第78話 アンジェラ姫の復学2
当日の朝、姫は午後からなので午前はゆっくりと湯あみをして、化粧をしてから学園に登校する事になる。
セバスはいつものように通勤という感じだ。朝、予鈴が鳴って職員会議が始まる。今日は王族が来るので失礼が無いように、服装チェックからだ。生徒にもあらかじめ通達してある。
8時50分に警戒のために職員に門の所で立っていてもらったが、いきなり宰相が来た。(招待してないんですけど。)講堂の成績優秀者による『私の勉強法』という課題発表を見に来たらしい。9時10分から、始めたが生徒が緊張しまくり、カミカミだったらしい。
1人20分、10名で昼休憩の12時30分に終わるはずが、結構早めに終わってしまったようだ。宰相に感想を頂いて、ちょうど12時30分になったそうだ。
昼食休憩が終わる13時15分から、グレースは学園長室に来てもらった。ちょうどその頃、13時頃から王族の来賓が到着し始めて、職員総出でテントへの案内等、対応に追われていた。鉄道模型のセットアップと試運転も15分ごろから始まり、姫の登場5分前には完了していた。
いよいよ、13時30分になり、軽装甲車から降りてきたアンジェラ姫。ご両親の国王、王妃さま始め、兄王太子でさえも信じられないくらいに、姫は綺麗になっていた。まるで女の子から美少女へひと皮むけた感じだ。(いや、本当にひと皮むけたのだが…)
来賓のテントに行き、挨拶をする姫。家族は本当に驚いていた。顔のブツブツが無くなっただけでなく、化粧をした事も大人の女性に近づいた印象を与えたのであろう。それから。生徒達に振り向いて、復帰の挨拶もおこなった。ジョージ侯爵だけが無言だったのは、驚き過ぎたのが原因だろうか。
13時40分になり、
「これよりアンジェラ姫による鉄道一周のイベントが始まります。姫さま、どうぞ!」
そのような紹介を受けて、1mほど高くなったミニチュア駅に登ったのは、綺麗なミニドレスのグレースであった。『えっ?』と驚く観客を見回し、ミニドレス姿の自分に驚いていると勘違いして、手を振るグレース。
動力車にまたがり、すぐに発車した鉄道であったが、最も人が多い場所でレナの風魔法によって、足元を隠していたパネルが飛ばされ、かつ、大人が三輪車にまたがるような恰好のパンツ丸見え状態のグレースのスカートを、さらにめくりあげた。
目の前で起こる歓声。『おお!』驚きもあるが、昨日まで姫だった娘のパンツ姿に男子学生は湧きたった。
グレースは、それを一刻も早く回避するため、立ち上がるしかない。そこへ風で煽られた花火を上げるための吊り輪が目の前に来ていた。思わず、それを右手で引き、左手はスカートを押さえる。
やっと体を椅子から立ち上がらせたその時、下から音響閃光弾が打ち上げられた。その音響閃光弾が、グレースのミニドレスの中で弾けた。
『パーン』
「ギャー!」
ミニドレスのスカートの中、グレースの下腹あたりで弾けた音響閃光弾は、本来は人を傷つけない設計だが、手で持った状態だと、手が吹っ飛んでしまうほどの炸裂なのだ。少なくともひどい火傷は免れない。
当然、スカートは簡単には焼けたり、破れたりはしていない。全て、スカートの中で炸裂が抑えられていた。
すぐに、職員達によって、彼女は運び出され、医務室で回復ポーションが使われたが、表面はともかく、内臓の損傷などは対応できない。
鉄道模型のイベントは中止となったが、それを差し置いて、アンジェラ姫回復のインパクトが大き過ぎて、計画通り、『姫さまが受けた美容向上研修の講師を紹介する』ことになった。お肌の手入れ方法などをアリスが講師となって指導する。という計画通りの話だ。
一方、事故に関して、侯爵からは
侯爵「あのような危険なものに姫を乗せるなど、一体どういう了見なのだ。」
セバス「いえ、花火用の紐だと職員一同生徒まで徹底してあったのですし、そもそも、姫でない者がしゃしゃり出て、あのような肌の露出が多い物を着て鉄道にまたがるなど、誰が考えても、あり得ぬ事。」
セバス「本来、姫様にお乗り頂けるよう、馬術用の衣装も用意していたのですよ。貴族でなくても、さすがにあの格好はあり得ません。」
そう言うと、王家の者は一様に頷いていた。
グレースには悪いが、さすがに指示を受けただけとは言え、人の殺害に関与したのだ。報いは受けてもらう。恐らくは今夜あたりが峠だろう。
これで、王太子、姫ともに七曜に取り込めただろう。レナには苦労を掛けるが姫に取り付いてもらう事になる。
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