第23話 屋敷の者たち
気が付けば夜中のようだ。
金持ちの屋敷にはある魔道具『掛け時計』。
1時30分。
見れば、ベッドの足元あたりにレナが突っ伏して寝ている。
ゆっくりと上半身を起こして…
(腹筋運動の成果だ!)
レナの頭を撫でる。
私はいたずらが大好きだ。
そーっと、掛け布団から足を抜く。
ゆっくりと、音を立てないように、隣の浴室に行き、バスタブに水魔法で水を張る。
中に手を入れ、水の分子が活発に動いているイメージを湯舟一杯に広げて待つ。
既に魔力は回復しているようだ。
しばらくするとぬるくなり、さらに適温になってきた。
面白い事に、『上側だけ熱くなってかき混ぜる』という事は必要なくて、魔力で温めるこの方法では、上も下も関係なく同じように温かくなる。
逆に、ゆっくりと水分子を固定するイメージだと、氷点に近づいてゆくのだろう。
何はともあれ、久々のお風呂だ!一人用の足の付いた湯舟。
そしてこの風呂場には、小学校で使う身長計があった。
なんと、私の身長は、まだ138cm!10歳で138cm。
大切な事なので2回言いました。
悲しむべきですが、湯舟は私には十分な大きさでした。
熱めにしたつもりだったけど、陶器でできたこの湯舟、結構冷めるのが早い。
「あー 気持ちいい。」
「レナ、入ります」
(いや、いいって言ってないし…。)
レナは濡れてもいいような薄い下着姿で、パンツは穿いているのが透けて見えるが、上は何も付けていないようで、乳首が透けて見える。
「いらっしゃい。」
湯舟の横に座ったので、今は顔しか見えない。
「怒らないんですね。」
「だって、一人じゃ寂しいし…。」
レナは横から手を入れて、私の体の上で湯を左右にかいている。
一瞬、胸か息子を触られるのか、と覚悟したところだった。
(フェイント攻撃か?)などと考えてみるが、私の息子はまだ反応しない気がする。
「レナは何歳?」
「12歳です。」
「何月生まれなの?」
「4月です。」
「1つ半 年上か…」
「里の長老様の話では、年下では幼な過ぎるし、大人では共感できないから、私がちょうどいいんだって言ってましたけど…」
「今夜、一緒にねようね。」
「…はい。」
そう言って恥かしそうに俯いた。
(勘違いしてるかも…)
「僕はまだできないけど…多分12歳くらいになったらできると思う。その時には言うから、してくれる?」
「えっ、私が?」
「えっ、僕したこと無いよ!」
「私もないですよ!」
「でも、習ってきたんでしょ?」
「…はい。…でも自信ないなー」
「まー でもあと1年と2か月あるし…その時レナはまだ13歳かな?」
「そうですねー。まーそれまでにふたりで練習しましょ!」
「でも楽しみだなー レナの胸、どこまで大きくなるかなー」
「……カール様、本当に私でもいいんですか?」
「レナこそ、僕を男にする役っていいのかな。」
「だって、カール様は加護3つも持ってるんですよ!加護は子供に半々の確率で引き継げるって話だし、3つもあれば、どれかは引き継げるでしょ。そんな相手なんていないですよ。」
「私達、どうせどこかの貴族の妾さんになって、子供を持ったら里に帰って産むんです。それが使命なんです。里に加護持ちの子供がいたら、それだけで里はやっていけるって。」
「それにカール様は、『ラングリッジ姓』なんでしょ?セバス様が、また機会を見て話をするって言ってましたけど、それも理由の一つなんです。」
「そうなのか。今は良く分からないけど、レナがそれでいいなら、僕はそれでいい。こんな女の子みたいな、ヘナヘナな僕でいいなら、僕はうれしいよ。」
のぼせそうになった僕は、バスタブから出て、体を拭こうとするレナを止めて、抱きしめた。
胸のポッチが僕の胸に当たって気持ちいい。
「レナも湯舟に浸かってから、寝室に戻ってね。もう時間がないから。」
そう言って、自分で体を拭いて、パンツとシャツだけ着て、部屋に戻り、ベッドにもぐりこんだ。
(あー こんな幸せな子供時代って、ありなのか?ありなのか!)
布団の中でニヤニヤしていた筈なのに、気が付いたら、朝だった。
ハッとして、壁の時計を見ると、7時。
子供の体って気絶するように眠れるんだよな。
ベッドの横を見ると、例の薄い下着のまま寝ているレナ。
祈るような姿勢で横向きに寝ているレナ。
だめだ…。
この姿勢ではパイ乙は見えない。
触れない。
「はあー」
腕を頭の後ろで組み、腹筋運動のように上半身を起こす。
できる!今日もできるカール君。
しかし、腹筋と言っても6パックなんてもんじゃない。
真ん中に立て筋ができるだけ。
将来に不安があるが、仕方ない。
(女の子のような可愛い顔という物の副作用かもしれない。)
ベッドから出て少しだけ体を動かして、洗面所に行く。
庶民の家には鏡なんてなかったから、見慣れない自分の顔を細かくチェックしている。
確かに可愛いとも言えるが、目の前の顔はそうとう『きつい顔』だ。
なるほど…。
色々な場面を思い出して、『こんな顔をしていたのか』と頭に叩き込む。
これなら、おてんば姫にも勝てそうな気もするが…殴られればすぐに壊れるんだろうな、この顔。
「おはようございます。カール様」
既にメイド服に着替えているレナ。
「朝食の準備が出来ているか見て来てくれ。」
「まだです。私の仕事ですから。」
そう言って、慌てて階下へ降りていった。
脱衣所で脱いだはずの服はそこにはなく、クローゼットに掛かっていた。
他にもシャツがあったので、今日はこれを着て行こう。
ズボンも色々掛かっているが、ズボンは昨日と同じものを穿く。
腰ベルトと剣が別々にクローゼットに置いてあった。
これも付ける?貴族のようなマナーがわからない。
出掛ける時に…いや、襲撃があったら困るよね。ベルトを付ける。
窓を開けてみよう。
昨日、ゴーレム魔法を使った裏庭だ。
広い。
裏庭の向こう側は森になっているようだ。
屋敷の側に人の気配が…ジャックが見回りをしているようだ。
ここを、たった3人で維持していくのか、大変だな…。
お読みいただき、ありがとうございます。




