第97話 インターン制度
王国歴 262年6月
王立学園は幹部候補生の養成機関であると規定する事には問題はない。
だとすれば、カリキュラム変更とそのための講師陣などを準備する必要があるだろう。
彼らは、王国の次代を支える人材なので、様々な方面の可能性を彼らに示すのはどうだろう。
案ではあるが、教育機関の組織と教育分野にどのような道があるか、列記してみる。
学園長 ロベルト・カルバン宰相閣下
武官教育長 デリンジャー王太子
武官:方面軍指揮官(陸軍近接部隊、遠距離狙撃)
:守備隊指揮官(治安維持、公安調査)
:参謀部(作戦立案、予算作成)
:工兵隊(セメント、有刺鉄線、戦闘服、武器)
文官教育長 アンジェラ外務大臣
文官:行政官(司法、立法、行政)
:商務官(調達、販売、財務)
技官教育長 カール少将
技官:車輛(装甲車、バギー車)
:船舶(高速哨戒艇、巡視船)
:鉄道(線路、整備)
:科学(肥料、化学繊維、薬草分析)
どの進路に進むにしろ、自己防衛能力と計算能力は必須となるため、基礎知識、共通技能を規定する。
基礎知識
軍組織の規則、階級と役割、指揮命令系統
四則演算能力、間違い探し
共通技能
自己防衛術、基礎体力基準合格
学園では基礎知識と共通技能が必須科目とし、合格者は専門コースに進めば良い。
但し、専門コースを受講した者は、国家機密が多く含まれるため、許可なく外国へは行けなくなる。
専門コースでは、北方方面軍、南方方面軍、旧王都フエキの守備隊本部へインターンとして教育実習を受ける。
文官コースのインターンは宰相閣下に投げるしか方法はなさそうだ。
現在、行われていない内容については、早急に検討するものとして、宰相閣下に提出した。
王国歴 262年7月
『王立学園の教育カリキュラム変更に関する通達』が発布された。
通達は学園内にも張り出されているが、8月に卒業する5年生には適用されない。
次年度9月からは、学年制が廃止される。
入学試験が簡素化され、入学試験は7月15日~8月20日までと告示された。
身分が確かなら入学可能だし、卒業者の再入学は無試験だ。
だが、5年生の再入学であっても必須科目の免除はない。
必須科目を合格すればいつでも専門コースに入れるのだが、15歳未満の者は各分野での正式採用はされない。
学園側としては、15歳までは各分野にインターンとしてOJTに参加して、広範囲の知識と経験を得てほしい、という意向なのだ。
宰相からは、再入学を含め学園の収容人数は大丈夫か?という懸念が示されたが、学園で学習するのは、必須科目と文官コース、参謀部くらいだ。
あとは現地に送り出してOJTで実際の業務に付いてみれば、自らの向き不向きは分かるだろうし『幹部候補』という言葉は甘くて、それなりのカロリーを提供してくれる筈だ。
どうしても多いようなら、『再入学組は10月から必須科目の合格試験から始める』と通告すればいい。自主トレでもして暇が潰せるだろう。
宰相の懸念通り、入学希望者が殺到して学園に集合しての入学試験は諦めた。
『各地方の方面軍および海軍省で入学試験と合否判定を行う事と問題は当日、電波塔設備を使って問題を音声で読み上げ、それを受験生が各自聞き取り、自ら問題と解答を書く形式とした。
レナに録音しておいてもらおう。
当然だが、多少の不正は目をつむる。
そして同時に『自信のある者は10月に実施される必須科目の合格試験から始められる』と通達を出してもらった。
月1回、合格試験があるため、実質的には通年入学みたいなものか…。
直近の問題は即戦力の諜報員を、どうやって集めるか?だろう。
宰相に予約を取り、相談をした。
「お忙しいところ、申し訳ありません。」
宰相「いや、執務棟の幹部達にはインターンが来たら能力が分かる仕事をさせて、優秀なら内定を出せと指示している。激務が緩和されるかも知れないと張り切っているよ。」
「ははは。仕事内容のチェックとミスの修復に追われない事を祈っておきます。」
宰相「ん?そういう可能性もあるか…まあいい。諜報員の件だったね。」
「はい。即戦力としての『冒険者』が必要なのです。守備隊の隊長クラスであれば、庶民感覚もあるでしょうし、戦闘力も問題ないでしょう。」
宰相「狙いは何だね。目的は?」
「はい。偵察機は電波塔の信号の届く範囲までしか行けません。そこで帝国領内に電波塔を設置したいのです。アンテナの設置にはある程度の高さが必要です。2階建てでも良いのですが、とりあえず、建物を確保してアンテナを設置する。それが目的です。」
宰相「うむ。つまり引退して現地で根付くようなら理想的という事か。」
「はい。ご推察の通りです。」
宰相「家族が居ると難しいだろうな。分かった、心当たりがある者に打診してみよう。しかし、単独では冒険者としては怪し過ぎるだろう。どうするつもりだ?」
「パーティーというより、『訳あって共和国から逃げてきた親子が帝国で暮らしたい』と言っていると説明し、女性親子を連れて行って守ってほしいという設定です。親子役の者は北の里から調達します。」
宰相「都合よく、里にそのような者がいるのか?」
「里には貴族の子を宿す任務を遂行できなかった者や選ばれなかった者は大勢います。まして中年ともなれば、稼げる仕事はないでしょう。今回は特別な技能は要らないのです。冒険者の中年男性と帝国で暮らすだけの任務で、十分な手当をもらえるのです。問題はないでしょう。」
宰相「だが、人選はどうするのだ?」
「冒険者役の者とお見合いをさせれば良いのです。お互いがOKならカップルの誕生。むしろ我々がお礼を言ってもらいたいものです。」
宰相「ははは。確かにそうだな。では腕の良い独身男性を探すとするよ。また追って連絡する。」
エリオットに今回の件を話し、帝国に潜入して暮らす中年女性を3名派遣してもらうように交渉してもらった。
エリオット「でも、子供役はどうするの?」
「娘役だね。それはこちらで用意する。」
そう言って、AIアリスを呼び寄せた。彼女とは無線で意志の伝達ができるのだ。
エリオット「えっ? AIアリスを使うの?」
「いや、彼女はお手本だから手放さないよ。でも彼女のようなAI人形を3体作って、順次、帝国へ送り出す。そして、権力者の側で情報を取り、こちらに送ってもらう。彼女達は偵察機と同じ機能があるからね。」
エリオット「でも…」
「心配はいらない。彼女達は戦闘能力もあって、普通の人には負けないから、いざとなったら権力者を殺害してでも脱出できる。」
問題はサンプルだ。
私は頭の中にデータが無いと作れない。
お読み頂き、ありがとうございます。




