その6
進路を塞ぐ女子高生を凌順の振り抜いた腕から発する衝撃波で吹っ飛ばしながら、追ってくる女子高生を芽衣が尾を振り回して威嚇しながら階段を駆け下りる。
「生徒玄関まで戻らなくても一階には通用口が三箇所あるのでそこから出られます」
タブレットを見ながら芽衣が告げる。
「階段降りて右ですっ」
「了解っ。うおっ」
曲がり角で不意に飛び出してきたものと衝突した凌順が転ぶ。
飛び出してきたのはひとりの女子高生。
ミニサイズに改造した制服に身を包み、十代とは思えないようなプロポーションと表情の女子高生は凌順が起き上がるより早く覆いかぶさるようにのしかかる。
そして、弾力のある豊かな胸元を押し付けながら凌順の目を見てささやく。
「……好き」
そう言って顔を寄せて唇を突き出す。
「は?」
凌順が耳を疑った次の瞬間、女子高生の顔のみならず全身がぐいと持ち上がる。
「人質げっとおおおおおおおおおおおおおおお」
サムズアップの芽衣から伸びる尾が女子高生の腰に絡みついていた。
誇示された獲物のように天井近くまで掲げ上げられた女子高生が、小さく舌打ちしてから凌順に哀願するような表情を向ける。
「どうして……どうして、こんなひどいこと……お願い、この子にやめさせて。私を下ろして」
そう言ってぽろぽろと涙をこぼす。
「あなたが好きなだけなのに……一目で好きになっただけなのに……」
身体をくねらせるたびに短いスカートの裾から白い大腿部の奥がちらちらと覗く。
凌順が無言のまま芽衣に歩み寄る。
そして、芽衣に拳を向けてささやく。
「よくやった」
「ふふん」
褒められて素直に得意げな表情を浮かべる芽衣も拳を突き出し合わせる。
「おい、待てよ、こらあああああああっ。アタシの話、聞いてんのか、ああ?」
それまでとは別人のように空中で足をばたつかせて悪態をつく女子高生に凌順が笑う。
「色仕掛けが通じるような甘い人生を送っとらんわ。このキモジュン様はな」
これまでの人生で対異性関係においては一度もいい思い出がない――嫌な思い出しかないのだ。
追ってきた女子高生群に芽衣が声を上げる。
「それ以上、近づいたら、このウエストを締め上げてぶち切りますっ」
そのウエストを捕らえられている女子高生が慌てる。
「オ、オマエら、近づくな。離れろっ」
一斉に立ち止まり顔を見合わせる女子高生の群れを残して凌順と芽衣は通用口へと走る。




