第98話 AIロボットの個性
王国歴 262年9月
王立学園の入学式は、学園長のロベルト・カルバン宰相閣下のお話しから始まった。
「諸君らも知っての通り、女子教育のフリアノン学園として始まったこの学園だが、本日、王国の幹部候補生を養成する機関として再出発する事になった。近年、我が国は鉄道事業や王国軍の設立、海軍省ができるなど、目覚ましい発展により……中略……輝かしい未来を、君達自らの手でつかみ取ってもらいたい。以上。」
もちろん、教育長の紹介は行われたが、挨拶は抜きだ。
特に王太子が台無しにしてしまうだろうからね。
重要なのは、フローレンスを入学させた事だ。
彼女は249年5月生まれ『七曜の里出身』の13歳。
本来であれば目立つのだが、この年から学年制が無くなり再入学者も多いため、違和感はない。
いや、むしろ目立たないように本人も注意しているのだ。
彼女の役割、それは神殿構想に代わる病院構想。
『七曜病院』を立ち上げるため、この学園で信頼できる者を見つけ出し、引き連れて戻る事だ。
私は技官教育長 カール少将として、化学技官を目指し研究所での勤務を希望している女子生徒と面接して、魔力量や銀粒ねりねりの適正検査をして、生徒にアドバイスをした。
もちろん本来の目的は他にある。
適正検査と称して生徒に魔力を流し、分析していたのだ。
もちろん、身体的な障害があれば修復も行うつもりではいたのだが、そのような対象者はいなかった。
外見が良く身体的にも問題がない生徒の分析データを、アリスからもらった空きの指輪にコピーして、このデータを使って、AI人形を作ろうとしているのだ。
服の上から分析しているので肌の質感や色合いは分からない。
シルエットデータだけなので許してほしい。
彼女達の生い立ちや面接で聞いたエピソードなどもAI人形の過去の記憶として利用させてもらう。
だが、いい事ばかりではない。
既に30代に達していた筈の元第1騎士団や第2騎士団の者も入学者リストには載っていた。
そこでAIアリスを学園に駐在させ、フローレンスの世話係としていた。
学園の入学者が増えたため、寮には地方から入学した者を優先的に入れていたため、フローレンスは無人だった屋敷に住まわせる事にしたのだ。
一方のショコラ支部の屋敷は完全に事務所にして、アリスと赤ちゃんはマリリンの所で、一緒に育てる事になった。
マリリンやジャック、ターニャには、『都合で預ける事になり申し訳ない』と謝罪したが、内心は『仲良くなるきっかけ』になったと私は思っている。
フローレンスを七曜の里の者とするため、セバスの養子とし、ついでにレナもセバスの養子となった。
まさかと思ったが、セバスはフローレンスを本当の娘のように可愛がっている。
旧王都フエキの屋敷に泊まると、昔懐かしい温かさを感じる。
レナは既に17歳、アリスは15歳。
私も間もなく15歳になろうとしていた。
王国歴 262年10月
アリスと私の15歳の誕生祝いのため、ショコラのマリリンの屋敷に来ている。
アリスが長女を産んでから5か月、出産時にふっくらしていた体が元に戻っていた。
相変わらず可愛いい。
「アリス、出産、そして子育てありがとう。」
アリス「えっ!あはは。そんな事でお礼を言うのは、カール様だけです。」
この世界の女性としては当然の事だった。
しかも、子供の死亡率が高いため子供が5か月ほど経たないと、夫にも会わせない事もある。
正体不明の病気を持ち込ませないという意味もあるらしい。
その点、アリスはキュアやヒールが指輪の力で使えるため、マリリンも安心なのだった。
逆に、そういう意味で同居になったと好意的に受け止めている感じも受ける。
その夜、アリスと久々に同じベッドでくつろいでいた。
アリスの身体を分析させてもらったのだが、特に異常はなかったが少し乳房が柔らかくなったようだ。
母乳を飲ませるようになったため、内部の構造が変化したようだ。
その夜、久々に愛し合ったのだが…
私自身の変化にも気が付いた。
つい最近、数多くの女子学生を分析した結果、外見からどのようなシルエットの身体なのか、大体だが想像がつくようになっていた。
そのせいで、興奮度合いが低いのだ。
女体に慣れてしまったという事か…。
やっと15歳になったというのに、これではバイアグラのお世話に……。
そうだ!薬を作ろう!早速だが指輪の知識を引き出す。
有効成分はシルデナフィル。
血管の拡張剤のようだ。
構造体はC22-H30-N6-O4-S。
ここまで分かれば作れる。
元祖の形状である青色のひし形になるように、添加物を加えて錠剤にしておこう。
ここショコラのマリリン屋敷からショコラ支部に異動し、密かにAI人形を作っている。
最も大変なのがCPUだ。
10cm×10cmのシリコンチップを作るのが最も集中力を必要とする。
ここから縮小というか濃縮するのはむしろ簡単だと言える。
お読み頂き、ありがとうございます。




