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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第17章 日々の暮らし4。
123/637

#123 騎士団募集、そして団長決定。



「というわけでそろそろ騎士団を立ち上げようかと思うんだけど」


 そんなふうに僕が切り出すと、会議室の円卓に座っていたみんなの中から高坂さんが立ち上がった。


「現在の国益から無理のない範囲で申しますと、まず元・武田の希望者が30名。こちらはもともと我々の部下なので、身元もハッキリしております。これを15名ずつ馬場、山県の配下につけます。それと椿が率いる元・武田忍びの隠密部隊が10名ほど。そして新規に募集する定員は60名前後。まずはこの計100名ほどでどうかと」


 新規で60名か。まあ初めはそんなもんでいいだろ。大きい町でもないわけだし。

 会議室には僕と高坂さんの他に、馬場、山県、内藤の元・武田四天王、忍び頭の椿さん、あとはレインさん、ノルンさん、ニコラさんの三騎士が揃っていた。このうち高坂さんと内藤のおっさん、あと椿さんは正確には騎士団ではない。でもこういうことを決定するときにはいてもらった方がいいだろうからな。


「募集資格とかはどうするんだ?」


 口を開いた馬場の爺さんの質問に僕が答える。


「そうだな……まず当然ながら犯罪者、お尋ね者は却下。男女問わず。種族も問わず。身分も年齢も問わない」

「そんな募集をかけたらわんさと来るんじゃないのか?」


 山県のおっさんのいうことももっともかもしれないが、どこに優れた人材がいるかわからないし、とりあえず多く募集するのは悪くないと思う。

 その玉石混交の中から玉を見つけるのが僕らの仕事だ。


「ところで団長とかはどうするんですか?」


 内藤のおっさんが軽く手を上げて発言する。騎士団の団長か。ちらりと馬場の爺さんと山県のおっさんを見ると、


「儂らはゴメンだぞ。そんな面倒なこと。一隊長で充分だ」

「俺も。性に合わねえ」


 あ、やっぱり。前から言ってたもんなあ。武田で武将やってたんならやってくれてもいいのに。もう懲りたってことなのかな。と、なると……。


「三人の中から選ぶってことか」

「僕らですか!?」


 レインさんがウサ耳をピンと伸ばして立ち上がる。ノルンさんもニコラさんも目を丸くしていた。ウサギとオオカミとキツネの獣人であるこの三人が今のところ正式なウチの騎士だからな。


「まあ、他にいないし」

「で、でも、僕らにはまだ団長なんて無理ですよ!」


 慌てふためきながらレインさんが両手を振る。横の二人もウンウンと頷いていた。


「んー、まあ百人ぐらいだし、各々で隊を作って有事の際は僕が統率、って形でもいいんだけど。それでも僕が不在の時とかやっぱり必要だと思うんだよ」

「ですが……」


 とにかく団長は必要だ。少人数だとしても、一応騎士団なんだし。問題はどうやって決めるかだが……。三人とも一長一短あるからなあ。

 ニコラさんは真面目だが融通がきかないし、ノルンさんは人当たりがいいけど大雑把だし、レインさんはなんでもそつなくこなすけどちょっと引っ込み思案だし。


「まあ、君らのうち一人が団長で残りの二人が副団長ってことにしよう」


 僕がそう言い放つと、ニコラさんが手を上げた。


「私は団長にレインを推薦します」

「あ、あたしも〜。レインちゃんがいいと思う」

「ええっ!?」


 レインさんが裏切られた! みたいな顔をして二人を睨む。二人が推薦してくれるなら揉めないですむんで、こちらとしては願ったり叶ったりだが。


「ふ、二人ともなに言ってるの!? 僕なんかよりニコラの方が向いてるでしょう!?」

「いや、冷静に考えて君の方がいい。ノルンは大雑把だから団長としてはいささか問題がある。サボりぐせもあるしな。私では柔軟な発想はできないし、おそらく部下に厳しく接すると思う。団長としてはそれはまずい。よく人を従わせるには飴と鞭というが、間違いなく私は鞭の方だ。騎士団の団長はなるべくなら飴の方がいい」


 ふーん、客観的に見てるんだなあ。アレだ、イメージとしては新撰組の土方歳三。あの「鬼の副長」の立ち位置だな。局長である近藤勇を立て、その傍らで冷徹なまでに隊員を厳しく律する。確かにそういう人物はいた方がいいと思うけど。


「じゃあ、レインさんが団長と。そういうわけで」

『異議なし』

「ええっ!? 待ってくださいよ!!」


 ここ数ヶ月、馬場の爺さんと山県のおっさんに毎日のように鍛えられ、ベルファスト王国やレグルス帝国の猛者たちとも剣を交えて教えを請い、メキメキと三人は力をつけた。素質はかなりのものだったし、もともと獣人なだけに基本的に身体能力はズバ抜けてるしな。

 それにある意味、これはうってつけの人選かもしれない。獣人であり、女性であるレインさんが団長なら、この国では種族も性別も関係ないということがわかってもらえるんじゃないかと。

 

「まあまあ、団長と言っても他の国で言ったらまだ小隊長クラスだから、そんなに気負わないでも。他の二人は副団長としてサポートよろしく」

「はっ」

「任せて下さいよー」


 ニコラさんが生真面目に、ノルンさんがケラケラと笑いながら返事をする。当のレインさんは「ええー……」と力無く椅子に座り込む。ウサ耳もしゅんと垂れ下がっていた。

 なんか気が引けるがここは頑張ってもらうしかない。できるだけ僕もサポートするけどさ。

 あとはビラとか作っていろんなところで貼らせてもらうか。ベルファストやレグルスの冒険者ギルドとかに置かせてもらえばそれなりに目に留まるだろ。

 そのあとみんなで話し合い、選考会は一ヶ月後ということで決まった。




 で、一ヶ月後。


「え?」

「ですから。定員60名のところに1000人以上の希望者が集まっています。これは予想外でした」


 高坂さんが告げた人数に思わず聞き返してしまった。1000人以上ってそんなにか。確かにいろんなところで募集のビラとか撒いたけど、こんなにくるとは。明らかにこの国の国民より多いぞ。


「なんだってそんなことに…」

「陛下はベルファストでは唯一のランク銀の冒険者、レグルスではクーデターを鎮圧した英雄、ミスミドでは竜殺しですからな。その名声に引かれてやってきたのでしょう。もちろん冷やかしや、他国の諜報員もいるかもしれませんが」


 なるほど。まあ、多いに越したことはないか? いろんなタイプの奴らが集まった方が臨機応変に対処できそうだし。


「それで陛下はどのようにして選考なさるおつもりで?」

「うーん、どうしたらいいかね? 実はまだ決めてない」


 どういった基準で選んだらいいのか見当もつかないからなあ。


「陛下がどのような者が我がブリュンヒルド騎士団に相応しいと考えているかによって変わってきますな。なによりも力が重要と考えるならば、全員戦わせて上位60名を召し抱えればよろしいかと」


 さらりと言うね。いくら実力があっても単なる乱暴者とかならお断りだ。そう考えると、まずはこの国の人たちのことを一番に考えられる人物が理想かな。いろんな思惑があってうちに来たんだろうけど、そこは譲れない。

 しかし、一人一人面接していたんでは時間がかかり過ぎる。どうするかな。




「ブリュンヒルド騎士団入団希望者はこちらへおこし下さーい。順番、順番にお願いしまーす」


 城の城門前に設置された受付で希望者が書類に名前、性別、種族、年齢、出身地、自己アピールなどを書いて、受付のラピスさんから番号札の書かれたバッジを受け取る。そのあと手の甲に同じ番号のスタンプを押してもらい、今日はそれで終わりだ。選考会は明後日となる。

 バッジは今日、明日と外出する際は胸とかわかりやすいところにつけておいてもらう。

 実はこれがすでに一次審査だ。国民のみんなにはすでに話が行き渡っているが、彼らが滞在中に悪い印象を持った者をバッジの番号で書きとめてもらうことになっている。内容も書いてもらうので、例えば店で乱暴を働くとか、女性店員に手を出すとか、そんなことをすればたちまち報告に書かれる。

 頭のいい奴ならバッジを渡された時点でこれがどういった意味を持つか察しがつくかもしれない。

 これはウチの騎士に「相応しい者を見つける方法」ではない。「相応しくない者を見つける方法」である。バッジの意味も考えず、自分が守るべき者になるかもしれない人たちに迷惑をかける奴なんかいるもんか。

 さらに椿さんの配下の忍びたちに「ミラージュ」をかけて、獣人とか魔族になってもらい、町をうろついてもらう。この人たちを見て差別するような奴らもいらない。募集者の三分の一がそういった亜人たちなので、採用されれば当然そういった者たちと同僚になる。そこで「獣人のくせに」とか「魔族のくせに」とか差別するような奴らは百害あって一利なしだ。

 あとは百匹ほどの猫の使い魔を呼んで町に放っておいた。彼らが得た情報は逐一僕に報告される。

 

『旅の商人に絡んでる奴がいますニャ。番号札685番』

『店で酒を飲んで大声で騒いでいる一団がいますニャ。店員が注意してもやめようとしないですニャ。番号札812〜815番』

『いきなり石を投げつけられたニャ……。番号札258番』


 さっそく出てきたか。しかし、コレ僕一人で記録するの大変だな……。琥珀に手伝ってもらうか。あいつは獣の王だから、猫たちの念話も受信できるし、書くのはレネやライムさんに頼もう。

 さすがに1000人以上ともなると、ミカさんのところの宿だけでは到底間に合わない。大抵は町の外で野宿だ。危険な動物などはいないから、その点は安心である。

 しかしいろんな奴らが来てるなあ。僕も「ミラージュ」で変装して、町中を視察してみた。男女問わずなので、女性の冒険者も多い。やはりと言うか、獣人や魔族たちはそれぞれで固まってグループを作っている感じだ。

 獣人や魔族を差別するような人間もお断りだけど、逆に人間に敵愾心を持ってる獣人や魔族もお断りだな。人それぞれ事情があるかもしれないけど、ウチには必要ない人材だ。

 さて、これで最低ラインの奴らは消えると思うが、まだまだふるいにかける必要があるな。

 ちなみに全員に「パラライズ」をかけて、無事だった魔力抵抗値が高い奴らを合格って案を提案したが、みんなに却下された。騎士の資格とはあまり関係ないということで。まあ、善人とか悪人とか関係者ないからなあ。

 そこらへんはユミナの魔眼頼りだな。ある程度数が減ったら手伝ってもらうけど。

 やれやれ、忙しくなりそうだ。

 







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