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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第39話 神界のアラート


『ピー ピー ピー ピー 』


神界にアラート音が鳴り響く。


女神が慌てて、表示パネルのところにやって来て、何やら操作している。

音は鳴りやんだが、赤いアラートの表示は点滅状態のままだ。


パネルに様々な情報が表示されているが、映像は出ていない。


「ふー、おかしいなー。悩んでいたから、ちょっと閃きや、思い出した風に化学という分野の知識を注入しただけなのに…パネルでは、もう魔力切れは解消されてるし、脳機能が低下する要因はない。やっぱり、カール君の成長が悪過ぎて、またもや、脳がパンク寸前のようだ。」


「そうだ!成長が遅すぎるんだよ。助けてあげる分はいいよね。うん、いい。すごくいい。えーと、14歳だっけ。じゃー成長加速を選んで、成長方向、又は、目標?…うわー良く分からない項目が一杯…、目標にしよう。タイプは、私好みでいいよね。相思相愛ってか。」


「では、実行!おーおーおーおー。142cmから160cm超え!おーおーおー。165cmか。まーいい線いったんじゃない。これで脳の容量も大幅UPだね。じゃ、『化学合成物質の構造』とかいう知識もコピーしておいてあげよう。これで、悩まず、すくすく育ってよ。」



教会で目を覚ましたカール君。

そこに男神がやって来た。


「おい!アラートが掛かってるじゃないか。また何かやらかしたな?」


「いえ、カール君の成長が遅くて、また脳の容量不足が発生したみたいなんです。」


「嘘を言うんじゃない。アラートは神の行いが原因で発生するトラブルの警告だ。カール君自身に問題があったなら、彼が死んでもアラートは鳴らない。」


「つまり、君の行動に問題があったと判断されたんだよ。正直に話すんだ。さもないとアラート表示を消す協力はしないからな。」


「えー、カール君が悩んでいたから、ちょっとした閃きとかにして、ほんの少しだけ知識をあげただけなのに、彼の成長が少な過ぎて脳がもう悲鳴を上げちゃって…」


「それで…?」


「だから、私は彼の年齢に合わせて、成長を助けたら、ほら、こんなに元気になったでしょう?」



モニターを見ながら、男神は渋い表情を見せた。


「成長は設定が難しくて、何度も『試行シミュレーション』しないと、思った結果にはならなかったと思うが、これは…」


「あー、目標設定で行いました。」


「彼のパーソナルデータに見合う目標?」


「いえ、私の好きなキャラクターです。『月に代わってお仕置きよ』って、可愛く悪を退治するキャラクターですよ。」


「おい!何度も言ってるだろうが、カール君は男の子だぞ。それにこの惑星の月なんて幻影だし。」


「いいじゃないですか。私が気に入っているんですから。」



「はー?地上の人間と駆け落ちするフリアノンもダメだったが、フィアナ、お前も相当ポンコツだな。まー、カールはまだ11歳だ。取返しは効くだろう。精々応援だけはしてやるが…。」



(あれ?カール君11歳だったのか…まー 3歳おまけって事で、感謝してね!)


「この際だから言っておく。たまたま『転生者の受け入れ』を申請して許可が下りたのはいいが、勝手に地球の魂をこの世界に転生させたのが問題の発端だったのだ。」


「地球が話題だったのは35憶ほどだった人類が、今では77憶にもなって、全く魂が足りずに、高等動物の魂まで人類に使い、それが原因で独裁だの生物兵器だのと、既に手の施しようが無くなり担当神が逃げたからだ。」


「だから私は、もらった魂を捨てて、神の恩恵を受けた輪廻転生候補者っていう資料を参考にして、優秀な魂が浮いて来た所を、『さっ』とすくって持って来たんじゃありませんか。優秀な魂ですよ?」


「何言ってんだ。偶然浮かんできただけだろう?それに、その行為は泥棒って言うんだぞ。」


「初めてだったから、とか、良く知らないうちに、とか、地球の神に言い訳するのがどれだけ大変だったか…、私の注意をもっと真剣に受け止めてもらいたいものだ。」


「確かに本人は優秀だが、一族の恩人だったなど単なる偶然なのに、まるで『神の御業』とまで言われて調子に乗ってるから、折角の転生者を殺してしまう一歩手前のミスをするんだ。以降は『成長』の使用は禁止だ。記憶消去だけにしなさい。」


「はい先輩。ご面倒をお掛けします。」


(それにしてもカール君が可哀想だな。あれじゃ彼女もできないだろう。俺も何か面白い事がしたいなー)



------ 地上では -----


その頃、地上ではジャックが新しい服を屋敷に取りに来ていたが、142cmのカール用の服は、成長を見込んでいても165cmの今、着られる服ではない。

急遽、セバスは縫製ができる屋敷の人間に工夫を考えさせている。


「とりあえずジャック、14歳用くらいの服を王都の店で適当に買って、カール様を迎えに行ってくれ。いつまでも待たせる訳にもいかん。ここに戻りさえすれば、体の寸法に合わせながら、服は用意できる。」


「へい承知。」


そう言って、ジャックは馬車を走らせる。実際に自分の目で見たジャックはともかく、他の屋敷のメンバーは想像が付かなかった。


「とにかく教会で、成長が阻害される何かの要因が解かれたのだろうとの見解だ。もう心配はいらないから、各自、自分のできる事をやりなさい。それと昼食は消化のよいものを頼むぞ、ダグ。」


「はい。分かっております。」


「ターニャ。お前はメイドとして、お世話係として良く務めている。だが共に寝所に入れないとなると、昼だけの担当になるしかないだろう。アリスと二人でカール様とマリリン様のお世話をしてくれ。」


「はい。分かっています。」



「アリス、エリオット。お前たちは今後、カール様が一人でいる事がないよう、お邪魔にならない程度に一緒にいてくれ。」


「今回の件は、わがまま姫の事もあり、注意を全て外に向けていた事が原因だ。今後は、警備体制を見直し、内外ともに注意を払うことで再発防止としたい。良いな。」


「はい。」


「まもなくカール様が屋敷に戻ってくるぞ! 回復祝いだ。明るい顔でお迎えしよう。」




お読み頂き、ありがとうございます。

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