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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第16話 王国魔術師団



翌朝、迎えの馬車が来た。


いやいや…所長とか言っても9歳の子供に贅沢でしょ。

と思うのは私だけか?


ファルマおばさんが作った漬物とスープ、硬いパンを慌てて食べたが、魔術師団の女性は『まだ時間はありますよ』と言って、ゆっくり食事を食べていた。



流石に第1区に入るには、宰相の発行してくれた身分証を馬車の中から見せる必要があった。


そして、執務棟という建物にいき、3階の宰相執務室の隣の控室に入った。

中では数人が椅子に座り、呼び出しを待つ形のようだ。


この部屋で剣などの武器類を預け、所属、氏名を書き、身分証を再度見せなければならない。

今まで護衛をしてくれていた魔術師団の女性は、まだ隣に座っている。

3人目に私の名前が呼ばれ、護衛の女性に先導され入室する。


「カール君、よく来てくれた。実は南方の『湖の町バルナ』に侵攻してきた軍隊だが、再び小型の双胴帆船で20隻、今度は魔術師も一緒に侵入して来てね。君の作ったクロスボウで見事に撃退できたよ。本当に助かった。」


「戦闘はたったの30分だ。わが軍に被害はなく、相手は壊滅状態で2隻は乗組み員3名全員が負傷のため帰れずに捕虜になった。簡単な事情聴取は終わったが、ノロ共和国という国だそうだ。尋問はこれからだ。」


「ところで、彼女はマーガレット・カルバン。王国魔術師であり我が娘だ。護衛として付けてあったのだが、問題は無かったかな。」


「はい。ご配慮いただき、ありがとうございました。」


「それと、今から簡単な問題を解いてもらう。1つ目はわが国の規則に関する問題、2つ目は算数の計算問題だ。」


「それって、王立学園の試験ですか?」


「そうだ。」


「それが終われば君の職場である王国騎士団の本部まで、彼女が案内してくれる。そこで、君の補佐を紹介できるだろう。今後の活動方針など、思うところを書面にまとめてくれれば良い。なに、急ぐ必要はない。」




実際に問題用紙を見たのだが、こんな簡単な内容でいいのか?と心配してしまう。


歴史問題は学園の終了試験で出るらしく、入学時には試験対象では無いそうだ。

30分ほどで書き終わり、再び宰相執務室に移動して提出をした。


「ところで私の護衛体制はどうなりましたでしょうか。」


「現在検討中だ。ひとまず挨拶という事で、今日は以上だ。」



王国魔術師でもあるマーガレットさんが、私に教えるように右腕を胸の位置に押し当て、『これが軍の敬礼です』というように、示してくれた。


私はそれを見て真似をしたのだが


「君は軍に所属したが、軍人ではなく研究者だから、必ずしも敬礼は必要ない。ただ相手が敬礼した際には、同じく敬礼した方が良いとは思うが…まだ9歳だからな。」


と宰相は言ってくれた。



控室に戻り、剣を受け取ってサインをして、歩いて騎士団本部棟にやってきた。


入口で同じく身分証を見せて中に入り、2階に上がると、いかにも『新しく空き部屋にしました』という場所に到着した。

部屋の木札は外されたままで綺麗な跡形が残っている。


中に入ると結構狭い。

6畳くらいの空間に机が2つ並んでいて、入口側の机に女性が座っていた。


「おはよう!シンシア。こちらがカール所長よ。」


「初めまして。私は研究所の所長補佐、シンシア・カルバンです。」


(また、カルバン…宰相の娘か。)


「カールです。よろしくお願いします。」


「お気づきだと思いますが、彼女は私の妹で、シンシアです。魔術師の加護はありませんが、魔法も剣もそこそこの腕前ですよ。」


「率直に聞きますが、周囲や手配など全て宰相閣下、又は閣下の関係者で固めている感じがしますが、私の登用は宰相閣下の独断であって、周囲からは反対があったのですか?」



「いえ、そのような事はありません。ただ国王からは万全を期するように言われておりまして、今のところ、このような体制という事です。カールさんの希望が有れば何でもおっしゃってください。」


「そういう事であれば問題はありません。」



「…えーと、所長はおいくつでした?」


私の補佐というだけあって、護衛役の彼女よりは私に関心があるようだ。


「9歳と10か月です。お二人は?」


「昨年王立学園を卒業しました。14歳です。」


「17歳です。」



「王立学園って、10歳で入学、15歳で卒業と聞いていたのですが?」


「女学校の時はそうでしたが、今は各分野の試験合格が条件で飛び級が可能ですから最短は3年です。最長は5年で卒業です。」


護衛のマーガレットさんは妹のシンシアさんと居ると少し印象が柔らかい。


「ところで、マーガレットさんは、普段どんな仕事をしておられるのですか?」


「魔術師団の副団長という肩書ですが、所詮は貴族の娘達。危険な戦場へ行かせたい親はいませんから出撃命令は滅多に出ません。普段は各自が武器を持たなくてもよいように、自衛手段としての魔法を練習している程度ですね。」



「王族や貴族の御婦人達の護衛任務が主です。」

と、妹は姉の補佐もするようだ。


思った通り、男は騎士団、女は魔術師団に所属し、主に王宮の護衛任務のようだ。


「魔術師団は1部隊が30名。2部隊で合計60名ですが、実際に戦場に行けるのは半数でしょうね。第1魔術師団はほぼ貴族なので、王都以外に出せるのは第2魔術師団だけですし、今回、出身地勤務が認められたので、今の人員は合計40名ほどでしょうか。」


「騎士団も主な任務は王宮内の護衛と警備でしょうか?」


「第1騎士団と第2騎士団が王族と貴族の護衛任務についています。貴族の方に失礼の無いように動けるのは、貴族ですから。第3騎士団から第6騎士団までは王都以外の任務が主です。」


「基本は1部隊50名の合計300名です。団長はベルナー、副団長はギュンターといい、両名とも貴族です。部隊長、中隊長、小隊長は団長が決めますが、貴族である必要はありません。」


つまり、純粋に王国軍と言えるのは200名。魔術師団はお飾りになっている。


平和な国だ。


ひとまず、方針書を作ってみよう。




お読みいただき、ありがとうございます。

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