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異世界転移というけれど…  作者: 橘吟香
第一章
6/10

1-6

 海外旅行に行った時、何が不安になるか、3つ挙げてみて?

 と言われたら、誰だってこれは挙げるだろう。

 一つ目は治安や安全面。

 誰だってスリや強盗といった犯罪には絶対巻き込まれたくない。

 二つ目は病気や事故などのトラブル。

 シンプルに手続きが面倒そう。

 そして、三つ目が言葉の壁。

 そもそも言葉が通じないと会話も成立しないし、意思疎通も無理。

 そういう意味で、異世界あるあるの「言葉が解る」スキルは外せない。

 個人的にはこれさえあればなんとかなると思っている、私の中では神スキルだ。

 そういう意味では、この世界の神様には感謝しかない。


「――…随分と…懐かしい気配がするが…なんぞ、そこに居るのか…」

 ――うん。

 ()()()で、間違いないんだよね。

 よかった。

 ドイツ語とかフランス語とか、ましてや私の知らない謎言語じゃなくて。

 言葉が通じなかったらどうしようかと不安だったんだよ。

 さすがは神スキル。

 なんで通じるかはわかんないけど、これで文字も読めれば完璧なんだけどな。

 西洋ドラゴンって、凶暴とか邪悪とか、あまり良いイメージがないみたいだけど、このドラゴンの声のトーンと落ち着いた雰囲気からしてそんな風には見えない。

 そもそも向こうから話しかけてきたわけだし。

 悪意は、ない。

 たぶん。きっと…

 しかし。

 あの大きな口の構造でどうやって喋っているのか――

 なーんて無粋な事は考えてちゃいけないんだろうな。

 大きく深呼吸を数回繰り返し、緊張で震える手で緊急脱出用ハンマーを握りしめる。

 ――…そういえば、ドラゴンのパーソナルスペースってどれくらいだろう。

 5mくらい空けておけば大丈夫かな?

「あー…起こしてすみません」

 恐る恐る大空間内に足を踏み入れてみれば、薄い緑色の大きな竜眼が私を射貫く。

 一瞬、足がすくみ、緊張が走る。

 ――これは、アレだ。

 鈍い私でも分かる。

 嘘を見抜く眼だ。

「――…はて。珍しい事もあるものだ…わしの前に、人が訪れるなど…いつぶりかの…」

「本当にすみません。なんか、道に迷ったみたいで…途中、大雨にもあいまして。この洞窟で雨宿りをしていたんですが、まさか先客がいるとは知らず…」

「ふむ…雨宿りか…ならば致し方あるまい…」

 ドラゴンが巨大な頭をゆっくりと動かし、まるで外の音に耳を傾けるような仕草をする。

 洞窟の入口からここまでは、たぶん50mはあったはず。

 もしかしたら、私の耳に届かない音がこのドラゴンには聞こえているのかもしれない。

「お邪魔でなければ、しばらくここに居てもいいですか?」

「構わぬよ。わしとて、嵐の中に迷い子(まよいご)を放り出すほど、非情ではない故…」

「食べたりは…」

「せぬよ。(ぬし)はわしをなんだと思うておるのだ?」

 よし。言質は取った!

 しかし、迷い子…

 もう「子」って年でもないんだけど、おそらく長く生きたドラゴンからすれば私なんてまだまだ「子」なんだろうなぁ。

「迷い子ついでにご教授いただけると助かるんですが…」

「…人が、わしに教えを乞うとは珍しい…して、対価はなんとする?」

「対価が、いるんですか?」

「この世に無償のものなどありはせん。何事にも代価が伴う…」

「あー…すみません。私は見返りを求めないタイプなので…」

 すっ…とドラゴンから目を逸らす。

 対価になりそうなものって何だろう。

 何かあったかな?

「何か、ご要望がありますか?」

「何でもよい」

 出た!

 晩ごはんに聞いて一番イヤな返し!

 しかも返されて絶対作れないパターン!

「………」

 数秒考えた後、恭しく頭を下げ、手に持っていた緊急脱出用ハンマーを差し出す。

「――…これ、(本当に)つまらないものですが…」

「それはなんぞ…?」

「狭い空間に閉じ込められた時にガラスを割って脱出する時に使う道具、です…」

「……成程。珍味ではないのだな」

「生憎、食べ物は持っていなくて…」

 そもそもドラゴンって何を食べるんだろ。

 霞?あれは仙人か。

「――…まぁ良い。特段、欲しくもないしの…」

「いらないんかい!」

 おっと。

 思わず心の声が出ちゃったよ。

 私の渾身のツッコミを見事にスルーしたドラゴンの視線が周囲に散乱する金銀財宝に向く。

 あ。こいつ、ため息ついたぞ。

 まぁ、眩いばかりの財宝が山のようにあれば、こんな小さなハンマーなんていらないよね。

「…良い。気持ちは受け取っておこう。――して、訊きたい事とは?」

 おや。

 自分で言っておいてなんですが、質問の内容を全く考えていませんでした。

 さて、どうしましょう。

 40秒で準備しますので、少々お待ちください。





年末年始は更新をお休みさせていただきます。

お休みの間、こっそり感想受付を解放しておきます。

(告知しておいて「こっそり」とはこれ如何に?)


作品内容と関係のない指摘や誹謗中傷はご遠慮ください。

返信はできませんが、いただいた感想はすべてありがたく読ませていただきます。

(でも木綿豆腐メンタルなので、お手柔らかにお願いします)


皆様、良いお年を…


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