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【R15】「王子様しゅきしゅきだいしゅき~」「姫、俺と一緒に永遠を生きようぞ!」

作者: ボボブラ汁
掲載日:2026/01/12

冬の童話企画に出そうと思ったらR15アカンのか。

きらきら入れちゃった。

 その女がなぜ全裸で現れたのか、エドゥアルドには理解できなかった。


 気づけば服は脱がされ、海水で冷えた体が震えていた。


 女は黙って彼を抱き寄せる。


 潮の匂いが混じる湿った髪が、エドゥアルドの頬に触れた。


 彼女の体温がじんわりと移り、凍えていた指先まで少しずつほぐれていく。


 エドゥアルドは思わず彼女にしがみつき、その柔らかな胸元へ顔を押しつけていた。


 ……温かい。


 耳の奥で、波の音が近づき、また遠ざかっていく。


 歯の震えが止まると、まどろみが襲ってきた。


「王子、眠ってはいけません。死んでしまいます」


 囁く美しい声とともに、温かいものが唇に触れた。


 口づけ──そう認識した瞬間、エドゥアルドは目を開く。


 女は慈しむように、彼を見つめていた。


 その笑みはどこか神秘的で、深い海の底を覗き込んだような感覚を覚えさせた。


 そこには紛れもなく、エドゥアルドへの愛があふれていたのだ。


 彼女はそっとエドゥアルドに身を重ね、そのすべてを包み込む。


 彼の記憶は蕩けるような心地よさの中……ついに途切れた。




 ※ ※ ※ ※




 大きな白い帆の船が、人魚の島の海域に出没するようになった時、シーラは興味本位で近づいてみた。


 そして甲板に立つ、美しい雄に目を奪われた。


 マストの上の旗を見た姉妹たちが言うには、あれは人の国の「王子」なのだとか。


 人魚には雄がいない。


 ゆえに人の姿をとり、気に入った雄から子を授かるのが習わしだった。


 だがシーラは、これまでその気になったことがなかった。


 粗野な漁師たちを見かけても、心が動いたことはない。


 ──けれど。


 その大きな帆船に乗る「王子」とかいう雄は、特別だった。ひと目で、これが恋なのだと悟ったのだ。


 その船が現れるたび、シーラはこっそり王子の姿を探しに行った。


 人魚の姿を人に見られてはいけない。そんな掟も頭から抜け落ちるほどに、彼に夢中になっていた。


 船の後をつけて、彼の居場所を調べよう。そして人の姿で会いに行こう。


 そう決意した矢先──海が荒れ、王子の船が座礁した。


 海に投げ出された彼を、シーラはどうにか島の岸辺まで運んだ。


 しかしその体は、氷のように冷たくなっていた。


「死なないで、死んではダメよ」


 叫びながら、シーラは自分の下半身に手を伸ばした。


 鱗をすべて剥がせばヒレまでなくなり、二本の人の脚になるという。


「……くっ」


 人になる方法は、噂には聞いていたが大変痛かった。一枚剥がすごとに激痛が走り、シーラは悲鳴を押し殺す。


 やがて二本の脚で立てるようになると、大急ぎで王子に覆いかぶさった。


 人魚の体温は人になってもそう高くはないが、それでも王子の体は温まってきた。


 彼の鼓動がわずかに戻ったとき、ほっとするあまり涙が滲んだ。


 良かった……シーラはそのまま彼の唇を奪う。


 目を見張る王子の青い瞳を覗き込み、小さく囁いていた。


「好き……私の王子様……あなたの子を産みたい」


 つぶやきは、打ち寄せる波の音に、さらさらとかき消されていった。




 ※ ※ ※ ※ ※



 エドゥアルドは、砂浜でパチパチ燃える炎のオレンジを見ていた。


 ポケットに入っていた火打石と打ち金で、火を起こせた。おかげで、服はようやく乾いた。


「戻ってこないな」


 無人島ではなかった。温めてくれた女が、確かにいたはず。


 しかし目を覚ました時、その女はいなくなっていた。


 彼女は命の恩人であり、運命の女だと確信していた。


「一緒に食べようと思ったのに」


 焚き火に目をやる。


 浜辺にいたのは、エドゥアルドがずっと探していた人魚だ。


 父である国王から、その捕獲を命じられていた。


 誰があの暴君になどに渡すものか。さっさと玉座を明け渡せ。


 人魚はなぜだか無防備で、手に魚をたくさん抱え、波打ち際に上がってきた。


 こちらを見た瞬間、迷わずカトラスを銛代わりにして投げつけ、仕留めていた。


 そして今、下半身を切り刻み火であぶっているが、それでも助けてくれた島の女は戻ってこない。


「食べたら不老不死になると聞くが……」


 香ばしく焼けた切り身を刺した木の串を、砂から引き抜く。


「共に食べて、伴侶となってほしかったのに」


 エドゥアルドの隣には、人魚の上半身が転がっている。


 瞼のない丸い魚の目が、暮れていく夕日を映してきらきら輝いている。


 その顔を、どこかで見たような気もしたが、彼には思い出せなかった。




 完



ご愛読ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
顔か、男はやっぱり顔なのか。 やはり、人を見る目を養うべきでしたね。 でもあれですね。 不死になっても助けががなくて、永遠に渇きと飢えに苦しむってのも乙かもしれません。
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