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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第96話 外交官はいらない


だが今回は私の提案が却下され、宰相の執務室へ呼び出された。


宰相「忙しい所、すまない。早速だが、意識の違いを説明しよう。正式な国交ルートとは、王族が直接相手国と行き来して行うもので、重要な条約や国家間の貿易取引などで行われる。ここまではいいかね?」


「はい。問題ありません。」


宰相「一方、外交官は情報収集や商人レベルの商取引の制御を行うのかね?」


「そうです。」


宰相「情報収集は各国とも冒険者によって行っていて、帝国からも我が国に来ているだろうから、こちらからも冒険者を出せば良い。逆に、冒険者を入国させないという政策は、冒険者ギルドという世界的な組織に対する拒絶であり、そのような選択肢はない。」


宰相「個人的に問題があって、例えば犯罪歴があるとかの正当な理由があって、例外的に入国が許可されない事は常識だ。」



宰相「外務省を通じて行う国レベルの商取引だが、君は鋼鉄剣や銃を売るつもりがあるのかね? つまり正式な商取引で相手の要求を断る事は国のメンツに係わるため、非公式に打診がある。」


宰相「では冒険者に鋼鉄剣を売るのか? それも現在は許可していない筈だが、相手によっては考えても良い。という事で正しいかな?」


「はい。その通りです。」


宰相「だったら、外交官という新しい概念は不要だ。『役割に応じた冒険者』を派遣すれば良い。それが現在他国のしている事だからね。」



宰相「さて、王立学園での幹部職員の養成には、国王含め大いに賛成だ。王太子の部下も不足しているし、姫の部下もほしい。官舎で働く官僚としての教育と、冒険者(諜報員)としての教育、その内容についてもう少し具体的に考えてくれないだろうか。」



「わかりました…各国とも冒険者という存在で諜報し、合法的に商取引で欲しいものを手に入れていたんですね…。」


宰相「その通りだ。ただ、我が国が他国に無関心だっただけなのだ。」



後日、アンジェラ姫を情報部にお迎えして、王太子、シンシアとエリオットの5人で偵察機を飛ばして帝国を見ようという事になった。


飛行場を離陸した偵察機。


最初は地上から発見されないように、高度5000m付近を飛ばしている。


東の森ハリコフの町がジオラマのように見える。

東方方面軍の外部カメラでも偵察機が確認できない。

上空5000mのわずか3mの機体、見える筈がないのだ。


とりあえずこのまま森の上空を通り過ぎて、帝国領に入っていった。

本来は全く異なる島だった土地だが、なぜか違和感はない。

我が国と大差ない草原にところどころ、村のような集落が見える。

偵察機の高度を3000mまで下げた。


川が見えたので、川に沿って南へ少し行くと、比較的大きめの町が見えて来た。


防壁がありその入口付近には詰所があるようだが、兵士の姿が見えない。

反対側、東側の防壁には、人の列と兵士の姿が見えた。

カメラの倍率を上げて兵士の装備を見るが。剣のみの装備だ。


お昼までの3時間、色々な方向に飛ばしながら見ていたが、国土はわが国の何倍以上もあるようだ。


お昼になったので、偵察機を帰還モードにして、偵察機の帰りを待つ。


食事後の打ち合わせで、シンシアとエリオットに


「帝国の簡単な地図の作成をお願いします。東部方面軍の電波塔からの信号が届かなくなると、偵察機は自動帰還モードになるから心配はいらない。」


「それとエリオット、帝国に派遣されている2組の周辺隊を帰還させる事は可能だろうか?」


エリオット「周辺隊を引かせる意図は何ですか?」



「帝国の内紛で、どの勢力と組んでいても安全ではない。負けた勢力の血縁者は総じて不幸な結末を迎えるからだ。」



「次に他国から見て、3男一族の治める領域が『北の国』という独立国家なら、簡単に攻め落とせると考えるだろう。だが、3男一族の治める領域がグランデ王国の自治領だとしたら、他国は簡単には手出しは出来なくなる。北の安全は周辺隊とは関係ないんだ。」



エリオット「要するに、グランデ王国の自治領になる未来しか見えない、という事ですね。」



「その通り。もちろん、ここにおられる王太子や姫、国王など王族方の総意によって結果は決まるだろう。そろそろ妾ではなく、立派な領主を迎えるとか、強国の傘下に入るなどの別の道を探る時期に来ていると思う。」


「もし私が国王なら、3男一族がやられてから取り戻しにいくだろうな。その方が後々統治しやすいからね。」


王太子「さすが!」


アンジェラ姫「それは、悪辣あくらつすぎるわ…」


とつぶやいている。



「周辺隊は、情報収集と関係強化が目的だろうけど、わが王国では、これから情報部主導による情報収集と諜報活動を進める予定だ。戦略的な意味がない周辺隊はむしろ情報部の邪魔になるし、人質に取られ交渉材料にされても困る。」


「帝国については、先ほど見た通り国土は非常に大きく、まだ、開発も進んでいるようには見えない。一方、住民の生活は特に問題が無いように見える。内紛の理由がわからない。」



その後、エリオットからの連絡を受けた里では、どうすれば周辺隊を引き戻せるか?という議論になっていた。


1つは、里帰りという名目で帰らせる事だが、派遣したメンバーが全員一気にいなくなる事は難しく、里帰り名目ではせいぜい半数を帰還させるにとどまるだろう。


だが早急に帝国を離れる事が最善と勧告されたのだ。

そこで、帰れる者だけ里帰り名目で帰らせる。

例えば、『里で内紛が発生している』という偽情報でも構わない。


残った者は逃走計画を立てて、一気に脱出する事になるのだが…




お読み頂き、ありがとうございます。

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