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異世界転移というけれど…  作者: 橘吟香
第一章
9/10

1-9

「この中からお好きなものをどうぞ」

 目の前に並べたのは車内にあったのど飴、低反発座布団、世界的に有名な黒い耳の犬のぬいぐるみ、水筒と泉跡で拾ったカード。

 のど飴はご時世的に必需品。

 低反発座布団は、ドーナツ状じゃないだけ察してほしい。

 ぬいぐるみは単なる癒し。

 水筒とカードは……まぁ、あったから持って来ただけ。

「私としてはこの低反発座布団がおススメです。なんと言っても……お尻の負担が軽くなります」

 ドラゴンのお尻に敷くには小さすぎるけど、そこは気にしない。

 物珍しそうにひとつひとつを吟味する彼の視線が、水筒でぴたりと止まる。

「主、これは……」

「その水筒には、こちらに来たばかりの時に飲んだ泉の水が入っています」

 結局、水筒に入れただけで飲まなかったんだよね。

 なんとなく、この水は、これ以上()()()()()()()()気がして。

 水筒をじっ……と凝視していたドラゴンと目が合う。

 今度は何かを探るような眼差しでじっ…と私を見ると、ふむ……と小さく頷き、何やら意味ありげに水筒を指す。

「では、これを貰おうかの……」

「あ、はい。どうぞ」

 差し出すのは全然かまわないんだけど、どう考えても、あんな大きな手でこんな小さな蓋は開けられそうにないからね。

 そう思って、きゅぽん……と水筒の蓋を開け、差し出す。

 そのわずかな間。

 ドラゴンから一挙手一投足、探りを入れられているような気がするのはなんでだろう。

 そして今度は、差し出された水筒と私を、目を点にして凝視する。

 まるで、珍獣でも見ているような目だ。

 安心してください。

 私からすれば、アナタの方が珍獣ですよ?

「――…よい。いらぬよ」

「へ?」

 いるって言ったじゃん。

 まったくもう、ツンデレか?

「……主はソレが何なのか、解っておるのか?」

「泉の水です」

 それ以外何が?

 水筒の蓋を閉め直しながら、きっぱり言い切る。

 すると今度は残念な子を見る目で私を見て――

 なぜため息をつく?

「それは”一口飲むと10年は若返る”と云われている『神水』での」

「―――…はぃ?」

「主ら人にとって10年は長い年月やもしれぬが、ドラゴン(わし)からすれば朝露のように儚いもの……」

 今更10年くらい若返ったとて……そう、小さく呟く。

 ――うん。

 そりゃぁ、長寿とされるドラゴンからすれば10年なんて儚いかもしれないけど……そもそも、この水筒の量(500ml)だとほぼ一口だよね。

 いや、違う。

 問題はそこじゃない。

「―――……すみません。私、その水……昨夜、がぶ飲みしたんですけど……」

 そうか――これが、おそらく20代まで若返った原因か。

 一口10年とか……

 若干数が合わないような気がするけど、何口飲んだかなんて、覚えてないくらい飲んだわ。

「ほっ……知らぬとは、実に恐ろしいものよ……」

 ……おい、貴様。

 なに面白そうに笑っとるんじゃい。

 こちとら全然面白くもなんともないわ。

「じゃぁ、この水を飲んだ後、胸が苦しくなって意識がなくなったのは……」

「それは主の言う、がぶ飲みして若返る際の……副反応みたいなものではないかの」

 アレか。

 高校生な名探偵が小さくなった時に胸が痛くなっていたやつ、的な?

 アレって、急に小さくなっていろいろ困っていたよね。

 洋服とか、仮住まいとか、アリバイ工作とか。

 ――ん?

 だとすると、20代の姿で元の世界へ帰ったら、私、いろいろとヤバくないかい?



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