若い女性がお好きなあなたへ
拝啓
若い女性がお好きなあなたへ
今、私がこの手紙を書いているときも、あなたは若い女性に声をかけている事でしょう。いえ、とがめるつもりはありません。あなた曰く「男の性だから仕方がない事」なのでしょう?存分に楽しまれてください。
そういえば、最近夜会で不審者が目撃されているそうです。なんでも、髪の毛後退盛りのいい年をした中年の男性が、若い令嬢達にその日の夜の予定を聞いてくるのだとか。でも別に話が面白いとか、そういうこともなく、ただひたすら昔の自慢話を繰り返すのだとか。
知り合いの令嬢達が絶対に関わりたくないと、その人がいるから夜会に行かなくなったという人もいるようで。
明確にどの貴族かお話は聞いておりませんが、あなたも気をつけてくださいね?
そろそろ本題に参りましょうか。
私、この家を出ようと思っております。一人で生きていこうかなと。
一人で生きていくなんて出来ないって?大丈夫です。趣味でやっていた薬草の調合が、最近趣味の範疇を超えてきたので、お店を下町に開業しようと思っています。
もちろん、家の許可も取っています。もともと私が嫁いできたのは、経済成長の著しい伯爵家と我が男爵家の間を取り持つからだったのですけれど、もう意味がないので。だってこの伯爵家、昔の見る影もなく没落しそうですからね。
あなたは女性しか見ていないのでしょうけど、私は家の帳簿を見ましたわ。先代が退かれてから、家も領地も右肩下がり。若い女性への貢ぎ物、派手な衣装等の無駄な買い物、追い詰められた状況なのに施策を一切行わない領主。
むしろ貴族という体裁を今まで保っていたと言うのが驚きです。
もちろん初めの頃は、私も領地運営について従者の皆様と懸命に考えました。それで少しは改善できたと思います。でも、あなたが言ったのです。「女が家の事に口を挟むなと」
おめでとうございます。あなたの望んだとおり、この伯爵家は没落すること間違いなしです。
望んでないって?面白いこと言わないでください。あなたの行ってきた事全てが、伯爵家を破滅へと導いたのですから。
さて、そろそろ私は旅に出ます。今までありがとうございました。もう会うことなどないでしょうけれど、お元気で。
追伸 手紙の隣には、私が調合した育毛剤を置いています。良かったらどうぞ。
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