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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第25話 襲撃


屋敷の体勢が整った事を受け、8月の最終週になって、学園長の交代が発表された。


国王の指示で来年、学園長が変わるという事は、一部の王宮の者から関係者には伝えられていた。


面白いもので、学園長など単なる名誉職。

これといった権力もなく大したコネも無いのだが、国王が直接口を出す職か?と注目され、学園の職員達が学園長選出に意欲を示し始めていた。


貴族達に賄賂わいろを払い情報を収集する者や学園長を自分達の都合の良い人物に就任させようと、にわかに抵抗勢力が出来たのだが、カールの学園入学に間に合うようにと国王の突然の思い付きで、学園長は解雇され宰相が兼務する事が発表された。



そもそも、王立学園の前身は『フリアノン学園』。


貴族の女の子を、『都合の良い女』にするためにしつける所だった筈だ。

だが、校名にあるように、女神には様々な力があって、出来れば美貌を手に入れ、出来れば魔術を自在に操れ、出来れば非の打ちどころの無い息子を産み育ててくれ、と欲張ったために、発展してきたのだろう。


だからサマンサの教科書では、

歴史:王族のプロパガンダ科目

教養:貴族の礼儀作法と言葉使い

算数:四則演算の基礎

魔術、という科目になっていたのだ。


だが、フリアノンの信用失墜(人間との不倫という噂)を受け、男女共学として、名称も王立学園にかわったのだ。

だが私はこれら貴族の教育には関心が無い。

ただ、男子が戦闘術で、女子が魔術という教育内容が気に入らないだけだった。




日曜日、学友候補の模擬戦闘試合を行って、各自の能力を見る機会を得た。

ソフィア(1年先輩役)、オリビア、デイジーの3人による総当たり。

場所は魔術師団の訓練場を借りた。


3人共に、私との接点はほぼ無くて、3人の感情も全く想像できなかったが、ともかく、第1試合、ソフィア対オリビア戦が始まった。

審判は会場を貸してくれたマーガレットだ。



開始と同時にソフィアが細ナイフを投擲する。

足元を狙ったナイフをオリビアが飛び上がって回避すると、それが狙いだったようで、短剣で下から切り上げていく。


オリビアは空中では、躱す事もできない。

同じく短剣を合わすが、空中では力が入らない。

押し込まれ、体勢を崩し、着地と同時にソフィアの蹴りを受けて、体ごと飛ばされる。


マーガレット

「それまで!」


「まだ戦えます。」


降伏するまでは決着は付いていない。

そう言いたいだろうソフィアの表情。


「護衛失格だ。勝ち負けではない。」



『その通り!』セバスとジャック、私、レナの4人全員がハモった。


次は、オリビアとデイジー戦だ。10分の休憩のあと、開始になる。


開始とともに、オリビアが左右へのステップで接近して短剣を振るう。

『カキン』そしてすぐに離れる。横に動いてデイジーはただ短剣を構えているだけだ。


再びオリビアが接近して、大きく上段から切る!と見せて、胴のあたりに鋭く切り込む。

『ドン』。

鈍い音と共に、デイジーは屈んでしまった。


マーガレット

「それまで!」


本来はソフィア対デイジー戦があったのだが、デイジーが格下なのが判明したため、ここで終了とした。

デイジーが魔術師団からポーションを飲まされていた。


4人で結果について話し合う。

はっきり言って、デイジーは戦力外だ。

オリビアも囮には成れても、私を守れると思えない。

ここまで言うと、


「でも、それを言えるのはカール様だからでしょう。」


「どういう意味?」


「王太子の時は、この戦力でも十分と言われてやしたぜ。」


「そうであったな。」


「そうでしたね…。」


「なんてこった。」


そんな事を観覧席で話をしていたら、彼女たちが『屋敷へ戻る』と言ってきた。

3人で固まって帰れば、問題はないだろうと許可を出した。

ソフィアも屋敷までは同行するようだ。


ソフィアとオリビア、デイジーの3人が、仲良く話をしながら屋敷へ向かって歩いていた。


「ソフィアさんは強いですね。私なんか全く歯が立ちません。」


「いいえ、それほど差が有る訳じゃないと思うわ。私は2年前の帝国行きの候補になって、急遽、特訓を受けたから、その経験の差なんだと思う。」


ソフィアとオリビアが並んで歩いている所に、前方右手の路地から男がソフィア目掛けて切り込んで来た。悲鳴を上げる事もなく、とっさにソフィアが短剣で防ぐ。


『ガキン!』


すると、後ろからナイフが腰に刺さる。


「う!」


なんとデイジーがソフィアの右後ろに体当たりをするように、体重を掛けてナイフを突き立てたのだった。


「何をするのよ!」


オリビアが暴漢から一定距離を取るように後ろに下がり、デイジーに抗議の声を上げた時、もう一人の暴漢がオリビアの背後から袈裟切りにしていた。


「ぎゃー」


そして、剣を合わせていたソフィアも、剣を支えきれずに、胸を貫かれていた。


デイジーが自分の左腕を、自らのナイフで横に切り割くが、手加減してしまったために、それ程の深手にはなっていない。


「キャー!」


デイジーは悲鳴を上げながら、屋敷方向に歩くが、悲鳴を聞いた王都第3守備隊によって保護された。



屋敷に戻ったカール達4人が、屋敷の入口付近で待っていた守備隊2人とマーガレットを発見する。


「訓練場から屋敷に帰る途中、あの訓練戦闘をした娘達が襲われ、2名が死亡、1名が軽傷を負った。」


あまりに簡潔なマーガレットの状況説明に、守備隊の人が補足説明をした。


「現在、守備隊第3詰所で現場検証と負傷者からの事情聴取を行っております。」



「宰相には伝言鳥を飛ばしてあるが、特に返事はない」


私に護衛を付けてくれた宰相の先見の明には感心はするが、王族の暴挙なら所詮隠蔽されるのがオチか。


「そうですか。対応ありがとうございます。」



「では我々はこれで。報告は追って少佐殿へ。」


守備隊が帰っていく。


「では、私もこれで…」



「いや、現状までの所を少し…なかで話ができますか?」


マーガレットを引き留め、せめて詳しい状況は知りたい。


「うむ。構わんが…」



お読みいただき、ありがとうございます。

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