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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第40話 マリリン


----- 王都の屋敷 -----


「ただいま戻りました。」


「お帰りなさいませ。」


セバスをはじめ、みんなに迷惑を掛けてしまった。

特にアリスとマリリンには、会ったばかりなので心配を掛けてしまった。

いかにマリリンが居ても、私が気を失ってしまっては、どうにもならない事がわかった。


「とりあえず、この半ズボンを何とかしたいんですが…」


そう言うと、『行きましょう』と、なぜかみんなが一斉に私の部屋に向かっているみたいだ。


「私はみんなの着せ替え人形になるつもりは無いよ。入室はエリオットだけ許可する。」


「はい!」


そんなこんなで、部屋には色々な服が置いてあったが、ズボンが半ズボンに加工されている。

まー身長が伸びたのだろうから、それは分かるが…。


そうだ。身長を測ろう。


台に乗って、エリオットに見てもらう。

165cmになっていた。

23cmアップ。


姿見は無いが、洗面所に普通の鏡がある。

子供から少女の顔になっていたが、少し目が大きくなってる気がする。

全体的な太さは変わっていないが、肌が白くなってしまった。


『のっぽ』という感じだ。


どんどん男らしさが失われていく。

腕立て伏せ、腹筋をやってみるが、変わってはいない。

つまり、筋力は落ちていないのだ。


「セバスを呼んで。」


「はい。ただいま。」


扉の向こう側で待機していたようで、すぐに部屋に入ってきた。


「なんでしょう。」


「悪いけど、こんな可愛い半ズボンなんて穿けない。今から王都の服屋、靴屋に、片っ端から行きたい。ジャックに御者、エリオットとアリスは買い物に付き合ってもらえませんか? 私は金貨6万枚以上持ってるから、お金は心配いらない。」


同じく扉の所で控えていたジャックが


「よろこんでお付き合いします。」



バタバタしたけど、ジャックは服屋の場所を調べてくれたみたいで、次々に店に入り、セバスのようなキリッとした男を目指して服を買った。


仕立て物は出来次第に送ってもらう事にして、体に合うものはその場で。


ただ、今の体は細すぎる。

いくら何でももう少し肉が付くだろうという推測のもと、横幅には余裕を持たせた。

靴は仕立てが多いのだが、既製品も基本は紐なので、履く事はできる。


そして、最後は喫茶店でお茶を飲むことにした。


「ジャック、エリオット、アリス。3人は私の年齢に近い仲間だ。これからも頼りにしている。決して離さない。何があってもだよ。いいね。」


「ありがとうございます」




夜はマリリンが世話係をする事になっていた。

そこで私はマリリンに全てさせてみようと考えた。


「マリリン、お茶を入れて。」


「はい。ただいま。」


「お風呂の準備をしてね。」


「はい。分かりました。」


私はソファーでマリリンの入れた紅茶を初めて飲んだ。

それは確かに、メイドとして訓練された入れ方とは違うのだろう。

だが『おいしい』と感謝を込めて、口にしよう。


「マリリンの入れたお茶、おいしいよ。」


浴室から『ありがとうございます』と声が響く。


それにしても今日はひどく忙しい一日だったけど、自分の体のサイズを買った服から理解した。

クローゼットの中に残っているのは、新しく生まれ変わった下着だけだ。

生前はブリーフ派だったのだが、この世界には無い。


しかも、ウォシュレットも無いのだ。

まーお尻を拭くのがロープじゃなくて良かったが…。


「カール様、お風呂の準備ができました。」


「はい。」


そう言って、呼ばれた浴室に向かう。

浴室ではマリリンがズボンを下ろし、シャツを脱がせ、そのたびに手際よく、かごの中にさっと畳んでおいてゆく。

新しい下着とシャツが隣のかごに見えている。

最後にパンツは後ろから脱がしてくれた。


165cmの大きさに急成長したのだが、43歳だった私には、まだあまり大きく感じなかった。

最後に自分で靴下を脱いで、風呂場で湯をかぶってから、湯舟に浸かった。

湯をかぶるという習慣を知らないマリリンが、『きゃっ』と小さな悲鳴を上げたが、それはご愛敬だ。


マリリンは、レナと同じく、透けて見えるパジャマみたいな下着とパンツ姿だった。

湯舟に両腕を掛けて、以前はここに手を掛けていた事を思い出す。


マリリンは私の体を手で触れる。


「それって、どういう意味?」


と聞いた。つまり石鹸で洗っている訳でもなく、ただ彼女の手の平で、私のからだを撫でているだけなのだ。


マリリンは首を傾げて


「意味はありません。ただ、愛しい、そんな気持ちの表現です。」


「そうなのか。ああ、続けて。ところで里には女の子が少ないそうですね。」


「2年前に東の国に『周辺隊』として2組、レナさんやターニャさんと同じ年の女の子が送られたそうです。」


「そうなんだ。どうして?」


「里の権力者は、女の子を差し出して何らかの約束をもらっているのではないですか。」


「そうなのか。じゃ、僕は体を洗うから。マリリンは湯舟に浸かって。」


躊躇ちゅうちょするマリリンを無視して、私はタオルに石鹸を付けて体をこする。

自分の体の大きさを確認しながら…感覚を感じながら…自分の足、こんなに長くなかったな~。

力を入れてみるが、やっぱりお腹は硬くならない。


でも贅肉ぜいにくが無いからいいよね。


「マリリン。僕は細長くなったね。まるで竹の子だ。」


「……」


マリリンは、裸になって湯舟に浸かっていた。

さっきのマリリンのように、湯舟の中に手を入れて、マリリンの体に手を触れる…お腹から胸に向かって…そこにはアリスよりも膨らんだ立派な乳房がある。


「どんな気持ち?」


マリリンは私が湯舟に向かって姿勢を変えた時から、顔が少し赤かった。

そしてしばらく手を湯舟の端に置いていたのだが、私が湯舟の中に手を入れると、彼女自身の手が『こうするのですよ』と教えるように、自分の胸をやさしく触るのだった。


「ああ…とても上手ですよ…。」


私はさっさと浴室を出て体を拭き、パンツを穿いてベッドにもぐりこむ。


「マリリン、早く来ないと先に寝るよ」


と宣言しておく。

これで眠ってしまっても問題ないだろう。

今夜のお風呂タイムは満足している。

今日のようなペースで一緒にお風呂に入っていると大人になった気がする。


眠り始めた頃、マリリンが私の背中に寄り添ってきた。

今はいいけど、夏は暑いかも。

そんな事を考えながら、もう振り返るのも面倒な気がして、眠ってしまった。




お読み頂き、ありがとうございます。

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