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善良不良 ~心優しき不良サンタの物語~

もうクリスマスも終わりですね…。


執筆が遅れてしまい申し訳ありません。


それでは、どうかお楽しみください!

『サンタクロース…12月24日のクリスマス・イブに子供達に夢を与える白髭の老人。』


そんな文面の辞書を見ながら神殿を歩く男が1人。


「かっ!下らねぇ!!」


そのバカバカしさに辞書を後ろへと投げ捨て、構わず歩を進めて行く。

目指す先は、神殿の大会議室。一番奥の部屋だ。





――


「つまり、子供達にプレゼントを配ることにより、人生を挫折してしまう子供を減らすことが可能となり、人間界を平和にすることが出来る!!」


巨体の老人が大会議室のさらに奥の席にて何やら説明をしている。


その横から伸びる長い机。

それと対になる椅子には無数の赤い衣装を来た男女が老若男女問わずに座っている。部屋の空気は重苦しく、これから子供達に幸せを配る【サンタクロース】とは思えない。

その理由はーー


「遅れたなっ!!」


勢いよく、大会議室の扉を蹴り破ったこの男だ。



「ああ…またか38番…」


いきなりの暴挙に老人は頭を抱えながらも、サンタシリアルを呼び上げる。

『サンタシリアル』ーー天使の中でも、サンタクロースとして登録されている者に与えられる番号。

現時点では0から999まで存在する。

「そんな番号で俺を呼ぶんじゃねぇ、俺は俺だ!」


名誉ある番号を自ら拒否するその姿は、周りから見れば変人だ。

それが、名前を叫ぶならまだしも、【俺】という一人称で自分を表しているのだから尚更に…。


「ったく!で、話は?どこまで進んだ?」


ギィィ…


と椅子を引く音が、誰も口を開かない沈黙の大会議室に響く。


その沈黙も長くは続かず、男が口を開く。


「今の時間だと、この…『プレゼント配布の注意事項』って辺りかなぁ?」


「お前!それは…」


男がひらひらと指の間に挟んで、左右に軽く振っている紙を見て、巨体の老人の横に立つメガネの黒服が声を荒げる。


それこそは、老人の執事ー『黒服のブルーニ』が直筆した今回の会議のスケジュールである。

その紙をサンタ達に見られるのは何ら問題ではない、しかしサンタの1人が老人ーー『オリジナル・サンタ.クロース』の部屋に忍び込み、それを持ち出したということが問題なのだ。

ブルーニが男に詰め寄ろうと歩を進めた時に、事件は起こった。



ーー


ここまでの歴史を振り返れば、簡単なことだった。


オリジナル・サンタという異名を持つクロース様、30年前から勢力を強める魔界。

それで、クロース様が天国を収める13神の1人なら…話は簡単。


昔…1人の少女が泣いていた、それを助けたくて当初天使だったクロース様は幸せを彼女に贈った。

同時に全世界の子供にも幸せを贈るリスクを払って……。

それを数年間1人で続けるクロース様の実力は天国にも広く知れ渡り、13神の1人に選ばれるまでになった。

だが、ここ最近…天国と敵対する魔界が勢力を拡大して来ている。

そんな中、クロース様が人間界で護衛も付けずにプレゼントを配り続ければ、格好の餌食である。

13神の1人を失うわけにもいかず、クリスマスを無くすわけにもいかず、決定した策は代理を立てるというもの。

今年になって選抜された999人の天使達が、クロース様の指示の下…プレゼントを配るというもの。


そんな会議を、魔界が許す筈がなかったのだ…。

大会議室の窓を破り、飛び込んでくるのは黒い甲冑と槍、剣を持った魔界の戦闘要因ーー悪魔達。


クロース様の代理ということもあって、悪魔との対峙も覚悟していた筈だった。

なのに!


腰が抜けて、逃げることさえ出来ない。


やだっ!


死にたくない!!


自慢の赤髪を乱しながら、何度も何度も『綺麗だ』とお母さんから褒められた青色の瞳に涙を溜めながら…私は逃げようともがく。

でも、自分の目の前に黒い剣が突き立てられる。


あぁ…私は、死んじゃうんだ…。



「よぉ…か弱いレディを泣かせて楽しいかい?」


そう悟ったとき、悪魔に押し当てられたのは黒い拳銃。


光が銃口に収束しない!?

まさか!霊切れ(たまぎれ)!?

助かった、と安堵したのもつかの間。

拳銃を持つ彼は銃口に対悪魔用の銃弾ー(たま)を発射するための光を収束させないのだ。


最悪の自体、希望が…光が……闇にかき消された。


「潰れな…!」


しかし、彼は引き金を引いた。


銃弾は










放たれた。





人間が使う物と同じ、実弾が。

甲冑をヘコませ、吹き飛ばす。


「大丈夫か?」


地面を這うようにもがいていた私と視線が近くなるように、彼はしゃがんでから私に話し掛けた。


え?えええ!?

彼!38番さんじゃない!?

え!なんで、天使が拳銃を?

守護兵達が来てくれたのかと思えば…そもそも守護兵が拳銃を使ってる時点でおかしかったのよ!


「あ…あの、えと!」

「立てないのか?」


「は…はい」


それだけ聞くと、彼は私を抱きかかえる。


「おいっ!守護兵隊!!」


そして、そのまま到着した守護兵達に…

「持ってろ」


私を投げ飛ばした。


ーー


「さ!踊ろうぜ!!」

男は女性を投げ渡した後、悪魔の群れに向かって走る。

真っ赤なコートとズボン、袖や襟には白い羽毛がついている。

コートのボタンは全開に!

ズボンのベルトは洒落た物へと!!

改造と規則違反が織りなすハーモニーに包まれながら、右足を強く踏み込み宙を舞う。

直ぐに3体の悪魔は動き、彼を突き刺す。

首、右膝、左肩を貫かれても男は笑う。

「ハハハッ!それだけか?」


嘲笑ーーその後に、彼は空中で高速回転。

悪魔は直ぐに吹き飛ばされる。

しかし、男はそれを許さない。許す筈がない。

吹き飛ぶ悪魔の内、1体が握る槍を掴み、壁へとスウィング!

悪魔は壁へと押し付けられ、男は槍を奪いとる。


「あっちゃ~…死んじまったよ、これは誰に返せば良いんだ?」


壁にめり込み、息絶える悪魔を見ながら嘲笑を絶やさず言い放つ。

そして視線は隣から突進を仕掛ける悪魔に移る。


「お前あいつの友達だろ? 友達の形見だぜ!」


そしてそのまま槍をその悪魔に投げつける。

かなりの勢いで突進をしていたというのに、その勢いはブレーキにさえならず、後方に思い切り吹き飛ばされる。

そして、視界に入るのは…深紅のコートと煌めく茶髪。

後ろへと吹き飛ぶ悪魔に跨りその顔面へと拳を突き出す。

男の腕力はいかほどのものか?

悪魔は真下へと落下し、地面に亀裂まで作ってしまった。

だが、それでも男は再度拳を振り抜く。

何発も何発も、強烈なパンチの押収。悪魔が動かなくなると、その頭を鷲掴みにして別の悪魔に投げつける。

そして、地面に転がったところで拳銃を発砲。

銃弾は悪魔の体に凹凸をつくって、ダメージを与える。


「ふう…次は」


「うっ!うわああああああああああああ!!!」


男が次の悪魔に狙いを定めている間に悲鳴が聞こえる。


悪魔の槍が更に漆黒に染まり、守護兵目掛けて伸びて来ているのだ。

たった一本の槍だが、大きさが並みの非ではない。


「ちぃっ!」


男は駆け出していた。


女性を守る為に…。

女性を抱える守護兵を突き飛ばし、槍を受け止めようとしてみるものの…


「がああああああああああっ!うがぁっ!!」


押し切られる…


男はかなりの強者であるが、この時ばかりは思考が可笑しな方向に動いてしまった。


「この馬鹿っ!しっかり護ってろ!!薄らデブ!」


腹に槍を貫かれ、風穴を開けられながらも守護兵に罵声を浴びせる。

やせ細った体を薄らデブと罵るところ、完全に混乱してしまっているのだろう。

「きゃああああああ!」


女性が悲鳴をあげる。

悪魔が槍の先に男を指したまま、回転し始めたからだ。

そしてそのまま、彼は壁へと叩き付けられる。


「っ!」


吐血…


内臓さえもズタボロなのだろう…。


そんななかでも最後に彼は呪文を唱えた。


「転移………」


唯一覚えている天使の力を。










ーーー



「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!」


少年が叫ぶ。


「なんだよ…」


会話からして少年の兄であろう小学4年生程度の子供が現れる。


「なっ!なんだよっ!!これ」


少年の兄…羽間野(はざまの)(たつ)が見た物はクリスマスを彩る雪を深紅の血で染めた男の姿だった。










ーーー


「ん…はっ!」


男が次に目覚めたのは、病院だった。


「起きた?お兄さん」

耳に飛び込むのは、子供の声。


「お前は…?」


唐突の疑問を子供にぶつける。


「僕?僕はね…羽間野 (とら)っていうんだよ」まだ小学2年生程度のためか、質問の理解が少し不十分で自己紹介を行う。


「そうか…じゃあな虎」


男も別に構わないのだろう、直ぐに病院を出て行こうとする。

「待ってよ!まだ怪我は治ってないんだよ!?」


「もう治った。」


急に点滴を外し、どこかに行こうとする男を虎は必死に止めようと怪我についてふれるが、呆気なく返される。

ガチャ


虎にとって、救世主とでも言おうか…

ピンチの時にトイレから燵が帰って来た。


「ちょっ!ちょっと何してるんですか!?」


燵も慌てて、止めに入るが…


「治ったって言ってるだろ?」天使の生命力によって治癒しきった傷口を見せられてしまうと何も言えない。


「ですが…」


「あ~分かった分かった!全部話してやるからまずはお前らの家に行かせろ、此処じゃマズい」


必死な燵と虎に負けたのか、男は全てを話す決意をする。

いや、これ以上はしつこくて堪らないだけかもしれない。









しかし、この後幾ら治った傷口を見せてもなかなか退院をさせて貰えずに余計面倒臭かったりする。








ーーー


【羽間野家】


「あ~…簡単に言うとな、俺は天使で悪魔に襲われて死にかけてたの…

それを119?で救ってくれたのが君達。それだけ」


随分と大きな話しを簡単に終わらせてしまう男。

燵も虎も信じられなさ100%だ。


「これで信じろ…」


それは流石に感に触ったのか、手のひらを開いて二人に近付ける。


ピカっ!


強く発光したと思うと次の瞬間にはその手に拳銃が乗っていた。


「天使が…拳銃?」


「凄い!本当に天使なんだ!」

兄弟でも随分と違う反応だ。

男は溜め息を吐いて

「親がいない分話し安かったよ…じゃあな」


病院同様帰ろうとする。

しかし、その足に虎はしがみつく。


「あん?」


何が何だか分からず、少し気の抜けた返事をする。


「もっと…」


虎の涙が、男の足を濡らす。


「すいません…家、母さんと父さんが仕事で…ずっといないんです。」


「俺に遊んで欲しいと?」



「はい…お店のバイト中に迷惑だと思いますが…」


「誰が?」


「はい?」


「誰がバイト?」


「え?だって、ケーキ屋か何かのバイトじゃ…」


哀れ…サンタクロースの格好に初めて触れられた男だが、完全に天使だと思われていない為『イタいバイトの人』という認識のようだ。


「人の話しは信じようぜ…」


燵の頭をポンポンと叩きながらいう男に…


「人ってことはバイトじゃないですか?」


揚げ足取りの追撃が来る。


「俺の心を折ったのはお前が初めてだぞ~…」


案外面倒見が良いのか、そのまま自分を怪獣にでも見立てるように手を大きく上に上げて遊びに持ち込む。


「わ~僕も遊ぶ~~」

それに虎も便乗し…





みんなが笑顔になった。

揚げ足取りが実は自分も遊びたいという燵の甘えだったことは本人しかしらない…

弟の前で見栄を張る、兄の感情。




ーーー


「あいつは…どこ行ったああああああああああああああ!?」


大会議室では悪魔の迎撃もなんとか完了し、黒服のブルーニが1人、男の行方を探していた。




ーーー


みんなで遊んでいる内に、燵も虎も疲れて寝てしまっていた。

男はというと、二人の為に添い寝までしていた。


「こいつら…俺に似て…いや、やめよう。俺なんかに似たら未来が散々だ」


男が一瞬だけ二人に重ねたのは自分。


「天涯孤独になっちまうからな…」


重ねるのを止めた理由は、深く…暗い。


「親に合わせてやりたいな…」


親がいないというわけでも無いのに、親に会えず、燵も虎も…どれだけ寂しいのだろうか?

男は涙さえ流し始めていた。


「いけねっ…情が移っちまう」


首を横に振って、軽く微笑みながら


「じゃあな…」


帰路に付こうとする彼が発見したのは、『両親の手帳』。

二人には見えないように大きなタンスの上に置いてある。

それを見て、男は『情移り』など気にしない程激怒した。


『12月24日:観光旅行』


ご丁寧に、ピンクのラメ入りペンでハートマークまで付いている。

「カスが…」


男は舌打ちをすると、玄関に勢い良く飛び出し目をつむる。


雪から燵と虎の両親の旅行先を聞き出しているのだ。


「見付けた。」


そして、それを見付けると彼は赤い閃光と化し空を翔た。










ーーー


「な、なんだお前は!?」


眼鏡を掛けた男は、隣に連れた女とともに仰天する。

目の前に赤い閃光が降ってきたと思ったら、サンタの姿をした男だったのだ。当然である。


「子供ほったらかして旅行か?良いご身分だなぁ?」


男は二人の父、高太(こうた)の胸ぐらを掴みあげる。


「あなたは燵と虎の何を知ってるの!?」


隣にいた母、砂江香(さえか)が強気に責めよってくるが…


「知らねぇよ…ただ、悲しんでるのは分かる」


相変わらずの強引さで対抗する。


「旅行は楽しい…偶に行くくらい許すぜ…?

だがな!子供をほったらかして何が楽しい!?

本当に大切なもんも見えねぇうちは、何もかもが偽りだぞ!!」


その気迫に、2人は気圧される。


「燵と虎は悲しんでる…早く行け!」


次は優しく、強く言葉を放つ。


その言葉に…過ちに気付いてくれたのだろう2人は涙を流しながら


「ありがとう…ありがとう…」


と、礼をいう。


「いや、お前らが…本当の馬鹿でなくて良かった…後ろめたさがあったんだろう?」


2人に背中を向け、男は今一度問う。


「ああ…ただ、昔の…新婚旅行の味が忘れられなくて…」


『後ろめたさはあった…』それが本音。

もっといえば…子供を大切にする気があった。


それを聞いて男は安堵した。



しかし、再び現れた。

黒い甲冑ーー悪魔が!


「な、何?」

砂江香も驚くが


「早く行きな…」


男が呟く。


「え?」


「雑用作業はやってやる。燵と虎の所に…早く」


パチンッ!

と男が指を鳴らすと、トナカイがソリを引いてやって来る。

「それに乗りゃあ五分で着くだろ」


「あ…あなたは一体!?」


いきなりに次ぐいきなりに訳がわからないと云ったところだが…。


「なぁーに…ただのイタいバイトの人兼サンタクロースだ」

ふざけた感じに答えを返す。








ーーー


時刻はもう夜。


起きた虎は男がいないことに泣いていた。


それを燵も必死に慰めるが、本人も涙を目に溜めている。






「本当に五分で着いた!」

慌てて高太と砂江香はソリから降りる。

2人が降りると、トナカイとソリは雪の粒になり消えていく。

しかし、2人はお構いなく燵と虎目掛けて家の扉を開けて走る。


そして、しっかりと抱き締めた。

その温もりを…。





ーーー


その時、男は悪魔をほぼ全滅させて、リーダー格と一騎打ちを行っている。


「流石に拳銃一丁じゃあキツいか…」


愛銃を発砲しても、簡単に弾かれてしまう。


「なら、来いよ!!」

相手を挑発して手招きをする。


向かってくるのは、あの槍。


こちらに漆黒の槍が伸びてくる。


「腹ぁ括るぞぉ~」

衝撃!男はその槍に向かって走りだしていた。

そして、またもや腹に突き刺さるが…


「うおおおおらあああああああ!!」


構わず走り続ける。

やがては、悪魔の懐まで達し…自身の胸から機関銃を出現させる。


「あばよ!」


ドドドドドド…


大量の弾丸が、悪魔を包み込む。






ーーー


「メリークリスマスだ…」


男は腹からまだ血を流しながら、羽間野家の窓を近くの電柱の上から見下ろしていた。

そこには温かい光景ーー『一家団欒』。


そして一言。


「いけね…完全に情が移ってら……」

来年はもっと早くに執筆に取り掛かろう。

そう決意しました!

来年もやります!


年に1回の連載だと思って来年を楽しみにしていてください!!


それではメリークリスマス!!

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