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明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。
…初詣?行けてませんが何か?
「…えーと。いくつかお聴きしたい事がありまして。まず、ここは一体何処なんでしょうか?」
結局、40秒以上待ってもらって、その間に準備した最初の質問がこれとは。
我ながら情けない…
でも、自分が今、どういう状況に置かれているのかを知ることは大切だよね?
「ここは、『ジクスの森』と記憶しているが?」
「ジクスの、森…?」
「さて…わしが『ジクスの森』に住み着いた頃には、既にそう呼ばれておったからの。名の由来などは知らぬ」
――…違う。
いや、違わないんだけど。
私が訊きたいのはこの森のことではなくて…もっとこう…「ここは○○という名の世界である」とか「この世界には××という国があって」とか、そういうテンプレ的な情報がっ!
でも、考えてみれば、私が住んでいた世界も星の名前であって「△△が創った世界です」とはあんまり言わないもんね。
って、ヤバ……
頭の中で世界中の神様たちが「それ、私たちが創りました」って会社のCMみたいに手を挙げはじめた。
いかんいかん、脱線しすぎた。
えーと……そうそう!
この世界の情報だよ!
「ジクスの森の中、もしくは周辺に人が住む処なんてありますか?」
「森の中に住まう者はおらぬな。この森に人は住めぬて…しかし、森の外には集落の一つや二つ、在ったと記憶しておるが…」
「この洞窟からどれくらいの距離にあります?」
「…それは難しいの。『ジクスの森』は絶えず何処かが動いておる故、距離は意味を成さん」
「…森が、動く…?」
「言葉通りよ。森の中でのみ、地形や道が気まぐれに変わる。先程まであった沼地が崖に変わっていたり、昨日通れた道が行き止まりとなっていたり、とな。故に森を出るに、運が良ければすぐにでも、悪ければ何年もかかる。何故動くのかは、わしを含め、誰も知らぬ」
「……昨日まであった泉が忽然と消えたり、落とした指輪がなくなっていたり、道なき道を進んでいたら突然大雨に見舞われたり、とかも?」
「うむ。ここではよくある話よ。…先程からおかしな問いばかりだが、主もそれを承知で、この森に足を踏み入れたのではないのか?」
「――…いえ。踏み入れてないです」
「はて…おかしなことを言う。現に、主は『ジクスの森』に居るではないか」
「違うんです。いや、違わなくはないんですけど…」
確かに今、私はこの森に『居る』けど、それは自分の意思で踏み入れたわけではなく…
ちょっと待って。
落ち着け、落ち着くんだ、私。
まずは深呼吸だ。
くそぅ。
分かってはいたけど、他人から言われるのはちょっとキツイな。
「――…あの、ですね。私の家の近くに『ジクスの森』というこじゃれた名前の森はないんです。そもそも、森が動くとか…私の世界にはないので…」
「ほぅ?主の世界、とな…」
『私の世界』と聞いて、ドラゴンの竜眼が興味深そうに細められた。
姿勢を正し、そのドラゴンの目をまっすぐ見据える。
「申し遅れました。私は――メイ、と言います。本名ではありません。私が生まれた国の、古くからの風習で…悪いものを寄せ付けないために本名は名乗りません」
…嘘は言っていない。
ただ、もうそんな風習は廃れただけ。
でも「異世界で本名を明かさない」は、あるあるだからね。
何があるか分からないこの状態、自分の身は自分で守らないと。
それから私は、今まで自分に起きた事を時系列で説明した。
仕事帰りに森にいた事、泉の水を飲んだら胸が痛くなって気づいたら日が昇っていた事、泉跡で拾い物をした事、容姿が若くなっていた事、森を移動していたら大雨にあってこの洞窟にたどり着いた事。
私の話に真剣に耳を傾けていたドラゴンが、何かを深く理解したように静かに口を開く。
「――この世界は『世界樹の女神』が創りし世界と云われていての。人々が己の営みをし始めてからまだ数千年程しか過ぎておらぬ。故に、世界と世界の境界が未だ不安定と聞く」
「………」
「稀に異なる世界から人や物が迷い込んで来る、という話は聞くが――主は、その異なる世界から迷い込んで来た『迷い人』やもしれぬな…」
「『迷い人』…」
いや、まぁ…確かに、森の中で迷っているから『迷い人』である意味、間違ってはいないんだけど。
なんか――仰々しくなってきたな。
「『迷い人』って…さっき、”人や物が迷い込んで来る”って言ってましたけど、前回は人ですか?それとも物ですか?」
「そうさのぅ――前は…人であった、と記憶しておるが…あれは確か…400年程前だったかのぅ…」
「随分と前デスネー」
戦国時代やないかい。
前過ぎるやろ。
「ちなみに400年程前に現れた『迷い人』さんは、私と同じように迷い込んだのか、この世界の人から召喚されたのか、もしくは召喚された人に巻き込まれたのか、どういった理由でこの世界に来たのでしょうか?」
「さて…わしが伝え聞いた話では、主と同じよう、偶然こちらに来たと記憶しておるが…」
「じゃぁ、確立された方法で来たわけではない、と…」
「うむ」
…マジか。
「ちなみに『迷い人』さんはこの世界で亡くなったのか、もしくは元の世界に戻ったのか、最後はどうなったのでしょうか?」
「『迷い人』が元居た世界に戻った、という話は聞いた覚えはないのぅ」
「じゃぁ、確立された方法で帰ったわけでもない、と…」
「うむ」
……マジか。
――そんな……嘘だと言ってよ、バーニィー…
やっと、名前が出てきましたね(笑)




