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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第6話 サマンサ魔道具店



「ほー 魔道具店か。 もう夕方だし、客も来んから店を閉めて飯を食べるついでに行ってみようか?」


普段から、あまり客が来ないダグザ武器店を早めに閉めて、爺さんと手をつないで、南東地区から南西地区に向かって歩いていく。


このフェドラ町は昔、北から魔獣たちが押し寄せた事から、北側には守備隊訓練所や兵舎、治療のための教会、町長の屋敷などがあり、南方には一般市民と冒険者ギルド、商店、国から派遣されている役人の施設、貴族屋敷などがある。


町長は領主から指名されて報告業務を行う代官で町の平民が就任している。

一方、貴族は好きでここに住んでいるだけで、中には屋敷を所有しているが、誰も住んでいないという場合もある。


それほどの田舎なのだ。



「南西側は人通りが少ないですね…」


「あー 南東側は庶民が多くて、こちら南西側は、貴族屋敷や高級宿、高級な洋服店なんかが主だからな。魔道具なんてのも、平民じゃ手は出ないさ。」


「なるほどですね…。あ、店が見えてきましたよ。ここですね。」



そろそろ街灯に灯りがともり、薄暗い店内への扉を開けて中に入った。


「ごめんよー。誰かいるかねー」


奥から店主らしき女性が出てきた。


「はい。なんでございましょう。」


「すみません。サマンサさんでしょうか?」


「はい。そうですが…」



「突然で申し訳ない。私は南東地区で武器屋を営んでおるダグザと申す者です。そしてこの子はカールという私の孫で、店の後継者でして…」


「はじめまして、カールです。実は冒険者ギルドにポーションの作り方を指導して頂けそうな方を探してほしいとお願いしたところ、こちらのサマンサさんがポーションをギルドに納品しているとお聞きしたので、突然ながらお伺いした次第でして…」


「ほほー、お嬢ちゃんはポーションを作りたいのかえ?」


「僕は男です!」



「おやまあ!これは失礼したね。」


「いえ。僕は錬金の加護をもらったのですが、ポーションが作れないものかと思案しておりまして…」


「なるほど…ところでお前さん、なに者なんだい。5歳とは思えない口の利き方だね。」



僕の身長に合わせて、屈んで話をしていたサマンサさんに、嬉しそうな表情で


「ははは!その通り。鍛冶の加護持ちだった爺さんの能力を受け継いだみたいでね。この孫は鍛冶と錬金と何やら分析とかいう加護の、3つも加護を授かっておるのです。」



お爺さんの期待を裏切り、サマンサさんは相変わらず私の方を向いたまま


「いやー、そりゃすごいね!私は才能がある者は好きだよ。もちろん教えられる事なら何でも教えてあげる。但し、条件がある!」


「なんでしょうか? あまりお金は持ってませんが…」


「馬鹿言ってんじゃないよ。お金なんて食えりゃいいんだよ。それより、この店の後継ぎがいないんだ。この店を継いでくれるなら、何でも教えてあげる。どうだね?」


「えっ、でもそれって、この店をくれるって事じゃないですか?誰も断らないでしょ?」


「いや、そうは言っても、私にも孫が居るのさ。その子が帰ってくるまで、この店を守ってほしいって事さ。」



そんな条件なら、という事で、ダグザお爺さんとサマンサさんと私の3人で、近くのお店で食事する事になった。



サマンサさんの息子さんとお嫁さんも我が家と同じく、魔物討伐時に知り合って結婚したのだけど息子さんは孫のエリカさんが生まれてすぐに病気で亡くなり、お嫁さんは冒険者の身分を捨て、王国魔術師として採用され、王都に召集されてしまったそうだ。


孫のエリカさんは5歳の時に母親のナンシーさんと同じく、魔術師の加護を授かり、サマンサさんから独自に魔法の訓練を受けて大きくなった。


エリカさんが10歳になった時、母と同じく冒険者ギルドに登録して、薬草やポーションを作成し、サマンサさん名義でギルドに納品してお金を貯め始めたそうだ。


母親のナンシーさんも、何度かエリカさんと手紙のやり取りをしていたのだが、帰郷は許されず、ついに行方不明になったそうだ。


娘と離れて暮らすのが嫌で、王都から逃げたと言う人もいるけど、詳しい事はわからないらしい。


しばらくすると、孫のエリカさんも修行したいと言って、町を出て行ってしまった。


サマンサさんの推測では、孫は母親を探しに行ったのではないかと思っているのだが、場所までは分からないし、時々届く孫からの手紙だけが生き甲斐だそうだ。


とにかく、お店を続けて行かないと、嫁と孫が連絡拠点を失ってしまう。

従ってこの店は、売る事も閉める事もできない。


そういう事で、明日からこの店に来て、魔法の修行をする事になった!



お読み頂き、ありがとうございます。

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