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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第21話 私の護衛部隊

白い文鳥が飼っているんですが、面倒な事もありますが、小動物はかわいいですね…


王国歴258年8月第1週


夏になり、王立学園の卒業生が王国軍に入ってきた。

当然、教育が必要なのだが、教育を担当する者がいない。

何しろ王国軍そのものが元騎士だったのだ。

下手をすると戦闘前に『我こそはー』などと名乗りかねない。


個人の戦闘力は、低いながらも剣や槍、乗馬など、基本的な事は王立学園で学習してきている。

参謀本部の会議室で、何故か全員が私を見ている。

確かに言い出しっぺなのだが、わずか10歳で女の子のような筋肉の無さ。


いいのか?


それにしても夏に収穫する野菜が豊富に市場に出てくるようになった。

かぼちゃ、キュウリ、シシトウ、スイカ、そら豆、玉ねぎ、トウモロコシ、ピーマンなど。

市場が活気付いている。

王都周辺の平野部の農家には、肥料は無料で提供しているのだ。


化学合成部隊の隊員がこれほど明るい表情をしているなか、私はどんよりとした表情で研修テキストをまとめている。


国軍の組織、階級、役職、幹部…。

陣地防衛について。兵の相性、騎兵には槍兵、槍兵には歩兵、歩兵には騎兵だったかな?

私の名前はカール・ラングリッジ。

光の勇者の末裔…うそ、これは冗談です。


本来はこの国の戦争について考察したりするんだろうけど、戦争の経験が無いというのも考えものだ。

相手に3人で掛かれ。

死ぬな、とも。

補給に関する事も言っておこう。

いざとなったら、自分で食い物を探せ!


生前、新入社員研修は3か月間で社会人として、会社人間として必要最低限の事を教えてきたのだが、この国では基本的な事は王立学院で学んできている。

前述の団体行動のルールを説明したあとは、現地での食料確保のため畑仕事だろう。


みっちり2か月間、農業の事、肥料の事、ポーションや薬の事を教えるように、カリキュラムを作っておいた。

このあとは、各方面軍で教えてもらえ。




8月半ばになり、宰相から呼び出しを受けた。


「実は王家に長年仕えている者達が居るのだ。」


「昔に他国から来たという、あの者達ですか?」


マーガレットは何かしら知っているようだ。


「そうだ。何代も前に、『北の国から逃れてきた者達』がいて、当時の王太子が大切に保護した事がきっかけで、それからはずっと王家のためだけに生きてきた者達だ。ある者は影として毒や敵の襲撃から守り、ある者は執事として身の回りの世話を焼き、男女の習わしまでも教育するという者達。」


「だが近年、アンジェラ姫が彼らを近くに寄せ付けなくなったそうだ。国王の話では、兄のデリンジャー王太子に手ほどきをしたのがきっかけであったそうだ。だが、それは王太子が望んだ事なのだ。」


「そして、決定的になったのが、君の存在だ。」


「僕が…?」


「そうだ、最近のデリンジャー王太子は、『カールが』、『カールが』と、何事につれ、君の開発した武器や方針をほめ、異論を唱えるアンジェラ姫を寄せ付けなくなったらしい。」


「彼らも国王に対し『この国に偉大な貢献を成した小さな少年に、自分達の力が役に立つなら』と、王家に仕える職を辞して平民とともに暮らしたいと申し出たのだ。」


「国王も、いつまでもマーガレットが護衛を務めている訳にもいかんだろうと、彼らに頼む事にしたそうだ。どうだ。屋敷とセットになっているぞ。」


「屋敷もですか?」


「彼らにぼろい家に住めと?」


「あっ、確かに王宮に住んでたんですよね。」


「職員としてだがな。それと、彼らには北に一族の里があるらしい。」


「給料は高いんでしょうね。」


「彼らの暮らしの費用は、生涯、王家持ちだ。それが慣習なのだ。」


「これが、その屋敷の地図だ。既に準備はできているとの事だ。君が引き受けてくれて、彼らも喜ぶだろう。特に王太子が彼らの事を心配していたからね。」


「ただ一点。アンジェラ姫が『彼ら』又は君を襲って来るかも知れない。だが、単なる我儘なお転婆姫だ。致命的な傷は与えないように撃退してほしいという国王からのお願いだ。」




週末、こちらから行かなくても、彼らが迎えに来た。


ダグザお爺さんは心配していたが、こっそりと『彼らは元国王さまのお世話係だった人達で、現役を引退して私と国王に頂いた屋敷で住む』というと、寂しそうに『そうか』と言っていた。


屋敷は王都南東部にあり、研究所までそれほど遠くはない。

今まで歩いて5分だったのが、歩いて20分になっただけだ。

この距離を走ればトレーニングになるだろう。


屋敷は、古いが清潔に片付けられていた。


中に入ると、そこに執事とメイドが居た。


「我々、カール様にお仕えする『彼ら』と呼ばれる者でございます。名前はまだありません。ご主人に名前を付けて頂くのが習わしでございますゆえ。」


「そうですか。ではお言葉に甘えて。執事さんは定番のセバス。」


「わたくし執事のセバスです。」


「メイドさんは、レナ。」


「わたくしメイドのレナです。」


「護衛さんは、ジャック。」


「わたしは、護衛のジャックです。」


代表して執事のセバスが


「では名付けが終わったところで、誓いの儀式を」


そう言って、お酒が用意された。

互いに同じ容器から飲むようだ。

(本物の酒だ!)


『ゲホ!』


「では私から。誓いを軽視するつもりは無いけど、そんな物はあてにはならない。そこで、命を預ける君たちに、私から本当の事を話そう。」


「僕はフィアナ女神から加護を3つもらった。だけど、それだけじゃない。頭が痛くなるほどの知識を授かった。」


「これは魔法陣勉強のための指輪。神から授かった物だけど、10歳まではこれを勉強しないように言われている。要は頭がもっと大きくなるまではダメと言われた。」


「つまり、これまで僕の発明したこの鋼鉄剣やクロスボウという武器は、全て魔法を使っていない。知識で作った物だ。」


そう言って、帯剣している鋼鉄剣を見せた。そしてレナの持っている短剣を借りて、ジャックに持ってもらう。


「動かさないでね」


そう言って鋼鉄剣で短剣を切る。


さすがに少し力がいるけど、短剣が斜めに切れてしまう。

その切れた短剣を今度は練り練りして、一つの鍛鉄の短剣に変えてレナに返す。


3人が短剣を触りながら驚いている。


「この鋼鉄剣とクロスボウという新型の弓を開発してきたので、王都に招かれ国の機関で働く事になったのですが、これからは庶民の暮らしに役立つ発明もするつもりです。これらの私の知識は、全て貴方達に教えるつもりです。」


「そうする事で貴方達には、未来に発展する可能性が出てくるでしょう?ただし努力次第ですけど…。これが私のできる誓いです。」


「素晴らしい。宰相様にお聞きしていた以上です。」



数多くの皆さんにお読みいただいているようで、ありがとうございます。


もう少し投稿しておきます。

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