表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
53/164

第53話 訓練迷路


翌日は、朝ジャックとターニャと3人、2階で硬いパンとスープで朝食を済ませて、1階に降りると、護衛たちなりの朝食を食堂で食べていたようだ。


出て来て挨拶をするが全員が出て来なくても良いからと言った。

朝の時間が遅いのと、あの丁寧さは庶民ではない証拠だ。


なぜかターニャの顔が少し赤いし、もじもじしているのは何だろう。


ジャックに


「ターニャのようすが少し変だけど、何かあったのかな?」


「あー、おとといの夜、マリリンの声が夜中まで響いてて、正直、あの夜はまともに眠れなかったんですぜ。」


「ああ、そうか…。それはすまない事をしたな。でも、それっておとといだろ?」


「いや、それで夕べあっしと出来ちまって…。」


「ははは。それはおめでとう、ジャック。」


「怒らないんですかい?」


「ジャックとターニャの人生だろ。合意なら私が意見する筋合いは無いよ。」


「あっしなんかで、いいんすかね?」


私は人差し指でジャックの胸筋に触れながら


「僕もこんな男になりたいなー。」


と言ってみた。

ジャックはビクッとしながら後ずさりして、


「カール様は顔が美少女だけに、余計に気持ち悪いっす。」


などと悪口で返してきた。



朝から北方方面軍の守備する防壁を越え、参謀本部でマーガレット少佐とシンシア少佐と一緒にお茶の時間になっている。

今日は、ジャックが昨日森を探索した結果について、皆で話しを聞いていた。


ジャックは2階中央の『北の森マップ』の正確度を確かめていたようで、魔法鳥のように上空からではつかみにくい情報を得ていた。


特に森林の中では鳥を飛ばしにくく、どうしても高度を上げてしまう。

そのため洞窟のような巣は見つけにくい。


以降も、範囲を広げて出来れば壊滅したブレストの町跡を発見してほしい。

そしてブレストに砦を建設して、ダンジョンを探し、コアを破壊しなければ、いつか再び、あの悪夢のスタンピードが発生してしまうからだ。




昨日に引き続き、森の開拓。木を切り倒し、ゴーレムに切り株を持ち上げさせ、根を切って取り除く作業が続く。


午前中で学校の校庭ほどの広さが確保できたが、穴がぼこぼこ空いている。

その原因となった切り株をゴーレムに手斧を与えて、適当に砕いてもらっている。


ゴーレムは切った木の枝を払ったあとの丸太運びや、切り株の破砕など単純な労働にしか適さない。


それでも防壁の周囲に切った丸太が、防壁を囲むように積み上がっている。

砦の建設に必要なのだ。


次に切り株を手斧で破砕していくのも、人がやると手間が掛かるし、そこそこに硬い。

最終的にはもっと細かくして砦の冬場の暖房燃料にしたいのだが、ゴーレムではそこまで細かくできないし、魔法陣でも考えないうちは、破砕機などは作れない…。



さて、地面にぼこぼこ穴があいた広場に、土魔法で壁を立てる。

3mの高さでいいだろう。

学校の校庭の大きさの迷路を作るのだ。

迷路の中央には小屋を2つ。

この小屋にも屋根はない。


今日も3時過ぎに作業を終わり、見張り台から巨大迷路を上から眺める。

クラウディア士長とカトリン士長の2人に、自分が作った望遠鏡を持って来させて、迷路を見せる。


私とジャック。


マーガレットとシンシアが、それぞれペアーになり、東側の入口と西側の入口に分かれて、迷路に入っていく。


目指すは中央空間にある2軒の小屋に捕らえられた人質の救出だ。

もちろん、今は迷路にだれもいないが、いるものとして行動する。


曲がり角で、しゃがんで下から覗く。

ちらっと一瞬だけ覗く。

さっと通り過ぎながら覗く。


色々な行動パターンがあるだろう。

両端から侵入した2組の者たちを上から見る士長2人。


『ブン』剣が思い切り風切り音を立てている。

マーガレットめ!脳筋には向いていない訓練だ。


そんなこんなで、救出作戦ゴッコは終わった。

参謀本部に戻り、士長2人も混ぜて応接セットで話をする。

ここだと少佐2人は自分の事務机で参加できるからだ。


「士長、望遠鏡の意味がわかったか?空を眺める目的じゃない。例えば、今回のように2組のパーティーが人質救出のために、小屋に接近している。それを2人は見張り台から見ていた。敵を発見したら、その位置を連絡してあげればいい。」



「つまり望遠鏡は、倍率が大きければいいって事じゃない。敵の顔をアップで見たい訳じゃない。出来れば片目で望遠鏡、もう片方の目で裸眼で全景を見る事だってある。そう考えて、もう一度望遠鏡の改良を考えてくれ。兜に取り付けられる、なんていうのもいいかも。」



「そこまで小さくはできないでしょう。」


「今はそうだね。でもどんなに僅かな事でもいい。常に改良を考えてね。もしかしたら、人の命が救えるかもしれないんだ。」


「そうですね。わかりました。」


2人はどんどん大きな望遠鏡へと発展させていたが、宇宙はまだ早過ぎる。

目の前のお役立ち、実用性を考えてほしいのだ。


「見張り台が迷路の東側にあるので、中央に欲しいですね。」


「あー確かにそうだね。見張り台も一つじゃ不安だし、西側にも作ろう。」


「ありがとうございます。」


「いやいや、そう言うのを改善提案って言うんだ。とてもいい事だから、カトリンと二人で作ってみなさい。」


『あっ!しまった。』という顔をしているが、みんな一度は経験している事だ。


乗り越えなさい。


お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ