表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せのかたち  作者: すずかけあおい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/12

幸せのかたち⑫

『もうすぐつく』

 メッセージを確認して、鏡の前でもう一度髪を整える。

 今日は詠心とつき合ってはじめてのデートだ。詠心は昨日の帰りからそわそわとしていたし、藍斗も落ちつかなかった。夜もなかなか寝つけなかったくらいだ。普段の土日にも詠心と会うことはあったが、これからは会う意味が違う。

 もう来るかな、まだかかるかな。胸を高鳴らせてインターホンの親機前で待つ。藍斗の準備はばっちりだ。いつでも応答できる。

「まだかも」

 時間を確認したら、まだ約束の十分前だ。一瞬モニターから目を逸らしたらインターホンが鳴った。慌てて視線を戻し、詠心の姿を確認する。

「いってきます!」

 バッグを持って家を出たら、詠心が片手をあげて微笑んだ。なぜか隣には春海がいる。さらに隣に見知らぬ男子がいる。

「……?」

 どういうことだろう。三人の顔を順に見る。春海と男子を見て気がついた。春海の隣の男子は、以前春海がキスをしていた相手だ。

「ちゃんと謝った。いろいろ失礼なこと言ったから」

 こほん、とわざとらしい咳払いをした詠心が、言いにくそうに説明した。じいっと見られて、はっとして詠心に視線を向ける。

 詠心以外を見ると嫉妬するところは、どうしても可愛いと思ってしまう。本人は複雑な顔をするが、藍斗をひとり占めしたいなんてどう考えても可愛い。

「気にしなくていいのに。藍斗のお友達は真面目だね」

「友達じゃないよ」

 苦笑した春海に、藍斗ははっきりと告げる。

「詠心は僕の友達じゃなくて……えっと」

 三人の視線が一気に藍斗に向き、緊張しはじめる。きちんと言いたいのに、そんなに見られたら緊張しすぎて声が出なくなる。

「……詠心は僕の大切な人なんだ。誰よりも大好きな人」

「ふ、はは」

 噴き出したのは詠心だった。春海もつられて笑い出し、隣の男子も声を抑えて笑っている。恥ずかしくて隠れたい。

「行こう」

 笑いながら、春海が隣の男子の手を引いた。ふたりはのんびりと足を進め、その背を詠心と一緒に見送る。

 春海は藍斗でも見たことがない、優しい笑顔を相手に向けている。いつも優しく微笑む春海だが、それとは全然違う笑顔だ。心から笑っているような、見ているだけで穏やかな気持ちになる表情で、とても綺麗だ。

 ぼうっとふたりを見ていると、手をきゅっと握られた。隣の詠心が、じっと藍斗を見ている。いつから見ていたのだろう。

「小響さんたちのこと、気になるか?」

「うん、ちょっとだけ」

 どういう関係なのかな。もしかして、本気で好きな相手、とか。春海にそんな人がいたなんて知らなかった。

 本心を答えると、詠心はあきらかに面白くなさそうな顔をした。

「そこは嘘でも『気にならないよ』って言うところだ」

 拗ねた口調になっていて、やはり可愛い。でもそんなことは言えない。詠心は藍斗の前で恰好よくいたいと言うのだ。詠心はなにをしたって恰好いいのに、変なことを気にするのだから不思議な人だ。

「ごめん……怒った?」

「怒った」

 藍斗の手を引いて詠心が歩を進めるので、引かれるままについていく。言葉とは裏腹に、詠心の表情は緩んでいる。

「明日もデートしてくれたら許す」

 いたずらっ子のような顔で詠心が笑う。そんな魅力的な提案を断るわけがない。でも、なんとなく藍斗もやり返したい気持ちになった。

「僕は明日だけじゃなくて、ずっと先も詠心とデートしたいけど」

 小走りになって詠心の隣に並ぶと、詠心は目を丸くして足を止めた。変なことは言っていないし、気持ちのままを伝えた。それなのに詠心は驚いた様子で固まってしまった。

「詠心?」

「……っ、藍斗!」

 抱きあげようとするので、慌てて逃げる。

「こんなとこじゃだめ!」

「じゃあ捕まえる」

 逃げる藍斗を、詠心は楽しそうに追いかけてくる。子どもみたいに追いかけっこをして、手をつないだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ