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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第45話 初めての実戦

平日夜の部、ここも4話程度投稿の予定です。


暇つぶしにどうぞ。


3月になった。


アリスとエリオットは、屋敷内でトレーニングをしている。

4人組の方針として、レナの学園の終了試験が終わるまでは、外に出てワガママ姫に認識されるのを防止する事にした。


そのために、レナは基本部分を終えて、サマンサの教科書を使って勉強中だ。

エリオットは逆に、魔法の勉強を始めた。

私と同じく秋には12歳になるから、問題はないと判断した。

アリスはレナに伝言鳥を教わり、使えるようになった。

加護が無くても使えたのだ。


エンジンの試作実験は、ついにアンモニアと酸素のカセットボンベを鋼鉄缶で作り、パッキンがうまく作動して、つなぐと出て、外すとガスの噴出が止まるようになり、試験を開始するのだが、何が起きるか分からないため、裏庭に作業テーブルを置いて、そこで実験をする事にした。


ジャックが警戒する中、エンジンを机の上に置き、カセットボンベをセットする。

このボンベはアンモニアも酸素も『ガスボンベ』とし、液化は封入していない。

気圧が高すぎるからだ。

ところが、考えてみると、セルモーターが無い。

従って、大昔のように、やはり、初動はシャフトを回さなければならない。


テストで使っていたシャフトを繋いで、のこぎり状にした歯の部分で引っ掛けて回し、エンジンの回転が早ければ、外れるようにしてある。


『ブルン』『ブルン』

『ブルン』『ブルン』


と何度か空回りしたあと、実際に回り始めたのだが、


『ブー』と、一定回転数で回っていて、止める手段もない。


アンモニアボンベを抜き、止めた。



まず。始動させる仕組みが必要。

次に回転数を調整する仕組みが必要であった。

最後は止める仕組みも必要だな。先は長い。


一番に欲しいのは、耕運機。

これにより農作業が改善されるだろう。

試作機は一輪車みたいなタイプだが、現実にはカセットで1時間の運転では家庭菜園だ。

当然、液化ガスを搭載して、2輪から乗用4輪まで発展させたい。


その前に、カップ麺の注文が入ってきた。

早速王太子が北方方面軍の魔物討伐に持って行きたいらしい。

3000食などというとんでもない注文だ。

いくら保存がきくと言ってもな~。

毎日150食作って20日。


1個銀貨1枚。

気持ちは分からなくもないが、カップ麺1個1000円。

王太子よ、経済感覚を身につけろ!


この日の夜、初めて形勢が逆転できた。

いつもあれこれとマリリンとふざけ合いながら楽しい夜会を過ごしているのだけど、私が疲れて少し休憩を欲しがると、結局マリリンが上になって、いわゆる騎乗位という奴で攻め立てられ、私が果ててしまうのだけれど、この夜は最後まで私がリードして終わる事ができた。

(最近は音声バリアで屋敷の皆には迷惑を掛けていないはず。)



王国歴259年4月


なんだかんだで、4月になってしまった。


マーガレット少佐が屋敷に来ていた。

玄関に出迎えに出たあと、セバスも加わり、工房へいく。


「そういえば、王太子が中型獣に有効な武器を作って欲しいと言ってきたが、今は鉄道車両の作成に全力を挙げています。と言ったら、落ち込んでいたぞ。」


マーガレットの話題にセバスが食い付いた。


「あー 北方方面軍に獣討伐に行かれるのでしたな。あの部隊には、『剣の達人』が居るという噂があります。出会えるとよろしいですな…。」


「へー 剣の達人か…」


セバスは噂されている情報にも詳しい。


「中型獣どころか、大型獣でも剣で一振りだそうです。噂だけで見た者はいないそうですが…。」


「それってやっぱり加護持ちなんですかね?」


「でしょうな。」


なぜかマーガレット少佐は考え事をしている感じだった。




手軽な農作業用手押し耕運機を開発する予定だったのだが、エンジンが大きくて、バイクのハンドルと2輪のタイヤを有したものになった。


燃料も液化アンモニアボンベにして、酸素ボンベは諦めて空気との混合に変えた。

エンジンスイッチはハンドル中央のスイッチだ。



エンジンとクラッチを乗せ、その上に液化アンモニアガスのボンベを乗せて、これをフレームで囲い、ユニット化した。


セルはゼンマイ式。

選択摺動式の直列型クラッチをつかって、3段変速+後退ができるようになった。

ハンドルレバーの左はクラッチ、右レバーはアクセル。

大型ベアリングを使用した直径1mのゴムタイヤを使用。


しかし変だ。

右レバーを握るとエンジン回転が速くなり、緩めると遅くなる。

右ハンドルのグリップをひねるとワイヤーを引っ張る構造に変更して、グリップとアクセルが連動するようになった。

レバーによって、ブレーキが掛かるようにすればいいのか。

だが、ブレーキはまだ無い。



4月半ばになり、2月から基礎体力の向上に努めてきたアリスも、筋肉痛を乗り越え、やっと短剣が持てるようになった。


どうやら女神は私にメカの知識を与える事を控え、アリスに授け始めたようで、エンジンユニットの向きを変えて、駆動力が前輪に行くように改良していた。




一方、4月に王都を出発した討伐隊の隊長(王太子)と、参謀本部のマーガレット少佐が、北方方面軍に配属される魔術師10名を率いていた。


馬車で飛ばせば5日で到着するのだが、王太子は極めて女に甘く、のんびりと移動しながら、魔術師達との遠征を楽しんでいた。


7日掛けて北方方面隊に到着した一行だが、隊長の作戦会議は特に指示もなく、ただ、特任中隊の後方から魔法鳥にて偵察を行い、中型獣、大型獣を倒す。


という説明であった。

仕方なくマーガレット少佐が、特任中隊10名が正面を、残り5名ずつが右翼と左翼を警戒、討伐する事としたらしい。



マーガレット少佐はこの地に着任または遠征に来た経験はなく、また、方面軍を始め、守備隊も北方に詳しい者がいないため、魔術師5名を1班編成として、防壁を越えたあたりから、満遍なく半円状に偵察を行い、地図上に書き込んでいく。



鉄道が開通していない現時点で、中型獣や大型獣を本格的に討伐する意義は無いため、飽くまでも実戦経験を積むだけで良い。

それは理解している筈なのだが…


今回、カールが作った糧食はあるが、防壁から近い地点ではこれを使用せず、基地からの食糧を使い、初めての野営を行った。

小さい獣や魔獣は方面軍の鋼鉄剣で両断にして、一同が初めての実戦での使用に驚いていた。


2日経過した時点で、森林の中ほどにある池、及び、洞窟を発見し、見張りのゴブリンに王太子が突撃して鋼鉄剣で両断。


ご機嫌だったのは始めだけで洞窟から出てくるゴブリンが30匹を超えたあたりで、何の指示もなく一人で後退してしまった。


マーガレット少佐は事態収拾のために、これらを切り倒したあと、生木や草を松明で燃やして煙を風魔法で中に入れ、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジをあぶり出して退治した。


すべての死体を燃やし、洞窟内の残敵、子どもゴブリンなどを掃討したのだった。



お読み頂き、ありがとうございます。


雑談:3作目ですが、いつも苦労するのが地理的な説明です。書くためには距離や環境が必要なのですが、地図は説明がむつかしいです。今回の王国は話題になっているウクライナを想定しています。黒海の南側はなんと三国時代の中国。そして東側には北米大陸を想定して書いています。

(『おいおい!』という声が聞こえて来そうですね。)

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