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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第18話 デリンジャー王太子



「シンシアさん、宿舎を案内してもらっていいですか?」



今度は、騎士団本部を出て、官舎に向かう。

ここの警備兵にも身分証を見せておく。

そう言えば、シンシアさんが、何やら服を手にしていた。

どうやら制服のようだが、それはすぐに無駄になるだろう。


「ここは男性用官舎なので私は入れません。これは騎士団の服なんですけど…試着してみてください。では、ここでお待ちします。」


彼女はそう言って、近くの長椅子に座って待つようだ。

官舎入口で身分証を確認した人が、部屋へ案内してくれた。


幹部用の部屋のようで、入ってすぐに面談用なのか応接セットが置いてある。

窓際に机と椅子。

隣の部屋がベッドルームだ。

ベッドルームにはクローゼットのような小部屋と鏡のある洗面室もあるが、湯あみができる部屋はない。


制服は厚めの白い生地でできた立派な服だが、やはり大き過ぎて着られない。

9歳用の騎士の服なんて無いし、私は騎士じゃない。


部屋に鍵を掛け、入口の護衛詰所みたいな部屋の小窓から、鍵を返却すると、シンシアは私の姿を見て、


「やっぱり大きかったですか?」


と聞いてきた。『もちろん』と返事をして服を返した。

事務所に戻ると、マーガレットさんが待っていて


「宰相閣下が、すぐに説明が聞きたいとの事です、いいでしょうか?」


と聞いてきた。


執務棟3階の宰相執務室の控室に入って、受付をして剣をあずける。

長椅子に座って待っていると、すぐに


「研究所長、カール殿。お入りください」


と声が掛かる。


扉を開けて、中に入ると見た事がない青年が居る。


「紹介しよう。デリンジャー王太子だ。」


「はじめまして、カール君。あー 本当に女の子みたいだねー」


「僕は男です!」


と言って、かわいく怒って見せた。

(慣れてきたので俳優をやってみた)


「ごめん、ごめん。あはは…」


私の中身を知っている宰相親子は、少し困惑したような表情で苦笑いしていた。


「早速だが、この方針書の内容について質問をしたい。いいかな。」


「はい。」


「現状の騎士団組織から第3騎士団から第6騎士団までを切り離し、王国軍という対外的な軍を新たに立ち上げるという事だが、彼らをどこに置くのだ?」


「私の工房の近く、つまり広大な土地が使える郊外です。」


「そうか、それなら使わなくなった学校用地があるから、そこがいいだろう。ただ、宿泊用の官舎が無いから、それを新たに作らなければならん。少し時間が掛かるぞ。次は、彼らに何をさせるのだ?」


「すぐにという事でしたら、農業です。その次が地図作りです。」


「肥料というのを作って、農業をさせるのか?」


「いえ、試験的な農業です。どのような作物がどれくらい収穫できるようになるか。そこから発展して糧食の開発ですかね。」


「彼らが赴任先で食べる食事を研究するのか。」


「硬いパン。不味いですからね。」


「はっはっはっ。まあ、確かに不味いな…。」


「それと、肥料作りのために『化学合成部隊』が必要なので、魔術師団から人を頂きたいのです。最低10名。」


「ほー 魔術で肥料を作るのか…よく分からんが、問題はない。マーガレットと相談してくれれば良い」


「参謀部というのは、国軍の頭脳にあたる部分であり、優秀なリーダー兼、魔術師の人達を指揮する人が必要でして、マーガレットさんを頂きたいのです。」


「あー確かに、そういう役目ならマーガレットが適任だろう。本人がいいなら転属はかまわない。」


「それと参謀本部というのが組織の総大将だろうと判断して、デリンジャー王太子に来て頂いたのだ。」


「まさに、そういう旗印になる方のために、参謀本部という組織があるのです。王国軍の頂点に当たる組織ですので、それでお願いします。」



「肥料について少し。植物が育つために必要なものが分かっています。窒素、リン酸、カリ、の3種類です。これはシンシアさんが働くために必要なもので例えると、『やりがいのある仕事』、『気持ちよく働ける人間関係』、『成果に応じて褒めてくれる言葉』の3つでしょうか。それが肥料です。」


「はっはっはっ。」

(全員が笑っている…久々のヒットだ。)


「農業については分からんが、肥料の意義については了解した。」


そういって、研究所活動方針の下側に宰相はサインをしてくれた。


「そういえば、君は今は無き『北の国』の系譜の者なのか。」


「はい。北の国のスタンビートにより、国境付近に押し寄せた魔物たちを退けたとして表彰され市民権を得た移民の3世です。そんな自国民の経歴を扱うのが『情報部』です。影に隠れた目立たない仕事が主になりますので、シンシアさんにお願いするつもりです。」


「そして、研究所は私が責任者をやります」


当面は準備作業がたくさんある。

準備が出来れば報告にあがる、という事で宰相の許可をもらった。



「再確認です。組織として王国軍のトップは、デリンジャー大将。参謀本部です。参謀部の指揮はマーガレット少佐。情報部はシンシア少佐。研究所はカール少佐が指揮します。」


そして階級章の案と名札は統一して提案し、制服に関しては後日という事にした。

宰相が『私の役職は?』と言ったので、『予算を決める人物が提案した内容を、誰が否決できるんです?』と私が断った。


その夜、官舎で宿泊したのだが、こんな場所には居られない。


早く、一刻も早く軍の官舎を作りたいと思いながら寝た。


お読みいただき、ありがとうございます。

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