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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第81話 バギー車


王国歴 260年2月第2週


昼食後、作業室に入り、バギー車を作る。今日は3人が各自の作業で1台車を作るという趣向だ。


流れ作業ではなく島作業。鋼鉄練り練りでフレームを組み、エンジンを乗せる。

2人乗りで後部は荷台。タイヤ、フレーム、クラッチなどは共通規格だ。


タイヤは極太で3200ccエンジンで4輪駆動。


今回のワームの内臓、ねばねば繊維をタイヤの中に入れるために、取ってきたのだ。

だが、4匹ではタイヤ8本しか充填できなかった。


今回からクラッチ板の離接レバーが無くなって、ギアシフトのレバーを押し込まなくては変えられないしくみになった。


上からシフトレバーを叩きNから1へ。シフトレバーを叩き1から2へ。シフトレバーを叩いても2からはNまでしか戻らない。車が止まるとRへ入れる事ができる。


後部の荷物室の天井は防水布シートで出来ていて、くるくる巻いて、マジックテープで固定できる仕様。銃の2脚は使えないが、銃身をフレームに置く事はできる。


2台が完成したので、明日出発予定の4名を決めてもらう。


次は運転講習だ。むしろ、こっちの方が大変であった。結局夕刻から運転講習をしたのだが、パニックを起こしてしまう。


そのため、急遽、昔に行った自動車教習所のコースを思い出して、運転練習場を作った。


テスト走行で、はっとして、方向指示器を追加しようとしたが、敵に次に進む進路を教えるつもりか?と、自分に突っ込んだ。


バギー車は2台あるので、アリスとエリオットに指導教官役を引き受けてもらい。私は明日、残り2台のバギー車を作る事にして、隊長と副隊長は軽装甲車を運転して、タイヤの材料、ワームを6匹狩ってきてほしいとお願いした。


炸裂徹甲弾を使った実戦がまだな者を連れて、狩って来てくれるそうだ。


そんなワイワイした楽しい1週間を過ごし、運転講習受講済みのメンバー10名と、砂漠突破作戦を実行する事にした。


今度は、1名が運転、1名は後部荷物室からワームを銃で撃って倒し、先へ進む。砂漠の凸凹道で進みながら撃つのは、難しいだけに当たればうれしい。


30分ほどで砂漠を突破し共和国へ侵入したのだが、山脈が有る場所までは何の施設もなく、山脈から先は当然だが見えない。残念だ。


流石に敵国の領内。キャンプを張るのも神経を使う。


シャーロットの偵察があるので、若干気は楽だ。そんな緊張の1夜が明けて、今度は戻る事になる。


戻り道には、昨日倒した筈のワームの死骸が見つからない。結局、餌になってしまうのだろう。


気晴らしの2月の3週間であったが、結局、南方方面軍に『運転教習所』と『バギー整備工房』を作ったことになる。


宰相からは、北方方面軍にもバギー車5台の受注を頂いたのだが、お断りをした。


宰相は大変驚いたようだが、南方で『運転教習所』に入って頂き、合格した者2名が運転して、北方に乗って帰って頂く事でしか、同意できない。と言うと、笑って『1本取られた』などと言っていた。



これで、北方方面軍で近接戦闘術として剣による防衛術、攻撃術を身に付け、近接戦闘訓練迷路を合格、北方森林で魔物討伐、歩兵銃による射撃訓練を終了したのち、南方方面軍にて、『運転教習所』に合格し、砂漠で38式改造自動小銃と炸裂徹甲弾の実戦を経験、砂漠縦断訓練を経て、全員が士長に成れる事になった。


尚、士長のリーダーは3曹に昇任される。


結局私は、南方方面軍に七曜の運転教習所と、バギー整備工房を作り、南方方面軍は、この2つの七曜の施設を運営する事で、資金を得る事になった。


そうした理由は、方面軍の退役軍人や、実戦に向かない人のためであった。


この点を、宰相は大変気に入ってくれたようだ。

(代わりに出張時はいつも宿泊券をくれるらしい)




王国歴260年3月第1週


なぜか王立学園の卒業試験を、宰相の執務室の隣で受験している私とエリオット、そしてレナの3人。


特別待遇のようだが、回答用紙に書き込むたびにジロジロと秘書官から内容チェックを受けている。これでは逆にプレッシャーではないのか?


レナは教養科目の卒業試験。エリオットもなぜか算数だけの筈が、貴族の礼儀作法が追加された特別な卒業試験になっていた。


私の算数問題は、なぜか食肉物流におけるコストと損益分岐点を求めるような応用問題だ。おいおい。これって宰相が個人的に作った問題じゃないの?


まーともあれ受験が終わって、王立学園への出席義務は免除され、然るべき時期に卒業証書が届くらしい。


宰相「ご苦労であった。3名とも期待通りの回答を得た。エリオット君は明日以降、執務室へ出勤して、各書類の回送ルート、担当体験などの実務研修を経て文官業務の把握の後、王国軍の武官業務の体験実習をしてもらう予定だ。」


(これって花婿研修じゃないの?…見るとエリオットの顔色が若干青い…)


宰相「以上、解散。」




王国歴260年3月第2週


新しい事業を開始してしまったため、この南方でバギー車の部品生産に従事している。


同時に整備要員の教育も合わせて行っている。OJTという手法だ。特にバギー車の整備に関心のある者が選ばれ、東方方面軍からも選抜されて来ている。


もしかすると、東方方面軍と七曜の関係強化を宰相が望んでいるのか、又は、東方方面軍が望んでいるのか。


「君は東方方面軍からだったね。バギー車の購入申請はもう裁可されたのかな?」


研修生「はい。歩兵銃10挺、バギー車3輌が配荷予定です。あ、あのー質問してもよろしいでしょうか?」


「うむ。どうぞ。」


研修生「北方方面軍に訓練に出たのは、つい先日の事で、すぐには戻って来そうもないみたいですけど、私はそれまでずっとここで研修してもよろしいのでしょうか?」


「むしろ、長期間のほうが望ましい。整備は運転とは違って習得までは時間が掛かるし、好きでなければ続けるのも難しいものだからね。」


研修生「ありがとうございます。」


「でも君がいくら働いても、君の整備労働手当は東方方面軍に支払われる。方面軍はうれしいだろうが、君がなぜ喜ぶんだ?」


研修生「東方方面軍は正直言って暇なんです。目の前には大きな森林があって大型獣さえいるのに、森林は隣国、帝国領になっていて、訓練の討伐対象にもなってないんです。」


「うむ。その通りだ。だが、森林の大型獣を刺激して数頭入って来られたら、今の方面軍装備では退治さえできないだろう。だったら、装備が更新されて、せめて押し返せる程度には実力を付けないと、何も言えないさ。」


研修生「やっぱり大型獣には、今の我々では勝てないんですね…。了解しました。頑張ります。」


「時間ができたら運転も習得しろよ!」


そう言って、励ましておいた。やはり偵察犬が早くほしいな…。




お読み頂き、ありがとうございます。

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