第44話 カップ麺
暇つぶしにどうぞ
料理人のダグと助手ハンナが厨房から出てきた。
「そういえば、ダグとハンナって夫婦なの?」
セバス「いえ、正式にはまだでございます。ただ、カール様の許可があれば、今すぐにでもという状態かと…。」
ダグ「いや、ハンナとは年が離れてますので、それほど焦ってはいません。」
「では、許可します。プロポーズは終わっていますか?」
ハンナ「プロポーズだなんて…」
セバス「むしろハンナの方が、惚れてるようですな。」
ハンナ「セバス様…」
「じゃー ダグはプロポーズの言葉を考えておいて。ハンナは2、3日の間、昼から私の手伝いをお願いします。ちょっと作りたい料理があるんです。」
夜、いつもマリリンのお世話でお風呂に入り、眠りについているが、ほとんど毎回夢を見ている気がする。もうマリリンとは新婚生活のようなものだ。あんな事やこんな事、色々な体位を試している。所詮夢だからと、何でも有りだ。
翌日、朝からいつもと同じルーティンで、顔を洗い歯を磨き、7時半に朝食を食べてから、ジャックに『アリスとエリオットを一緒に訓練させて』と言っておいた。訓練が終わったら、レナを加えて学園の受験勉強を一緒にさせる事も指示した。
私は訓練後に、昨日のエンジンのガラス版を作り、ハンドルをくるくる回して、内部がどのように動いているかを、『見える化』したのだった。単なるおもちゃなら、こんなに気軽に作れてしまう。ガラス製でも可動範囲が狭いならスプリングとして動くんだね。
「アリス、エンジンってこんな風に動くんだ。」
熱心に見ているアリス。
一方、金属製のエンジンは実際の使用に使えるように、シリンダの容量を大きくして、魔力プラグに使う銀線を作る僕。絶縁チューブはもちろんシリコーン樹脂。接点式ディストリビューターを作り、タイミングベルトでつなぐ。あとは排気パイプを下に向けて。徐々に完成に近づいていく。
早くも、昼食時間だ。
もう、私は深刻な顔をしていないので、昼食でアリス、エリオットと同じタイミングで食べている。このあとは、料理作りというより、糧食作りだ。
午後、アリスに抜けてもらって、レナの勉強はエリオットと一緒だが、アリスに言わせれば、エリオットに分からない事は無いそうだ。レナにとっては、説明をさせられる事で、再確認になっているそうだ。
私はまず、シリコーン樹脂でカップ麺のカップを作る。硬化剤を添加しているので、ゴムよりも硬いし、発砲スチロールよりも重い。そういう意味では、BIGサイズにお湯を入れたら持てないだろう。サイズを数点作って、同じく下から3cmほど、同じ樹脂で固めた容器も作る。
今度は、麺作り。助手のハンナに手伝ってもらい、小麦粉を練って板状にしてから切る。そこから、引っ張って麺にする。これをハンナが見ていてハンナ流に作り始めた。
私は、自分が食べたい麺の太さに、麺を練り練りして作りだす。ハンナにも同じことを要求する。出来上がったら、下から3cm底上げした容器に入れて、上にも空間があるような量で麺を切ってしまう。
ある程度温風で硬さが出てきたら、油で揚げて空容器に入れておく。私の作ったのが3つ。アリスも、ハンナも3つ。ここに塩、こしょう、肉の乾燥させた物3つを入れて、熱湯を入れて、お皿でふたをする。麺の状態は容器が透明なので、横から見えるのだ。
時間を測って、出来た物から味見する。『うん』ほぼ味がしないが、麺自体は悪くない。
ここまでやって、ハンナは何を作ろうとしているのかを理解したようだ。早い話、戦闘に行った先の森の中で食べる物が、ひどすぎるのだ。
ハンナには、温かいスープとして利用できるのが一番の目的。次に麺がある程度の栄養となり油分も少しあるので、それほど量は重要では無い。欲しいならもう一つ食べればいいのだ。非常食として、軍隊の糧食のスープとしてのカップ麺。
コンセプトを聞いて、ハンナは粉末材料を使ってスープを作り始めた。そりゃそうだ。私はぶっつけ本番でスープを作ろうとしていたのだ。
アリスも楽しそうに、ハンナの作業をみている。
では、私達は麺を作ろう。どの太さが良かったか。太いほど時間が掛かる。細いとすぐに伸びる。アリスお勧めの太さに決定して、ありったけの小麦粉で麺を作り、カップ容器で形を整え、油で揚げていく。
できた麺を、シリコーン樹脂で薄く包んでいく。この作業が一番大変なのだ。ある程度で油を交換しなくてはならないし、暑い。
3時の休憩をはさんで、カップ作りに入る。これは楽勝。あとは蓋をどうしようか。シリコーン樹脂で丸く薄い蓋を作り、あとで糊で付けよう。
5時には、カップ麺が150個以上出来ていた。今日の夕食は試食会を兼ねる事になったが、私とアリスは、もうカップ麺は当分見たくなかった。残念な事だが、透明なカップなので油が紫外線で劣化しやすいだろうと判断し、全て木箱に入れて、地下室で冷暗所保管にした。
研究所に伝言鳥を飛ばして、マーガレット少佐とシンシア少佐、そしてダグザお爺さんを呼んで、試食会を開催した。もう見たくもなかったのだが、招待客の前で食べないわけにはいかない。だが、流石ハンナ。スープの味が絶品だった。これでいくら儲かるだろうか。
サンプルを宰相閣下用に10個渡して、交渉はダグザお爺さんとするように言った。もちろん一般販売はしない。当分は軍用の糧食だ。
マーガレット少佐とシンシア少佐は、あの事件以来、私が出勤していないので、気を揉んでいたようだったので、ガラスのエンジン模型を見せて、完成するまで出勤はしないと告げておいた。
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