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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第48話 王族会議2


全員が問題点を共有した瞬間であった。


「だが、騎士団長のベルナーが変な動きをするとは思えんが…」


「そういう事ではないのですよ、陛下。本来は後継者であるデリンジャー王太子が騎士団長に就任していなければならないのです。」


「例えば、王妃様が人質に取られたらどうするのです。つまり王族の安全は他人任せではダメなのです。王族の指揮による王族のための騎士団でなければならないのです。」


「なるほど。」


「では、なぜ王太子を騎士団の団長にしないのです?」


私は侯爵の顔を見る。『いや、それは…』という表情だ。

王妃を見る。同じだ。


「侯爵さま。どうしていつも『失礼な!』とかおっしゃる侯爵さまが、王太子を騎士団長にしようと言わないのです?それは、王太子では無理、或いは、力不足だと考えているからでしょう?」


王太子の顔が険しくなる。


「王太子さま。今回の遠征の件も含めて、あなたは悪くないのです。」


王太子が私への好意をむき出しにした表情をしている。


「王太子さまは王立学園を卒業したばかりの16歳。要は経験不足なのです。この王宮で国王さまや王妃さまをお守りするとすれば、最適な武器は槍ではありません。それは近接戦闘の力が必要なのです。」


「訓練は学園でしてきたでしょう。必要なのは実際の戦闘経験です。北方方面軍で特別部隊を組んで戦闘経験を積みましょう。そのため、まず、現在の参謀本部を北方方面軍の場所に移転する事にしましょう。」


「これで参謀部の指揮官、マーガレット少佐は職務を継続できますから、指揮官の件は元の状態に戻るでしょう。」


「それと騎士団の団長に就任した時に信頼できる部下が必要です。現在の団長ベルナーや副団長ギュンターの息の掛かった者は信用に値しませんから。そういう意味でも、王太子は信用できる者を北方方面軍での任務期間中に見つけられればいいですね。」


「それと、ジョージ侯爵は口で王太子をかばうだけじゃなく、北方方面軍へ付いていって、実際に助けてあげてください。信用できる者は周囲に一人でも多い方がいいのですから。」



「では、王太子が騎士団長に就任し、信用のおける部下を身近に置いたとして、軍隊のトップが、誰でもいいではダメです。やはり本部長というトップは自身で押さえておくべきなのです。但し、具体的な作戦などには口出ししてはいけません。」


「それと、宰相閣下がおっしゃった、指揮官不足解消のため、指揮官を養成する必要があるでしょうね。これも北方方面軍の戦闘経験から養成するように考えましょう。」


「最後になりますが、王妃さまと侯爵さまに『良きに計らえ』という言葉を口にして頂きましたが、あれは決して言ってはいけない言葉なのです。」


王妃と侯爵は、その理由を素直に聞こうとしていた。


「王妃さまは、王太子の母であり、アンジェラ姫の母でもありますよね。でも国民からすれば、そのようには思ってはいないのです。」


「では、どのように思われているのですか?」


「国民にとって王妃さまは、『国の母』なのです。王太子や姫が子供としてかわいいのは、理解しています。でも国民の事を、自分達の事を孫のように優しく見守ってほしいと思っているのです。」


「なのに、役人に『良きに計らえ』と、任せてしまってはいけないのです。何を、いつまでに、どのようにするつもりなのか、それをしっかり役人から聞いて、それで、良いのか悪いのかを判断してほしいのです。」


「それとジョージ侯爵さまは、王妃さまのお兄様。王太子に気兼ねなく注意や指導ができる立場の方です。さきほども申し上げた通り、王太子は陛下に比べれば、判断力など劣るのは当然の事。だからこそ、侯爵さまの経験を加え、2人でひとりのようにすれば、王太子も自然と得る事は多いはずです。他人に王太子を任せてはいけません。」


「以上が、私の思う所であり、女神の知恵でもあります。よろしいですか?」


ここに居る全員が、認識を同じにできたと思う。

(女神がいう事なら…とか)


「ではフェドラ町に参謀本部と訓練施設を作ることにしましょう。」



宰相からは、具体的な用地取得など決まり次第、参謀本部の移転日程の作成に入るそうだ。

私は控室のセバスに約半年間、北方方面軍、いや、フェドラ町に移動する事になるだろうという見込みを伝え、住む屋敷の手配をお願いした。


そう言えば、サマンサ魔道具店の周辺には、誰も住んでいない貴族の屋敷がいくつかあった。

そのような貴族屋敷を借りればいいだろう。

セバスには、そう言った。


武器屋は誰もいないが、工房は使えるので便利だ。


問題は今の屋敷に誰を残すのかが問題だが、セバスはあっさりと全員で行き、全員で戻ればいいと言って笑っていた。


だがレナは今年の終了試験がまだ終わっていないのだった。



お読み頂き、ありがとうございます。

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