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その2

 凌順がいるのは薄暗いホールの中だった。

 高い位置にある窓と開け放たれている扉から陽光が差し込んでいるが、周囲に人の気配はなく、物音も聞こえない。

 その扉へと足を進めるが一歩踏み出すたびに足元からホコリが舞い上がる。もう長い間ここに誰も入っていないことを示すように。

 チキンカツサンドの包装と寿司十二巻の入ったコンビニ袋をがさがさと鳴らしながらホールを出る。

 同様に静けさの中にほこりだけが舞う廊下の先にエントランスホールが見えた。

 そこから覗く穏やかな日差しに誘われるように外に出た凌順の眼の前には、新しい建造物があった。

 どっかで見たことがあるぞ、どこだっけ――その見覚えのある威容に記憶をまさぐる。

 すぐに思い出した。

 通勤途中で通り過ぎる女子高の校舎だった。

 確か名前は綺薇宮女子高等学校。

 とはいえ近所の女子高がこんな所にあるはずはないことから、似ている建物なのだろうななどと考える。

 そしてポケットから取り出したスマホの〝圏外〟という表示にため息をつく。

 改めて自分が出てきた建物を振り返る。

 女子高の校舎とは対極をなすような、日常では見かけないシルエットのそれは尖塔を頂く教会か聖堂のような建物だった。

 ただ、ほこりだらけの内部を知っているゆえか、どこか陰鬱な印象を放っているように見えた。

 周囲をぐるりと見渡す。

 視界の及ぶ範囲に存在するのは聖堂風と校舎風の建造物しかなく、その周囲を緞帳のように濃い霧が囲んでいる。

 頭上から聞こえた鳥の鳴き声に顔を上げる。

 見上げた雲ひとつない空はどこまでも青く、数羽の鳥が舞っているのが見えた。

「どうすりゃいいのさ」

 ひとりごちて、とりあえず歩き出す。

 もしかしたら他に建物があるかも知れない、霧の緞帳が途切れていたり薄くなったりしている箇所があるかもしれない――そんな期待を抱いて。


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