11話 魔法の種類
「魔法には七つの種類がある」
トライの協力のおかげで、野宿の準備は思ったよりも早くできた。ご飯も木の実を見つけたりして確保済みだ。
一周目でも私はこの町を拠点にずっと住んでいたから、良い場所や木の実が採れるところなんかを意外と覚えていた。助かる。
とはいえダンジョンに行くほど時間に余裕はなかったから、今日は早めに寝て明日ダンジョンに行く。
今は、寝物語代わりに魔法の話をしているところ。魔法使いにとっては常識だけれど、一応説明しておこう。
「俺も知っているぞ。自然魔法、補助魔法、防御魔法、回復魔法、精神魔法、召喚魔法、特殊魔法、の七つだろう?」
「そう。まずは自然魔法」
トライとくっついて同じ布にくるまりながら、私はトライと話した。ちなみに布はゴミ捨て場から拾ってきた。トライは微妙な顔をしていたけど、我慢して。
さて、自然魔法は、一番一般的な魔法だ。炎とか水とか、自然の力を利用して効果を発揮する。
「トライは自然魔法が使えるんだよね」
「ああ。逆にそれ以外はめっきりだ」
「トライは特殊以外全部できるよ」
私の言葉にトライがキョトンとする。だってトライのステータスは特殊以外全部Sなんだから。私は続けた。
「やっぱり自然魔法が一番多彩な呪文があって、戦うってなると手札として強いんだ。生活でも汎用的に使えるしね。なによりも覚えやすい。自然を利用するからイメージしやすいんだよね。トライは今炎と水の呪文だけで四つしかないから、呪文を覚えていくだけで戦い方の幅が広がると思う」
自然魔法は使い手がとても多い。その分研究も進んでいて、呪文が多く開発されている。
魔法使いは呪文を魔法書から覚えるけれど、その魔法書を誰が作るのかと言えば魔法使いだ。既存の魔法書は研究を経て応用され、日夜新しい魔法が作られ続けている。
「ランクアップ試験ではファイヤーボール一点押しだったし、状況に合わせて使えるようになったらぐっと強くなると思う」
「炎や水以外だと、風や土があるよな」
「気になる系統ある?」
「風だろうか。母親が得意だった」
じゃあ、次は風系統の呪文をやってみるのもいいかもね。
「次は補助魔法」
その名の通り、味方の強化や敵の弱体化など、幅広く補助できるのが補助魔法だ。
「仲間がいるなら補助魔法は本当に身を助けるよ。特に高レベルの戦いになればなるほど、強化ひとつのおかげで紙一重で生き残った、という話を聞く」
「すごいな」
武器に属性を付与したりできるから、魔法具の職人に重用される魔法でもあるらしい。
反面、自然魔法が攻撃力特化なのに対して補助魔法の使い手は一人では戦いにくいらしい。
「次は防御魔法」
その名の通り防御する魔法だ。でも、この魔法は他の魔法よりもちょっと特別だと思う。
「防御魔法は一番地道な努力を必要とするかも。他の魔法と違って、防御魔法の呪文はたったのひとつだけ。それなのに使い手によって強度や形状、性質まで異なる」
そう、同じ呪文でも使い手の練度によってあまりにも効果が違う。子供の体当たりをようやく防げる強さから、大軍の一斉攻撃を受けてもものともしない強さまで。
効果範囲も、自分だけをピッタリ覆うものから町一つ守れるものまで。
自分の望む強さになるまで、ひたすら練習しなければならない。
「次は回復魔法」
その名の通り回復する魔法だ。
「回復魔法ができると、安心感が違うよね。怪我を治せたり、疲れを取ったり。すごいと四肢欠損も治るって」
「それはすごいな。今の俺たちに一番必要なものかもしれない」
確かに。装備のない私たちにはちょっとの怪我が命取りだからね。
「次は精神魔法」
精神魔法は一番ミステリアスかもしれない。対象を幻惑したり、眠らせたり、そんな魔法ばかりだから警戒されがちなのだ。
「公開されている魔法書もすごく少なくて。本格的に学ぶなら高名な使い手に弟子入りしないとって話だよ」
「レディも知らないのか」
「私も公開されている呪文しか知らないな」
「公開されているものは知っているのか」
うん。だって公開されているからね。
あと、精神魔法はサフィリスさまが一番得意とする魔法だ。
「次が召喚魔法」
異界から召喚獣を召喚して、さまざまなことを手伝ってもらう魔法だ。
「召喚魔法は手数が増える、手札が増えるのが強みだと思う。単純に、召喚すると頭数が増えるから強いし、召喚獣によってできることも全然違う」
「召喚獣って選べるのか?」
「ううん。その時呼びかけに答えてくれた子だけが召喚される。ただ、召喚獣と特殊な契約を結べばその子を狙って呼ぶこともできるみたいだよ」
しかし、召喚魔法は運が悪いと現れた召喚獣に食べられてしまうこともあるらしいから、私たちは後回しにした方がいいと思う。
「最後が、特殊魔法」
これは、今まで紹介した六つのどれにも当てはまらない特殊な魔法だ。
「特殊魔法は、よく分からない。分類できないものは全部特殊になるから。ただ、トリッキーで対策が立てにくいって聞くよ。逆に使いにくいって話も聞く。他の魔法と違って長く多くの人に研究されてきたわけじゃないから、当然だけどね」
ちなみに、私のステータスを見る魔法も特殊魔法だ。
さて、これで魔法の種類を全部紹介し終わった。私はころんと寝返りを打って、トライを見る。
「トライ、次はどこから伸ばす?」
暗い中で、トライのゴールドレッドの瞳がゆらゆらと揺れている。
「まさか、ミューは全部教えられたり?」
「うーん、人と魔法に寄るけど、多分結構教えられると思う」
「凄まじいな。君がいたら誰でも大魔法使いになれるんじゃないか?」
「トライが大魔法使いになるのは、トライに才能があって、トライが頑張るからだよ」
私の言葉に、トライはまたキョトンとした。
少し考え込んだトライだったが、すぐに彼はもふ、と私の頭を撫でた。もふ、もふ、とトライの指が私の白い髪をくぐる。
「ミューが教えてくれなかったら、俺は新しい魔法が使えないよ」
「そうかな」
「どっちも必要という話だ」
「そっか」
そうだといいな。
私とトライはその日、ぎゅうぎゅうとくっついて寝た。




