で魔族と人間が笑いあったりしているのを見たことがない。酒場の隅で一人で酒を飲んでたりしてたのを見たことはあるが。


「この国じゃ、魔族だからって差別されたりはしないよ。そりゃあ別の国から来た旅人なんかには警戒されるかもしれないけど。うちの騎士団にも彼を含めて五人ほど魔族かいるからね」

「……この国は変わっている。王様からして変わっているけれど。でも、とてもいい国。国のみんなが助け合って生きている」


 自分自身を褒められたわけじゃないけど、なんか嬉しいな。

 まあ、小さい国だからお互いに助け合わなけりゃやっていけないってのもあるけどさ。

 そのあと桜を連れて、国の東側に作っている農業地を見て回る。相変わらずアルラウネのラクシェが畑仕事に精を出していた。彼女も魔族だ。


「ここでは何を育てているの?」

「大根とかカブですね。そろそろ収穫できるんじゃないかと。漬物にすると美味しいですよー」


 そう言ってラクシェが微笑む。漬物はイーシェン特有の食べ物らしいが、この国でも普通に広まっていた。国民にイーシェン出身が多いため、どうしてもそういう方向性になりがちである。

 実験的に作った水田も問題はなさそうなので、春になるまでになんとかある程度の広さを開拓したいところだ。やっぱり自分も美味い米を食いたいし。

 あとは味噌とか納豆とか。大豆だな。豆腐や枝豆もいいな。春になったら育て始めるそうなので楽しみだ。

 ラクシェに別れを告げて、城へと続く道を戻り始める。

 しばらく歩いていると、妙な気配を感じた。周りには僕と桜、珊瑚と黒曜しかいない。


『主』

「わかってる」


 珊瑚の言葉を遮り、こっそりと「シールド」を展開する。次の瞬間、近くの木の上から放たれた矢が僕らを襲った。


「ッ!?」


 驚きに息を飲む桜をよそに、矢は不可視の盾に阻まれ弾かれる。矢が飛んできた木の上へ目をやると、仮面を被った黒づくめの者がいた。

 妙な隈取りがされた仮面だ。不審者極まりない。僕がそいつの方へ一歩踏み出すと、地面から三人の同じような仮面をつけた黒装束の男たちが現れた。複数の気配を感じてはいたが、お前らずっと埋まってたのか?

 手には湾曲した短刀を持ち、注意深く観察すると、何やら刃が濡れている。恐らくは毒でも塗られているんだろうな。

 間違いない。こいつらは刺客だ。


「……巨人兵はどこだ」

「巨人兵? フレームギアのことか?」

「質問に答えろ」

「答える義理はないね。お前らどこの国から来た?」


 目の前にいる三人に尋ねるが、答えはない。素直に答えりゃそれで終わりにしてやったのにな。

 僕は一瞬にして三人に近づき、それぞれの肩に触れた。


「グラビティ」

「ぐふうっ!?」


 加重魔法で這いつくばらせる。その光景を見て、四人目が木の上から飛び降り、逃走を図ろうとした。


「スリップ」

「ぐがっ!?」


 四人目は地面に降りた途端に転倒し、後頭部を強打した。あー、タイミング悪かったな。

 あっちは置いといて、目の前の這いつくばる三人に目を向け、仮面を引っぺがしてやろうと近づく。正体見せろ、この野郎。


「ダメッ!!」


 いきなり桜に腕を引かれ、後ろに倒れ込む。次の瞬間、三人の仮面が爆発した。


「なッ……!」

 

 煙と肉片を飛び散らせながら、三人が動かなくなる。そりゃ頭が全部吹っ飛んでも動いてたら化け物だ。

 自爆か? 捕まって情報を引き出されるわけにはいかないってことか。昔の時代劇なんかで、敵に捕まった忍者とかが舌を噛んで死ぬシーンを見たことはあるが……。まあ舌を噛み切っても、あれって確実に死ぬわけじゃないそうだから、自爆の方が確実だろうけど……。

 スリップで転倒したやつの方を見ると、すでにもう姿はなかった。苦無のようなものにロープが結ばれている武器が、近くの木に刺さっている。これを使ってスリップの地面から脱出したんだな。

 「仮面」で検索をかけたが、見つからなかった。すでに仮面を外し、逃走したのだろう。結局正体はわからずじまいか。面倒なことになる前に手を打つ必要があるな。売られたケンカは買うぞ、僕は。





「三人の死体からは身元がわかるようなものは何も見つかりませんでした。逃げた一人も行方不明です」


 会議室で副団長のニコラさんが報告する。あまり大事おおごとにしたくはなかったのだが、自国の王が襲われたのだ、そうも言ってられないようである。会議室には騎士団の幹部たちと宰相の高坂さん、諜報部の椿さんが集まっていた。


「んで? 小僧に心当たりはねえのか?」

「ない……と思うんですけどね。どうもフレームギア狙いだったのは間違いないんですけど」

「それじゃ全部の国が疑わしくなっちまうわなあ」


 馬場の爺さんが腕を組んでふむう、と椅子にもたれた。まあ、わからんでもない。兵器として見たら、どの国も欲しいと思うのは間違いない。おそらくあいつらは僕を拉致監禁するなりして、フレームギアの所在を吐かせようとしたのだろう。弓矢で足でも撃ち抜き、動けなくしたところで意識を奪う、とか。あの短刀に塗られていたのは麻痺性の毒だったらしいからな。


「しかし、西方同盟の国というのは可能性としては低いでしょう。暴走した一部の権力者が動いたという可能性もありますが、国ぐるみではないはすです。そんなことをすればどうなるか、わからないほど愚かではありますまい」


 高坂さんの言うとおりだな。もし、企みが露見したら他の同盟国から相手にされなくなる。それは国を滅ぼす行為だ。

 それにあいつらは「巨人兵」とか言ってた。「フレームギア」という名称も知らない可能性がある。となれば、あまり関わり合いのない国の仕業と考えた方がしっくりくる。

 そんなことを考えてたら、椿さんが静かに手を上げた。


「ひとつ、気になるのですが。陛下は刺客が仮面を付けていたと仰られましたが……」

「古今、暗殺集団や諜報機関の者は仮面を被る奴が多い。なにもおかしくはないぜ?」

「ええ。ただその仮面からなにかわからないか、と……」


 って言ってもな。仮面は跡形もなく爆破されてしまったし。確かに山県のおっさんの言うとおり、ベルファストの諜報部隊「エスピオン」にいたラピスさんやセシルさんたちも白い仮面を被ってたしな。仮面によってその国の特徴が出るということなんだろうか。


「その仮面ってどんなものだったんですか?」

「なんかこう、歌舞伎や京劇の役者のような隈取りがある……」

「歌舞伎? 京劇?」


 団長のレインさんが首を傾げる。ウサ耳が同じように傾いた。そりゃわからないよなあ。あ。

 部屋の机の上から紙を手に取り、「ドローイング」を発動させる。たちまち紙に僕を襲ったやつの仮面がリアルな描写で浮かび上がってきた。


「今さらだけど、陛下って便利よねえ……」


 ぼそりと副団長のノルンさんがつぶやいたが、そこは「陛下の魔法って」と言ってくれよ……。


「これがその仮面です。なんかわかります?」


 みんなその絵を眺めていたが、やがて椿さんが口を開いた。


「確証はありませんが……ユーロンの文化色が感じられます。確か、あの国には「クラウ」という諜報部隊があるという噂を聞いたことが」

「ユーロン?」

「天帝国ユーロン。イーシェンの西に存在する国家です。天帝が治める国で、イーシェンとは何度か戦争を起こしたこともあります」


 天帝国ユーロン。イーシェンの海を挟んで隣にある国か。けっこう遠いな。よくもまあそんなところからやってきたもんだ。

 まあまだ証拠はないが。注意しておくにこしたことはない、か。あれで諦めたとも思えないしな。

 とりあえず警備を強化して、不審者には気をつけるよう注意してもらう。あいつらの目的がフレームギアだとしたら、絶対に手に入らないが。上空に浮かんでいるバビロンに行く方法は、僕の「ゲート」か、シェスカたちバビロンナンバーズの短距離転移しかない。

 もちろん空を飛べるなら辿り着くことは可能だが、それもこの間までのこと。「城壁」を手に入れた以上、外部から直接の侵入は不可能だ。

 僕を直接狙ってくれりゃいいが、周りの誰かが狙われる可能性も捨てきれない。充分に気をつけてもらうことにしよう。

 ま、そんなことになったら許さないけどな。黒幕を見つけ出して、死んだ方がマシという目に合わせてやる。

 身元がバレるのを恐れて自爆させるような奴らだ。ろくなもんじゃない。

 ……そういやなんで桜はあいつらの仮面が爆発するのを知ってたんだろ?

 ひょっとして桜はユーロンの諜報機関の人間とか? まさか。彼女を見つけたのはイーシェンだし、一応ユミナの魔眼で悪い人間ではないと確認もしている。

 でも記憶を失っていたら、魔眼の効果は発揮されるのだろうか。例えば極悪人が記憶をなくし、まっさらな状態になったなら、魔眼はその人を「悪人」と判断するのだろうか。本人でさえ意識してない部分の、その本質まで見抜けるのだろうか。

 桜の記憶が戻ることに、一抹の不安を感じてしまう。が、ここは自分の直感を信じよう。桜は悪い子じゃないよ、きっと。







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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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