第87話 七曜鉄道の開通
王国歴260年8月1週
8月に入り学園から卒業証書が届けられた。
今日は、七曜鉄道の開通を周知する目的で、鉄道を使って王都駅~フェドラ町~旧王都駅と移動する日だ。
宰相も間もなくこの客車にやって来る。
線路わきには有刺鉄線を使って鉄条網を組んである。
同時に開通したフェドラ町~旧王都ショコラまでのルートは距離が80Kmと短いため車輛はフェドラ駅~ショコラ駅~王都駅間で1台使用する予定にしている。
つまり、始発は王都駅発~フェドラ駅行きと、フェドラ駅発~ショコラ経由~王都駅行きの2台で運行する。
宰相閣下が王都駅に到着したようで、ホームが賑やかになっているが、ここには軍はおらず、騎士団が警護、誘導しているのだが、明らかに無駄が多く、発車時間が迫って来ている。
宰相が我々2人が乗る客車に乗ってきた。
挨拶を済ませると、
宰相「遅れてすまん。騎士団の奴らがガシャガシャと鎧を付けて、久々の出番という事で、練り歩こうとするから時間を食ってしまった。」
「いえいえ、仕方ないですね。乗客を観客と間違えているのでしょう。」
宰相閣下の専用メイドが、皆にお茶を入れてくれたところで、列車が動き出した。
1輌増やして5輌編成にしたが、結構人が多いので、このままの運用にしよう。
「ところで今回は、鉄道開通のお披露目が主目的ですが、北方軍本部横の参謀本部研究所を元の王都の参謀本部に移転するため、貨物列車で機材類を搬送するのがもうひとつの目的です。」
「そして明日、旧王都ショコラの王宮に電波塔を設置し、王族の方々と宰相閣下、シンシア少佐に今回の機器類の使用説明などをさせて頂きますが、概要は、2つ、王族の方々を旧王都に移転頂き、王都ショコラと改称。現王宮を改装して参謀本部に変え、王太子に本格的に本部長として軍を率いてもらいたいのです。」
宰相「ほう。その狙いは何だ?」
「王族による政治は、外交を主に担当頂きます。これは外交には格が必要だからです。メンツも大切というのが本音でしょうか。軍は王太子に背負って頂き、衣・食・住の基本となる国内産業の育成、経済活動の活発化など、メンツの不要な部分を担当頂きたいのです。」
「本当の狙いは、王太子の自立試練です。ご自分のパーティーが、ある程度の戦闘力を身に付けた今、やっと単独で行動ができるようになった。そしてこれから何を学ぶべきか、私も参謀部に通いながら、それを王太子にお教えします。」
宰相「なるほど、わかった。では、明日の説明会を楽しみにしよう。」
「うまく行けば、再び親子揃って生活ができるようになりますよ。」
そう言ってから、私はアリスとエリオットと3人で打ち合わせに入った。
騎士団をどこに持っていくか?
さしたる仕事もなく、副団長ギュンター率いる第2騎士団は、既に崩壊し始めていた。
今や残っているのは25名。
フェドラ町に到着し、歩いて北方方面軍に行こうとしたら、バギー車の迎えが来ていた。
宰相とそのメイド、私達でちょうど5台であった。
私達も参謀本部へ顔を出して、久しぶりにシンシアに合った。
「エリオットは優秀でしょう?逃げられないように待遇を良くしてあげて下さいね。」
シンシア「カール君、全然変わってないね。」
「それはそうと、北方方面軍の資材を使ってショコラに電波塔を建てるんだ。車と違って鉄道だと荷物が重くても大丈夫だからね。このリストで用意してくれない?」
シンシアは北方方面軍の資材リストと突き合わせながら、指示書を倉庫に持っていく。
付いて行ったアリスとエリオットは、早速倉庫で鉄骨を作り始めていた。
方面軍の正式部隊は砦に行っている者が多く、ここには予備兵と訓練に来ている東方方面軍がいるようだ。
私は、とりあえず、明日使う避雷針やアース線を作ってしまう事にした。
この先端の3つに分かれている部分は、単なる見た目で真似をしただけで、性能まで確認はしていないが、何だが槍のようで面白い。
まだ5時だが、久々の定時退社だ。
北方方面軍の官舎は訓練兵を受け入れているため、常に一杯だそうだ。
王都9:00発でフェドラ2:30着。80km運転のお蔭で、早くて酔わない。
線路幅は新幹線と同じ1435mmの標準軌と呼ばれる世界標準だった。
そんな事を思い出しながら、ダグザ武器店の前を通り、宿屋にチェックイン。
ツインの部屋を1つ。
最近はスイートが多かったので懐かしい。普通の宿屋にスイートルームは無い。
硬いパンと肉が多くなったスープの夕食を先に食べてから、部屋に入った。
黙っていた私を心配してアリスが声を掛けてきた。
アリス「カール様、大丈夫ですか?」
「いや、何でもない。昔の…自分一人だった頃の事を思い出していたんだ。まだ2人はいなくて…、というか、まだ七曜は形も無くて…。この70cmの鋼鉄剣が始まりだった。」
「まだ7年、でも、もう7年経った。違うのはアリスやエリオットが、七曜のメンバーがそばに居てくれる。それが一番うれしいんだ。僕が15歳に成った時、同じように、一緒に居て良かったと心から喜び合えるようにしたい。今はそう思っているだけさ。」
アリス「私はカール様から離れる気は有りませんわ。白い魔女の系譜が誇り高いものだと解明してくれたのですから…。カール様の子供をいっぱい産んで、白い魔女の系譜がいつまでも続いていくように、心を込めて育てていくだけですわ。」
「ありがとう。」
アリスが抱きついてきて、キスをしてくる…。熱い。
結局、この夜はアリスが甘えて来て、久しぶりに体を寄せ合い眠った…と言いたいところだけど、お互いに色んな所を触り合って、『喜び』を分かち合い、疲れて寝たのだった。
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