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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第37話 モテ期到来か?


王国歴 259年2月第2週


セバスは以前に1通の手紙を里に出していた。


「カール様は王国軍中佐であり、資金も潤沢に(現状金貨6万枚以上)持っている事から、屋敷の間借り人という設定は不自然です。次に屋敷所有者のお嬢様がご学友であるという設定では、カール様より立場が上になり、親しみは湧かないようです。従って、カール様は屋敷の相続人という設定に変え、ご学友は旧王都のお嬢さんを預かっている設定にする事をご提案致します。」


「また、身元調査される事を想定し、屋敷の税務登記を実際にカール様に変更し、税もカール様からお支払い頂く事も合わせ、ご提案いたします。」


はやい話が王都の屋敷を、長男一族からカールに変更、プレゼントしてしまえ、と言っているのだ。

長老としては、所詮、長男一族の名義であり、腹は痛まない。

むしろ税金は不要になるのだから、承諾するのに決まっていた。



屋敷に入ると新しいメイドが2人到着していた。

里での評判なんて信用はしていないが、一人の女の子は小柄なタイプの白人だった。

もう一人は凄い色気のある美女だった。


色白の女の子から、


「カール様、初めてお目に掛かります。名は持っておりません。どうぞ名をお与えください。」


「アリスはどうかな。」


「わたくし、メイドのアリスです。12歳です。」


そして、皆が注目する美女が


「カール様、初めてお目に掛かります。名は持っておりません。どうぞ名をお与えください。」


「マリリンはどうかな。」


「わたくし、夜のメイドのマリリンです。20歳です。」


思わずジャックが『ゴクン』とつばを飲み込む音を立てた。




「アリスの得意な事って、何かあるかな?」


「里ではいつも室内で本を読んでいました。いけない事ですが、魔法遊びも。」


「魔法ってどんな事?僕はこんな物を作っているんだけど。」


そう言って、前回、王都の教会に寄進したフィアナ女神像(ガラス版)を渡した。


すると、


「うわー、可愛いですねー。」


そう言って、上から下から横からと、クルクル回して眺めていた。


「少し変えてもいいですか?」


と聞いてきたので、『もちろん』と言うと、像が『ぐにゃり』と変形し、アリスの裸像に変わっていく。


確かに彼女は白人なので、自分の事を連想したのかも知れない。

それにしても、胸がCカップほど有って、ヒップも大人の曲線を有していた。


「うわーやったー! 大好きー!」


と誤解を招く発言をしてしまった。


これで仕事を一人でしなくても良くなる。

と言う意味なのだが、言ったあとで、ちょっと後悔しながらターニャを見ると、思った通り『激おこ』状態だった。


「はしたない!」


「いや、違うってば。これから、アリスがいれば、仕事を一人でしなくても良くなると言う意味なんだ。」


そう言うと、アリスが


「ごめんなさい。本当は、これくらいです。」


そう言って、胸をBカップに、ヒップを少し小さめに変形したのだった。


思わずジャックが

「フォローになってねーな。」


といい、料理人のダグが


「火に油」


助手のハンナは


「破れ鍋にとじ蓋」


などと、好き勝手な事を言っていた。

それでも、これは思わぬ拾い物だ。

いや、助け舟だ。



「アリス。みんな好きな事を言っているけど、屋敷の者一同、アリスを歓迎する。これから、ここにいるのはみんな家族になろうと努力している者達だ。よろしくね。」


「マリリンの得意な事って、何かあるかな?」


「私は回復師。ご主人と定めし方と一夜を共にすることで、いかなる怪我、病気、疲労も回復して差し上げます。但し、その分のお情けを頂きとう存じます。」


全員が沈黙していたのだが、そこへ、セバスとレナが屋敷に戻ってきた。


「おお、そなたは…ようこそカール邸にお越し頂き、感謝いたします。」


「セバス殿…わたくしマリリン、長年求めておりました主に、やっとめぐり会う事が出来ました。以後、よろしくお願いいたします。」


「マリリンさん、カール様の事、よろしくお願いします。」


「皆の者、知らぬ者もいるだろうから、説明をしておく。このマリリン殿は里には居たが、里の生まれではない。ある者はこの美貌に、ある者はこの能力に惹かれ、マリリン殿を追いかけたのだ。各国を転々と逃げた結果、我が里に隠れたのだ。以降は誰とも口を利かず今日まで隠れ続けていたはず。」



「先日、長老の遣いが来まして、カール様の加護の事を伝えに来たのです。3つの加護を持つ、それは間違いなく神に愛されている証拠。裏を返せば災いを招く事も必定。そうであれば、里で朽ち果てるよりカール様の元で、この命を使いたいと思ったのです。」


「皆様には、ひとつだけ。わたくし、自由に主の所へ行けるのです。もし、寝室に私が居なくとも、心配はなさらないでください。カール様、これを。」


そう言って渡されたのは、幅が6cmほどの腕輪であった。


マリリンが頷くので利き腕にはめてみた。

すると、マリリンが私の右腕を、柔らかい手で持ち上げ、腕輪に軽くキスをしたところ、スッと透明になり縮んで私の腕に入れ墨のように入っていった。


その模様は、私が見た事のある、『転送』の魔法陣だった。


「こ、これは転送の魔法陣!」


マリリンは驚いて


「カール様は魔法陣が読めるのですか?」


「ああ、読める。実は5歳の時、神殿で女神だけでなく、男神さまから魔法陣の勉強ができるようにと、指輪を頂いたんだ。その時、いずれ魔法陣の事を助けてくれる者と巡り合えるであろうと言われていたんだ。」


「ううう…神が…この汚れたわたくしを…カール様に…引き合わせてくれたのですね…。ううう。」


マリリンが泣き崩れてしまった。


セバスによれば、マリリンは各地の権力者に追われ、ある時には監禁され、強姦され、傷つけられてきたそうだ。


だが、彼女の術は魔術ではなかった。

言わば『慈悲』のようなものらしい。

彼女を労わる心を持てば、その心が反射するように、その者を癒すそうだ。


マリリンが突然、自身の左腕に噛み付いた。

まるで噛み千切らんとするかのように。


「やめなさい!いくら何でもやり過ぎだ!」


怒った私にマリリンが左腕を差し出した。

ひどい歯型が付いて、皮膚にも皮下出血が見て取れる。

その腕を見ながら『かわいそうに…』とやさしく手を添えると、みるみるうちに、傷が癒えてゆく。


「カール様、体が光ってます…」


どうやら、私にも癒しが届いているようだが、魔力と違って神経が刺激されない分、本人には分からないのだ。


「マリリン、つらい事が一杯あったんだね。もう、こんな傷は無い?」


「今夜、確かめてくださいね。」


そう優しい声で言うと、女性陣はみんな顔が赤くなった。


『ごくん』


再びジャックの唾を飲み込む音がした。




お読み頂き、ありがとうございます。

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