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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第2章 AIたちの安寧の地
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第161話 AIカールの立場


王国歴 265年7月第2週



宰相からAIカールに呼び出しが掛かった。

帝国攻略戦に関する意見聴取だそうだ。


以前と比べて、呼び出し方が横柄になり、内容も露骨になった。


いつものように宰相執務室に行くと、エリオットとシンシアも同席していた。

宰相も参謀本部長という立場で呼び出したのかも知れない。


宰相「よく来た。テーマは事前に通知してあった通り、帝国への攻略についての意見聴取だが、カール殿には聞いておいてくれたか?」


なるほど…。AIかどうかの判別ができているようだ。


エリオット「君が人形である事は承知している。うまく話せないのであれば、あの黒板に書いてくれてもいい。」


エリオットの話に乗っかる事にする。


----- 板書内容 -----


1、東方侵攻ルートの戦略目標は何か。


ハーミス村まではコロンビア川に沿った水資源が確保できるエリアで、農業や漁業が可能な価値ある土地だが、以降、川はなく開拓には向かない。


6つの村を越えた先に位置するオンタリオ市は開けた平野部だが、防壁が無く、占領するメリットは低い。


中北部のビンランド帝国、中南部のセントレア帝国の両勢力を敵にすることになる。


----- -----


宰相「なるほど…。確かにそうだな…。」


エリオット「では、南方のサクラメント方面のみが正解か?」



AIカール「セイラム、ユージーン、メドフォードまでで充分かと。」


宰相「では、北方方面軍はどうするのだ?」


AIカール「東の森の森林伐採と、中型獣や大型獣の捕獲が最適。」



宰相「うむ。流石カール殿だ。了解した。」


エリオット「ご苦労だった。カール様によろしく。」



こうして会議は終了したのだが、彼らは『リンク』という言葉の意味を理解していないようだ。


エリオットにもがっかりだ。

そんな風に思ったのだが…。


本人ではないと分かっているのに『久しぶり…』とか『元気にしてた?』というのも、確かに違和感はあるな…。

何か複雑な気分だ。




AIカールが宰相執務室に呼ばれていた頃、リンダはアンジェラ姫に異なるデザインの高級ドレスを見せていた。


アセテートで作られた絹のような風合いで、ピカピカとした艶のある光沢。


護衛の女忍び3名は、レーヨンとコットンの混紡・艶消しタイプだが、これはこれでデザインが目新しく、人気が出そうな品だ。


これらのドレスに合わせて、スキャナーで足を採寸し作る『3Ⅾプリンター製のヒール』が決め手であった。


(元々は、中世ヨーロッパの糞尿よけだったハイヒールだが、この世界はそれほど人口は密集しておらず、窓から捨てる文化は無い。)



アンジェラ「これらの商品をどうするのです?」


リンダ「アンジェラ外務大臣のブランドで独占的に流通させるのです。」



リンダ「これらの商品を欲しがるのは、地方領主や行政官たち貴族でしょう。貴族のご主人達は王太子が掌握しているでしょうから、ご婦人達は姫が掌握するのです。」


『内政安定のため』と言われれば、アンジェラ姫は否定はしない。


早速、王宮内にリンダと護衛3名が運営するブランドショップ計画が王妃様を中心として承認され、リンダの提案により、木製マネキンが複数体作られることになった。




王都ショコラの王宮から発注が入ったキンキ食品工場では、ポリエステルなどの化学繊維の製造はあきらめ、シリコーン樹脂やワームジェルを糸に加工する研究が進んでいた。


あとは強度だけだが、これらの糸で作られた透明ストッキングが私に衝撃を与えた。


さまざまな色や編み方が試行され、レミやアイが試して見せびらかすので、生の男である私は、結構つらい。

(太ももにはめっぽう弱い)


それにしても、貴族は脚なんて出さないと思うんだけど…商品になるのかな…。




------ アリス視点 ------


マリリンの息子、タクミくんが5歳になりショコラ工房の工場長に内定してから半年。

既に工場の人事はマリリンが押さえたようなものです。


設備は最初から国営なので変更はないのだけれど…。

『作ってくれるなら資材は国が負担する』という規定ですから。


しかし、制作費の支払い先は、その商品を直接管理監督した者に支払われる規定。

今まで作ってきた高速哨戒艇の船外機は、全て私が監督したので私に支払われましたけど、

子育てに時間を取られ、ここ3年間は工房の職人達が自ら製作していて、人件費を除いた代金は、タクミの名義でプールされているそうです。



七曜の里とも言えるこの安全なエリアには、七曜幹部のジャックさんも居る。

だが彼はいずれ、セバスさん、レナさんとともに、リビウ軍港での勤務が内定しています。

まあ仲間だからね。



宰相一家の右腕となったエリオットは、銃弾などの兵器の製造で稼いでいるらしい。

(火薬や銃弾など、一部の物は製造方法は秘匿されているのです。)


彼は既に宰相とシンシアの仲間に…一家ファミリーになったのです。


けれど、私には仲間がいない。

既に今までに製造した対価として十分な金額がギルドカードに入金されているけれど、私の息子がカール様に代わり、七曜の幹部となった時、その地位にどれだけの価値があるのでしょうか。



子供の加護の内容が不明な今現在、あせっても仕方がない。

それは分かっているのだけど…。


AIカールの話では、カール様の持ち分である鉄道事業、研究所の開発商品である乳酸菌飲料、肥料などの事業が相続できるらしい。


でもそれは息子が無事に5歳になってから。

1歳上の娘はどうなるのでしょう?

AIカールの答えは、弟が相続した分から、分配する形になるらしい。



鉄道事業と研究所を受け継ぐなら、命名の儀はフエキ屋敷がいいでしょうね。

あの屋敷もカール様のものだけど、相続できるのかしら…。

でも今、私に付いている周辺隊では、護衛は務まらないでしょう。


仲間と護衛。このあたりが私の課題ね。




お読み頂き、ありがとうございます。

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