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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第31話 第2期活動方針


王国歴 259年1月第1週


新しい年を迎えたのだが、この地は特別寒くはない。


北方方面軍は、王都での訓練を終えて帰っていった。

新年早々に、私は中佐に昇任されて給料があがった。

どうやら経済政策の提案が功を奏し、国王に認められたらしい。

勲章やら爵位やらと、宰相は言っていたが、


「11歳の男の子が喜ぶと思います?」

と聞いてみた。


「んー」


「閣下は11歳の時、何が欲しかったのですか?」


「んー」


「もう少し考えてみましょうね。」


と言って、帰ってきた。


欲しいのは夢だろう。

夢!希望だろう 希望!


早く男らしくなりたい!

(つい、叫んでしまった。)



相変わらず、マーガレット少佐が護衛兼、御者をして迎えに来てくれている。

12月半ばから1月半ばまでは学園も鉱山も休みなのだ。

今頃レナはエリオットの特訓を受けているはずだ。

1年生として進級してもらわないと困るからね。


参謀部棟の1階に、情報部も研究所も引っ越して事務室は一つになった。

大企業のフロアーのように、管理職の机が窓際に並ぶ。


参謀部マーガレット少佐、情報部シンシア少佐、研究所カール中佐。

シンシアの席が中央なのは、この部署に職員がいないので、応接セットがここに置けるからだ。


これから必要なのは、誰もが利用可能な安価な都市間輸送手段。

という事は、慣性力を利用した鉄道輸送になる。

これから取る予定の北部の食肉輸送に使うのだから優先路線は北部~王都間輸送という事だ。



---- 第2期 研究所活動方針 -----


グランデ王国の現状の問題点

1項目目

・食肉の確保:

北部地域の魔獣討伐による食材確保

魔獣解体手段の検討

・食肉の冷蔵保存

  魔獣未加工品の保存

  食材加工品の保存

・食肉の輸送

  鉄道敷設による大量輸送:第1期工事 北部~王都


2項目目

・鉄道敷設ルートの検討

参謀部は立体図に基づき、平坦な直線的経路の検討

  工区を分割してコンクリートによる土台工事を行う


3項目目

・鉄道機関部の設計、製造

・貨物列車の設計、製造


実施施策の詳細については、方針の裁可を頂いた後に、予算申請書とともに提出の予定。


以上 カール・ラングリッジ


---- ----


第2期の活動方針を作成したので、マーガレット少佐に宰相あてに持って行ってもらったが、面談は午後以降にお願いした。



なんだか、自分でブラックな環境に身を置いている気がする。

まだ、鉄道の駆動方式さえアイデアが浮かんでいない。

でも非常に大きなトルクが必要なのは分かるのだが…。



「明後日、魔術師の新人が研究所に10名着任します。名簿はこれです。」


そう言って、シンシアが1枚の紙をくれた。


「マーガレットの所は?」


「私のところも、同じく明後日着任させると本部長はおっしゃっていた。」


「9月に入学して、8月に卒業でしょ?どうして今頃?」



「8月に魔術師団の入団審査があって、第1魔術師団は今年、補充だけなので7名。貴族なので全員が婚姻による退団なのだ。残りが参謀本部という訳だが、本部長が張り切って、方面軍採用が10名、参謀部採用が10名、研究所採用が10名の30名だ。」


シンシアが補足説明をしてくれる。


「魔術師団の入団後は、本部で貴族対応研修や魔法研修で9月から11月の3か月研修があります。12月から本部長が北方部隊配属用の選別に力を入れて、魔法鳥だけじゃなく、自己防衛のための魔法訓練もしたのですよ。そして成績順に10名が方面軍に…」



「なるほど…で、残りが参謀部。そして更に残りが研究所ってわけだな。舐められたものだな。」


「いえ、研究所は中佐の力で成り立っていると思われているのです。事実、そうでしょうけど…。だから、多少実力が劣っても命に別状はないというか…そういう事ですよ。」


「まー 確かに、基本は内勤だからな…。」


「座ってもいいか?」


応接セットの窓側にシンシアの机があって、ティーセットはその机の後ろ側にあるから、どうしてもシンシアは給仕係になってしまう。


応接セットのいつもの席は、窓側にシンシア、廊下側が私であった。

その私側にマーガレットが座ってきた。


貴族の女性が男性の隣に座るのは珍しいのだが、彼女が私の護衛任務の時は、常に横にいる事が多い。


だが、2人用ソファーの場合には座席が沈み込んで、どうしても距離が近くなってしまうので、いつも彼女は立っている事が多かったのだ。


だが、これほど近くに座ると身長差が否応なしに目に飛び込んでくる。


姿勢のいい彼女に対し、背もたれに体重を預けてしまう11歳。

彼女の二の腕が見えるのだ。

いや、二の腕と背中しか見えないのだ。


ここにいる彼女は最近フルプレートの鎧を付けなくなったし、護衛任務でも、いわゆるビキニアーマーを服の上から付けるだけだ。


マーガレットの背中をじっと見ていた私を観察しているのは、紅茶をマーガレットに渡したシンシアだった。


姿勢を正した私が、マーガレットの横顔を見上げて


「僕はマーガレットほど、大きくなれるんだろうか?」と言ってみせた。


無表情だったシンシアが『そういう事だったのかー』。という笑顔になって


「私もカール君も、多分無理だと思うな」と言った。


(シンシアは背の高さも胸の大きさも、お姉さんには追い付かない気がする)


それにしても、マーガレットの接近が面倒くさいのだ。


「そろそろ始業時刻だな。研究所の職員に話しがあるから付き合って!」


そう言って、旧研究棟1階の事務室に行く。


学校の校舎として建てられたこの建物は、長さ150mほどの長い建物だから1教室分を化学合成に、その隣を事務室に使っていた。


長い建物の反対側(東端)には、工房の溶解釜、回転式グラインダー、金床という形にしている。


もう1セットの工房設備は、元情報部の建屋1階に同様の配置にしてあるのは今後のためだ。



お読み頂き、ありがとうございます。

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