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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第15章 大樹海、大雪山。
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#113 ナース服、そして教国。

 「錬金棟」をブリュンヒルド上空で、「庭園」と「工房」にドッキングさせた。もうここまできたらちょっとした城並みの広さだな。建物がほとんどないけど。

 シェスカはメイド服、ロゼッタは作業着と、それぞれ好きな服に着替えていたが、フローラの選んだ服はナース服だった。なんでそのチョイスなんだよ。いや、「錬金棟」は医療関連にも関わってくるから無関係じゃないのかもしれないけど。

 だけど丈の短いピンクのナース服に白いストッキング、ガーターベルトというのはやり過ぎな気がする。まるでコスプレナースだ。おまけに胸だけがパッツンパッツンで強調され過ぎてやしないか? 正直、目のやり場に困る。


挿絵(By みてみん)


 医療知識と技術もある程度持ちあわせているというので、とりあえず医務室のようなところを城の中に用意させた。僕がいれば魔法で治せるけど、いざという時のためにね。

 「錬金棟」でとりあえず作ったのは新種の稲だ。イーシェンから持ってきた稲の苗に改良を施し、疫病に強く、実が多くつくようにしてみた。それを国の東部に作った実験水田に植えてとりあえず育てている。うまく育つといいが。

 街道の街並みも少しずつだが充実しつつある。内藤のおっさんが頑張ってくれているからな。なかなかいい感じだ。

 「銀月」のブリュンヒルド支店も無事オープンして、旅人には憩いの宿に、国民には疲れを癒す銭湯として、かなりの盛況ぶりだ。ミカさんも多くの従業員(ほとんどが元・武田忍びだったが)を抱えて、商売にかかりきりといった感じである。


「なかなか順調にブリュンヒルドは発展してきておるようだな、っと…」


 タン。


「まあ、冬夜殿の作る国だ。心配はしておらんかったが……」


 タン。


「おっと獣王陛下、それポン。んーと」


 タン。


「ほっほっほ。鳴いて飛び出る当たり牌っと。皇王、当たりだ。タンヤオ・ピンフ・イーペーコーの3900」


 あ、リーフリース皇王陛下がレグルス皇帝陛下に振り込んだ。って言うかこの人たちなにやってるの?

 ブリュンヒルド城の遊技場。麻雀卓を囲んで西方諸国の王が勢ぞろいしていた。僕は違うぞ。雀卓を囲んではいない。


「あの、それで今日はなんの集まりで…?」

「ん? いや別に。みんなで麻雀をしたかっただけだが」


 ベルファスト国王陛下がさらりと答える。エー、そんな理由? わざわざ「ゲート」で迎えに行ってみれば……。もうちょっと危機管理というものをだね。

 ジャラジャラと牌を卓の中央へと落とし、全自動で次の牌が卓上にせり上がってくる。ちゃっちゃっちゃっ、と手際良く牌を取っていき、次の勝負になだれ込む流れだ。手慣れた感じになってきたな……。


「ま、ちょっとした情報交換くらいはしてるがの」


 笑いながら皇帝陛下が牌を捨てる。仲が良いのは結構だけど、なんか心配になってくるな。国政怠けて麻雀やってるんなら問題あるぞ。


「情報交換というと?」

「そうだな、最近だとやはりラミッシュ教国か」


 牌を揃えながらベルファスト国王陛下がつぶやく。ラミッシュ教国? レグルスの南東にある国だっけ。ミスミドにも近いんだよな。間にあるガウの大河を渡れば辿り着く。さらに下ればベルファストまでも行けたはずだ。


「そのラミッシュ教国がなにか?」

「教国の首都イスラでな、吸血鬼が出るんだそうだ」

「吸血鬼?」


 そりゃまた胡散臭い話だ。いや、待てよ。僕が知らないだけで、「吸血鬼」って種族はこの世界に普通にいるのか? ちら、と獣王陛下を見やる。獣人がいるくらいだしなあ。


「噂では夜な夜な犠牲者が出ているそうでな。全身の血を抜かれて干からびた遺体が見つかるらしい」


 おっかないな。猟奇殺人事件かよ。


「それで吸血鬼…ヴァンパイア族の仕業じゃないかと噂になっているわけだ」


 僕に語りながら皇王が牌を切る。ヴァンパイア族。どうやら吸血鬼ってのは単なる名称ではなく、ちゃんとした種族らしいな。確かミスミドにも水棲族って人魚のような種族がいるらしいし、いろんな種族がいるんだなあ、この世界。


「事件が起きたのがラミッシュってのが面倒だな。あそこは光の神・ラルスの信仰国だ。闇に属する者への敵愾心はとんでもないからな。なんでも属性に闇魔法の適性があっただけでも、白い目で見られるってくらいだ」


 獣王が苦い顔をして牌を切る。何だそりゃ。それはもう信仰を通り越して狂信的な感じがするな。


「光の神・ラルスって何です?」

「ん? ああ、冬夜殿は知らんのか。ラミッシュ建国にまつわる話でな、1000年ほど前、ラミッシュの地は魔獣や死霊、魔族の暮らす地だったらしい。そこに訪れた光の神官が、光の神・ラルスを呼び出し、その地を浄化したという。そしてその地に光の神を崇め、教えを広める国、ラミッシュ教国が建国された…という話だ」


 ベルファスト国王が説明してくれたが、僕は首をひねる。光の神ねえ。一応、僕の知り合いには二人神様がいますけども。恋愛神は違うとして、世界神であるあの神様のことだろうか。あまりイメージがないんだが。

 それに神様はあまり地上に関わってはいけないみたいだったし。あの神様は管理する世界がたくさんあるみたいだから、いちいち口を挟んでもこないような気もするけど。

 電話で聞いてみてもいいんだが、どうでもいいっちゃどうでもいいしな。それぐらいで電話するのはさすがに気が引ける。神様だし。


「あの国は付き合いづらくてな。なんでも教義ありき、だからの。全て「光と正義の名の下に」では、堅苦しいだけだわい。特にあの教皇は……」

「ああ、儂も苦手だ。あの教皇様は説教くさくていけねえ。キツイんだよなあ、あの婆さん」


 苦笑しながら獣王と皇帝が顔を見合わせる。教皇?


「すいません、教皇ってのは?」

「ラミッシュ教国ってのは王家が世襲制の国じゃなくてな、高位司祭の中から最高位の教皇が選ばれるんだ。任期は死ぬか自ら退位するまで。で、現在ラミッシュの最高位にいる教皇こそが、エリアス・オルトラ。女教皇だ。確かこの間、即位20周年だったと思うから60は越えてるがな…っと」


 タンっと、卓上にリーフリース皇王が牌を捨てる。


「皇王、それロン。ピンフ、ドラ2。3900」

「またか!?」


 リーフリース皇王陛下がレグルス皇帝陛下にまた振り込んだ。それを見て獣王陛下が天を仰ぐ。


「あー、チンイツまでもう少しだったのに……さっきから安い手で上がってばかりだな、皇帝陛下?」

「これも勝ち方のひとつよ。一回に大きく勝たんでも、結果勝っていれば良いのさ」


 獣王のぼやきに皇帝が返す。まあ、それも麻雀の醍醐味のひとつだけどさ。打ち方でなんとなくその人の考え方ってのがわかるのも醍醐味だな。牌を卓上中央に落としながらベルファスト国王が口を開く。


「もともとヴァンパイア族自体が魔族と言われる部類の少数の一族だ。存在自体は珍しくないが、ラミッシュでそんなことをすればどうなるかぐらいわかっていると思う。どうもきな臭い。なんか噛み合ってないような不自然さを感じる」

 

 確かに自殺行為というか。だけどまだ解決してないってことは、まんまと逃げられているってわけで。うーん、確かに変な事件だけど……。


「ま、こっちに飛び火しなけりゃ別に構わないんだけどな。ヴァンパイアだって一族全員が犯罪を犯したわけじゃない。ヴァンパイアってだけで虐げるなら、儂はヴァンパイアの味方をするぞ」


 獣王陛下が腕を組んでむふーっと息を吐いた。獣人が差別されている国もまだ多いらしいからな…。種族や生まれで差別や非難されるのは納得がいかない。闇の者であるというだけで、邪悪と決めつけるのは偏った正義だと思う。

 ラミッシュ教国。あんまり関わり合いになりたいとは思わないな。神は信じているし、僕ほど感謝している人間はいないと思うけど、宗教には関心がないんでね。

 結局、麻雀はリーフリース皇王が一人負けして、レグルス皇帝がトップで上がった。四人の王様はまた来月の再戦を約束して、それぞれの国へと帰っていった。え、来月もやるの? これ。








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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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